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舞姫さま-01 [シトワイヤン-31]

アメリカから帰って、万里の別荘でのんびりとは行かないが落ち着いた日々を過ごしている。
いや、帰ってきたら舞姫さまのお屋敷は一段と大きくなり、別荘の筈だった家には姫さまの家族という事で注目され過ぎて落ち着かなくなった両親と妹が引っ越して来ていた。
住民票を移したので私達は清香村…、正式には苗川市清香一丁目十三番地の住人となった。

万里は、同年代の友人達にも小学校高学年頃から尊敬される存在だったが、十七歳となった今では誰からも万里ちゃんと気安く呼ばれる事はなくなり、姫さま扱いしないのは家族だけになってしまっている。
その両親でさえ敬語で話しそうになるぐらいだから、万里が孤独を感じたりすることの無い様、私だけは普通のお姉ちゃんで有り続けようと思っている。

「万里、森の中のツリーハウスはどんな感じになってるの?」
「村人たちの趣味が高じてしまって、ツリーハウスなのに冷蔵庫やコンロが有ってね、今日は万亀庵のお饅頭とお茶を頂いたわ。
でね、私専用の最上階、通称巣箱は日向ぼっこに最適なのよ。」
「狭いのでしょ?」
「うん、でもお昼寝出来るし、私はお姉ちゃんと違って暴れたりしないから問題ないわ。」
「あのね、暴れるじゃなくてエクササイズと言って下さらないかしら。
それで今日は何してたの?」
「鷹を呼んでみてね、この間、鷹匠の人に色々教えて頂いたから、少し試してみたの。
苗川でパフォーマンスをする時は何時でも呼べる様にしておきたくてね。」
「放し飼いって感じなのかしら?」
「そうね、村の人達には放し飼いにしているニワトリの数を、鷹の餌前提で増やして貰うようにお願いしておいたわ。
一応、私の所に来る猛禽類達には村で飼ってるものに手を出さない様にお願いはしてるのだけど、そんなのは人間の身勝手でしょ。」
「そうよね、ねえ食物連鎖のバランス的にはどうなの?」
「猛禽類が増え過ぎる様な環境では無いのだけど、鹿や猪、猿に対しての敵が人間しかいなくなってしまったのは問題だわ、狼でもいればもう少しマシだったのかも。」
「でも、狼がいたら人間にも害をもたらしそうだわ。」
「人間だけが何の被害も被らないと言うのはどうかしら、人間の側がルールを守っていれば大した被害にはならないと思うし。
鹿も猪も肉食獣と比べたら遥かに繁殖力が強いのだから、人間が頑張らないと確実に増え過ぎる、なのに猟師さんの高齢化が進んでいてね。
清香村は移住して来た人達が積極的に檻を使った罠での捕獲をしてるからマシなのだけど、過疎化が進んでる所では、対応し切れていないみたいなの。」
「人間と野生生物の共存は難しいのかしら。」
「東京の映像を見てると、人間が増え過ぎたと思ってしまうのだけど。」
「う~ん、確かに世界の人口が増え過ぎた事で社会の歪が拡大しているとも言えるのよね。
かと言って日本は少子高齢化でしょ。」
「子孫を残すのは生き物の本能、そこに社会的な歪が絡んで思様には行かないのよね。
でも人間同士が殺し合う事で、長期間人口を上手く抑制して来たとは思いたくはないな。」
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