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権じいの店-1 [権じいの村-6]

「店長、配達行って来ますね。」
「おう、香織ちゃん気をつけてな。」
「は~い。」

西川さんも店長が板についてきたかな。
と言ってもまだオープンから間がないから…、これからが大変なのかも。
あら、花が咲いてる、もうすっかり春ね。
こんな日の配達は仕事じゃないみたい。
気持ちいい~。

「香織さ~ん!」

おっ、学生諸君がんばってるな。
ふふ、笑顔で手を振ってと…。
え~っと一軒目は…、畑に行ってるかな、微妙なのよね。

「こんにちは~、お静ばあちゃんいますか~。」
「はいよ~。」
「配達に来たよ~。」
「おお、香織ちゃんか有難うな。」
「顔色良さそうね、どう変わったことない?」
「ああ、いつもどおりじゃ、え~っといくらじゃったかな。」
「今日は千八百四十八円。」

「じゃ、二千円。」
「はいお釣り、ちゃんと確かめてね。」
「え~っと大丈夫、まだぼけておらんは。」
「ははは。」
「そうそう、明日はな、お店まで行ってみようと思ってな。」
「はい了解しました、じゃあ今日の注文はなしね。
予定が変わったら電話してね。」
「はいよ。」
「じゃあ、お静ばあちゃん、まったね~。」
「うん、気ーつけてな。」
「は~い。」

お静ばあちゃん忘れっぽくなってるから、大丈夫かな。
えっと、元気そうだったから丸をつけて。
次は三次朗さんとこか。

「三次朗さ~ん!」
耳が遠いからな…。」
「三次朗さ~ん!」

「はいよ…、香織ちゃんか。」
「はい、お元気ですか?」
「なに?」
「お元気ですか?」
「ああ。」
「何かいる物ありますか?」
「へ?」
「お店へ、注文はありませんか?」
「ああ、なんもいらん。」
「わかりました、また来ますね。」
「おお。」

ふう、三次朗さんも丸。
それにしてもお店で独り暮らしの老人の健康チェックまでやるとは思ってなかったなぁ~。
でも確かに私が適任ね。
みんなの名前だって知っているし。

さて次は…。



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権じいの店-2 [権じいの村-6]

「ありがとうございました。
おしのばあちゃん、また来てな。」
「はいよ、え~っと西川さんじゃったな。」
「はい、店長の西川です、よろしくお願いします。」

「こんにちは~。」
「おお、久美ちゃんいらっしゃい。
何時来たの?」
「今朝早くです、お店の調子はどうですか?」
「何とかやってるよ、ただね。」
「ただ?」
「レジにはまだ苦労してるよ。」
「ふふ、普通とは違いますものね。」
「客層ボタンを押して、村の人の場合は…。
それにしても大学生たちの考えることは違うね。
物を売るだけでなく、住人の健康チェックまでやるとは思いもしなかった。
でも、本当にこの村の住人になるためには、皆さんの名前くらいは覚えて当然だから、逆に便利なのかな。」
「ふふ、がんばって下さいね。」
「ああ。
そうそう、この前ね、お客さんと話していたら、おじいさんが最近元気がないって。
それで本部に連絡したらね、すぐ学生が向かってくれて、そのまま診療所へ。
診て貰ったら病院で検査した方がいいって言われたとかで、そのまま病院まで。
結局、入院することになって。
学生たち、着替えを運んだりとかもしてくれたんだ。」
「聞いてます、ずいぶん感謝されたそうですね。」
「うん、自分の役割の大切さが分かった気がしたよ。」
「大切な仕事ですから、これからもよろしくお願いします。」
「診療所まで遠いからな…。」

「学生たちはどうです?」
「助かってるよ、ここの運営スタッフの子たちも、混んでると気軽にレジとか手伝ってくれてね。
混む時は学生ばかりだから…。
そういえば混んでくると、何の連絡をしなくても手伝いに来てくれる。」
「ふふ、レジのデータから、混む時間を予測してたり、混み具合を報告してくれる学生がいたりするのです。」
「そうだったのか、でも…、自分たちの調査研究の時間を割いてくれているんだろう?」
「みんな楽しんでやってるみたいですよ。
研究対象と考えている子もいますし。」
「それならいいけど…。」




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権じいの店-3 [権じいの村-6]

