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卒業旅行-08 [チーム桜-05]

テレビ局内応接室。
局の社長との挨拶を終えてから。

「安藤社長、桜総合学園の作品は質が良いね。」
「有難うございます、質の良さは名古屋地元局の方々が色々指導して下さったおかげです。」
「それだけなのかな?」
「いえ、うちのバックにはチーム桜の母体となった学生集団が有ります、様々なジャンルの人で構成されていて、そこから色々な企画が寄せられたりしています、また工学部系の学生に対して会社側からこんな仕掛けは作れないかと相談したり、逆にこんな装置を作ったから試して欲しいとか依頼が来たりもしています。
美術系の学生達も実習の形で手伝ってくれてます、映像作品を持ち込む学生もいます。
出演者の衣装を作りたいという学生も多いです、一人一人の技量はプロには及ばなくても、色々な方面から助言を頂いて、それなりのレベルに仕上がってるという事です。」
「そうか学生の力が良い方向に働いてるんだね。」
「はい、おかげで制作コストが抑えられ、社員にきちんとした給料を安心して払わさせて頂いています。」
「そうだったね、桜根の給与に関する方針は間違ってないと思うよ。
アーティストやタレント達も無名の割にしっかりしてるね。」
「ええ、素人は要らないと宣言してオーデションをしてきました、芸能部のメンバーには実力を伴なわないとなれません、担当者によると最近はど素人の子どもの下手さを、成長の過程を見せると称してアイドル活動させている所も有るそうですが、桜根自体が質にこだわった経営をしていますので、成長の過程を見せる演出にしても、それなりの力量からさらに、という形のみにしています。」
「それは分かる、満足に歌も歌えないアイドルがプロモーションとかで来ても歌を聴きたくないし、トークも下手過ぎて、いくら人気が有ると言われてもね、逆に知名度が低くても力の有る子なら応援したくなるよ、我が社にはそんな連中が多くいるから、君の所とは積極的に関わって行きたいと話す社員も少なくないよ、やはりオーデションは厳しいんだね。」
「そうですね、シビアな面も有りますが、真面目な応募者に対してはフォローもしています、チーム桜のメンバーも手伝って下さっていまして、一回落ちた人達には何が足りなかったのかを説明した上で、考える時間と次のチャンスの用意をしています、その現場では合格者とどこが違うのか、売れてる芸人と売れてない芸人の違いを考えてみようとか話しているそうで、こういった事をきちんと受け止めて再挑戦してオーデションに通る人もいます、もちろん再挑戦して落ちる人もいますが、前向きに挑戦して来る人に対しては、継続的なアドバイスをボランテアスタッフの方々がして下さっています、考えの甘さが変わらない人はさすがに他をお勧めしているそうですが。」

「今までは学生のみ、でもこれからは色々な人を受け入れるそうだけど大丈夫なのかな?」
「うちは力の有る人の応援を主眼を置いています、実力は有るけど何かが足りない、その部分を応援して行きたいと考えています。
芸能部が取って来た仕事のギャラだけで生活出来そうにない人の相談にも乗って行きます。
芸能の仕事一本で頑張るという人には、実力、実績を上げて下さいと言う事しか出来ませんが、早く安心安定を得たいという方には、芸能部正社員の仕事を検討して頂いたり、桜根関連でアルバイトを紹介したりといった事を考えています。」
「そこまで考えてるという事は、これからも芸能部入りのオーデションは厳しいという事かな?」
「そうですね、ずば抜けた才能をお持ちなら問題なく契約をお願いしたいですが、微妙な方との契約は現場サイドにとって悩み所になりますから。」
「しかし、桜根の社長は傘下の一企業の内情までずいぶん詳しく把握なさっているのですね。」
「いえ、今日社長が会って下さるという事で、ちょっと現状報告に目を通して来ました、基本的には各社の社長に任せています。」
「なるほどね…、各社の社長って皆安藤社長より年長者だと思うけど、大変じゃなかったのかな?」
「プレッシャーは大きかったですが覚悟の上の事ですし、優秀な社員に恵まれましたから。」
「その歳でその言葉が出るのか…、チーム桜の学生幹部も優秀だと聞いたけど。」
「はい、チーム桜の学生達は基本学業優先ですから、幹部だけでなく優秀なメンバーが集まっています、全員成績優秀とまでは行きませんが。」
「優秀な子ばかりだと、逆に視野が狭くなる可能性も有るからね。」
「はい、その辺りのバランス感覚をメンバーがどれくらい持てるかが一つの課題になっています。」
「うん、じゃあ桜根もチーム桜も拡大路線だけど、人的には大丈夫なのかな? 人材の確保って難しいでしょ。」
「はい、今の所は人事部ががんばってくれてまして、桜根グループへの入社希望、グループ内転職希望など総合的に判断して拡大の為の要員を確保してくれてます。
別の動きとしましては…、例えば桜総合学園制作部の場合、今春の新入社員はほとんどが今まで実習として制作に関わってきた学生メンバーなんです。
彼らは学生の間アルバイト待遇でしたから、制作費を抑える事に貢献してくれました。
そして今もアルバイト登録している学生は大勢います。
それぞれの適正や希望、日程の都合に応じて社員の指導の元、制作部を支えてくれています。
それは芸能部のマネージャー等も同様です。」
「そうか、実習で力を付けてからの就職なら文字通り即戦力だね、桜総合学園の秘密が分かったような気がするな。」
「そんな舞台裏も、きちんとした番組にさせて頂く予定です。」
「う~ん今回はチーム桜の事を紹介する形で放送させて貰ったけど、今後も…、しかしスポンサー陣が強いね。」
「はい助かっています、今回の企画に関しても桜根サポート企業に助けられています。」
「始めて君達の事を知った時は、学生のお遊びかと思ったけど、今回改めて調べさせて貰ってびっくりしたよ、この前お宅の大川副社長とも話をさせて頂いたが、君の功績を色々楽しそうに話していかれたからね。」
「困った事に、彼は話を盛る癖が有るんです。」
「はは、そうなんですか、早瀬常務?」
「大川副社長は、話を盛るような方では有りません、むしろ控えめな方です。」
「佐紀…。」
「はは、人の評価は分かれるものですね、ところで安藤社長はここでの展開に勝算はおありで?」
「実際動いてみないと分からない部分も有ります、名古屋と福岡では色々条件も違いますし、実の所この一年で大きくなりましたが、実際はその前に一年間の実質的な準備期間が存在しています。
こちらに支社、支店、工場等をお持ちのサポート企業が支援を申し出て下さっていますが、未知数の部分も少なく有りません。
ただ、今までの試行錯誤によって得られた経験が有りますし、大川は設立当初より部下の信頼の厚い人物です、私自身も色々教えて頂きました。
悪意有る方によって足元をすくわれる様な事さえなければ、必ず結果を残してくれると思っています。
多少時間が掛かったりトラブルが有っても、九州支社を絶対成功させようという声が、チーム桜のあちこちから届いています。」
「なるほど勝算有りと。」
「はい。」
「では、他の方の話も聞かせて貰おうかな。」

しばらくの懇談の後、テレビ局を後にする。

「食事と美術館どちらを先にします?」
「この辺りを少し歩いてから食事でどうかしら、美術館はゆっくり見たいし、隆二はどう?」
「それで良いよ。」
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