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河西哲平-10 [F組三国志-07]

 プロジェクト哲平でスタートさせたのは、自分達が企業活動について教えられながら会社の紹介をして行くと言うYouTubeチャンネル、チーム赤澤に注目が集まっていると言う事情も有り、当初想定していた以上の視聴回数、チャンネル登録者数となっている。
 それに伴い、自社を取り上げて欲しいという依頼が増えつつ有り、今後の展開を検討中。
 自分も意見や希望を出すが、プロジェクトメンバーが株式会社の立ち上げを見据えながら進めてくれている。

「プロジェクト哲平は利益が出せそうなのか?」
「多分な、会社を立ち上げて企業を紹介するネット向けCM映像の制作を請け負って行く方向でね。
 YouTubeからの報酬以外に収入が得られるのだから安心だろ。
 静の親父さんも乗り気で設備投資の話をしている、動画作品の制作はチーム赤澤でも活動の柱になって行くからな。
 プロに依頼しても良いのだがアマチュアがプロになって行く過程を記録して行くのが良いし、チーム赤澤の構想では撮影クルーが幾つ有っても足りなくなるだろ。
 まず、うちでスタジオを確保し撮影クルーを育てながら、他のクルーを援助して行く体制を整えて行く方向なんだ。」
「スタジオを確保とは随分強気なんだな。」
「これまで制作した作品は現場ロケだけで無くスタジオを借りての撮影もした、費用を掛けてクオリティを高くしたが、それだけの反響が有ったんだ、親父さんの会社に対しても取引の話や就職希望者とかね、クオリティーが低かったらCM制作の依頼は来なかったと思うし、その辺りは親父さんの思惑が当たったという事だな。」
「ここまでの動画にはそういう効果も有ったという事か。」
「高校生向けに企業活動を紹介という形を取っていても、色々な人が見てると分かったよ。」
「まあ、俺たちは目立っているからな。」
「なあ、CDは売れているが淳一の貯金は増えたのか?」
「それなりにね、一応結婚資金としての貯蓄と、株式投資を考えてる。」
「株か…。」
「貯蓄はローリスクだが、低金利の今は無意味に資金を眠らせて置く様なものだろ。
 安定した配当を見込める株と、ハイリスクハイリターンな株を購入するつもりで研究を始めたよ。」
「ついこの間まで株の事なんて全く分からなかったな。」
「だよな、親が寄付感覚で工房プロジェクトが立ち上げた株式会社の株を手にした事から色々学ぶことに、実際にお金の動きを見せて貰い説明して貰った事で、意味不明だった株のことが見えて来たところなんだ。」
「実際に体験することの価値か…、親父さんは新会社の社長を俺に任せて経験を積ませるつもりでさ。
 師匠から組織論とかを教えられてなかったらビビッて断っていたかも知れない。」
「省吾さまのお蔭で堂々と受け答え出来た訳だ。」
「ああ、社長が忙しい会社は伸びないのだろ、優秀な部下に当ては有るから何とかなるし、場合によっては自分が会長になって社長は大学生に任せるという手も有る。
 高校は普通に卒業したいし、ラグビーも続けて行きたいからな。」
「さすが哲平だ、その辺りのバランス感覚は見習いたいよ。」
「そういう淳一だって、亜美との結婚を見据えて色々考えてるのだろ。」
「まあな。」
「やはり音楽家として亜美と共に歩んで行くのか?」
「CDは出させて貰ったが、チェロを生活のメインにする事は考えていないんだ。
 演奏は人に褒めて貰っているが、楽器に引っ張って貰っての事だからね。」
「どういう事なんだ?」
「実家のピアノを亜美が弾き、ひい爺さまの使ってたチェロを俺が弾く、その時の演奏は最高なのだが、違うパターンだと全然納得の行く演奏が出来ないんだ。
 実家のピアノは動かしたくないから、もう外での演奏に興味はなくてね。」
「最高の生演奏は極少数の人しか味わえないという事か…。」
「実家での演奏録音にCDやDVDでの需要が有れば続けて行くが、メインの活動にはしない。」
「亜美は納得してるのか?」
「亜美の方が強く感じてるのさ、沢山の拍手を頂いたチーム赤澤設立総会での演奏を経験してからね。」
「あれは凄く良い演奏だったと思うが。」
「いや、ピアノが違ったから、CD録音の時とは比べ物にならないくらい残念な出来だったと亜美は思ってる、まあ、亜美だってピアニストを目指してた訳ではないからね。」
「では、将来はどうするつもりなんだ?」
「大学二年生の終わりまでに株取引を極められなかったら、親戚が経営してる会社に就職するよ。」
「第一志望はデイトレーダーなのか?」
「いや、株取引に縛られたくは無いとも考えてる、そこそこ稼げたら…、まあ亜美と考えてる所だよ。
 株取引で利益を上げるには、広い視野を持って世間を見渡すと共に、人の心理を考える必要が有る。
 今回ハイリスクな銘柄に投資するのは百万だけ、その資金を増やせるかどうかで、その後の方針は変わって行く事になる。」
「百万だけって…、それは貯蓄の何割なんだ?」
「今だと二割ぐらいかな。」
「それだけCDで稼いだって事なのか?」
「いや、自分名義の貯金が有り、その使い道を親とも相談してね、親父は失敗を恐れず、まずは百万を投資してみろって。」
「へ~。」
「チーム赤澤の影響を受けているんだよ、自力で調べ研究した上で判断、という実践を経験する事は学校の教科書からは得られないからとね。
 自分としては親の力を借りずに亜美と結婚し、安定した生活を送って行きたいと言う純粋な動機が有る訳でさ。」
「そうだよな、俺の場合は婿養子だろ、金銭的な心配はいらないと言われているが、何らかの実績を見せて行かないと、将来的に肩身が狭くなると思っているんだ。」
「はは、大丈夫だよ、静だけでなく親父さんも哲平にぞっこんなのだろ。」
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