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ぷろろーぐ-9 [権じいの村-1]

今日は下の家、ずいぶん賑やかじゃな。
あの嬢ちゃんの声がここまで聞こえてくるぞい。

「あ~ん真一さんたら、ずる~い、そのお肉は私が丁寧に焼いてためぐみスペシャルだったのに。」
「うん、おいしい、おいしい、お肉ならまだまだあるから心配いらないよ。」
「そうじゃなくて~、また一から焼き直さなくちゃいけないじゃない。
微妙な焼き加減ってのがあるのよ。」
「はは。」
「笑ってごまかすな~。」

「こんばんわ~。」
「あらっ、小春ばあちゃんお客さんみたいですよ。」
「おやおや、こんな時間に誰じゃろうな。
よっこらせっと。」

「まぁ、香織ちゃん、久しぶりじゃねえ。」
「こんばんわ、小春ばあちゃん。」
「こんな時間にどうしたのじゃ?」
「それがね、おじいちゃんがね、ここに、なにやら怪しげな男が来てるからちょっと見てこいって。」
「怪しげ? そう言えば慶次さん、昼間に源太郎のとこに行ってたようじゃな。」
「ねえ、やばそうな人?」
「はは、まさか、まあ上がんなさいな。」
「大丈夫です?」
「自分の目で見りゃわかる。」
「はい、じゃぁおじゃまします。」

「慶次さん、お客が一人増えたけどええじゃろか。」
「もちろんです、あっ、ここで初めて出会った若者…。」
「ふふ、ここって爺さん婆さんばっかでしょ。」
「ですね、私は白川慶次、小栗さんは?」
「はい、香織です。」
「あれ? 慶次さん、初対面なんでしょ?」
「ああ。」
「どうして、苗字を知ってたのですか?」
「はは、真一、この辺りは小栗さんしかいないんだ。」
「そうなんですか、香織さん。」
「ええ、今、ここに残っているのは、土地や家をもってる昔からの人ばかりで…。」
「だから、よそ者の俺たちを快く受け入れて下さる、小春ばあちゃんみたいな人ばかりじゃないってことだな。」
「もしかして、うちのじいちゃん、何か失礼なこと…。」
「あっ、源太郎さんのお孫さんでしたか。」
「はい。」
「失礼とかじゃなくて、話がなんかかみあわなくてね。」
「あっ、じいちゃんたら、また補聴器使わずに適当な話しをしてたのね。」
「えっ?」
「そんなにぼけてる訳じゃないのですけど、耳が遠くなって…、家族だけだと補聴器なしでもそんなに困らないのですが。」
「ふ~、そうだったのか…、疲れがどっと出たよ。」
「はは、慶次がんばったんだ。」
「この次は拡声器を持って交渉に行こうかな。」
「ははは。」
「あっ、それよりみんなも紹介しなきゃ、香織さん飲み物は? おなかはすいてない? ゆっくりしていけるんでしょ?」
「慶次ったら一度に聞いたら、香織さんも困るでしょ。」
「それと、慶次さんったら自分の家みたいな話し方じゃん。」
「ふふ、自分の家と思ってくつろいでってな。」
「ほら、小春ばあちゃんのお許しも出たから、さあ、飲も飲も。」




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