「ごめんよ。」
「いらっしゃ~い。」
「久美ちゃんちょっとごめんな。」
「はい。」

「玉ねぎ安くていいから買ってくれんかの~。」
「はい、有難うございます。」
「良助が世話になったからと思って、学生さんのとこへ持っていったんじゃがな、売るほどあるそうでな。」
「はは、うちも買ってますよ。
野菜は自分たちでも作っているし、よく頂くそうで。」

「結構な量ですね。
金額は、え~っと…。」
「醤油と味噌代ぐらいにはなるかの。」
「いえいえ、もっと払いますよ。」
「醤油と味噌が買えるだけでええわ。」
「は、はい有難うございます。
じゃあ、これはおまけで。」

「野菜の買い付けの方も順調そうですね。」
「うん、今日は隣村から売りに来た人がいたぐらい、高柳さんから聞いたそうだよ。
そうそう、この店はね買う人は高く買おうとするし、売る人は安く売ろうとしてくれるんだ。」
「えっ?」
「下まで買いに行かなくて済むようになったから感謝されてるし、JAでは引き取ってくれないような形の悪い野菜を買ってるし、さっきみたいに半分寄付感覚? で売って下さる方も。」
「形が悪くてもおいしいって評判ですよ…。
ふふ、物々交換なんですね。」
「レジでは醤油、味噌とおまけを現金で売って、同額で玉ねぎを仕入れたことになってるけどね。
いつも買いたい物の二三倍分の野菜を持って来る人もいるよ。」
「そのまま、交換ですか?」
「うん、で、大学関係は権じいカードで買う人が多いから、一日の現金売り上げなんて寂しいもんだ。」
「ふふ、でも権じいの店の売り上げはどんどん増えてるんですよ。」
「ここで仕入れた野菜が大学で売られているって分かっていても、実感わかないな。」
「学食の調理の人や、生協で買ってる人たちにも評判いいんです。
しかも、ここからは大学への直通バスで運んでもらってるからコストも抑えられていて。
運営スタッフの子たちが言うには、かなり多く仕入れても大学関係だけで十分売れるって。」
「その言葉を信じて気楽に仕入れているけど…。
一気に規模を拡大していいものかどうか…。」
「今夜の会議は、その辺りのことが中心になるそうですね。」
「うん、小さな店で働くつもりが、年商がいくらくらいになるか予想もできない、大きな店の店長になってしまったって気分だよ。
みんなが協力してくれるから、なんとかやってるけどね。」




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権じいの店-4 [権じいの村-6]

「おい雑誌とかないのか、ここ。」
「はは、コンビニじゃないぞ、そんなもんここでは必要ないだろ。」
「でも夜とかさ、まぁ一日だけだけどな。」
「せっかく日常とは違うところへ来たのだから、都会の生活を捨てて農村の生活を感じて欲しいって、俺はその言葉にぐっときたけどな。」

「あっ、みやげ物がある。」
「うん、でもこっちは未完成か…、おじさ~ん、これって?」
「はいよ、ああ、それは…、君たちは来たばかりかい?」
「はい、林業体験で、十日ほどの通いですけど。」
「ここでの泊まりは?」
「終わり頃に一回です。」
「じゃあ、その頃に覚えていたら、またおいで。」
「えっ? 今は買えないんですか?」
「ああ、ここは観光地じゃないからね。
商品名は見てくれたかな。」
「え~っと、権じいの村の想い出…。」
「この村に何の思いもない人には売れないんだよ。」
「このプレートにかっこいい言葉を書いて彼女へのプレゼントと思ったんですけど…。」
「それはいいな、でも、この村のことを知って考えてから書いて欲しいかな。」
「は、はい。」

「何か納得いかね~。」
「うん、でもま、時間あるし。」

----------

「俺は二度とこんなとこ来ないぞ。」
「はは、そうなんだ、確かに体験実習は楽じゃなかったな。」
「お前は平気なのか?」
「ああ、ある程度予想してたからね、そうだ店に行ってこよう。
どうする?」
「まぁ暇だから行くよ。」

「こんにちは~。」
「いらっしゃい。」
「え~っと、権じいの村の想い出、だったかな、買いにきました。」
「どうだった、大変だったろ。」
「はい、こいつなんか二度と来ないそうです。」
「はは、そうか、それでいい。」
「えっ。」
「林業の大変さを身を持って味わえた訳だろ。
そのことを心に残しておいてくれれば良いんだよ。
権じいの村プロジェクトの一つの目的でもあるからね。」
「そうなんですか、僕は良い体験ができたと思ってます。
できれば、また来たいです。
で、権じいの村の想い出を。」
「ああ、そうだったね。」

