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纐纈榛香-05 [F組三国志-07]

 冬休み前にYouTubeチームの体制強化が発表された。

「ねえ、YouTubeの新プロジェクトには榛香も関わって行くの?」
「ええ、そのつもりよ。」
「教育関係だとは聞いたけど。」
「そうよ、自分がどれだけ役に立てるか分からないけど、自分に出来る事を見直してみようと思ってね。」
「へ~、榛香にとっての挑戦なのかな?」
「無理の無い範囲での小さなボランティア活動に取り組んでる人が増えたでしょ。
 新プロジェクトはボランティアという感じでは無いのだけど教育改革を意識してるから、社会貢献を意識しながら取り組めるかもって。
 誘ってくれた先輩も、無理の無い範囲でと言って下さってね。」
「具体的にはどんな形に?」
「一つの流れは、今有る教育関係のコンテンツ、それを検証し問題の無いものは作者の了解を得た後、データベース化して学校のカリキュラムに沿った形で生徒が利用し易く整理。
 ただリンクを付けてまとめるだけではなく、中身の濃いウエブサイトを目指していてね。」
「ネット上の教育系コンテンツか、う~ん、見て無いから今ひとつイメージ出来ないのだけど。」
「省吾さまレベルのが結構有るのよ、不登校になっても受けられる質の高い授業が存在する訳。
 でも、作成している人達はそれぞれの考えで取り組んでるから、上手く整理して行く必要が有ると言うか、整理出来たら一つの学習手段として有用なものになるでしょう。」
「そんなレベルなんだ。」
「そんなレベルのコンテンツを私達でも作って行こうと考えていてね。」
「榛香の役割は?」
「今の所は高校二年生の学習内容でコンテンツを制作する時のアシスタント的な立ち位置を想定。」
「男子生徒のやる気が自然と高まりそうね、女子生徒向けにメインはイケメンの先輩なんでしょ。」
「どうかしら、イケメンよりトークの上手い人の方が良いくないかな。」
「なら、トークの出来るイケメン…、いるの?」
「う~ん、まあ、近くにいなくても編集で何とかなるし…、バーチャルユーチューバーという手も有るのかな、予算の都合が付けばだけど。」
「その手が有ったか、そうなると声優さんにも関わって欲しいわね。
 小学生対象とかも考えているのでしょ。」
「そうね、運営組織を固めながら募集して行く事になると思う。
 最終的にはかなり大規模なものを目指してるから。」
「どれぐらいの規模に?」
「小学校から大学までの学習内容全てとは行かないけど、それなりに、後、資格試験も意識していてね、特別な条件の無い、試験に合格さえすれば資格が取れる様なのは、自習能力が高ければ学校に行く事なく、YouTubeを参考にして試験に合格って良いと思わない?」
「資格試験か、良いと思うけど、膨大な量になりそうね。」
「なるでしょうね、でも能力の高い人にとってはお金も時間も無駄にする事がなくて便利でしょ。
 作る側も、システム構築に成功すれば、一つのコンテンツが多くの人に利用して貰える訳で、人気の有る資格中心に制作して行けば利益が出るし、日本中の生徒が見たくなる学習コンテンツを作る事に成功したら、大きいと思わない?」
「学習塾の需要が減ったりして。」
「減るかもね。」
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纐纈榛香-06 [F組三国志-07]

