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近衛予備隊-370 [高校生バトル-79]

 水路の完成から、斜面に明かりが灯り始めるまで時間は掛からなかった。
 指導には王国騎士団メンバーや王立大学の先生も参加していたので不思議な話ではない。
 だが、そこからは自分が想定していなかった方向に話が進み…。

「詩織、子ども達が改良した簡易風力発電装置を商品化することになりました。」
「どんな形で?」
「メインはモニュメントですが、災害発生時に避難民を安心させる為の明かりとしてです、四角い風車には優しい絵が描かれます。
 風が無かったら人力で発電することになるのですが、明かりと共に通信機器の充電にも使えると目論んでいまして。」
「需要は見込めるの?」
「国内需要は微妙ですが、デザイン面を見直しながら輸出を考えています。
 普段は動くモニュメントとして人の目を楽しませ、災害時には照明とスマートフォンの充電に使えるのなら需要は有ると、遠江サイドも乗ってくれました。」
「確かに、あの気の抜けるレベルでゆっくり動くモニュメントと、風次第の風力発電装置は今の日本人になら受けるかもね。」
「以前の日本人には受けなかったのですか?」
「効率ばかりを追い求めている人の目にどう映るのか分からなないわ。
 日本なら安定感の有る簡易水力発電装置にも充分な需要が有るかもよ。」
「水路が必要なのですが。」
「丈夫で照明には充分な電力を得られているのだから商品化出来ると思うわ。
 まずはこの国の道路に街灯を増やすことを考えてみたらどう?
 風力では安定しないでしょ。」
「はい、ただ、水の取り入れ口にゴミが溜まると止まってしまいますので、子ども達がその対策を検討している所なのです。
 通学路の発電機は毎日点検していますし、流れて来る木の葉はぐらいは問題なく通過させられる装置も有るのですが、それでも商品化となるともう少し改良を加える余地が有るのだとか。」
「それで、まずは手動でも電気を起こせるタイプの風力発電装置にしたのね。」
「観光客からのリクエストなのですよ、水は貴重だが風はそれなり吹いてる国の市長が遊びに来ていましてね。」
「通学路の斜面がそのまま商品サンプルになったのかしらね。
 これからイルミネーションを始めて行くのでしょ、電力事情の悪い国中心に売り込んだら?」
「ええ、近衛隊メンバーが助言してくれたので子ども達もその気になっています。
 そんな訳で彼らに我々の子会社設立を許可したいのですがお許し願えますか?」
「高校生が新会社を設立したいと?」
「大人達に誘導して貰ってのことですが、彼らにはその力が有ります。
 大人の手助けをする実習ではなく、助言を受けながらも自分達で企業運営に取り組む実習から得られるものは大きいと思うのです。」
「そうね、まずは事業計画を出して貰おうかしら、会社組織は直ぐに出来そうなの?」
「高校生達は学習の一環として仮想の企業を立ち上げ仮想の取引をしています。
 でも、仮想より現実の方が面白いと思いませんか?」
「なるにしてほどね、彼らからの事業計画を楽しみにしていれば良いのかしら?」
「ええ、仮想世界の株式会社は既にそれなりの形になっているのですよ。」
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