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架空サークル-82 [俺達の挑戦-02]

約束の時間に合わせ新聞店の店主、銀行の支店長達が社長宅へ。
まずは紹介となる。
早瀬佐紀の美貌に対する賛辞はいささか上品さに欠くものだったが、それを笑顔でかわす所が彼女の一つの魅力なのかもしれない。
場が落ち着いた所で中田圭一が話し始める。

「お前ら、ちゃんと俺たちの挑戦読んだのか?」
「読んだよ、ちょっと夢と現実の狭間で泣きそうになったけどな。」
「はは、武は苦労してきたからな。」
武とは新聞店の店主のことだ。
「今も色々あるさ…。」
「支店長は?」
「読んでいたから、じかに学生の声を聞きたくなってだな、安藤くんの企画書も読まさせて頂いたよ。
どう? 勝算は? 安藤君。」
「そうですね、企画書を書き始めた頃は、早瀬さんに怒られる程びびってました。
でも企画書を提出したら、すぐ佐々木代表から連絡が入りまして、一緒にメシを食いに行きました。
そこで自分が代表の考えを実行に移すつもりだと伝えたら…、自分でも簡単な事じゃない、うまく行くにしても時間のかかる事だと思っているって…、う~ん、これはそんなに秘密でもないことみたいだから話してもいいのかな。」
「おいおい、もったいぶるなよ。」
「食事が終わる頃から電話をかけまくるんですよ、彼。」
「えっ? 誰に?」
「あそこは専務だな、とかここは社長が一番とかとか言いながら、大企業の重役とかにですよ。
で、その後隆二の知り合いの社長も紹介してくれよって。」
「えっ? もしかして、この狸親父を紹介したのか?」
「いや~、他にも狸親父はいたのですけどね。」
「はは、圭一はベストオブ狸親父か。」
「はい、中田社長は自分たちの夢のような話しにきちんと向き合って下さいましたから。」
「圭一、お前佐々木代表と会ったのか?」
「ああ、会ったよ。」
「どうだった?」
「正直、始めはごく普通の青年だと思った、でもな話し始めたら圧倒されたよ。
間違いなくあの本の著者だし、大企業の重役連中が一目置いてるって噂が嘘じゃないって実感した。」
「でもどうして潰れかけの町工場なんだ。」
「武、小さな町工場だが潰れかけてはいないぞ、なあ支店長。」
「至って健全過ぎて、中田さん設備投資とかして下さいよ、融資しますから。」
「はは、まあ考えて置くよ。
話しを戻すとだな、こちらの安藤隆二が立ち上げたプロジェクトは佐々木代表としても、大きな取り組みの第一歩ということなんだ。」
「えっ、大きな一歩が、この潰れかけた町工場の狸親父で良いのか、安藤君。」
「はは、ただし町工場だけでなく、この地域のことも考えています。」
「この辺りは高齢化が進んでいるし、昔は賑やかだった商店街もずいぶん寂れてしまってだな、そんなに魅力はないと思うが…。」
「さすがに支店長らしい視点ですね、でもここで暮らしている方もいらっしゃいますからね、武さんの新聞店では一人暮らしの老人の方に気を配ってらっしゃると、中田社長から伺っていますが。」
「新聞の配達件数は減って来てるけど、配達や集金の人達には気になるお宅が有ったら報告してもらう様にお願いしてるよ、配達先でなくてもね。
それでお年寄りが一命を取り留めたことも有れば、残念ながら間に合わなかったことも有る。」
「武はこう見えて真面目なんだよ。」
「こう見えては余分だ、親父からは単に新聞を配達すれば良いんじゃないって言われ続けてきたからな、でも限界も有る、うちの配達エリアには障害を持った方も見えるし、経済的に困ってる方も。
それぞれ行政の支援も有るのだろうけど…、色々問題が有る。
子ども達の通学路でも安全上気になってる所が有るし…。
はは、この地区の問題点を上げ始めたらきりがないな。」
「日本中どこだって、何かしらの問題を抱えています、世界中とかに置き換えても同じことです。
ただ、その問題点が放置されたままなのか、改善を模索してるか、その模索もその思いの程度によって違って来ると思いませんか、武さん。
自分達は、ここに力を集中させることによって社会環境、生活環境の改善を目論んでいます。
今は綺麗ごとでしか語れませんが…、例え歩みはのろくても、同じ方向を見て下さる方と繋がれば、ここから広がって行くと考えているのです。」
「う~ん…。」
「小さな活動だったら埋もれてしまいそうだけど、学生達の組織があって、大企業もバックについて…、あっ、マスコミも押さえて有るから…。」
「支店長、全くの夢物語でもないでしょ。」
「だな…、でもうちの出番は微妙だね。」
「そんなことないですよ。」
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