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架空サークル-86 [俺達の挑戦-02]

安藤隆二が語り始める。

「まずは…、俺達の組織がせっかく健全かつ、将来性の有る組織を形成しつつ有るのに、その可能性を生かさなかったら勿体ないと感じたんだ。
色々考えてた中で浮かんだのが中小企業の安定化。
景気に左右され易いし、業績が悪化したら倒産だろ、大きいとこはなんだかんだと公的資金が投入されたりして何とかなっても中小はね。
こんな事を考えてる時に思ったのは小さくても集まれば大きくなるという事だったんだ。
全く業務内容が違っていてもね。

例えば、鉄工所と飲食店、全く業種が違うけど鉄工所の社員が飲食店へ行くことは普通に有る。
その時、気に入らなければ次からは別の店となるだろうね。
でも、鉄工所と飲食店にちょっと別の繋がりが有って、環境が整っていたら、鉄工所の社員は飲食店に対して改善を提案出来るかもしれない。
飲食店サイドに聞く耳が有れば、そこから売り上げを伸ばすヒントを得られないだろうか。
店のレベルが上がれば、鉄工所の社員だって常連になるかもしれない。

工場同士なら人的交流もし易い、研修という名目で他の工場を見ることは、双方にとってプラスになると思う、自分たちが普段やってる作業が必ずしも最善のものとは限らないでしょ。
場合によっては業務提携も視野に入る。
ある程度のグループが形成されたら色々な助け合いも可能になってくる。
資金繰りが悪化した企業の支援だって可能になるぐらいのレベルになったら面白いと思う。

ただ、こうした中小企業のグループ化は後ろ盾がないと難しい、小規模で後ろ盾がないと共倒れの危険も有るからね。
でも、俺達学生中心の組織と大企業がバックに付いたらどうだろう。
大企業にとっても社会が安定してしていた方が内需拡大に繋がるし、従業員の子ども達が中小企業に就職することも視野に入れたら決してマイナスになることではないんだ。

そしてこの枠組みに福祉関係も取り込む。
日本はサービスに対しての評価が低いと思うんだ。
老人向けの施設で働いている人達だって仕事のきつさの割に給与水準が低かったりするからね。

過疎地でがんばってる人達とも繋がって行きたい。
グループへの参加はそれぞれの状況によって様々な形になるだろうけど、同じグループに所属する人達となら全く関係の無い人とは違った交流が出来ると思うんだ。
もちろん真面目に取り組んでいる人達に限るけどね。

将来的には大規模なグループの形成を目指す。
方向性としては暮らし易い町作り、暮らし易い国作り、皆で繋がって助け合える環境作りたい。

いきなりは当然無理だから、まずは伸び悩んでいる企業と繋がり始める、始めから倒産しかけてる所というのは荷が重いし、経営上問題のないとこは繋がる必要性を感じて貰いにくいだろうからね。
経営基盤の弱い中小を持ち株会社の元に集めて、効率アップとか模索しつつ、中小企業でも集まれば…、大きく集まれば大企業にもなるだろ。
そして人も、この町の人にまず方向性を理解して頂き、町内の活動に学生が協力したり、協力して頂いたりということから始めて行く。
とにかく住み易い世の中を模索して行くということなんだ。」

しばしの沈黙の後、口を開いたのは佐紀だ。

「もっともっと先のことだと思ってました…、企画書を読んでいても実感が伴わなかったから。
一つ一つの企業の力は小さくても、結集して、さらにバックがしっかりしていたら、安定した職場が増えるということですよね。」
「ああ、そうなんだけど軽く打診した段階でも参加希望が幾つかあって、でも体制が整う前から多くの企業と繋がるのは危険だから、持ち株会社の運営体制構築に時間を掛けてるんだ。
まあ、持ち株会社の事を発表出来たのはそれなりに進んでいるからだけどね。」

「でも父さんは、会社の独自性とか、小さくても…、人に自慢できる会社だって言ってたけど…。
中田工業が大きな組織の一部になってしまっても良いの。」
「はは、もっと自慢したくなったってことかな、うちの従業員の力を世の中に見せていきたいし、今日うちの連中に話したら皆賛成してくれた。
遠藤社長の会社とグループ企業として繋がる訳だし、俺たちの挑戦を読んだ連中は、俺達も挑戦に加わることが出来るのかって喜んでいたよ。
うちの社員は真面目だからね、ほんとに人に恵まれたからここまでやってこれたと思う。」
「各企業とグループの関係はバランスを取りながら、画一的な物にしない予定なんだ、それぞれの企業の事情に配慮しつつベストな関係を模索して行く所から始まるからね。
ただ、中田工業はこれから目立つ存在になると思うよ。」
「隆二くんの企画書全部読みたいな。」
「私も。」
「うん、良いけど、まだ人には話さないでいて欲しいかな、持ち株会社が完全に立ち上がるまでは…、口は堅い?」
「はい、理子さんとしか語り合いません。」
「じゃあコピーをあげるよ。」
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