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舞姫さま-01 [シトワイヤン-31]

アメリカから帰って、万里の別荘でのんびりとは行かないが落ち着いた日々を過ごしている。
いや、帰ってきたら舞姫さまのお屋敷は一段と大きくなり、別荘の筈だった家には姫さまの家族という事で注目され過ぎて落ち着かなくなった両親と妹が引っ越して来ていた。
住民票を移したので私達は清香村…、正式には苗川市清香一丁目十三番地の住人となった。

万里は、同年代の友人達にも小学校高学年頃から尊敬される存在だったが、十七歳となった今では誰からも万里ちゃんと気安く呼ばれる事はなくなり、姫さま扱いしないのは家族だけになってしまっている。
その両親でさえ敬語で話しそうになるぐらいだから、万里が孤独を感じたりすることの無い様、私だけは普通のお姉ちゃんで有り続けようと思っている。

「万里、森の中のツリーハウスはどんな感じになってるの?」
「村人たちの趣味が高じてしまって、ツリーハウスなのに冷蔵庫やコンロが有ってね、今日は万亀庵のお饅頭とお茶を頂いたわ。
でね、私専用の最上階、通称巣箱は日向ぼっこに最適なのよ。」
「狭いのでしょ?」
「うん、でもお昼寝出来るし、私はお姉ちゃんと違って暴れたりしないから問題ないわ。」
「あのね、暴れるじゃなくてエクササイズと言って下さらないかしら。
それで今日は何してたの?」
「鷹を呼んでみてね、この間、鷹匠の人に色々教えて頂いたから、少し試してみたの。
苗川でパフォーマンスをする時は何時でも呼べる様にしておきたくてね。」
「放し飼いって感じなのかしら?」
「そうね、村の人達には放し飼いにしているニワトリの数を、鷹の餌前提で増やして貰うようにお願いしておいたわ。
一応、私の所に来る猛禽類達には村で飼ってるものに手を出さない様にお願いはしてるのだけど、そんなのは人間の身勝手でしょ。」
「そうよね、ねえ食物連鎖のバランス的にはどうなの?」
「猛禽類が増え過ぎる様な環境では無いのだけど、鹿や猪、猿に対しての敵が人間しかいなくなってしまったのは問題だわ、狼でもいればもう少しマシだったのかも。」
「でも、狼がいたら人間にも害をもたらしそうだわ。」
「人間だけが何の被害も被らないと言うのはどうかしら、人間の側がルールを守っていれば大した被害にはならないと思うし。
鹿も猪も肉食獣と比べたら遥かに繁殖力が強いのだから、人間が頑張らないと確実に増え過ぎる、なのに猟師さんの高齢化が進んでいてね。
清香村は移住して来た人達が積極的に檻を使った罠での捕獲をしてるからマシなのだけど、過疎化が進んでる所では、対応し切れていないみたいなの。」
「人間と野生生物の共存は難しいのかしら。」
「東京の映像を見てると、人間が増え過ぎたと思ってしまうのだけど。」
「う~ん、確かに世界の人口が増え過ぎた事で社会の歪が拡大しているとも言えるのよね。
かと言って日本は少子高齢化でしょ。」
「子孫を残すのは生き物の本能、そこに社会的な歪が絡んで思様には行かないのよね。
でも人間同士が殺し合う事で、長期間人口を上手く抑制して来たとは思いたくはないな。」
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舞姫さま-02 [シトワイヤン-31]

