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夏休み-87 [花鈴-09]

 田舎暮らしを体験しに来ている大学生達には野菜の収穫と販売と言う仕事を増やしてあげることに。
 藤田さんが学園祭のノリをさりげなく演出してくれたからか、皆さん楽しそうに作業している。
 収穫はあちこちの畑から少しずつ。
 畑のオーナーと交流しながらなのだが、つい自分達の食べる分まで学生にあげてしまったと、笑いながら話すお爺さんもいるそうだ。
 期間限定、夏野菜売り切れたらおしまいと書かれた看板には漫画チックな野菜の絵が描かれているからか、通り過ぎてから買うためにUターンして来る車が少なからず見られるとか。

「藤田さん売り上げはどうです?」
「思っていたより良いですね。
 元が商品作物では有りませんので形が悪かったりするのですが、面白い形の大根が有ったりしまして、スーパーで売ってる野菜より美味しい気がする、気がするだけかもと言いつつ三日連続で買いに来られた方もおられるのです。」
「成程、形を気にしないのなら野菜を作る面積を増やしてもそんなに負担ではないと聞いています。
 それを収穫し販売するには手間が掛かる訳ですが。
 中沢さんは見ていてどうでした?」
「自分は結構な量を集められたのに驚きましたが、それが殆ど売り切れることにも、早めに閉店しないと自分達が食べる分まで売れてしまうとかで、安くし過ぎない様、気を付けて価格設定をしたつもりなのですが、それがかえって良かったのかも知れません。
 自分で食べる為に育てた野菜と言うのを売りにしましたので、農薬を気にする人が喜んで買って行かれたと聞いています。」
「商品作物には無い良さが有るのかしら。
 一週間分の収支報告を協力して下さった方々全員に配るのは大変かもだけど、その辺りのこともお伝えして今後に繋げたいわね。」
「はい、それによって経済に関する皆さんの意識を把握しておきたいと思っています。
 移動販売に携って来た人の給料を上げることに対して、野菜の提供と言う形でどの程度協力して頂けるのか、長期的な視点で確認して置きたいので。」
「ですね、今回は試験的な取り組みで、移動販売に関係ない人も協力して下さってるけど、それが一時的なことなのか継続して頂けるのかによって随分な差になる、勿論、店がオープンしたら色々変わるでしょうが。
 今回の利益は移動販売に携ってる人に対する特別ボーナス予定額を上回りそうかしら?」
「はい、軽く越すと思います、学生の取り分も予想より多くなりますので、合宿所の運営費に充てたいと、まあ、我々学生にとっては金銭的なことより、収穫作業を通して地元の人と、販売を通して様々な人達と交流出来てることが良い経験になっていると思います。」
「計画してたことが出来なくなったとかは?」
「そこは調整しながら作業していますので大丈夫ですが、我々を食事に招待することがブームになりつつあるみたいで、その調整が大変だと一番人気の藤井が話してました。」
「高齢者のアイドル的存在になりつつあるとは聞いていたけど。」
「彼は話を聞くのが上手いのですよ。」
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