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舞姫さま-05 [シトワイヤン-31]

舞姫さまのレクイエムは地球上に一瞬でも生を受けたあらゆるものに捧げる歌と舞、いや生まれる前に亡くなってしまった命をもその対象にしている。
ドイツ語で書かれた歌詞には鎮魂だけでなく生あるものへの賛美や子孫の為に、といった文言も並べられ万里の哲学が反映されていると言って良い。
ドイツ語で有る事に反発を覚える人もいた様だが、荘厳な歌声は人々の心に文字通り響き渡った。
DVDのジャケットに書かれた『この鎮魂歌は死者の為のものでなく、今を生きる人々が亡き人を偲び明日への糧とする為のものである』という言葉の意味を多くの人達が噛みしめた。
人々が信じる所の宗教に関係は無い。

「万里、レクイエムの歌詞はそのまま舞姫さまの教えとして受け取られているみたいで、市民教育として通用する部分も有ると思うのだけど、意識的に言葉を選んだのね。」
「ええ、言葉の意味と語感を大切にしてね、大学教授の助言で難しい言葉も使えたので合唱団の人達も高く評価して下さったのよ。
本来、レクイエムと鎮魂とは意味合いが違うのだけど、カトリックを離れた新しいレクイエムとして、曲調も永遠の安息に相応しいでしょ。」
「そうね、お葬式でホログラム版を使えないかという問い合わせが来ていて、新しいお葬式の形が出来るかも知れないのよ。」
「3Dホログラム映像がお坊さんの代わりになるのかしら?」
「かもね、有難いのかも知れないけど良く分からないお経の代わりとしては間違ってないと思う。
万里の映像なら、悲しい雰囲気を和らげてくれるだろうし。
でも、社の3Dホログラム映像に魂を込めるみたいな事は、数が増えたら出来なくなるのよね。」
「う~ん、何が出来て何が出来ないのか、まだ試してない事は有るのよ、今後の課題かな。
社では多くの人に見て頂けるから、それだけ力が強くなっているのだと思うのだけど。」
「そっか、試すのは良いけど無理はしないでね。」
「うん、硬いのばかりでなく楽しいのも試して行く、鳥と戯れながら野鳥を紹介するDVDがそれなりに売れてるから、そろそろトイプードル愚連隊をデビューさせても良いと思ってるの。」
「微妙に言う事を聞いてない様に見せるトレーニングって、普通に芸を仕込むより難しそうなんだけど。」
「ふふ、ホントに言う事聞いてない時も有るのよ、愚連隊の子達にも個性が有ってね。
完璧過ぎないのがトイプードル愚連隊の良い所で、清香村では人気者になってるの。
アメリカから連れて来られたから英語にしか反応しない子と、英語を忘れて日本語しか理解出来ない子という設定でね、英語の基礎学習になるようなステージを作って行こうかなって。」
「また稼げそうね、使い道はどうするの?」
「東南アジアの国に雇用の場と職業訓練校を考えてる、トイプードル愚連隊が活躍するとそのまま雇用対策が進むのなら応援してくれる人が増えるでしょ。」
「そうね、今までも、それぞれの売り上げから社会貢献に支出して来たのはとても好感を持って受け止められているものね。
利益には繋がらないだろうと思ってた事でも、本間塾の塾生が絡んで黒字化、私達に絡んでくる資金は元気に活躍しているのよね、舞姫フレンズや地球市民党が拡大している地域では特に。
キャッシー達はアメリカ大陸全部を視野に入れ始めてるし、ヨーロッパの人達は周辺諸国を意識している、中東はまだ様子見だけど、私達は地理的、歴史的に考えても東南アジアに力を入れるべきよね。」
「世界中の国と地域が互いに競いつつ協力関係を充実させて行く、経済的強者が偏る事の無いバランスの取れた国際社会までにはまだ時間が掛かりそうだけど、株式会社舞姫は強者としての地位を確立しつつ国際社会のバランス形成に貢献して行きたいかな。」
「その一歩が東南アジアなのね。」
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