「榛香は高校進学に向けて塾に通ってたの?」
「いいえ、姉も通わなかったし、必要性を感じなかった、梨乃は?」
「家庭教師を勧められたけど、会社の好ましくない状況を感じ始めてたからね。
 まあ、親に余計な心配を掛けたくなくて、真面目に学習してたら普通に合格、私には家庭教師も塾も必要無かったみたい。」
「そうね、必要な子もいるのだろうけど、ほら、塾の前にはどこどこの高校に何人受かりましたって貼って有るじゃない。
 中三の時の同級生は、その高校に入れる人をこれだけ集める事に成功しましたってだけで、必ずしもその塾に通ったから合格出来たとは思えないって話してたわ。」
「私の友達は、親に言われて通ってたけど、好きな男の子と話すことが目的で成績には関係無かったとか。
 でもさ、F組のみんなと学習して来て感じたのは、塾に通っていた人ほど、受け身の学習だったみたいな気がするの。」
「そうね、チーム哲平でも話題になったことが有ってね、省吾さまは沢山の知識を教えて貰った訳でなく自力で身に着けた訳でしょ。
 知識とは少し違う、考える環境として周りの大人達の力は借りたとしても。
 教えて下さいというスタンスと自分から知識に向かって行くのとでは大きく違う、新プロジェクトの先輩方も、自分から知識を求めようと思わせるコンテンツを作りたいと話していてね。」
「それに成功したら塾はお客さんを減らす事になるのかな。」
「そもそも何の為に学習するのかを考えたら、私達に塾はいらないのよね。
 学校が有れば充分なのだけど、学校の教師にはムラが有るし生徒との相性も、その点ネット上なら対面式授業のメリットはないけど、好きな先生の授業を閲覧出来る。
 先輩に紹介されたチャンネルの授業はトークが面白くて、高二の内容だったのだけど、自分でも調べてね、多分その範囲のテストならもうかなりの点を取れると思うわ。」
「へ~、私にも教えて…。」

 梨乃には検索ワードを教えた。
 新プロジェクトの先輩方は、私達が省吾さまと出会った事によって、より自由で中身の濃い学習が出来ていると評価し、これから構築して行くシステムを通して、学習に対しての自由を問いかけて行きたいと話してくれた。
 自分に意欲とパソコンが有れば、学校が無くても学習出来る、そんな環境を充実させて行きたいとも。
 大学を卒業し就職したとしても、そこで学ばなければならない事は少なくないそうで。
 自分から、それに向かって行ける人と、受け身の人がいるのならば、私は自分から向かって行ける大人になりたいと思っている。
 動画撮影に参加する事は私にとっての挑戦、決心して、もやもやしてた気分が吹き飛んだが、実際に撮影が始まるのは暫く先。
 それまでは話し方のトレーニングとダンス、番組のオープニングでは極僅か、エンディングには気分次第でそれなりに私のダンスシーンが入る予定、曲を指定して貰ってるから冬休みを利用して踊りの形は作っておこうと思っている。
 来年も充実した年にする為に、私なりに出来る事を精一杯やって行きたい。
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河西哲平-06 [F組三国志-07]

