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夏休み-98 [花鈴-10]

 藤井さんに家庭教師のお願いをしたのは消費者心理学に興味を持ったからだが、それだけでは無く、優秀な大学生を見つけお父さんに紹介することを意識していた。
 大学生との合同キャンプを通して藤井さんはリーダーで有る徳沢さんを立てつつ、キャンプがスムーズに行く様、気を遣ってくれていると感じる。

「中沢さん、こうして共に作業していると大学生でも様々なのが分かりますね。」
「姫は何か気付かれました?」
「あの人は周りが見えて無くて自分が何をすべきなのか分かって無いでしょ。」
「ですね、学力が無ければ合格出来ない大学なのですが、学力を身に付ける為に大切なことを置き去りにして来たと感じさせてくれます。
 まあ、藤井と仲良く成りたくて参加してるレベルですから許してやって下さい。」
「藤井さんは狙われてるんだ。」
「ただ彼女にとって残念なことに藤井は他の子と急接近中なのです。」
「あらまあ。」
「姫は気付いてますよね?」
「ふふ、純粋に田舎暮らしを体験したいと来て下さった方だけど、ここを気に入って下さったかしら。」
「ここは所謂よそ者が多いから安心して住めるかもと話してましたよ。
 田舎への移住を考えても、地域の人間関係が都会と違い濃厚ですから、よそ者扱いされると住みにくいでしょ。
 ここには既によそ者が移住して来ていますし、自分達の活動に対して地元の方々が好意的です。
 藤田さんが卒業後ここで就職するつもりだと話した時は興味が有るみたいでした。」
「移住はハードルが高いと思ってたのだけど。」
「やはり本社が移転して来たことで、他の過疎地とは全く違う環境になっています。
 姫は藤井の本社勤務を考えているのですよね?」
「ええ、まずは私の家庭教師をお願いしましたので、父との時間も作れそうです。
 中沢さんは本社勤務を考えてないの?」
「株式会社花鈴の方が絶対面白そうですし、事務所は親会社の本社内、本社勤務と同じ様なものです。
 過疎地の環境改善なんて多くの自治体が取り組んでいても成功例は僅か。
 でもここでなら、お父上に見守られながらでは有りますが、姫と共に成功させたいと思っています。」
「そうね、中沢さんと藤田さんの居場所は出来つつあるわ、大学卒業まではリモートで仕事して貰うことになるかもだけど。」
「自分達は卒業に必要な単位を順調に取っていますので、四年生になったらここに住んでたまに大学、みたいな生活を考えています。
 夏休みが終わったら、一旦大学の学習に集中しますが、自分達のことを忘れないで下さいね。」
「三年生の残りを頑張ると四年生になった時に余裕が出来ると言うことかしら?」
「ええ、卒論はここで書けば良いのですから。」
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