明日は新たに建てられた舞姫さまの社へ、ヘリで訪問の予定。

「お姉ちゃん、ヘリは便利だけど騒音で人に迷惑掛けていそうで微妙だわ。」
「気にしなくて良いのよ、舞姫さまの社、そのヘリコプターバージョンとして、大型ヘリの通過を待ち望んでいる人が多いのだから。
飛行予定は公開してるし、万里が乗ってれば近づいて来るのを皆さんが感じて、外に出て出迎えてるそうよ。
でも、気になるのなら、万里が一人で飛んでく?」
「それは無理、宙に浮くぐらいしか出来ないから、鳥たちに引っ張って貰えば少しは移動出来るけど、遠くまではね。」
「ドローンではどう?」
「う~ん、大きな力は必要ないから使えるのかな、遠くまでは無理だろうけど…、タケコプターみたいに使えるのかも、お姉ちゃん、お小遣いで買おうか。」
「そうね、調べて貰うわ。」
「あれって自分で操縦出来るのよね。」
「うん、私も操縦してみたい、万里を好きな様に引っ張ってアクロバット飛行とか楽しそうだわ。」
「それは却下、お姉ちゃんに操縦させたら、絶対目が回りそうだもの。
お姉ちゃんはハンググライダーとかやってみたらどう?
馬をあっという間に乗りこなして、皆さんを驚かせたのだから楽勝じゃない?」
「ハンググライダーか…、何事も挑戦よね、やってみようかしら。
そうそう、未だに宙に浮く万里を手品の類だと思っている人がいるみたいだから、空でのパフォーマンスを企画してみない?」
「良いわよ、苗川でなら鳥達にも参加して貰って…、小鳥タイムと猛禽類タイムをしっかり分けての二部制かな。」
「一緒は無理なのね。」
「小鳥たちだって、鳥肉定食にはなりたくないでしょ。」
「でも、上手く分けられるの?」
「鷹や隼は結構聞き分けが良いのよ、友達感覚かな、鷹匠の先生に教えて頂いてから一段とね。」
「小鳥たちは?」
「操り易いと言うか感覚的には僕なの、トイプードル愚連隊よりも忠実なね。
まあ、難しい芸は出来ないから演出での勝負になるのだけど、清香村の人達には好評なのよ。」
「その映像は?」
「カメラマンと相談しながら随分撮ってるのだけど、カメラマンがなかなか満足しなくてね、生で見ている感覚を映像で再現するのが難しいとかで、今も作戦を練ってる最中。
野鳥を身近に感じて貰うことで自然を守ろうという気持ちになる、そんな作品を目指しているのよ。」
「そっか、単に撮影するだけではないのね、完成が楽しみだわ。」
「カメラマンは作品が売れたら山を買って里山として整備して公園にしたいとか、炭焼きを体験したり和紙作りに挑戦とか出来る様なのをね、利益は出にくそうだけど、お姉ちゃんも相談に乗ってあげてね。」
「作品が売れなくても山の一つや二つ、使い道が有るのならすぐにでも買うわよ。
それだけで、舞姫さまが日本の森を守りたがっているというメッセージになるでしょ。
そうね、舞姫さまの森、再生プロジェクトとかを組めばボランティアがすぐ集まって里山としての整備を進めてくれるでしょう。
万里がたまに訪問して映像作品の舞台に、山の麓に舞姫さまの社と門前町や宿泊施設を建設すれば…、ねえ万里、今有る社の近くの山を買って、舞姫さまの社とセットにしてはどう?」
「そっか、社はほとんどが田舎だものね、社と共に森の整備をすることでそのエリアの魅力が増すのなら、社が自然保護のシンボルともなるのね。
予算はどう?」
「う~ん、少なくとも五ヶ所ぐらいは何とかなると思う。
社を訪れる人達がハイキングやキャンプを楽しめたら、売り上げアップに繋がるから、これから建てて行く社は初めから、舞姫さまの森を意識して貰いましょう。
考えてみたら神社と森はセットみたいなものでしょ、舞姫さまの社は、その森の規模が大きくなるということで納得して貰います。」
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舞姫さま-03 [シトワイヤン-31]

舞姫さまの森構想をあっさり受け入れて貰えたのは、舞姫さまの社に付加価値を付け加えて行きたいという思惑がスタッフに有ったから。
すぐに会社名義の山が増え、その再生プロジェクトがスタートした。

