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鈴木正信-06 [F組三国志-07]

「ねえ、私達が記者会見に出てる間、プロジェクトFはどんなだったの?」
「私はF組三国志からの拡大に関するグループに参加してたのだけど、F組での取り組みが学年全体に上手く広がるかどうか検討というか、ね、淳一くん。」
「学年の大半が参加するとの予測は有るが、まだ制限してるし不確定要素も有る。
 人の心理をどう読むか、素直に省吾さまと共に歩こうと思わない人がいても不思議ではないとか。
 まあ、番組制作スタッフがチーム赤澤の紹介番組をどう作り上げてくれるかによって変わるだろうから、拡大作業を続けながら次のステージへの準備を進めておくしかない。
 今日は、それを効率良く進めて行く作戦を練ってたという感じかな。」
「二年生になってから形を固めて行けば良いのだから焦る必要はないさ。」
「でも学校側としては来年の一年生も視野に入れているのでしょ。」
「その頃までにはチーム赤澤の考えが広まってる様にするさ、プロジェクトFメンバーが何とかしてくれるよ。」
「テレビ番組の宣伝効果に期待するのね…、ねえ、本の発売日は確定したの?」
「テレビ放送のタイミングに合わせるそうだ、番組を見てすぐ注文出来たり本屋で買えるのが理想だろ。
 ただ、どれぐらい売れるかは予測不能、チーム赤澤のメンバー増加率を見て初版は少し多めにするとは聞いているけどね。」
「二冊目や三冊目も進んでいるって聞いたけど。」
「ああ、三冊目が校閲に入った所だよ。」
「そんなに簡単に書けるものなの、本って。」
「中学生の頃から、親父に見て貰って大学の卒業論文を書くつもりで考えをまとめて来たからね。
 早めに作っておけば大学四年になって焦らなくて済むだろ。」
「早めにね…」
「論文として書いて来たものを、出版社の編集と相談しながら表現を柔らかくし、まとめ直すのに時間は掛からなかったよ、校閲が入るという安心感も有ったのだが、美咲と麻里子にチェックして貰ったからか校閲も簡単に済んでね。」
「チェックと言っても私が直す所なんてほとんど無かった、でも出版社の見学をさせて貰えてラッキーだったわ。
 高校生目線ということで雑誌に関わらせて貰う事にもなったし。」
「へ~、麻里子は夢に向かって一歩前進したのか。」
「参考資料と言うことでF組通信や遠足のまとめとかも編集部に渡したからね。
 因みに本の表紙とかには静の絵を採用して貰った、表紙のモデルは美咲なんだ。」
「身内で固めたのか。」
「チーム赤澤メンバーに喜んで貰えるし、静はその報酬で新会社の株主になってくれるからね。」
「沢山売れると良いけど、美咲さまの感触はどう?」
「高校一年生が真面目な大学生達のリーダーになった、と言うのが一つのキャッチコピーなのだけど、一冊目は大学生がチーム赤澤に参加したくなる様な内容なの、チーム赤澤が目指していることを大まかに紹介しつつ、大学生に何が出来るのか、という問い掛けもなされていてね。
 うちの両親にも目を通して貰ったけど、改めて省吾のファンになったと話してたわ。」
「二冊目以降は?」
「一冊目で問題提起した各項目について踏み込んで行く形、一冊目よりは難しいけど、高校生にも読んで欲しいかな。」
「本が売れたらチーム赤澤はメンバーを増やすことになるだろうし、メンバーが増えれば本は売れる。
 省吾さま、これは儲かりそうですね。」
「捕らぬ狸の皮算用とならなければ良いが、半分はチーム赤澤に半分は美咲との結婚費用にと考えている、まあ、どちらも直ぐに大金が必要という訳ではないから、売れなくても困らないけどね。」
「いやいや沢山売って、そうだな十万冊突破記念パーティーとかやりましょうよ、費用は出版社持ちで。」
「十万部か…、二冊目以降は兎も角、一冊目が何冊売れるかでチーム赤澤の勢いが分かると考えていてさ、それは大学生達も意識しているみたいだから、口コミで広げてくれると思う、本は知人をチーム赤澤に誘う手段でも有るからね、でも、十万部までは難しいかも。」
「省吾、弱気じゃだめよ、みんな、省吾と私の家は友人を呼べる広さにしたいから協力お願いね。」
「美咲さまに言われなくても、父さんは会社の人に広めると話していて、我が家の目標は最低二十冊、本の内容とテレビ番組の内容によってはそれに上乗せするのよ。」
「うちは取り敢えず百冊だとか、省吾リーダー、うちの父でさえ百冊なのだから、社長さん達はそれなりに期待出来るのでしょ。」
「もうすぐ中小企業の社長が百人を越えるとは言え、チーム赤澤の事を全く知らない人が手に取ってくれないとな…。」
「テレビ番組って全国放送でしょ、そうね、省吾さまと美咲さまの新居には広いリビング、ホームパーティーを開き易い様にして、静の絵を飾り…、その絵に合わせたデザインは私に考えさせてね。」
「それだけ売れると考えてるのか?」
「当たり前でしょ、チーム赤澤がこの国に一石を投じるのよ。
 ねえ、百万部売れたら大きな家だって買えるよね?」
「どうかな、考えてるエリアは結構土地が高くてさ。」
「そうなんだ、う~ん、私、土地を買って家を建てるというプロセスを研究してみようかな。」
「面白そうだな、自分には全然無関係だと思ってたけど、省吾さまの家という事なら…、それを通して社会の仕組みを知る事に繋がるね。」
「美咲さまはどの辺りに家を建てるおつもりで?」
「互いの実家から遠くない所、ほら、スープの冷めない距離って言うじゃない。」
「なるほど、それなら…。」

 遊びの要素が強そうでは有るが、一つのプロジェクトが立ち上がりそうだ。
 チームリーダーの家が人の集まれる環境というのは理想なのかも知れない。
 広い家となると億を超えるお金が必要になりそうだが、チーム赤澤のメンバーは勢い良く増加している。
 大学生だけでなく、F組メンバーの家族からも広がり、登録メンバーはすでに一万人を越え、大学生が中心だが、社長や大学教授も参加している組織。
 うちの親父はチームのサイトを見て活動が広がって行くのを確認するのが楽しいと話していた。
 理由を聞くと、今まで政治や社会問題に閉塞感を感じていたと言う。
 親父と政治や経済の話をする様になったのはチーム赤澤のお蔭だ、身近に自分の視野を広げてくれる存在がいたのに、それを全く意識していなかったと気付いたが、親父も省吾リーダーの考えに触れるまでは考えていなかったと話してくれた。
 まあ、兎にも角にも今は自分に出来ることを見つけないと、そう自分に思わせてくれたチーム赤澤設立総会は無事に終了した。
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