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近衛予備隊-311 [高校生バトル-74]

 美紀はフルートの奏でるメロディを小鳥の鳴き声に見立て、合唱とフルートが掛け合う曲を作ってくれた。
 今まで楽器と合わせる合唱曲では、楽器抜きでも成立する様に作曲してくれていたが、この曲はフルート抜きでは成立しない。
 鳥の女神である詩織さまに対する想いが込められている曲で、そのお披露目にフルートを演奏するのは近衛予備隊マーチングバンド所属のケイト。

「王子さま、ホントに私で良いのでしょうか、指導して下さってる斎藤さんにお願いした方が良いと思うのですが。」
「いや、彼では上手過ぎる、国境なき合唱団は素人でも気軽に参加出来る合唱団だろ。
 かと言って下手過ぎるのも何だから、もうすぐ十五歳のケイトが適任なんだよ。
 上手に演奏しようと思わず、小鳥になった気分で詩織さまと楽しく戯れることを想像して演奏してくれたら楽譜通りで無くたって良いんだ。」
「はい…、似た様なことは美紀先生にも言われましたが…。」
「わざと下手に演奏する必要は無いが特別上手に演奏しようだなんて、生意気なことは考えるなよ。」
「楽しい曲ですから…、小鳥になれば良いのですね。」

 宮殿前広場での新曲発表会は店でも人気者のケイトが登場するとあって何時も以上に盛況、合唱団が新曲発表に合わせ人選して臨んだことも有り普段の演奏よりレベルが高く楽しい演奏になった。

「ケイト、お疲れ様。」
「王子さま、沢山間違えちゃいました。」
「その割には満足そうだな。」
「とても楽しかったです、う~ん…、軍楽隊の方に教えて頂いてた頃は楽譜通りに演奏するのが、下手過ぎて大変だったのですが、今日は合唱との絡みを崩さなければ細かいことは気にするなと言われてましたので、違った意味で楽譜通りには出来なかったです。」
「そう言われて、ホントに気にしないで演奏出来るのがケイトの強みね。」
「あっ、美紀先生。」
「美紀、ケイトの演奏は練習の時とは、色々な意味で随分違ってたと思うのですが。」
「ねえケイト、今日と同じ演奏、明日も出来る?」
「絶対無理です、途中から楽しくなってしまい楽譜を見るより合唱団の歌声に意識を集中していましたので。」
「ジョン、これが本番の力なのよ。
 でも斎藤君だったら楽譜ばかり気にして、あそこまで楽しい演奏が出来たかどうか、その辺りが彼の限界なのよ、ケイトの演奏を聴いて考えこんでるけどね。
 ケイトより技術的に上手な人は五万といるけど、聴衆の心に残る演奏が出来る人は少ないのよ。」
「ケイトが今の心を持ったまま技術面を伸ばしたら素晴らしい演奏家になると考えれば良いのでしょうか?」
「もう、素晴らしい演奏家だけど、より人を魅了する演奏が出来るでしょう。
 ケイトはフルートを続けてくれる?」
「もちろんです。」
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