「お姉ちゃん、凄い勢いで山を買い進めてるけど、取得費用は兎も角、固定資産税とかは大丈夫なの?」
「大丈夫よ、日本の森を守る為だもの、舞姫さまの社が絡んでる所はそこの利益で軽くカバー出来るレベル、でも心配なら新作DVDを出す?」
「そうね…、保留にしてた鎮魂の舞、鎮魂歌と舞を組み合わせたのをイメージしてるのだけど、地球が誕生し、その海や大地に生まれ育ち死んでいった全ての命の為のレクイエムというのはどうかな?」
「壮大な発想なのね、何かきっかけが有ったの?」
「うん、某神社、日本の為に亡くなった人を祀るという発想は悪く無いのだけど、結局日本という視点でしか捉えられていないでしょ。
全ての戦没者、いえ、今の世界の礎を築いて来た全ての生き物に感謝する気持ちが有って良いと思うの、ミジンコに対してもね。」
「ミジンコ?」
「ミジンコを餌にして成長した魚を食べたりしてないかしら、ならば、ミジンコの命にも感謝しないと。」
「そうよね…、万里はあまりそういう事を話して来なかったけど、舞姫さまの祝福、その根源は全ての命に対する愛と考えれば良いのかしら。」
「う~ん、お肉を頂いたりしてるから残酷な愛かも、でも生きとし生けるものの摂理でしょ。
ただ、地球は多くの動植物や微生物がいて成り立っていると思うの。」
「うん、分かってたつもりだったけど…、鳥達のさえずりを身近に感じられる環境とか、でもその餌にも感謝しないとダメなのね。」
「そうよ、お姉ちゃんは特に沢山食べる人なのだから。
お姉ちゃんの餌となって行った多くの生き物達の為の鎮魂歌という設定でも良いのだけど。」
「そんな設定をされたら痩せてしまいそうだわ。」
「大丈夫、お姉ちゃんの食欲は何が有っても誰にも負けないよ。
それで、鎮魂歌は日本語で作ってから英語、ドイツ語、フランス語、イスラム圏に鎮魂という概念が有るのかどうか分からないけど、難しくてもアラビア語にも挑戦してみようと思うの。
プロの作詞作曲家と作って行きたいと思うのだけどどうかな?」
「人選に対しての希望は有る?」
「特にはないけど、イメージが合わなかったら交代して頂くという前提でお願いしたいかな。」
「分かったわ、まず日本語版の制作に協力してくれる人を探して貰うわ。
英語版とかは言葉に合わせて曲も変えた方が良いわね、ねえ、言語別に五曲同時進行にしておいて、作業の進んだものから完成させていくと言うのはどうかしら、相互に意見交換をして行けば完成度が高くなると思うの。」
「そうね、舞との兼ね合いも有るから少し時間を掛けたいし。」
「じゃあ鎮魂歌制作チームを立ち上げて貰うわね。」
「うん。」
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舞姫さま-04 [シトワイヤン-31]

鎮魂歌の制作には時間が掛かった。
万里は作詞家や作曲家達と直接会って意見交換したり、メールやテレビ電話のやり取りで作業を進めたが、東南アジア歴訪などのプログラムが有ったからだ。
そんな中、一番早く完成したのはドイツ語版、万里が言葉の響きを気に入り作業が早く進んだ。
『地球上に生を受け死んで行った全ての為のレクイエム』、その録画はベルリンでドイツの著名な男声合唱団をバックに行われた。
万里の祝福を感じながら歌うプロの歌声は万里を心地良くさせ、万里の歌も舞も何時も以上の仕上がりに。
そして、舞姫さまの祝福を感じられたエリアは今までで最大規模になったとの報告が届いた。

「万里、今日の演奏は少し長めだったけど大丈夫?」
「ええ、合唱だけのパートも有ったからね、団員の人達は何テイクか録画すると思っていたそうで一回でOKが出たことに驚いたみたい。
しっかり準備しておいて下さったし、曲の意味を理解して真剣なのが伝わって、そうね相乗効果で良い作品になると思う、後は編集にお任せね。」
「今までで最高の出来だったと思うわ、毎回そう思うのだけど。
ドイツ語でも、世界中でかなり売れるでしょう、予約が殺到する様にプロモーションもしっかりやって行くからね、舞姫さまの森を維持管理して行くぐらいの費用は軽く捻出出来ると思うわ。」
「まだ他の言語バージョンが残ってるのだけど。」
「そう言えば、アラビア語は兎も角、日本語版で苦労してるそうね。」
「うん、鎮魂歌のイメージと日本語が上手く噛み合わないのよ、アラビア語みたいに全く知らない言語の方が歌い易かったりして、次は英語かアラビア語、その後フランス語になりそうだな。」
「急ぐ必要は無いわ、お経だって何言ってるのか分かんないでしょ、ドイツ語版は絶対売れてお葬式とかでも使われると思うのよ、日本でもね。」
「それなら、アラビア語を優先しようかな、歌詞はアラビア語だけど曲想は日本風という方向性で進んでるの、ドイツ語版はレクイエムだけどアラビア語バージョンの日本向けタイトルは鎮魂歌にするからね。
その方がイスラムの指導者に対する刺激が少なくて良いでしょ。」
「そうね、英語版より先に出したら、それだけで喜んで貰えるかも知れない、録画はどこにしようか?」
「アラビア語バージョンはどこかの民族楽器を少しだけ使うつもりだからどこでも構わないのだけど、王子に喜んで貰っておいた方が後々プラスになるでしょ。」
「じゃあその方向で、暑い時期を避けるタイミングで録画に取り組めそうかしら。」
「大丈夫よ、舞姫の社周辺の地下施設工事がどれぐらい進んだのかも見て来たいよね。
早めに連絡しておけば、地下にスタジオとか作ってくれるかも。
そうだ、謎の王宮とかを設定して、撮影後、そのまま観光客向けの施設にとか提案してみようか、あの王子さまなら乗ってくれると思うな。」
「少しストーリーを持たせるのね、元は鎮魂歌という同じコンセプトでも一曲毎に違った形で発表して行くのも面白いわね。」
「う~ん、残った言語版のハードルがまた上がってしうまうのかな…。」
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舞姫さま-05 [シトワイヤン-31]

