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河西哲平-03 [F組三国志-01]

「それでは遠足のグループを決めます。
 朝配った資料の形にしたいと思っていますが、特に意見など有りましたらお願いします、なければ…。」

 さすが秋山委員長、要領が良いな。
 資料にはグループ分けの案も書いて有り、意見があったら昼休みまでに。
 反対意見の出にくい提案だから、すぐグループ分けが始められる。
 中学では、分ける前にどうやって分けるとか、班の人数はとか、どうでも良い事に時間を使っていた…。
 おっと、俺の出番だ。

「じゃあさ。」
「おう、哲平。」
「固まって座るか。」
「うん。」
「あらっ? 私たちだけじゃなく他も早く決まったのね、哲平くん。」
「ちょっとした根回しをしてたのは俺だけじゃないってことさ。」

 はは、あっという間に五つの班が出来上がった。
 徹たちも根が真面目だから協力的、女の子の人数勝負よりバランスの取れた班分けを提案してくれた。
 さあ、残った奴らはどうする…。
 おっ、省吾は山影静を口説いているのか?

「山影さん、俺のグループに入らない?」
「えっ…、っと…。」
「良いでしょ?」
「う…。」
「オッケイなんだね、じゃ決定。」

 おいおい、省吾の奴、秋山との時はすごく緊張したとかドキドキだったと言ってたのに、あの軽さというか強引さは、だいたい、うんって言ってないだろうが。
 でも山影静は…、う~ん、人と話してるところを見たことない、美人の部類に入ると思うけど…。
 あっ、省吾も五人集めたのか。
 残りは…。

「森君たちは男の子ばかりなのね、井原さんたちは女の子で固まった? 決定?」
「う、うん…。」
「じゃあ調度五人づつで八班出来たということね。」

 はは、男ばかり、女ばかりで不満そうな顔をしてる奴もいるな、あいつなんか秋山さんが調整してくれるとでも思ってたみたいだ。
 もう高校生なのだから、自分達で何とかしなきゃ。

「では企画の案を見て下さい。
 これはあくまでも案ですから、他に提案が有ったり、この案に対する対案が有れば出して欲しいのですが、如何でしょうか?」
「自由参加ってあるけど本当に?」
「ええ、ただし参加はグループ単位になります、一人だけ参加しないということはNGになります。
 特に意見がなければ、そのあたりも含めて、この後グループで話し合って貰います。
 それでは…。」

 意見を出してくれそうな奴らには、俺たちで手分けして事前の説明がして有り、ここまで早く済んだ、それでは我が班の…。

「じゃあ、グループでの話し合いを始めようか。」
「は~い。」
「まずは班長だけど。」
「哲平く~ん!」
「さんせ~い。」
「けって~い!」
「あ、そうきたか、まあ五人しかいないから決とるまでもないね。」
「自分が班長やるなら、企画にはきちんと取り組みたいけど良いかな。」
「い~よ~。」
「って、いうより面白そうじゃん。」
「うん、じゃあ、そっちも問題なしってことで。
 でさ、大きな声では言えないのだけど…。」
「えっ、何?」
「ちょっとした企みがあってさ…。」
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河西哲平-04 [F組三国志-01]

「哲平くん、こっちこっち。」
「加藤さん、そんなにあわてなくても…。」
「へへ、だめだめ、同じ班になったのだから朋美って呼んでくれなきゃ。」
「はいはい。」
「朋美、はしゃぎすぎよ。」
「ふふ、そういう榛香だってさ~。」
「はは、でも何か新鮮な感じよね。」
「そうだな、高校の遠足ってどんなものかと思ってたけど。」
「露木、女子は所詮、哲平のファンなんだぞ。」
「あらっ、そうばかりではなくてよ。」
「えっ?」
「う~ん、話しの途中で申し訳ないというか、俺も続きを聞きたいが、ペンギンの前で奥田さんたちが待ってるからね。」
「あ、ああ。」

 ふふ、北村は纐纈榛香の視線を感じてなかったのか、鈍い奴だな。
 まあ俺に出来ることは同じ班に入れてやるとこまでだから。
 さてと…。

「奥田さん、お待たせ。」
「私たちも着いたばかりよ、みんなペンギンに夢中だけど。」
「無邪気だな。」
「そっちはどう?」
「加藤さんは、はしゃぎすぎ、北村は鈍いということが分かった。」
「なあにそれ。」
「あっ、我が班の連中もペンギンに夢中か。」
「動物園に来て、みんな小学生気分に帰ったと言うことかしら…。」
「適度にみんなで会話してるみたいだから、俺たちが特に動く必要もなさそうだね。」
「うん、でもこうしてると保護者になった気分。」
「はは、じゃあ、俺たちも混ざるか…。」

