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夏休み-82 [花鈴-09]

 八月になった頃。

「花鈴姫、ようやく大学の試験が終わって皆のんびり出来そうです。」
「えっ、徳沢さん達には竹林再生と言うミッションを差し上げたので、のんびりされても…。」
「いえいえ、ちゃんと取り組みますよ。
 作業は朝の涼しい時間帯に一時間程度と話して下さったのは姫では有りませんか。
 竹林再生に向けての準備はして来ましたので効率良く計画的にと考えています。
 まずは道路側から竹を間引き人が竹林内へ入れる様にする所から。
 慣れない人が多いので安全の為、足元の整備を優先して作業に取り組みますので時間は掛かるでしょうが、チェーンソーを使ってみたいと思ってる人達は、その使い方講習と安全研修をすぐに始めます。」
「そうね、怪我をしたら許さないから。」
「はい、消防団の知り合いに指導をお願いしましたが、第一に安全だと言われました。」
「そっか、徳沢さんの仲間も地元の人と交流するのね。」
「勿論です、サークルのメンバーにとっては田舎を知ることが目的の一つ、都会育ちの我々は過疎の問題を言葉でしか知らないからと呼びかけて集まった連中ですから、合宿生活を送りながら色々体験したいと考えています。」
「体験内容は具体的に決まったの?」
「消防団の人達からアドバイスを受けて幾つか、後は田中社長と相談中です。」
「我が社の活動を手伝ってくれるのかしら?」
「ええ、そのつもりですが、何かしらの見返りは有りますよね?」
「そうね、新たなミッションを差し上げましょうか?」
「新たなミッションって、労働を頂いても見返りにならないのですが。」
「ここでお金儲け出来る案を出してくれたら、それを会社が実行、利益が出たら合宿所の運営費を補助出来ると思うのだけど。」
「それなら皆と相談しますが、体験とは言え労働に対して分かり易い見返りは頂けないのですか?」
「私は徳沢さんに対して分かり易い見返りを求めたから、徳沢さんは動き易かったのだと思いません?
 見返りを求めないのが美徳だと考える人もいるでしょうが、良い形でギブアンドテイクを成立させるには互いの要求を明確に示した方が早いのですよ。
 何かしらの見返りと言われたら、私は徳沢さんの為に考えることが多くなってしまうのです。
 曖昧な要求では無く、具体的に要求することは大人として大切なことなの。」
「は、はい、自分が考え足らずでした、それも皆と相談してからお願いにあがります。」
「田中社長に話してくれて良いのよ、私から伝えておくから。」
「お願いします。」
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