 大晦日。

「静、この一年と言うか、高校生になってから色々有ったな。」
「ええ、哲平さんと出会えて…、四月頃の自分が嘘のようです。」
「はは、嘘だったのさ、好きな事を思いっきり出来なくて。」
「ですね、今はとても充実しています。」
「やっぱF組三国志で盛り上がったことが大きかったな。」
「はい、他のクラスを巻き込んで戦国時代に突入しましたが、みんなで学習に取り組むという事が楽しいだなんて、省吾さまのアドバイスがなかったら一生気付かなかったと思います。」
「うん、C組の子も感動してたよ、始めは単なるグループ学習ぐらいにしか考えて無かったそうでね、でも、最大のポイントは如何にして学習に対するモチベーションを上げて行くかだろ。
 師匠に教えて貰って数学が楽しくなったし、学習にゲーム性を思いっきり取り入れたから、如何に効率良く高得点を叩き出すかの勝負で盛り上がってるもんな。」
「テストの団体戦だけでなく、個人の成績でも競い合い、更に数学バトルや化学バトルも。
 単に問題を解いて高得点を競い合うだけでなく、チーム赤澤切っ掛けで社会問題にも目を向ける様になって、私達程真面目な話題で盛り上がれる高校一年生はあまりいないでしょう。」
「だよな、本当に色々考え、自分の成長を感じてるよ、大人に向かって。」
「法律上、哲平さんはまだ結婚出来ないですけどね。」
「それでも…、静のご両親に認めて頂いて。」
「ふふ、お父さまは少し急ぎ過ぎてる気がします、省吾さまと美咲さまに影響されたのだと思いますが。」
「師匠達が結婚までの話を真面目に表明してくれたからな、F組で成立しているカップルが、恋愛観や結婚観を共有している事も含めて。」
「嬉しかったです、私は哲平さんに付き合おうと言って頂いて凄く嬉しかったのですが、哲平さんは人気者ですので不安も有りました。
 でも、嶋さんや黒川さん達とも話す中で、無理なくカップルとして長続きする付き合い方を、そうですね第三者の視点でも考えられる様になった事で、哲平さんに負担を掛けず、共に歩んで行けると思っています。」
「そうだな、美男美女のカップルは別れるだの、俺が浮気するだの言って来る奴はいるが、互いに尊重し合い、すれ違わない様に気を付けていれば、離婚しないカップルになれる。
 島や淳一とも、ずっと家族ぐるみでの付き合いとなれたら最高だよな。」
「はい、そんなカップルがこれからも増えて行きそうですね、他のクラスの方々も含めて。」
「美咲さまがF組三国志の拡大に向けて、二年生になったら同じクラスになるかも知れないし、同じ高校の一年生として一緒に学んで行きましょうと呼びかけたからな。
 今は百人ぐらいだけど、これから更に増やし、二年生になったら学年の六割ぐらいは参加してくれるだろう。」
「チームが増えても大丈夫そうですものね。
 他クラスから参加してくれてる人達は意欲的で真面目な人ばかり、今は十チームでも分裂再編を繰り返しながら拡大して行けそうな人材は揃っています。
 この高校でなかったら難しかったかも知れませんが。」
「そうだよな、二年生の人達からもチーム赤澤に登録する人が増え始め、一月からは戦国大名の野望と銘打って、テスト団体戦を始めるとか、理系と文系に分けるかどうかは検討中だそうだ。」
「大学受験を意識するとまた違った展開も考えないと行けないのですね。
 最後の勝負は大学入試になるのかしら。」
「高校は三年生までだけど、師匠は人として協力し合ったり競い合ったり、大学生や社会人を含めて楽しめる、そうだな、挫折した時は仲間として手を差し伸べる、そんな事を話してたよ。」
「それって…、そうか、チーム赤澤として描いてるのは仲間として、前に話してた人類が皆、仲間だったら、に繋がって行くのですね。
 壮大な構想…、F組三国志は壮大な構想の第一歩だったのかしら。」
「普通の人間なら無理だと言って済ませてしまうことでも、彼の場合、直ぐには無理でも一歩歩みだしてみれば何かが見えて来る、だもんな。
 一番尊敬出来る師匠が同い年だなんて不思議な感じだよ。」
「皆さんが、省吾さまと美咲さまを中心に共に歩んで行こうと考えて下さったら、きっと社会は良い方向へ向かうと思います。」
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河西哲平-07 [F組三国志-07]