舞姫さまのレクイエムは地球上に一瞬でも生を受けたあらゆるものに捧げる歌と舞、いや生まれる前に亡くなってしまった命をもその対象にしている。
ドイツ語で書かれた歌詞には鎮魂だけでなく生あるものへの賛美や子孫の為に、といった文言も並べられ万里の哲学が反映されていると言って良い。
ドイツ語で有る事に反発を覚える人もいた様だが、荘厳な歌声は人々の心に文字通り響き渡った。
DVDのジャケットに書かれた『この鎮魂歌は死者の為のものでなく、今を生きる人々が亡き人を偲び明日への糧とする為のものである』という言葉の意味を多くの人達が噛みしめた。
人々が信じる所の宗教に関係は無い。

「万里、レクイエムの歌詞はそのまま舞姫さまの教えとして受け取られているみたいで、市民教育として通用する部分も有ると思うのだけど、意識的に言葉を選んだのね。」
「ええ、言葉の意味と語感を大切にしてね、大学教授の助言で難しい言葉も使えたので合唱団の人達も高く評価して下さったのよ。
本来、レクイエムと鎮魂とは意味合いが違うのだけど、カトリックを離れた新しいレクイエムとして、曲調も永遠の安息に相応しいでしょ。」
「そうね、お葬式でホログラム版を使えないかという問い合わせが来ていて、新しいお葬式の形が出来るかも知れないのよ。」
「3Dホログラム映像がお坊さんの代わりになるのかしら?」
「かもね、有難いのかも知れないけど良く分からないお経の代わりとしては間違ってないと思う。
万里の映像なら、悲しい雰囲気を和らげてくれるだろうし。
でも、社の3Dホログラム映像に魂を込めるみたいな事は、数が増えたら出来なくなるのよね。」
「う~ん、何が出来て何が出来ないのか、まだ試してない事は有るのよ、今後の課題かな。
社では多くの人に見て頂けるから、それだけ力が強くなっているのだと思うのだけど。」
「そっか、試すのは良いけど無理はしないでね。」
「うん、硬いのばかりでなく楽しいのも試して行く、鳥と戯れながら野鳥を紹介するDVDがそれなりに売れてるから、そろそろトイプードル愚連隊をデビューさせても良いと思ってるの。」
「微妙に言う事を聞いてない様に見せるトレーニングって、普通に芸を仕込むより難しそうなんだけど。」
「ふふ、ホントに言う事聞いてない時も有るのよ、愚連隊の子達にも個性が有ってね。
完璧過ぎないのがトイプードル愚連隊の良い所で、清香村では人気者になってるの。
アメリカから連れて来られたから英語にしか反応しない子と、英語を忘れて日本語しか理解出来ない子という設定でね、英語の基礎学習になるようなステージを作って行こうかなって。」
「また稼げそうね、使い道はどうするの?」
「東南アジアの国に雇用の場と職業訓練校を考えてる、トイプードル愚連隊が活躍するとそのまま雇用対策が進むのなら応援してくれる人が増えるでしょ。」
「そうね、今までも、それぞれの売り上げから社会貢献に支出して来たのはとても好感を持って受け止められているものね。
利益には繋がらないだろうと思ってた事でも、本間塾の塾生が絡んで黒字化、私達に絡んでくる資金は元気に活躍しているのよね、舞姫フレンズや地球市民党が拡大している地域では特に。
キャッシー達はアメリカ大陸全部を視野に入れ始めてるし、ヨーロッパの人達は周辺諸国を意識している、中東はまだ様子見だけど、私達は地理的、歴史的に考えても東南アジアに力を入れるべきよね。」
「世界中の国と地域が互いに競いつつ協力関係を充実させて行く、経済的強者が偏る事の無いバランスの取れた国際社会までにはまだ時間が掛かりそうだけど、株式会社舞姫は強者としての地位を確立しつつ国際社会のバランス形成に貢献して行きたいかな。」
「その一歩が東南アジアなのね。」
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舞姫さま-06 [シトワイヤン-31]

