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近衛予備隊-381 [高校生バトル-81]

「十代の子が医療に携らなくてはならない程、医療環境が悪いのか?」
「ええ、怪我の治療がいい加減で障害を持つことになる人が普通にいます。」
「総合病院はここにしか有りませんので、海外からボランティア的に来て下さってる医療チームのいないエリアでは、治療と称して怪しげなことをする連中に頼るしかないのです。」
「ここの総合病院では受け付けられないと?」
「今は、観光客と我々の企業グループ従業員だけで手一杯ですね。」
「確かに人数を考えたら無理が有りそうだな。」
「看護実習生と医療実習生がいなかったら回っていませんが、それもこの国が教育を軽んじて来た結果なのですよ。」
「それで医療実習生の評判はどうなんだ?」
「悪くないです、患者が医師と話せる時間は短いですが、実習生は色々聞いてくれますからね。
 医師は実習生が患者の精神的な負担を和らげていると話してくれました。」
「実習生が患者の死に直面することはないのか?」
「基本、治る見込みの無い患者は入院出来ませんし、事故で重傷の場合も現場の判断で助かりそうにない人は病院に搬送しませんので、実習生が患者の死を見ることは稀のようです。」
「何とか命を救おうと言う感じでは無いのだな。」
「心臓が動いていても寝たきりで意識の無い、そんな人の為の病院ではなく、病気や怪我で苦しんでいても、治れば元気に生活出来る人の為の病院だと聞いています。」
「そんな感覚は平均寿命が短いから生まれたのだろうか?」
「元々医者の少ない国でしたから、様々な理由で命を落とす人が多かったのです。
 日本人スタッフから疑問の声を聞き日本との違いを教えられましたが、殆ど死んでる人の為に手間と暇そしてお金を掛けるのは無駄だと、ここの医療に携わっている人達は認識していまして、そんな金が有ったら子どもの教育に使うべきだと言われています。」
「確かにそうかもな、殆ど死んでる人に延命処置、若い子になら兎も角それを老人に施すことにどれだけの意味が有るのか、う~ん…、日本には医療費の問題が有って、その辺りの意識改革を進める必要が有るのかも知れない。」
「日本で意識改革ですか?」
「日本にも色々社会問題が有り意識改革の必要は有るのだよ。」
「豊かな国で、そういったこととは無縁かと思っていました。」
「豊かさの影に低賃金労働が有り、一旦貧困状態に陥るとそこから抜け出しにくくなる。
 自分さえ良ければ良いと考える人が多くてバランスの悪い状態が拡大してしまったんだ。
 従業員の賃金を抑えることで、自分達の高給を維持していたりとね。」
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