 正月。

「哲平、婚約の話は進んでいるのだから、私のことはお義父さんと呼んでくれて構わないぞ。」
「はい、お義父さん。」
「ホントは酒を勧めたい所なのだがチーム赤澤は注目を集めている、省吾リーダーからも些細な違法行為に気を付けて欲しいとのお達しが有ったからな。」
「ですね、自分達はチームの中でも目立っていますので軽はずみな事は出来ません。」
「高校一年生としては息苦しく無いのか?」
「初めから違法行為をする気は有りません、ちょっと悪いぐらいがモテるとか言う人もいますが間に合ってますし。」
「チームの中では爽やかイケメン担当、言い寄ってくる女は多いのだろ?」
「省吾リーダーを見習い、静と行動を共にしています、中学生の頃から告られる事が多かったのですが、相手を傷つけずに上手く断るのが難しくて結構ストレスだったのですよ。
 今は静といる時間が長いので、告られる事が無くなり落ち着きました。」
「はは、そういうものなのか。
 それでだな、年も改まったところで相談なのだが。」
「はい。」
「忙しい事は分かってるから少しづつで構わないのだが今年は会社の事も学んでみないか。
 嶋さんは息子に家業を教え始めてるだろ。」
「そうですね、それは省吾リーダーからも言われてまして、将来会社を任せて頂ける可能性が高いので有れば、それに向けて何を学ぶ必要が有るのか今から考え、学ぶ事は意義深いと思っています。
 静が安心して創作活動に取り組める環境を維持して行きたいですし。」
「では、具体的な話はうちの総務と相談と言うことで頼むな。」
「はい。」
「チーム赤澤のプロジェクトはどうしてる?」
「プロジェクトFだけにしていましたが、そういう話で有れば、プロジェクト嶋にも参加するべきですですね。」
「そうだな、企業活動の実情を高校では全く教えていないと、省吾リーダーが指摘していた。
 嶋さんも気にはして見えるのだが…、プロジェクト嶋とは違う視点、高校生に企業活動を教える様なプロジェクトを立ち上げられないか?」
「その活動の一環として、お義父さんの会社について学ぶということですね。
 それなら相談して…、総務の方の助言を受ける事は可能でしょうか?」
「勿論だ、哲平には我が社の特別研修生とか…、そこから見習社員、高校生社員となり係長課長と上り詰めて行くってどうだ、大学へ遊びに行きながらで構わない。」
「大学って遊びに行くところなのですか?」
「まあ、ついでに人脈を築いても良いのだが、そっちはチーム赤澤で進めて行けば良いだろう。
 遊ぶ事も必要だ、まあ、女遊びは程ほどにしとかないと静の機嫌が悪くなると思うが。」
「気を付けます、そういうプロジェクトですと既存のプロジェクトとの接点が多くなると思いますので、プロジェクトFのサブチーフを通して声を掛けて貰います。」
「サブチーフなのか?」
「こう言った事は、サブチーフの早川さんの方が適任なんです、省吾リーダーの記録係でも有りますから、チーム赤澤全体を把握していまして、経営学部辺りからプロジェクトリーダーを見つけてくれるでしょう。」
「なるほど、サブチーフに任せておけば安心なのだな。」
「自分で動き過ぎず適材適所、省吾リーダーは強力な石垣、人による城、を築いた事によって、自身は組織に多くの時間を取られ過ぎる事無く、美咲さまとの時間を大切に出来ています。
 チームとして動く時、ブラック企業みたいに個人に負担が掛かり過ぎては行けないのですよね。」
「その通りだ、うちの社員にも沢山抱え込みたがる奴がいてな、機会が有ったら指導してやってくれないか。」
「それは…。」
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河西哲平-08 [F組三国志-07]