 写真を撮り合ったりしてる内に移動時間となる。

「お~い、みんな、次行くぞ~。」
「は~い。」
「次は?」
「俺たちは、ゾウの所で井原亜衣の班と、奥田さんたちは?」
「アムールトラの前で美咲たちと、班長はあやかだけどね。」
「そっか、じゃあ、また後で。」
「ふふ、後でね。」

 淳一の班、奥田さんの班とも順調に終わった。
 次は井原亜衣か。
 秋山さんのグループでも俺たちのグループでもないが、班長になって企画に参加してくれた。
 ただ、今の所は目立ってないけど、一部の女子をまとめて、いじめる側になりそうなタイプらしい。
 まあ、クラスの雰囲気が良くなれば問題ないというのが省吾の判断だから、フレンドリーに接しておくかな。
 でも、この企画に参加しなかった森たちはどうしてるのだろう、先生がくっ付いて行くとか話していたけど…。
 おっ、いたいた。

「お~い、こっちよ~。」
「はは、井原さんも楽しそうだね。」
「へへ、ねえ、哲平くん。」
「うん。」
「今回のこの企画って赤澤くんの発案なの?」
「ああ、そうだよ。」
「そっか、ちょっとしたことだけど面白いなって。」
「どんなとこが?」
「ほら、学校と全然違うとこでさ、クラスメートとの出会いがあって。」
「そして、別れが。」
「北村は黙ってなって。」
「今日は五人ずつが学校と違ってなんか気軽に出会って話せて、入学してから初めて話した人が何人もいるのよ。」
「それが省吾の狙いだったのさ。
 話題に困ったら目の前の動物をネタに振れば良いと言われてたけど、実際には特に気を使う必要もない、クラスのみんなをぐっと身近に感じてる。」
「私も。」
「そう言えば省吾たちのグループとは?」
「まだよ。」
「そっか、俺たちはこの次だけど…。」
「赤澤くん、ずいぶん個性的な人達を集めたわよね。」
「ああ、少し怖い気がするのだが。」
「何が起こるのか楽しみだったりして。」
「はは。」
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河西哲平-05 [F組三国志-01]

 さて次はキリンの所で省吾たちとか…。
 はっきり言って、あの班は俺には無理だな。
 山影静は美人だけど何話したら良いか分からない、岡崎は油断してると気軽にいじめちゃいそう、星屋はオタク系なのか話しが合うとは思えない、う~ん、斉藤真由美は…、まともなのかな?
 でも自分のタイプとは掛け離れ過ぎている…。
 おっ、省吾だ。

「省吾、一人なのか?」
「ああ、ちょっと場所を変えてくれないかな?」
「赤澤くん、何かあったの?」
「うん、纐纈さん、特に困った事ではないのだけどね。」
「どこへ行くの?」
「あっちのホッキョクグマのところ。
 今回七班だから、二班ずつ合流すると一班余るじゃん、今まではその時間でね。」
「それで、どこ?」
「あそこさ。」
「人が集まってるわね。」
「岡崎たちもいるな。」
「何してんだ?」
「行けば分かるよ。」

 えっ、山影静が絵を描いてる?

「うわ~、すご~い。」
「上手ね~。」
「ほんとだ、シロクマが生き生きしてる。」
「えっとね、山影さんはね、ほんとは…。」
「岡崎は黙って、で、斉藤さん、どうなの?」
「山影さんは美術科へ行きたかったんだって、でも、家の人に反対されたそうでね。」
「うんうん、それで、こういう絵ばかり描いてたの?」
「のんのん、漫画系のイラストもうまいのよ、さっき見せて貰ったけど、星屋くんに言わせると、すぐにでもプロのアシスタントとか出来るレベルなんだって。」

「あの~。」
「あっ、山影さんが口を…。」
「おいおい失礼だろ。」
「ご、ごめん。」
「はずかしいのですけど…。」
「ごめんね、山影さん、俺が頼んだばかりに。」
「そ、そんなことないです…。」
「で、今日はどう? 楽しい? 山影さん。」
「あっ、はい、河西さん、とっても。」
「はは、俺のことは哲平って呼んでくれよ。」
「はい。」
「じゃあ、ぼくも。」
「岡崎は絶対だめ! 河西様と呼びなさ~い!」
「え~。」
「ははは。」

 う~ん…、山影の才能はすごいけど、省吾が彼女に絵を描くことを頼んだという事は、彼女の才能を見つけて…、それをみんなに知らしめたのは省吾だよな。
 うん、山影とは話題が無いと思ってたけど、彼女のことをもっと知りたいと俺に思わせてくれたのは省吾の才能なのかも知れない…。
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