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巡礼-05 [シトワイヤン-27]

旅行当日、最近は舞姫さまが清香村内の制限エリアである舞姫集落から外に出る事が無くなっていたことも有り、車で走る駅までの道のりには多くの人が見送りに集まった。
皆が胸の前で手を組んでいるのは、苗川市民の中から、舞姫さまに向かって手を合わせるというのは違う気がするという話が出て、相談した結果。
思い思いに祈りのポーズをしていたヨーロッパより統一感が有る。
駅前は事前に抽選で整理券を手に入れた人だけの限定。
一般の人が歩く舞姫さまを見られる機会はほとんど無くなっているので希望者が殺到したという。
最前列で人の整理に当たっているのは、自分でお金を払い研修を受け制服を買ったボランティアのガードスタッフ。
金銭面を自己負担としても希望者が多くて、抽選に当たった人の中から面接して決定したという狭き門。
それをくぐり抜けた人達は誇らしげにその任に当たっている。
舞姫さまのガード、たとえ短時間で有ってもそれは名誉有る事だと考えられているようだ。
見送られて特別列車に乗り込む。
単線のローカル線なので一本の通過を待って発車。
臨時列車は昨日で一旦終了し余裕は有るそうだ。
車窓から眺めていると、テレビの生放送で苗川の様子を見たのだろうか、列車に向かって手を組んでいる人達が。
後で聞いた話では列車の接近に伴って姫さまの祝福を感じ、せめて列車に向かってお礼を、という人が多かったそうだ。
スケジュールは公開してあるのでおおよその通過時間は予測できる。

「お姉ちゃん、列車の旅も良いものね。」
「気に入った?」
「うん、適当に動けるのが良いと思う、ほら、さっきまで和馬さんと三人で話してた、愛華さんと清香さん、今はそれぞれのスタッフと話してるでしょ。
自動車や飛行機だと自由度が低くて出来ないよね。」
「そこが一番のメリットかもね、駅はすれ違い以外ほとんど通過で車に比べたらかなり早いし。
あっ、そろそろかな、車内での取材だけど、これも電車だから出来ることね。」

「姫さま、寛がれているところ申し訳ありません。
これからの旅について少しお話をお聞かせ願えたら思うのですが、今回の旅行ルートは姫さまの意向も加味されていると聞きました。
ポイントはどの様なところでしょう?」
「そうですね、私の舞は神楽から発展させたものです。
今は原型をほとんど留めておりませんし、地球市民党の関係も有りまして、特定の宗教とは距離を置く形を取らせて頂いています。
それでも、日本古来の神楽というものを、もっと学ばせて頂けたらと考えており、神社関係の方ともお時間を取らせて頂くことになっています。
ヨーロッパではキリスト教やイスラム教の話を聞かせて頂き、市民生活と宗教が密接に関わっていると感じました。
日本でも信仰の厚い方が見えますが、総体的に見ると緩やかなのが日本の特徴だと感じています。
地球市民党の一員として世界平和を考えた時、この緩さこそが日本の良さなのではないか、つまり凝り固まってないからこそ他の宗教にも寛容でいられる。
神様と仏様が共存して来た日本ならではのことだと思うのです。
今回の旅では神社仏閣や古い教会にもお邪魔させて頂き、宗教についてもう一度見直す機会にしたいと考えております。」
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