 冬休みの最終日、チーム哲平の仲間が集まった。
 学習に取り組んだ後、話題は昨日発表された新会社設立についてとなる。

「哲平、新会社の発表が有ったけど、工房運営会社の一部門とかでは駄目だったのかな?」
「まずは資本面を分けると聞いた、新会社は政治関係のサイト構築で利益を出せるかどうか微妙、策は有るそうだけど、赤字が出た場合、それを工房の利益でカバーという事にはしたくないそうだよ。」
「プロジェクト嶋の管理会社も、やはり別会社としてスタートさせる計画が有るのよね。」
「まずは個別にスタート、将来的には持ち株会社の下に統合して行くかも知れないけど、今は会社同士が競い合うという意味合いを持たせて、黒字化と事業拡大を目指して行くんだ。」
「プロジェクト嶋の管理会社なんて知らなかったよ。」
「プロジェクトで進めている中小企業間の協力体制作りの事務作業を担うだけでなく、社長や従業員の高齢化で存続が危ぶまれる企業に将来性を見い出せたら、その管理もして行くそうだ。
 すでに、自社をチーム赤澤に託したいという高齢の社長もいるとかでね。」
「じゃあ、今回の発表は、その一部ということか。」
「ああ、政治団体立ち上げに向けてのサイトシステム構築は一番利益が見えにくいから、敢えて早めに発表したと聞いてる、実際には利益を出す様々な案が検討されれてるのだけどね。」
「哲平は、ラグビーやりながらチーム赤澤の仕事もこなしているのだろ、大丈夫なのか?」
「はは、俺は大した事してないよ、ある程度把握し要所要所で人にお願いするというのが役割だから。
 先輩方に言わせると、俺からお願いした方が事がスムーズに動くそうだ、特に対女性の場合は。」
「はは、爽やかイケメンパワーを活かしているという事か、確かに適役だな。」
「でも今後は、静の親父さんと相談して新たなプロジェクト立ち上げを考えてるから、プロジェクトFの作業は控えめにしようと考えている。」
「そのプロジェクトに哲平がシフトして、プロジェクトFの方は大丈夫なのか?」
「プロジェクトFは俺がいなくても問題なく進む。
 チーム赤澤の拡大を考えたら俺がやらない方が良い事も少なく無いんだ。」
「あっ、組織論なのね、え~っと経験者を増やして行くという事かしら。」
「C組からの参加で手伝ってくれてる人がいるから、その人を後任にと考えてるよ。」
「哲平なら多少作業が増えても問題なくこなしそうだがな。」
「それじゃあダメでしょ、リーダーが雑事を抱え込んだら負けなのだから。」
「そういう事、お願いして任せられる人がいるのだから、そこはお任せして俺は静との時間を大切にするんだ。」
「ねえ、婚約は確定なの?」
「ああ、何の問題もない、俺は親父さんの会社について学ばせて貰う。」
「大学はどうするの?」
「親父さんは遊びに行く感覚で構わないと言って下さってるが、これから会社について学ぶ中で必要だと感じた事と向き合える大学に行くつもり。」
「静は?」
「地元の美大を目指しますが、個性を出して行くのが芸術家では有りませんか。
 人と同じ講義を受ける意味が有るのかは微妙だと思っています、参考にはなるのしょうが。
 私は主婦をしながら絵を描いて行くと言う形を考えていまして。」
「静には、画家としての無難な成功を考え小さくまとまるぐらいなら、売れない画家で構わないと話してるんだ、俺は今のままの作風が好きだからね。」
「本の表紙を飾った美咲さまの絵はホントに素敵だったわ、美咲さまの内面まで伝わって来る様で、ある意味、すでにプロなのよね、あの絵の原画は見られないの?」
「赤澤家のリビングに飾られているよ、今までの感謝の気持ちを込めて贈らせて貰ったんだ。」
「それなら、機会が有れば見せて頂けるのね。
 ねえ、静、新作には取り組んでいるの?」
「哲平さんと相談し、新プロジェクトで私の絵を使って頂く方向で考えていまして…。」
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河西哲平-09 [F組三国志-07]

 プロジェクト哲平の立ち上がりは早かった。
 静と練った基本構想をプロジェクト参加希望者に伝えた所、一気に準備が進み、二月には撮影が始まった。
 自分が企業活動について学ぶ姿を映像で伝えるというスタイルにしたのだが、動画や写真だけでなく静の絵を入れることで個性的なスタイルになっている。