舞姫さまのDVD、Blu-rayは高頻度で制作、発売されている。
万里が舞を公の場で舞うのは月に一度か二度ぐらいだが、その全てを録画し編集、映像作品として毎月の様に発売しているだけでなく、鳥と戯れ野鳥を紹介する映像作品や、歌を中心とした語学教材としても利用されてる作品などは万里の負担が少なく、簡単に完成してしまう。
今回、トイプードル達と戯れる姿をメインにしたものは世界同時発売となったが、今まで日本だけで発売されていたものも、世界中のファンが通販で購入していることも有り、海外向けの販売を進めている。
ファンの心理としては、舞姫さま、その全ての作品を手に入れ、更にグッズもとなるのは自然な流れなのだが、聖地巡礼の費用も合わせるとかなりな額になる。
それでも真面目に働き、舞姫さま関連に支出することをいとわない人が世界中に多くいて…。
早い話、万里のパフォーマンス活動だけで莫大なお金が動いている訳だ。

「お姉ちゃん、私の資産総額ってさ。」
「うん、増えてたね。」
「自分が富豪の仲間入りをしてみて思うのは、こんな金額、個人資産として必要ないでしょってことなのだけど、そうは思わない?
「そうね、小さな国の国家予算を超えたのかな。
でも、大きな資産を活かせない人とは違って、万里は最大限に活かす方向で指示を出してるでしょ。
キラキラした石っころやバッグ、車とか必要性を感じない物に大金を使うことなく、安定雇用の場を増やす方向で活用してるのだから、万里が大金を動かしてる意味は大きいと思うのよ。
その辺りは、アメリカのセレブにも影響を与えてるそうで、キャッシーに相談しに来る有名人も増えて来てるそうよ。
スポーツや芸能の分野で成功しても経済面の事は人任せにしていた人がね、自身の財産を社会の為に、もっと有効に活かして行きたいとか。」
「結局、個人の能力には差が有るし、株などをまとめて所有するのも意味有ることなのだから貧富の差は当然の事、ただ、そこで富める者が無意味な蓄財に走るか、社会経済にとってプラスとなり弱者を救済して行く様なお金の使い方をして行くのかで、社会環境は大きく変わって行くのよね。」
「そう、貧富の差というけれど、相対的に貧しい人達がもう少しマシな生活、健康で文化的な生活を送れるレベルであれば問題無いと思うわ。
財閥を敵視し、解体を試みてる国も有るみたいだけど、経済活動を安定させるには大企業も必要、ただその経営方針に問題が有り過ぎて貧困層を増やして来たのが日本でしょ。
そこを反省して、これからどうして行くべきなのかを、株式会社舞姫が先頭に立って示して行く、万里の個人資産はもっと増やして行くけど、まあ、個人名義というだけで実質的には社会貢献の為の資産、だから本間塾のメンバーもその有効活用に協力してくれているのよ。」
「そうね、世の名の大金持ち達がみんなそういう結論に達していてくれたら、地球市民党ももっと活発に動けるのにな。」
「和馬さん達は密かに国を乗っ取り、国民がユートピアと思える様な王国を建国するとか企んで、と話していたでしょ、万里を女王様として。」
「う~ん、少し調べてみたけど、貧乏な小国に甘い言葉をささやけば出来なくもないのよね、国際的な信用度がどうなるかは微妙だけど。」
「それがね、市民の政党と王国ってミスマッチ、少し形を変えてスタートさせるそうなの、明日、姫さまにご挨拶と話してたのだけど、自信有り気な顔をしてたわよ。」
「ふ~ん、バーチャル政党で成功したから、バーチャル王国でも始めるのではないかしら。」
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舞姫さま-07 [シトワイヤン-31]

