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巡礼-04 [シトワイヤン-27]

特別な企画を組まなくとも、姫さまはそこにいて下さるだけで多くの人を幸せな気持ちに、ということで、二週間程の旅行中、舞を舞って頂くのは一度だけ、後は姫さまと相談して決めた名所旧跡を周る予定。
報道関係が舞姫さまの旅路を紹介すれば、現地の宣伝になり観光客が増えるという目論見から決めた。
そして旅行中には最新の祠、祠と呼ぶには規模が大きいのだが、それを紹介させて貰う。
観光スポットが少なめで寂れかけた三つの観光地に、二か所はまだ工事中だが一か所はすでに完成して公開を始めている。
建物は和をイメージした木造、と言っても神社仏閣とは全く違う様式となっている。
御神体や仏像ではなく、3Dのホログラム映像で舞姫さまの舞を見られるのが特徴。
勿論賽銭箱を設置して有るが、最新式で現金以外に各種カードにも対応。
入れた金額が例え一円で有っても感謝のメッセージと金額の書かれた紙が出て来るが、千円以上の場合は紙が厚くなり舞姫さまの舞姿がプリントされたカードになる。
一応賽銭箱だがカード販売機の意味合いを持たせたのはファンサービスで有り、より多くの賽銭を集めることに繋げる為だ。
この賽銭収入から、施設の初期費用、人件費を含めた維持管理費、税金などを引いたものは、地球市民党と現地の自治体に寄付されるのだが、そういった配分の目安が裏に印字されるシステム。
ネット上では、賽銭の総額などの詳しいデータを日々自動更新し閲覧出来る様にしてある。
それらは一般の賽銭箱との違いを色々な意味で強調する為。
賽銭は寄付金な訳で、その使途が明確であるに越したことは無い。
お賽銭千円以上で出て来る、舞姫さまの舞姿が印刷してあるカードは百種類がランダムに。
ほぼ間違いなく全種類コンプリートを目指す輩がいるであろうから、タイミングを見計らって写真を追加して行くが、今の所レアなものは用意せず、どれも同じ枚数を準備している。

「和馬、最新の祠が稼働を始めたのでしょ、調子はどう?」
「現地で、姫さまの旅と合わせて大きく報道して貰ったことも有って盛況だよ、賽銭箱を多めに用意して正解だったと担当から報告があった。
待ちの行列が出来てるが、舞姫さまグッズの売り子達が待ち時間を楽しんで貰える工夫をして、和やかな雰囲気だそうだ。」
「地元への経済効果は?」
「しばらくの間は大きいだろう、苗川まで簡単に来れない人達がDVDとは違うホログラム映像を有難がっている。
苗川に来たところで姫さまの姿を見られる訳ではないのだから価値は有るだろう。
今度の姫さま訪問後は、客足を見ながら、同じ十分の演目を繰り返しているところに、新作を加えて行くし、運営会社は観光スポットとして続くように企画を練っているよ。」
「それで、名称は祠のままなの?」
「舞姫さまの社という通称が何となく定着しそうだな、一応正式名称は作ってみたがしっくり来なかったみたいだね。」
「後二つ建設中なのでしょ、もっと増やして行くつもり?」
「ああ、苗川にも有って良いし、最低でも各県に一つ、う~ん姫さまには四十七都道府県全部へ足を踏み入れて頂きたいところだな。」
「そうね、全国民が一度は舞姫さまの祝福を受けさせて貰うのが理想なのよね。」
「なあ、調査スタッフによれば、姫さまの祝福を感じられる範囲が少しずつ広がっているらしいのだが、愛華はどう思う?」
「広くなるのは嬉しい事だけど、姫さまには今のままでいて欲しいわね。
確実に成長されている、でも人並みの恋は難しそうだし…。
全く未知の存在なのだから、静かにサポートさせて頂くしかないのだけど。」
「人間の我儘を言うなら、地球を愛で包み込んで欲しいのだがな。」
「そこまでは…、でもそうなったら、人類は類として大きく進化出来るのかしら。」
「う~ん、私利私欲の塊次第じゃないのか。」
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