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卒業旅行-03 [チーム桜-05]

旅行初日、福岡空港。

「佐々木、飛行機に乗ってしまえば早いもんだな。」
「そうだな、乗るまでに時間が掛かったけど。」
「昼飯はどこで?」
「はい遠藤社長、福岡市内のお店が予約して有ります。」
「このメンバーが揃ってメシなんて久しぶりだよな。」
「そうよね、確かに卒業旅行っぽいわ。」
「すいません、おまけがついて来ちゃいまして。」
「いや~、裕子ちゃん達がいてくれた方が場が華やいで良いよ。」
「でも食後は別れて挨拶回りなんだろ。」
「遠藤あきらめろ、今回のイベントのバックアップをして下さる放送局なんだから、遠藤の所の作品もずいぶん使って頂いて、結構な収入になったろ。」
「ああ、でも佐々木と裕子ちゃんで充分だと思うぞ、向こうにとっては、芸能部の社長も同席するし、あ~、現場仕事がしたい~。」
「ならば次期社長を育てないとな。」
「なあ安藤、誰かいないかな、うちの連中現場が好きな奴ばかりで、現場以外の連中は社長の器では有りませんだって。」
「そうだな、本気ならすぐ動くけど大丈夫か?」
「正直、俺は安藤と違って社長に向いてないと思うんだ。」
「分かった、とりあえず副社長に…、良いのか、表向き格下げになるが。」
「ああ、頼む。」
「じゃあ連絡するよ。」

福岡市内の料亭。

「遠藤、社長候補が三人いるが会ってみるか、金沢で合流も可能なんだが。」
「その早さが安藤の力なんだよな、良いかもしれない金沢でも色々撮影するから、現場も見て頂けると話がし易いんじゃないかな、なんなら三人とも、そのまま社長と幹部になって頂いても…、経営レベルをもっと上げたいと思っているんだ。」
「分かった。」
随行スタッフの吉田に合図を送る安藤。

「安藤、ほんとに遠藤を社長から降ろすのか?」
「佐々木、前から少しきつそうだとは聞いていたんだ。
遠藤がこれまで頑張って来てくれたから、今のチーム桜が有ると思うし、遠藤が社長の職から離れたら、また違った動きを見せてくれると思う。」
「やっぱ、安藤は大社長だな。」
「でも遠藤、次期社長が決定するまでは、頼むな。」
「もちろんだ、なあ、ここにも芸能部を置けないか? ここでも番組制作していきたいし。」
「う~ん、その方向で行こうか、ならば放送局への挨拶はより重要だな。
俺も何とか時間を作って…、山根さん、スケジュール担当に調整をお願いしてくれるかな、佐々木達と一緒には行けないんだ、先方の都合も有るからすぐにお願い。」
「はい、社長承知しました。」
「遠藤が推し進めて来た、芸能部のトーク能力アップトレーニングの成果が放送局でずいぶん認められてラジオ番組も持たせて貰ったんだろ、ここでもいけるんじゃないか?」
「佐々木、そう簡単じゃないんだぞ、トーク力は頭の回転の早さが必要だからな。
まあ、早くなくても上手くごまかす能力というのも有るけど。」
「そうか…、あっ、この後って安藤達はどこへ?」
「九州支社設立に向けて、色々挨拶回り、サポート企業の福岡支社とかね、夜は桜根傘下入り希望の会社幹部との懇談だな。」
「大変そうだな。」
「いや、大した事ないよ、問題の有る案件はないと大川副社長から聞いているからね。
時間の掛りそうな案件はちょっと先送りさせて頂くそうだ。」
「安藤、九州支社設立での勝算は有るのか?」
「なかったら進めてないよ、九州支社といってもまずは福岡、今までと条件は違うとは言え小さな町ではないからね。
この一年で蓄積したノウハウも有るから、変なのにひっかからなければ大丈夫だと思う。」
「変なのか…、そこが問題だよな、拡大していく時にマイナスになる連中とは関わり合いたくないよな。」
「そんな情報も地元の方ときちんと接して居れば教えて頂けると思っているよ。」
「お~、佐紀、こんな何でも無難にこなしちゃう、面白みのない奴のどこが良いんだ?」
「ふふ、それはね、ひ・み・つ。」
「まあ安藤には聞くまでもないだろうけど。」
「はは、ちゃんと秘密にしてくれる処かな、でさ俺たちの婚約発表のタイミングだけど、どうかな?」
「えっ、もうそこまで? ご両家のなんたらかんたらは済んでるのか?」
「まあ、誰も反対してないし、この旅行の後に家族同士で会う話もあるよ。」
「変に先送りするより、早めの方が良いと思う、お~、イベントだ~、燃えてくるな。」
「遠藤、もしかして他人の結婚式で番組作る気か?」
「当たり前だろ、佐紀の色々な思いへの応援にもなる訳だし。」
「う~ん、すごい演出になるのか?」
「逆だな、こういうのはシンプルなのが良いんだよ、ただ、どの要素をクローズアップするか、桜根の今後の展開をどう見せるかで変わっては来る。
将来的に出産育児をしながら、佐紀がどう働いて行くかが問題だろ。」
「さすが遠藤社長ね、著名人がほとんど出ない番組を作ってもそれなりの視聴率を取れてるし、そのままチーム桜の宣伝にもなってる、やはり遠藤社長の功績は大きいわ、副社長降格と共に昇給ね。」
「まあ今までが安過ぎたからな、安藤もだろ? 社員から大幅アップの要求が出ていたよな。」
「さすがに断りづらくなって来てるから、その分で横山社長のとこに貢献するかな…。」
「佐々木はどうなんだ?」
「俺は本とか講演会とかで色々収入が有るからね、芸能部で管理して貰ってるけど、微妙なのは佐紀か?」
「ちゃんと頂いてますよ、まあ桜根の常務ってのは、部長連中がお遊び感覚で付けた肩書だから、隆二に合わせてもらってたけど、私も芸能部で管理して頂いてる収入も有るからね。」
「でも、これからは俺たちから学生という肩書がなくなる、今までの様に助けて貰う訳には行かなくなるから気を引き締めてくれな。」
「ああ社長の仕事から解放して貰う分、より良い作品を作って行くつもりだ、チーム桜や桜根にとってプラスになるのをな。
実際社長を経験させて貰った事は自分にとってプラスになった、物事を見る視点が変わったからね、これから社長になって下さる方からも色々学ばせて貰えると思っているよ。」
「遠藤さんは、社長交代関連でも番組を作るのですか?」
「当たり前だろ、株式会社桜総合学園制作部、初代社長渾身の作を作らせて貰うよ、きちんと世間に理解して頂けなかったら、次期社長も俺も仕事がしづらくなるじゃないか。」
「遠藤の言う通りだ、一つ一つの事をきちんと情報公開していかないと誤解も生まれ易くなるからね。」
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