「プレートは自分で選んで、ペンはここにあるのを自由に使っていいよ。」
「君はどうする?」
「はい…、いいです…、見てますから…。」

「森に抱かれて、か、う~んいいね。」
「僕、作業しながら色々考えたんです。」
「どんなこと?」
「自然のこととか、例えばここに降った雨が地面にしみ込んで、川を流れ流れて下流で自分たちの飲料水になってる。
ここと僕らの日常とはつながってるんだってこととか。」
「確かにそうだな。」
「休憩中に寝っころがって、森の木々を見上げていたらなんか気持ちよくて。
忘れていた何かを思い出したような…。
それでこのプレートには、森に抱かれてって書こうと決めたんです。」
「なるほどな。」




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権じいの店-5 [権じいの村-6]

「こんにちは~」
「あっ、慶次さん、いらっしゃい。」
「最近あまりお見かけしてませんでしたが…。」
「ええ、色々ありまして。
もう少しすれば、だいぶ余裕ができると思ってますが、微妙だったりします。」
「そうですか。」

「西川さんの方はどうです?
多少報告は受けてますが…。」
「トラックを導入してから、一気に出荷量が増えています。
その分、経費も増えた訳ですが、雇用の創設という目的には合っていますし、利益も十分、なんせ仕入れ値が低いですから。
大学では慶次さんの指示に従って、安くしすぎないようにしてくれていますし。
今はトラックの台数を増やしたいですね。
最近は形の良い野菜の入荷量も増えて、しかも格安仕入れなんで余裕はあります。」
「運転の方はどうです?」
「都会から移住してきた人たちが交代で、今は3人、配達に行かない時は店の手伝いをしてくれています。」
「今のところ順調なんですね。」
「はい、ただ、学生たちや高柳さんからは色々提案も出ていまして…。」
「聞いています。
農村体験から、移住を決意した人も増えていますから、やれることはやって行きたいと思っているのですが。」



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権じいの店-6 [権じいの村-6]

「香織さん、こんにちは。」
「あら、真一さん、こんにちは。」
「お店、順調そうですね。」
「はい、売り上げもずいぶん増えてます。
スタッフも十人に増えて、と言っても見習いも含めてですけど。」
「権じいの店二号店へ向けてですね。」
「はい、店長と私以外は交代で二号店の村へ行って、お借りする建物の補修や、地元の方との交流を始めています。」
「うん、また一歩前進だ。
今ね、活動を広げようって気持ちが皆の中で強くなってきてるんですよ。
農村体験から移住してきた人の中には、他の過疎地へ、再度の移住を考えている人もいてね。
今、住んでいる家を空けることで、次の体験希望者を受け入れやすくできるからとか。
ほんとの過疎地で働いてみたいとかって。」
「そうですね、家も増えて畑もちゃんと耕されるようになって、植林地もずいぶんきれいになって。
こんなに早いとは思ってもみなかったです。」
「建物はまだ仮設が多いけどね。
そうそう、二号店もここと同じ感じになるの?」
「基本は同じですけど、学生さんの人数が少ないから商品の品揃えは違ってきます。
向こうは果樹園も結構あるから、大学向けの商品も少し違ってくると思いますよ。」
「なるほど…、ねぇちょっと前に思ったんだけど、JAの人って怒ってないのかな?」
「そうですね、ここは小規模農家が多いし、うちが扱うのは規格外が主だから問題ないと思います。
大規模農家だとJAからお金を借りての設備投資となって、自由がきかないこともあるらしいのですけど。
ここは自分たちで食べる分を作ってるって感覚だったから。」
「そうか商品作物という感覚じゃなかったんだ。」
「でもね、最近は農学部の人たちに刺激を受けて、今までとは違った野菜を作ってみたり。
学生たちに喜んでもらいたいって、ほったらかしになってたとこを耕したり…。
でね、学生さんたちや移住して来た人たちが手伝って下さるからか、生き生きとしてきた人も少なくないのです。
独りで畑仕事してたことを考えたらとても楽しいって。」
「うん、いいね。」
「健康面の調査を継続的にしてる子も、全体的に良くなってきてるって言ってましたよ。」
「そうか、ぼくらのやってきたことは間違ってなかったってことかな。」
「はい。」




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権じいの店-7 [権じいの村-6]