「いきなり一本目の動画で哲平と静の婚約発表だなんて、視聴者をがっかりさせる内容で良かったの?」
「麻里子、独身だと思い憧れ続けていた人が実は結婚してました、と言うよりはうんとマシだろ。
 スタッフの女性達は、高校生が結婚について考える機会となる様、意識していたし、どういう経緯で自分が企業活動について学ぶ事になったのかを紹介しておいた方が分かり易いからね。」
「プロジェクト哲平のスタッフは、ほとんどが女性なのでしょ、婚約の噂は広がってたと思うのだけど、哲平の人気は相変わらずなのね。」
「いやいや、映像作品の制作に興味の有る人は多いし、これから充実させて行くネット上の映像作品はYouTube関連だけでも多数の企画が同時進行していて互いに協力して行く事になるから、うちの専属という人は少なくてね。
 リーダーはプロジェクト嶋との関係の深い人で、別の会社を紹介する形でもコンテンツを増やして行く予定なんだ。
 チーム赤澤の各プロジェクトは様々な形で関係しているから色々協力し合って行く事になる。」
「高校生が企業活動について学びながら紹介して行く、真面目な内容で視聴数は伸びるのかしら?」
「そこはゲストにイケメンや美女を迎えながらとなるからね、宣伝もするし。」
「静も出演して行くの?」
「私は人前で話すのが苦手ですので、画面に登場しても哲平さんの隣で頷くぐらい、後は絵で映像の雰囲気を柔らかくして行こうかと、麻里子は冴えない男性中心にファンが多いのですからゲスト出演をお願いしますね。」
「もう、静は穏やかな口調で人が気にしてるとこを突いて来るんだから…、今年こそは頼れる彼氏を作るつもりだからね。」
「私達の作品だけでなく、これから制作されて行く膨大な作品を利用して、自己アピールを考えてる人は多いです、麻里子もアピールして下さい。」
「まあ、麻里子がアピールすると、冴えない男性ファンが更に増えるとは思うがね。」
「哲平…。」
「良いじゃないか、麻里子は頼れる女性だと言う事だよ。」
「なんかな~、ねえ、それより政治関係で立ち上がった新会社の事はどれぐらい聞いてる?
 ネクスト・キャビネットプロジェクトがまとめた、新党の方針原案を発表して行くのでしょ。」
「ああ、サイトのデザイン担当から静に絵の依頼が有ったついでに少し情報を貰ったよ。
 政治は幅広い事と向かい合ってるだろ、社会の様々な問題をデータベースにしながら検討し、新党の方針を明確にして行く、その為に原案を掘り下げて行く討論の場を構築中だそうだ。
 その参考資料として動画もどんどん上げて行く。」
「それで、会社としての経営は成り立つの?」
「新会社設立を発表してから立ち上げたYouTubeチャンネルでは、師匠と美咲さまがチーム赤澤について語る動画が百万再生を越えたし、登録者数はあっという間に十万人突破だろ。
 まだ政治団体すら立ち上がってないが興味を持ってる人は多い、だから広告収入が見込める、ただそれだけでは心許ないから、趣味の仲間が集まるサイトの企画運営や、グッズ販売を視野に入れてるそうだ。」
「プロジェクト哲平でも広告収入を見込んでいるのよね。」
「静の親父さんがスポンサーだから資金的に問題は無いのだが、営利企業について学んで行くのが一番の目的だろ、師匠達の動画ほどには稼げなくても、それなりにはな。」
「内容と演出、それと宣伝かしら、この先何本も動画制作をして行くのなら、演出を工夫したいわね。」
「ああ、協力頼むよ、麻里子にはゲストと言わずレギュラー出演者となって欲しいぐらいだ。」
「そして冴えない男性視聴者を増やして行くのですね、哲平さん。」
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河西哲平-10 [F組三国志-07]

 プロジェクト哲平でスタートさせたのは、自分達が企業活動について教えられながら会社の紹介をして行くと言うYouTubeチャンネル、チーム赤澤に注目が集まっていると言う事情も有り、当初想定していた以上の視聴回数、チャンネル登録者数となっている。
 それに伴い、自社を取り上げて欲しいという依頼が増えつつ有り、今後の展開を検討中。
 自分も意見や希望を出すが、プロジェクトメンバーが株式会社の立ち上げを見据えながら進めてくれている。

