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脱東京-04 [シトワイヤン-11]

『脱東京』梅子姉さんとの番組は苗川からの放送となっても支障はなく、オフィスを地方へ移転という話は別番組でも取り上げて貰ったお蔭で反響が大きかった。
地方の若者は東京に憧れるが、東京に職場の有る中年は過密状態に疲れている様だ。
番組では『脱東京宣言』を著名人にして貰っている。
最近地方都市に移り住んだ作家は、仕事には全く支障がないと話す。
梅子姉さんの友人、有名ミュージシャンは夜遊びに興味が無くなったら広い家に住みたくなったと、海の見える豪邸を紹介してくれた。

「お金持ちの『脱東京宣言』を続けた後、東京在住と地方在住の方の家計を家賃と遊興を中心に比較するのですね。」
「清香には一般庶民の金銭感覚は分からないだろうな。」
「それでも、子どもの頃は何でも買って貰える訳では有りませんでしたので、お小遣い帳をつけていたのですよ。」
「ご両親の教育なんだね。」
「ただ、最近分かって来たのは、お年玉の額が皆さんとは違っていたという事です。」
「はは、ようやく気付いたのか、どうだ苗川に別荘を建てる計画、進める?」
「はい、今日報告が有りまして、土地はすでに確保出来たそうです、ただ、単なる別荘ではなく多くの方に使って頂けるものにしません?
そうですね、党の学生スタッフが気軽に使える様な、災害時に被災者を一時的に受け入れる事も視野に入れた宿泊施設とか、十億ぐらい掛ければそれなりの施設が出来ると思います。」
「土地は買ったの?」
「はい、うちは借りるより買うが原則なんです、必要が有って購入した不動産が後に高値で売れたのが事業拡大に繋がったと聞いています。」
「必要が有って土地を購入出来る資産が、まず違ってたのだろうけどな。
でも、苗川の土地が高値で売れる可能性は低いと思うよ。」
「ならば、付加価値を高め、活かし続ければ良いのです。」
「清香はどんな付加価値を考えているの?」
「近隣に有る廃屋の撤去や耕作放棄地の再生で、視覚的価値を高めます。」
「随分費用が掛かりそうだな。」
「集中投資すれば直ぐに返って来ます、廃屋をお洒落な商業施設にし、和馬が十万円で買った土地を見に来る人をターゲットとします。
全体を魅力的なエリアにすれば、担当者曰く、ただみいな額、で手に入る土地の価値が上がるのです。」
「話は進んでいるのか?」
「ええ、売るに売れなくて持ち主が困ってる土地の話を、本間市長から聞かされていましたので、別荘地以外にも土地を買い進める方向で私のスタッフに動いて貰っています。
父も市長が本間さんになったことでOKを出してくれました。」
「本間市長の計画とはぶつからないのかな?」
「大丈夫です、市長とも担当者が話し合っています。
地域経済の活性化を卒論のテーマにしようと考えていますので早く結果を出したいのです。」
「う~ん、卒論の為にどれだけの予算を組んだんだ?」
「取り敢えず二十億です、私が相続して持ってた株を売って欲しいという話が有りまして、曽祖父にも喜んで頂ける研究にしたいです。」
「父上は株を売る事に対して反対されなかったの?」
「はい、多分社内で権力争いが起きてるのだろうと、この先株価が下がる確率は低くないと判断しました。
相続してから随分値上がりしましたが、売った時がピークだったかも知れません。」
「売り時ってことか。」
「土地の活用法は和馬も考えて下さいね。」
「ああ、まずは店と従業員の為の住まいかな、そうなって行くと新しく株式会社を起こすのか?」
「ええ、父の会社で営業課長をしていた人を社長にして、苗川に本社を置きます。
彼の趣味はスキーだそうで、子どもを自然の中で育てたいと名乗りを上げて下さいました。」
「まさしく脱東京ということか。」

清香のスタッフが多少動いていることは聞いていたが、ここまで進めているとは思っていなかった。
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