「久美ちゃん、権じいの店二号店の方はどうなってる?」
「はい、慶次さん、夏休み明けの正式オープンに向けて、スケジュール通りに進んでいます。
全村調査に向けて、宿泊関係の調整も何とかなりそうです。
オープン後のスタッフ宿舎の方も、まだ三ヶ月近くありますから大丈夫かと思います。
高柳さんが色々動いて下さって、もしもの場合は村の公民館とかも使わせていただけそうですし。」
「高柳さんもがんばってくれてるからね。」
「ええ、やはり頼りになります、私じゃ全然できそうにない事をあっさり片付けて下さって。」
「うん、やはり俺の目に狂いはなかったな。」
「ふふ。」

「そう言えば店名は?」
「権じいの店二号店じゃないのですか?」
「う~ん、地元の人に違和感はないだろうか?」
「そうですね…、朝日村っていうのですけど、向こうは…。」
「権じいの店の由来はこの村の大杉な訳だからさ。」
「確かにそうですね。」
「同じ市といっても、こことはずいぶん離れているからね…。」
「そうだ、夏休みになったら、めぐちゃんこっちに来るんですよ。」
「そんなこと聞いた気もするな。」
「権じいの名づけ親にも、店名とか考えてもらいましょうよ。」
「でも、真帆は静かなところで受験勉強をとか…。」
「ふふ、めぐちゃんの力、知らないんですね。」
「えっ?」
「地元の大学って言ってたから、偏差値から考えるとどこでも大丈夫じゃないですか。
この前、どこの大学がいいかなぁ~、なんて相談を受けたのですけどね…。
飛び級制度が充実してたら、とっくに大学生ですよ彼女は。」
「頭のいい子だとは思っていたけど…。」
「このプロジェクトを手伝うならどこが一番いいかなって。」
「そうか…、う~ん、ちょっと裏技考えたくなった…、ああ、受験のじゃなくて入学後のことだから心配しないで…。」
「はい、とりあえず二号店のネーミングのことは伝えておきますね。」
「うん、頼む。」



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権じいの店-8 [権じいの村-6]

「おじさ~んアイス、アイス。」
「はいよ。」
「え~っと。」
「こんなに沢山買ってくのかい?」
「うん、ぼくは買出し係りだからね。」

「キャンプは楽しい?」
「めっちゃ楽しい。」
「でも勉強もしてるんだろ。」
「うん、でも面白いことばかりだから、大学生のお兄さんやお姉さんたちが色々教えてくれるし。
なんかすごいよね、ただの田舎だと思っていたら、最新式の電気自動車が走っていたりしててさ…。
あっ、のんびりしてたらアイスが溶けちゃう…。
おじさん、まったね~。」

「はは、外でキャンプ場専用車が待っていたか。」
「店長、どんなアイスが人気です?」
「え~とね…。」

「こんにちは。」
「いらっしゃ~い。
小春ばあちゃん、今日もお元気そうで。」
「はは、子どもたちの声をここで沢山聞けるとは思ってもいなかった。」
「そうですね、夏休みになるまでは、休みの日に、たま~に見かけるぐらいでしたから。」
「今日はな、キャンプ場に招待されてな、子どもたちに村のことを話すことになっての。」
「それは大変ですね。」
「そんなことは大したことないのじゃが、手土産に困ってな。」
「なるほど野菜とかは自分たちで収穫しますしね…。
ねえ~、香織ちゃん、キャンプ場で足りなくなりそうな物って何かある?」
「はは、たぶんお肉が…、食べ盛りの子が多そうだったけど、学生さんたち予算を考えてか、かなり控えめな量でしたよ。」
「そうかい、じゃあ肉の差し入れでもしようかの。」
「う~んと、それなら…、ちょっとスタッフの子と相談してみます。」

「どう?」
「はい店長、謎の鉄板を用意してもらうことにしました。」
「えっ?」
「焼くものは野菜しかないと子どもたちに思わせておくんです。
で、タイミングを見計らって、お肉をすぐ焼ける状態で届けるのです。」
「なるほど。」
「子どもたちがどんな反応をするかも調査対象に…、あは、私も学生さんたちに影響されちゃったかな。」
「ははは。」
「お肉は、小春ばあちゃんと源太郎じいちゃんからの差し入れって子どもたちに伝えますね。」
「えっ、源太郎さんも?」
「はい、おじいちゃん、子どもたちが来てくれたことをすごく喜んでいまして。」
「源太郎の願いは小学校の再開じゃからな。」
「はい。」



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権じいの店-9 [権じいの村-6]

「香織ちゃん、今回のキャンプ参加者は高校生と大学一二年生なんだよね。」
「はい店長…、ごはん沢山食べそうだなぁ~。
今は慶次さんの説明を、直々に聞いている頃ですよ…。」