「プロジェクト哲平は利益が出せそうなのか?」
「多分な、会社を立ち上げて企業を紹介するネット向けCM映像の制作を請け負って行く方向でね。
 YouTubeからの報酬以外に収入が得られるのだから安心だろ。
 静の親父さんも乗り気で設備投資の話をしている、動画作品の制作はチーム赤澤でも活動の柱になって行くからな。
 プロに依頼しても良いのだがアマチュアがプロになって行く過程を記録して行くのが良いし、チーム赤澤の構想では撮影クルーが幾つ有っても足りなくなるだろ。
 まず、うちでスタジオを確保し撮影クルーを育てながら、他のクルーを援助して行く体制を整えて行く方向なんだ。」
「スタジオを確保とは随分強気なんだな。」
「これまで制作した作品は現場ロケだけで無くスタジオを借りての撮影もした、費用を掛けてクオリティを高くしたが、それだけの反響が有ったんだ、親父さんの会社に対しても取引の話や就職希望者とかね、クオリティーが低かったらCM制作の依頼は来なかったと思うし、その辺りは親父さんの思惑が当たったという事だな。」
「ここまでの動画にはそういう効果も有ったという事か。」
「高校生向けに企業活動を紹介という形を取っていても、色々な人が見てると分かったよ。」
「まあ、俺たちは目立っているからな。」
「なあ、CDは売れているが淳一の貯金は増えたのか?」
「それなりにね、一応結婚資金としての貯蓄と、株式投資を考えてる。」
「株か…。」
「貯蓄はローリスクだが、低金利の今は無意味に資金を眠らせて置く様なものだろ。
 安定した配当を見込める株と、ハイリスクハイリターンな株を購入するつもりで研究を始めたよ。」
「ついこの間まで株の事なんて全く分からなかったな。」
「だよな、親が寄付感覚で工房プロジェクトが立ち上げた株式会社の株を手にした事から色々学ぶことに、実際にお金の動きを見せて貰い説明して貰った事で、意味不明だった株のことが見えて来たところなんだ。」
「実際に体験することの価値か…、親父さんは新会社の社長を俺に任せて経験を積ませるつもりでさ。
 師匠から組織論とかを教えられてなかったらビビッて断っていたかも知れない。」
「省吾さまのお蔭で堂々と受け答え出来た訳だ。」
「ああ、社長が忙しい会社は伸びないのだろ、優秀な部下に当ては有るから何とかなるし、場合によっては自分が会長になって社長は大学生に任せるという手も有る。
 高校は普通に卒業したいし、ラグビーも続けて行きたいからな。」
「さすが哲平だ、その辺りのバランス感覚は見習いたいよ。」
「そういう淳一だって、亜美との結婚を見据えて色々考えてるのだろ。」
「まあな。」
「やはり音楽家として亜美と共に歩んで行くのか?」
「CDは出させて貰ったが、チェロを生活のメインにする事は考えていないんだ。
 演奏は人に褒めて貰っているが、楽器に引っ張って貰っての事だからね。」
「どういう事なんだ?」
「実家のピアノを亜美が弾き、ひい爺さまの使ってたチェロを俺が弾く、その時の演奏は最高なのだが、違うパターンだと全然納得の行く演奏が出来ないんだ。
 実家のピアノは動かしたくないから、もう外での演奏に興味はなくてね。」
「最高の生演奏は極少数の人しか味わえないという事か…。」
「実家での演奏録音にCDやDVDでの需要が有れば続けて行くが、メインの活動にはしない。」
「亜美は納得してるのか?」
「亜美の方が強く感じてるのさ、沢山の拍手を頂いたチーム赤澤設立総会での演奏を経験してからね。」
「あれは凄く良い演奏だったと思うが。」
「いや、ピアノが違ったから、CD録音の時とは比べ物にならないくらい残念な出来だったと亜美は思ってる、まあ、亜美だってピアニストを目指してた訳ではないからね。」
「では、将来はどうするつもりなんだ?」
「大学二年生の終わりまでに株取引を極められなかったら、親戚が経営してる会社に就職するよ。」
「第一志望はデイトレーダーなのか?」
「いや、株取引に縛られたくは無いとも考えてる、そこそこ稼げたら…、まあ亜美と考えてる所だよ。
 株取引で利益を上げるには、広い視野を持って世間を見渡すと共に、人の心理を考える必要が有る。
 今回ハイリスクな銘柄に投資するのは百万だけ、その資金を増やせるかどうかで、その後の方針は変わって行く事になる。」
「百万だけって…、それは貯蓄の何割なんだ?」
「今だと二割ぐらいかな。」
「それだけCDで稼いだって事なのか?」
「いや、自分名義の貯金が有り、その使い道を親とも相談してね、親父は失敗を恐れず、まずは百万を投資してみろって。」
「へ~。」
「チーム赤澤の影響を受けているんだよ、自力で調べ研究した上で判断、という実践を経験する事は学校の教科書からは得られないからとね。
 自分としては親の力を借りずに亜美と結婚し、安定した生活を送って行きたいと言う純粋な動機が有る訳でさ。」
「そうだよな、俺の場合は婿養子だろ、金銭的な心配はいらないと言われているが、何らかの実績を見せて行かないと、将来的に肩身が狭くなると思っているんだ。」
「はは、大丈夫だよ、静だけでなく親父さんも哲平にぞっこんなのだろ。」
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河西哲平-11 [F組三国志-07]