翌日。

「え~、バーチャル王国構想を姫さまに見抜かれてたとは、面白い発想で、喜んで頂けると思っていたのにな…。」
「まあまあ、詳しく聞いてあげるわよ、ね、万里。」
「遊び半分で始めるのが一番無難で上手く行く確率が高いと思うかな、で、どんなお遊びになるの?」
「姫さまに忠誠を誓い王国の民となると、国民特典映像を見られたり、DVDやグッズの情報を一足早く得られたりする他、シミュレーションゲームに参加出来たりします。
このゲームでは同じ言語を使う人同士はルールに則っとり普通にチャットやメールのやり取りが出来ますが、定型文に限り自動翻訳で他言語の人とも交流出来ます。
今の所十一の言語でスタートの予定ですが、この定型文は順次増やして行き、言語学習にも使える様にして行きます。」
「全く知らない言語を使う人とも交流出来るという事ですか?」
「翻訳ソフトほどの語彙を持たせない代わりに精度は高くなります。
全く知らない国の人と協力し合ってゲームを進めて貰えたら世界平和に繋がるかも知れません。
すでに国境を越えたゲームは存在するのですが、対話の内容は限定されるにしても自動翻訳機能は充実していないのですよ。」
「王国とせず、舞姫フレンズとして展開しても良いと思うのですが。」
「そこは、まあ、市民政党がバーチャルからリアルになっていった様に、リアルでも王国の領土を、すでに正式にはリアル国家のもので有っても実質的に王国の一部として使える土地は広がっています。
水中都市計画もそこに絡めて、我々の都とするのです。」
「小国を乗っ取るのですか?」
「乗っ取るだなんてとんでもない、事業計画を提示したら、すべて姫さまにお任せしたい、みたいな感じなのですよ、姫さまの情報は把握しているみたいで。」
「和馬さん、舞姫さまの森とかも、日本と王国の共有みたいな設定にするのですか?」
「そうなるね、税金は日本に納めるだけで良いから智里は心配しなくて大丈夫だよ。」
「王国の国民はDVDやグッズ購入が納税の代わりになるのね。」
「収入はそれだけでなく、我々の企業収入も、その利益の一部を王国の国家予算に組み込む形で集約するのも有りだと考えている、その予算で既存の国家に出来ない事をして行きたいね。」
「具体的には?」
「主に国家間の紛争調停とか、国連とは違った角度から切り込んで行く動きが有って良いと考えているよ。」
「地球市民党や舞姫フレンズとの関係は?」
「地球市民党は今までどの国家にも属していなかったが、バーチャル国家に属して、国境を意識しない世界を目指す、舞姫フレンズの多くは王国の民となってくれると思うだろ。
組織的な問題は残るが、国王が舞姫さまなら一本化も難しくない。」
「それなら、国家として難民を受け入れ職業訓練をし、自活出来るように出来ないかな。」
「リアル国家と相談になりますが、舞姫さまの名の下に多くの人や企業を結集出来れば、それも可能だと思います。
いきなり大勢押し付けられても対応しきれませんが。」
「そうね、難民の方の中から難民対策で働く職員を採用し教育して行く所から始めないとね、人数にもよるけど、私のお小遣いを使っても良いですよ。」
「姫さまはそんな心配されなくて大丈夫です。」
「お小遣いに余裕は有って…、頑張って使わないと増える一方なのよ。」
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舞姫さま-08 [シトワイヤン-31]

