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高松加奈-06 [化け猫亭-08]

「加奈さんはピアノ何時からやってるの?」
「五歳ぐらいだったかしら。」
「練習が嫌になったりしなかった?」
「先生が楽しくて自由な人だったのですよ、偶然小夜も同じ先生の指導を受けていまして。」
「だから芸風が似ていて、直ぐに息の合った演奏が出来たのか。
で、どんな、指導だったの?」
「好きな様に演奏して良いんです、ただ、ここはこう弾くともっと楽しくなるとか、綺麗に聞こえるとか示して下さって、先生の真似をすると確かに良くなるので嬉しかったです。
コンクールで賞を取りたいとかプロを目指すという人には違う指導をされてたみたいですが。」
「そうか、プロを目指すのでなければ、楽しく続ける事が一番大切かもな。」
「永井さんはクラリネットの練習どうでしたか?」
「弱小ブラスバンド部だったから、先輩から教えて貰う程度、その先輩が綺麗な人だったから結構頑張った、でも、才能の無さを感じてたよ。」
「指導者の先生はいなかったのですか?」
「顧問はいたが、特に楽器が出来る訳でもなく、私の卒業後しばらくして軽音部に変わったという程度だったんだ。」
「もし、優秀な指導者がいたらどうだったのでしょう?」
「私は入部出来なかった可能性が有る。」
「そういうものですか?」
「それぐらい不器用だったのだよ。」
「永井さんは管理職ですよね、不器用でも昇進出来た理由を教えて頂けませんか?」
「まあ、手先の器用さと管理能力は違う訳だが、仕事が出来ない連中の心理を把握してるという事かな。
私自身、挫折も経験して来た、クラリネットが上達しなかった自分を思い出しながら部下を指導して来たんだ、部下の心理を考えながら、指示を出し教育して来た成果が今の肩書だよ。」
「なるほど、上司が部下の事を把握していれば成果が上がるという事ですね。」
「ああ、そこで君の父上達と話してる小夜ちゃんは、その辺りの能力に長けている、もし君が四代目の社長になる道を選ぶのなら、彼女に手伝って貰う事を考えるべきだな。」
「分かります、まだ、沢山お話しした訳では有りませんが、彼女には色々な事が見えてるのだと感じます。」
「ねえ、君はリーダーシップを取る事も有るの?」
「サブ的な立場で全体を見るという経験はした事は有ります、その時にリーダーの役割を学びました。」
「そうか、ここの桜さんと話した事は有る?」
「はい、小夜に紹介して貰いました、私もCAT'S TAIL二号店オープンのお手伝いをさせて頂くつもりです。」
「桜さんは新会社の社長になるのだから共に学べると良いね。」
「はい、規模は小さくても、と言うより規模が小さいので経営全体を見させて頂けます。」
「君自身が起業するという考えはないの?」
「小夜や桜さんから影響を受けて考え始めました、小夜に出会うまではその選択肢に気付きもしませんでしたが。」
「お父上には相談したの?」
「ええ、資本金一億までOKだそうです、これから、小夜に手伝って貰いながら事業計画を立てようかと、ぼんやり考えている段階ですが。」
「一億か…、さすがだな、高松社長は君の力を考えての事だろう、何をするのか決まったら教えてくれな。」
「勿論です。」
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