 F組三国志から拡大する形で始まった戦国時代、テスト団体戦への参加者は増え十二チームに拡大したが思っていたほど混乱する事無く、参加者の意識改革を進めている。
 単に学力を高める為では無いという姿勢に戸惑う人はいたが、論理的に説明されて納得出来ないレベルの人では、この高校に合格出来はしない。
 大学合格をゴールと考えてた人もいたのだが、大学で何を学び研究するのか、その先に就職が有り労働が有るという事を意識し始めると、今までの価値観が自然と変わって行く。
 就職に有利だからと言う理由で大学を選ぶ、それは自然な事だったのかも知れないが、大学の存在意義は本来そこでは無い。
 F組以外からの参加者達も、自分の力を発揮し充実した人生送る、その為の準備期間で有る高校生活を充実したものにして行こうと考え、視野を広げ、社会の一員として…。

「哲平くん、意識調査の結果が出たわよ。」
「どうです、変化は有りましたか?」
「戦国時代を戦ってる生徒は参加前と大きく変わって来てるわよ、参加前はF組三国志を単なる集団学習だと捉えていた人が多かったみたい、調査の過程でカルチャーショックと言う表現が結構出てたの。」
「だろうな、俺たちだって省吾リーダーの言葉は戸惑いつつ理解して行ったと言う感じだったから。」
「私達大学生も、漠然と卒業して就職と考えてた人が多かったみたいで、省吾リーダーの言葉に考えされて…、教職課程を終え教師になったとしても、リーダーがF組三国志で上げた実績以上の事を出来る人は皆無でしょ。
 今の学校教育では、主体的に学ぶという事を教えられていないのではと、自分達の経験を通して考え始めてね。
 省吾リーダーが大学に来てくれ、熱く語り合う中で…、弟より年下のリーダーに憧れというか、美咲さんが美人過ぎて…。」
「はは、色々葛藤が有ったのですね、でも、美咲さまは外見が綺麗なだけでは無いという事ですよね?」
「美人は性格が悪くないと、私達には付け入るスキがないわ。
 そんな残念な話より、二年生への進級で学習の団体戦はどうなって行くの?」
「概ね予定通りですよ、各チームは新たなメンバーを迎え入れつつ再編成、チームに属さず一匹狼として対戦して行きたいと言う要望を受け入れながらです。」
「どう、バトルは盛り上がった?」
「勿論です、定期テストに出そうな問題を必死に解く人達の様子は、スポーツ実況を見るのと同じ感覚で面白いかったですが、そこで戦われてる内容はそのまま自分の学習に繋がるのですよ。
 試合を見てれば自分の理解度も確認出来、選手に勝つことをイメージしながら定期テストと向き合えます。
 数学バトルではモニター観客席から、解けたって叫び声が上がるぐらいでした。」
「勉強が完全にゲームになったという感覚なのかしら。」
「クイズ番組の変形ですからね、工学部の人達が構築してくれたシステムはなかなかのものです。
 一部を修正したら、バトルの模様をYouTubeで公開して行きます。
 クイズ大会の感覚で様々なバトルが繰り広げられて行くでしょう。」
「そうなって来ると、本当の敵だった筈の全国の進学校にも良い刺激を与える事になるのでは?」
「省吾リーダーは敵を海外の有名大学にしましたからね。
 単にバトルを国内に広げて行くだけでなく、そこからチーム赤澤の主張を広げて行く事を考えています。
 日本人の学力向上だけを考えているのではなく、総合力を高めて行く、その為の第一段階としてのバトル、階級制を取り入れれば誰でも参加出来ます。」
「始めてF組三国志の話を聞かされた時も驚いたけど、そこまで進化とわね。
 教科内容によるゲーム感覚のバトルが日本中に広がったら、教育に対する考え方にも影響を与えそうな気がするわ。」

 F組三国志で行って来た学習のゲーム化はまだまだ進化しつつある。
 小論文の判定は全国の視聴者に投票して貰うとか、バトル後は選手たちの将来に対する夢を語って貰うとか。
 日本中の高校生が戦国バトルに挑戦する様になったら、今度は各地の高校生同士が協力し合って社会問題に取り組むとか。
 そんな活動を通して、我らが省吾リーダー立場を高めて行けたらとチーム赤澤のメンバーは考えているのだ。
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