和馬さん達はバーチャル王国構想を進めている。
ただ、基本がお遊び感覚なだけに…。

「万里、本間さんは王国の首都は苗川しかないだろうと話していてね。」
「本間さんも乗り気なんだ。」
「日本から独立するみたいな、観光客が喜びそうなお遊び感覚の条例を考えているのよ。
キャッシーはそれに対抗してMAIHIME TOWNを王都にするとか、首都と王都の違いって良く分からないのだけどね。」
「ふふ、お遊びなら何でも有りなのかな。」
「中東の王子さまは、大使の交換を提案して来たし、東南アジア諸国からは舞姫さまの森として王国に土地を提供したいという話が幾つか来てるのよ、こちらに預ける事でそれなりの見返りが有ると判断した人があちこちに提案したみたいでね。」
「へ~、そう来たのか、資金面で問題が無ければ森を守りながら…、お姉ちゃんはどう思う?」
「農業で得られる収入は多くないみたいで、土地の効率的な活用を私達の財力でとか企んでいそうね。」
「効率的か…、国によっては非効率が故に多くの人に働く場が確保されてるという一面が有りそうな気はするのだけど。」
「確かに機械化を進める事で失業率が上がってはね、単純に効率だけを重視する訳にも行かないのかな。
程よく多くの人の生活を安定、向上させる仕事を生み出せれば良いのだけど。」
「逆に、機械化で生産性を高め金銭的な余力を生み出し、非生産的な仕事に従事して貰う人の給料に回すのはどう?」
「例えば?」
「軍隊はその最たるものだけど、環境整備を目的とした、本来なら行政が進める様な作業を民間の力で進めるチーム。
そうね、王国は軍隊を持たない代わりに、平時は緑化事業に携わり大規模災害発生時は救助や復興作業に携わる集団とかどう?」
「規模にもよるわね、ごく小規模ならすぐにでもスタート出来ると思うけど。
確かに世界が平和なら必要のない軍隊でも、雇用の場という一面を持ってはいるのよね。
王国と名乗るのなら、軍隊を持つつもりで…、自然災害に立ち向かう地球防衛軍でも創設してみる?」
「王国は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
日本と違って、王国ならおかしな解釈抜きで、憲法の冒頭に正々堂々と掲げることが出来るね。」
「立憲君主制か、絶対王政というのも楽しそうなんだけど。」
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舞姫さま-09 [シトワイヤン-31]

バーチャル王国は大銀河帝国と名付けられた。
帝国という名称に関しては異論も有ったが、スケールの大きさを示すのには悪くないという事で採用された。
立憲君主制では有るが、白い物でも女王さまが黒だと言ったら黒、という内容も憲法に謳われている。
憲法第一条では『大銀河帝国は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
この目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。』と、某国の突っ込みどころ満載の憲法からパクってあるが、武器を一切持たず地球を災害などから守る地球防衛軍の存在は憲法にはっきり明記された。
正式な国土はバーチャル空間にしか存在しないので、国境は存在しない。
ただ、リアルでも舞姫さまの社、舞姫さまの森、株式会社舞姫などに関連する企業の所有地などは、大銀河帝国とそれらが所属する国家とで平和的に共有している事とした。
行政と立法は地球市民党の幹部が担うが司法に関しては、直接関係する国の司法にお任せとなる。
帝国として可能な罰則は、国民としての権利を剥奪し、帝国サイトでの自由度が著しく制限されるぐらいしか用意出来ないからだ。

「万里、バーチャルの筈なのに、国として認める動きが本格化しそうなのだけどどうするの?」
「まだ数か国でしょ、取り敢えず苗川に大使館を置くとか、でも、ある意味国家の資産が小国のそれを上回っているのだからおかしなことではないのよね。」
「国土が微妙なんだけど。」
「国は国土に由来するのね、水没しそうな島国はどうなっているのかな?」
「あそこを本当に手中に納めたら面白いわ、バチカン市国みたいな存在として、世界中の舞姫フレンズにとっての聖地に、でもリアルな国家となったら国籍とかややこしい問題が発生するのでしょうね。」
「世界を一つの国と出来たら良いのだけど、大銀河帝国に関係する土地がかなりの面積になったとはいえ、地球規模で考えたら、まだ微々たるものだからなぁ。」
「それでも、貴族として舞姫さまに忠誠を誓いながら、自分の土地を広げ帝国領にしていくという動きが有るでしょ。」
「舞姫騎士団や本間塾の塾生が増えたからね、リアル国家と問題を起こさなければ良いのだけど。
個人的に自宅を帝国領だと主張する事が流行り始めているのはどうなるのかな。」
「お遊びの範疇だから大丈夫でしょう。
バーチャル帝国のマップ上に仮想の家を建て、リアルとリンク、現実では狭くて古いワンルームマンションでもバーチャルでは豪邸に出来るのだから夢が有って良いんじゃない。
バーチャル空間にはどんどん町が増えてるでしょ、ゲームに参加してる人達は多国籍の人が住む町作りを楽しんでるみたいだし。
地球防衛軍は無給の予備役としてスタートしたけど、志願者に対する研修を始めたのは正解みたいね。
過去の大災害から、その時、組織的に動くことをテーマにネット上でシミュレートしてるでしょ、研修を通して意見交換がなされてるだけでなく、災害に対応した経験の有る軍関係者も、正式に政府の許可を得た上で参加し始めてるから、自然災害に対応する組織として充実させて行けそうね。」
「災害を未然に防ぐことも考えて行くべきよね、そろそろ地球防衛軍の正規隊員、まずは幹部候補生を募集し教育を始めても良いのかな。
ねえ、こういうのって私が指示を出すの?」
「舞姫さまの一言で、どれぐらい動くのか見てみたいわね、百人分ぐらいの予算なら私の一存で動かせるよ。」
「では、地球防衛軍の運営スタッフに連絡を、う~ん、紙に書いた…、命令書みたいのを作った方が喜んで貰えるのかな。」
「そうね、女王さまのサイン入りのをね、スキャンして姫さまからの指示、第一号として公開しましょう、地球防衛軍本格始動に向けてね。」
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舞姫さま-10 [シトワイヤン-31]

