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ぷろろーぐ-10 [権じいの村-1]

「そうか、香織さんはここの小学校の卒業生だったんだ。」
「はい、でも私たちが卒業して、しばらくしたら廃校になってしまって…。」
「校舎だけは源太郎さん中心に守られてきたんだね。」
「はい、何かあったら小学校に避難とか…、でも、また子どもたちがここで学んでくれたら、というのがじいちゃんたちの本心です。」
「うん。」
「それはそうと白川さんはおじいちゃんに何を?」
「はは、慶次って呼んで下さい。
う~ん、俺たちがしようとしてることを話し始めるとメチャクチャ長くなるから…、まぁ簡単に言うと、一つは過疎の村の再生です。」
「えっ?」
「簡単にできるとは思ってないけどね。」
「誰も住みたがらないような村ですよ、ここは。」
「でも、君は今、ここに居る。
君にとって都会暮らしはどうなのかな。」
「は、はい…、便利だし刺激も多いですが…、疲れることも…。」
「都会の生活に疲れているのは君だけじゃないし…、源太郎さんは君が帰ってくると喜ばないかい?」
「それはもちろんです、ちっちゃい頃からかわいがってもらってましたから。」
「俺たちは知り合って間もないのに、小春ばあちゃんから良くしていただいてるよ。」
「そうなんですか。」

「過疎地の再生、それは簡単なことじゃないけど、裏技を思いついてね。」
「はぁ、裏技ですか?」
「うん、第一段階は、大学を巻き込んでの活性化ってとこだな。」
「大学生がこんなとこに来るのですか?」
「真一も久美ちゃんも大学生だよ。」
「はい。」
「社会学という分野があってね、おそろしく幅広いけど…、例えば50年前の村落共同体と現在との比較なんてことを研究してる教授もいる訳さ。
そんな先生に過疎地の村がそのまま限界集落となって消滅していってしまうのか、再生できるのかってテーマを振ってみるわけ。
それに対して前向きに、過去、現在、未来と続いて一つの研究が完成すると考えて下さる先生もみえてね。」
「でも、それだけじゃ…。」
「一つの研究というのには十分な調査が必要なでね。
住民の意識調査とか、その後の変化も追跡して初めて研究として成り立つ、もっともここは学生が大きくかかわるというかなり特殊な実験の場になる予定だけどね。
すでに色々な大学の色々な学部、そこの色々な研究室に声をかけ始めていてね。
県や市といった自治体とも連携できそうだから…、大学関係者、自治体関係者がこの村に来ることになる予定さ。」
「はぁ、なんかすごい話しなのですね。」
「まずは基礎調査のために色々な学生や研究室のメンバーををここに呼ぶつもりなんだけど、その活動拠点として小学校の校舎をお借りしたかったんだ。
小学校が大学になるってとこかな。」
「はぁ。」
「小学校なら野郎どもの宿泊施設としても使えそうだし…。
ねえ、香織さんからも源太郎さんを説得してくれないかな…。
俺たち色々アイディアがあって…。」

「慶次、一度にお話しても…、香織さんがお困りになるわよ。」
「私はもっともっとお聞きしたいです、真帆さん。」
「でしょ、でしょ、でも、ふ~、ちょっと酔ったかな、誰か代わって…。」

「あ~、お姉ちゃん、お酒のビンからっぽよ。」
「まぁ~、慶次ったら困ったものね。
ごめんなさい香織さん、質問があったら私がお聞きするわ。」
「真帆さん、ほんとにこんな村が再生できるのですか…。」
「そうね、絶対大丈夫だなんて言えないけど…。」

「なあ、慶次さんが言ってたことは、この村に若い子達が大勢やって来るってことかい?」
「はい、おばあちゃん、色々問題も起こしてしまうかもしれませんけど…。」
「な~に、問題を起したらいい、活気があって、色々あった方がボケずに済むということじゃからな、はは。」

「そうれす、小春ばっちゃんさいこ~!」




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