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権じい学園にて-2 [権じいの村-SPO-01]

さわやかな風が木立を揺らす五月。

「そうか、沙代里ちゃんは美容師希望なんだ。」
「はい、和史先生、だから…、こんな山奥には来たくなかったのですけど…。」
「はは、ここでだって美容師は目指せるよ、その、気持ちをしっかり持っていればね。」
「でも…。」
「そうだな、沙代里ちゃんは美容師になるには、何が必要だと思う?」
「やっぱし、テクニックとかセンスを磨かないと…、でも…、ここでは…。」
「美容師になるための試験で、皆が苦労することが何か知ってる?」
「えっ? 何ですか?」
「化学の知識なんだ。」
「えっ? 化学なんて、無関係じゃ?」
「とんでもない、化粧品とかって、ある意味化学物質だから、使い方を間違えると人体に悪影響を与えかねない。
お客さんの見かけをいくら良くしたって、お客さんの寿命を縮めることになってしまったらだめだろ。」
「あっ、そうか…、私、化学とかって自分に関係ないと思ってた…。」
「はは、そうなんだ。
大切なことも沢山学んでいるんだぞ。」
「はい?」
「混ぜるな危険、とかも。」
「? あっ、トイレ掃除の洗剤ですか?」
「そう、下手に違った種類の洗剤を混ぜると、化学反応を起して人体に有害なガスを発生させることになってしまう、そんな知識を知らないのと知っているのとでは、大きな違いがあるだろ。」
「はい。」

「沙代里ちゃんはどんな美容師になりたいの?」
「そりゃ、お客さんのヘアースタイルをばっちり決めて、誰からもそのテクニックを認めてもらえるような…。」
「うん、そうか、でもね本当に上を目指すなら、手先のテクニックだけじゃだめなんだな。」
「えっ?」
「美容師だけじゃない、他の仕事でも言えることなんだけど、接客のテクニックということも大切だったりするんだ。」
「そりゃ、お客さま相手の仕事ですから。」
「そんなトレーニングなんて今からだってできるんだな。」
「はい?」
「指名されることの多い美容師は、他の人とどこが違うと思う?」
「そりゃテクが。」
「でも、それだけじゃない、お客さんのことをよく考えている人なんだ。」
「う~ん、当たり前のような…。」
「そうだな、洗髪の時、目に水が入らないように気を配る、なんて当たり前の気遣いだけど…、次元が違うかな、時には、愚痴を聞いてもらいたいと思っているお客も来るだろ。
そんなとこを察して愚痴の聞き役になってあげたりとかね。」
「でも、それは美容師の仕事とは…。」
「直接関係ないと思うかもしれない、でもね一人の人をより輝かせるのが美容師の仕事なんだ。
そう、考えたら、見せかけだけでなく、内面だって大切じゃないかな。」
「う~ん。」
「上を目指すなら、人の心に気を配れるようになること、人の心を感じることことのできる美容師になって欲しいな。」
「う~ん、そんなこと考えたこともなかったな…。」
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