大銀河帝国がお遊びの範囲を大きく超え始めるのに時間は掛からなかった。
正式な国家としてして認める動きが広がり始めた事と、かなりハードルを高くした地球防衛軍の正規部隊、幹部候補生に多くの優秀な人が応募した事が大きい。
バーチャル帝国から、国土を持たないがリアルな国家への移行は、今までにない国家形態という事で国連で揉めたが、水没の危機を感じている一つの島国が大銀河帝国領になると宣言してから大きく動いた。
元より国連に加盟するつもりは無かったので、大銀河帝国建国宣言を行う事に躊躇いはない。
舞姫さまの意向という事で、宣言の場所は中東の王国、その地下神殿を選んだのは、単に王子さまの顔を立てるというだけでなく、中東を重視しているという政治的メッセージでもある。
王子さまは鎮魂の舞を撮影する為に整備していた地下神殿を、建国宣言の日に向け更に充実させている。

「大銀河帝国の女王さま、その国籍は日本のままって不思議な形に納まりそうなのね。」
「各国の法律との整合性も有るし、大銀河帝国国民の国籍を全員出身国に置いたままにすることで、国境を越えた活動として強調出来るでしょ。」
「ええ、大銀河帝国領になる国の国籍を取得する条件も厳しく、帝国に憧れてる人は多いから安易に国籍を取得されてもね。
観光では訪問し易くするけど、それ以外の長期滞在は制限、まずは現在の国民が安心して暮らせる状態にするのが先決。
大銀河帝国建国宣言時に唯一の領地となるのだから、苗川の様な楽園にする為に島々の調査と生活の向上に向けて多くのスタッフが入ってるとは聞いたけど…。
ねえ、万里は、建国宣言する事にプレッシャーとか感じていないの?」
「それ程はね、だってほとんど名前だけの女王でしょ、姫さま扱いにはもう慣れたし。」
「でも、永遠の女王、たとえ舞姫さまが銀河の果てに旅立つ事が有っても、唯一の女王として変わる事は無く、帝国臣民は舞姫さまに絶対の忠誠を誓うのよ。
跡継ぎ問題を軽くするためとは言え、宗教に於ける絶対的存在と同じでしょ。」
「そうね、せめて地球にいる間は舞姫を頑張るしかないみたい。
でも、今後どうなって行くのかは神のみぞ知る、でしょ。」
「ほとんど女神さまの万里がそれを言うのか。」
「帝国と言っても、国連が果たしきれなかった役割を担うという意味合いも有るのだからね。
大銀河帝国所属を宣言する企業からの税収がどれぐらいの額になるのかも楽しみだな。」
「所属する国に納税した上で自主的に、実質寄付とはいえ帝国の国家予算を潤しそうなのよね。
舞姫フレンズの人達は、大銀河帝国への納税額が企業のステータスシンボルになるように動いて下さった、それは舞姫さまに対する感謝の献金だそうで、万里がとてつもなく多くの人の心に安息を与えた事の結果、お金だけでなく帝国を発展させる為に多くの人が動き始めている。
もう、万里を中心に世界が回っている様な状態よね。」
「それは言い過ぎ、でも世界中の人達が地球市民という視点で考え始めてくれた証なのだから嬉しいことだわ。」
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