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高松加奈-04 [化け猫亭-08]

「こんばんは、化け猫亭のスタッフになったばかりの高松加奈と申します。
小夜とのピアノ演奏前に、父と祖父を紹介する様にとマスターから指示が有りましたので、私の事も父から聞いて下さい、はいお父さま、お願いしますね。」
「はは、失礼します、娘がスタッフにという事で私共も会員にして頂きました。
私は…。」

「父も祖父もここでの出会いを楽しみに、勿論私もですので、家族一同宜しくお願いします。
さて、小夜との演奏は打ち合わせや準備なしなので、スタートは誰もが知っている様な小品をリクエストして頂けると嬉しいのですが、如何でしょう?」
「子犬のワルツってどう?」

その瞬間小夜はメロディを奏で始め、それを追う様に加奈が加わる。
二匹の子犬がじゃれ合うかの如く、でも、それは一台のピアノでの事、演奏している二人の手もじゃれ合ってるかの様に交差しながら、鍵盤上を所狭しと動き回る、子犬のワルツを主題とした変奏曲は観客を楽しませた。
そこからは、誰しもが知る曲のフレーズを織り交ぜながらの即興演奏が繰り広げられる。
My Favorite Thingsのメロディを加奈が奏でた後に、小夜が金平糖の踊りを弾き始める、といった具合だ、相手が主旋律を弾いている時は適度にと言うか適当にコードを合わせている。
途中からはピアノで対話している様な雰囲気に。
客達は小夜が驚いたとか加奈が笑っているとか感じながらそれを楽しんだ。
演奏を終了し、大きな拍手を貰った後。

「小夜ちゃん、締めくくりのフレーズは、たこ焼き食べた~いと聞こえたのだけど気のせいかな?」
「流石、永井さんです、私の気持ちが伝わりましたね。」
「俺の耳にもそう聞こえたぞ、私が買ってこよう、えっと幾つ買ってこれば良いのかな?」
「今までの経験から考えると六パックで良いと思う。」
「分かった、行って来るよ。」
「小夜さん、良い演奏だったよ。」
「有難う御座います、高松社長。」
「小夜さんの事は加奈から聞いた、企業コンサルタントを目指しているんだって?」
「はい、まだ大いなる助走の段階ですが。」
「その助走に我が社を利用してくれて構わないからね、加奈も会社の実情を学習したいと考えている、二人で会社に来てくれると嬉しいのだが。」
「私からもお願い、一人で行くとお嬢様扱いで動けないの、小夜が一緒なら心強いわ。」
「お願いします、今は色々な会社を見たいと考えていますので。
でも、今までここのお客様の会社を何社か見学させて頂いたのですが一人で行くと目立ってしまいまして、加奈と一緒だともっと目立ってしまいそうですが。」
「では会長とセットでもっと目立って貰おうかな。」
「同族経営を強調して良いのですか?」
「私が名大で済む所を東大へ行ったのは、社長の器を社員達に知らしめる為なんだ。
会社に入った時、社内に東大卒はいなかった、まあ、学歴を利用しつつ実力を発揮して社長になった。
私は三代目にあたるのだが、二代目の息子だからという理由だけでは無いと社員達は分かってるのさ。」
「三代目が潰すパターンでは無いのですね、加奈はどうするの?」
「お爺ちゃんやお父さんが頑張った結果、会社が大きくなって経営者の責任も大きくなっているわ、私は株主として見守る立場を模索中、でも、しっかり任せられる人が見つからなかったら自分が社長になる事も選択肢の一つなの。」
「結婚相手を社長にとかは?」
「都合良くそんな相手が見つかると思う?」
「そうね、化け猫亭で出会った重役さんと大学の男子を比べるのは間違ってるとは思うけど、ここの会員になれそうな人には、しっかり彼女がいるか…。」
「はは、少し人生経験を積んだ年上を見ても良いと思うがな。」
「高松社長、この店でお話しさせて頂くお客様はおじさんやお爺さんばかりですので、適度な出会いが無いのですよ。」
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