----------

「ここは以前集落だったんだ。」
「廃村ってことですか。」
「ああ、その跡地を整備してキャンプ場にしたんだよ。」
「ずいぶんきれいですけど。」
「学生やここに移住してきた人たちが、この村に来た人たちに良い想い出を作って帰って欲しいってがんばった成果だな。」
「白川先生、権じいの村プロジェクトは順調なんですか?
ここに来ているメンバーは、全員先生の本を読んでますけど、先生が本をお書きになられてから、もうすぐ一年ですよね。」
「そうだな、次の本も書きかけているけど…、これまでの成果に興味のある人は本部のパソコンからデータベースにアクセスしてくれてもいいよ。
ただし、すでにデータは膨大な量になってるからね。
一応、野原真一と田中久美が君たちの担当で控えているから色々聞いてみるといい。」
「はい。」
「正直な話し、プロジェクトは当初思ってたよりも、うんと順調に進んでいるよ。」
「例えば?」
「この村から広がり始めてるんだよ、色々とね。
権じいの店二号店が九月の終わり頃にオープンする予定だったり、市役所の近くに店を開けないかなんて検討もしてるよ。」
「あれっ? このプロジェクトは過疎地の農村再生だったのではありませんか?」
「その通り、そのためには農村で作った作物を売る必要もあるし、町の人たちにも我々の活動を知っていただく必要もあるんだ。
第一段階として大学が深く関わってきたけど、それだけでは限界があるからね。
今は、どこの過疎地でも通用するスタイルを模索してる最中なんだ。」
「まだ始まったばかりということですか?」
「その通り、権じいの店だって大学がバックについてるから安定してるけど、ほんとの意味での過疎地再生を考えたら課題は山済みなんだよ。」
「簡単じゃないんですね。」
「ああ、だからこそ、みんながんばろうって気になってるよ。」
「でも、失敗したら…。」
「はは、若い頃からそんな心配してたらつまんないぞ。
俺たちは開拓者なんだよ。
過疎の村を再生して新しい村を作り出そうとしている。
まぁ、みんなはここに来たばかりで実感も湧かないだろうから、しばらくは色々見聞きしてくれるとうれしいかな。」




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権じいの店-10 [権じいの村-6]

「いらっしゃ~い。」
「こんにちは、あの、私、町田絵里っていいます。」
「はい。」
「あの~、西川さん、私、しばらくここで働かせていただけませんか?」
「えっ? まぁ二号店のこともあって人手は欲しいから問題ないけど…。」
「自分の卒論でここのことも書きたいんです。」
「ああ、そういうことか。」
「コンビニでバイトしたこともあって…、コンビニと権じいの店との比較を中心に、他の村の商店も調べるつもりですけど。
村における商店の重要性、その役割とかも掘り下げてみたくて。
コンビニも客として行くのと、そこで働くのとではずいぶんイメージが違いましたから、できれば実際に働いてみたいと思ったのです。」
「そうか…、通いになるの?」
「いえ、農作業体験で親しくなった、芳江ばあちゃんの所から、もう、ばあちゃんの孫みたく同居させていただいてます。」
「はは、しっかりしてるな。
でも大学の方は大丈夫なの?」
「真面目に単位取ってきましたから、後は卒論だけで大丈夫なんです。
先生へはメールで報告できますから。」
「なるほどな、なら香織ちゃんの手伝いを中心にやってもらおうかな。」
「はい、よろしくお願いします。」

----------

「香織さん、住民の健康にまで気を使って、権じいの店は普通の店じゃないのですね。」
「そうね、でも…、私がちっちゃい頃あった店もね、ここで暮らす人たちの一つの拠り所になってたそうなのよ。」
「え?」
「普通に商売してたと思うのだけど、買い物に来た人のことをずいぶん気遣っていらしたって。」
「あっ、人間関係が今とは…。」
「子どもの頃ね、その店にお使いに行くとさ、店のおじいちゃんがお駄賃だよって飴をくれたの。
もう子どもが少なかったこともあったのかしら、とても嬉しそうにね。
おじいちゃんが亡くなってお店もなくなっちゃけど、今でもよく思いだすのよ。」
「はい、ただ商品を売っていただけではなかったのですね。」
「ええそうなの。
最近良く思うのはね、権じいの店を、ここで暮らす人たちの心の拠り所にできないかなってこと…。」
「ふふ、もう充分村の方々の拠り所になってると思いますよ。」




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