SSブログ

星屋和彦-06 [F組三国志-03]

 お師匠さまに言われてから沢山考えた。
 完全に答えが出た訳では無いけど、席が変わるのを機に新たな気持ちで色々なことに取り組みたいと思う。
 席替え。
 昨日のうちに並べ替えられた机の配置は、鶴翼の陣と呼ぶことに。
 机の配置を大きく変えるというF組からの要望があっさり認められ、生徒の自主性を重んじるという校風を改めて実感出来た。
 かなり攻撃的な布陣だが、授業は先生との戦いとなるのだろうか。
 チーム麻里子は第一回テスト団体戦の勝者ということで中央に陣取る。
 黒板に向かって左はチーム哲平、右はチーム正信。
 どちらも通常の席より前に出て、教卓を囲む形。
 自分はチーム最前列の右端に陣取るから右にはチーム正信の誰かが座ることになる…。

「あ~、隣は星屋くんなんだ~、よろしくね。」
「う、うん、こちらこそよろしく、清水さん。」
「なんか席の配置が変わって、ドキドキじゃない?」
「そ、そうだね。」

 少しじゃない、かなりドキドキだ。
 清水さんとは遠足の時にも話した。
 かなり普通に。
 今も普通に話しかけてくれる。
 中学の頃、自分に話しかけてくれる女の子はいなかった…。

「ふふ、私は省吾さん達の娘になったからね。」
「えっ?」
「お師匠さまの娘だから、星屋くんは、ちさとお嬢さまって呼んでね。」
「ど、どういうこと?」
「あら、まだお父さまから、お話し聞いていらっしゃらなかったのね。
 お母さまのことを美咲さまと呼ぶ、門下生の和彦さん。
 私は十三歳のおてんば娘って役どころ、和彦さんにもご迷惑をおかけするってとこかしら。」
「そうなんだ、面白くなるのかな…。」
「面白くするの、多少の演技指導は演劇部期待のホープ、ちさとお嬢さまがしてあげますからね。」
「そうか、演劇部だったのか。」
「うちのお父さまって、面白いこと考えるのよ。
 普段、気が向いたら、みんなで役になっておしゃべりして、形が出来そうだったら、脚本作って文化祭のネタにしても良いかなって。」
「あっ、そう言えば、一昨日お話した時、その路線でやってみよう、なんておっしゃってた。」
「脚本家の候補は外山留美、彼女も演劇部なの、で、お父さまの古くからのお友達の娘さん、十七歳ぐらいって設定よ。」
「お師匠さま、いつの間に…。
 あっ、お嬢さま、自分は何歳ですか?」
「ふふ、和彦さんは自分の歳を人に訊くのね。
 そうね、十六~十九ぐらいの間で自分で決めて良いわよ。
 性格は、内気なんだけど、もっと積極的になろうって悪戦苦闘してるって感じ、時に空回りしながらもね。
 そんな和彦さんを私のお父さまとお母さまが暖かく見守っているの。」
「そ、そうか…。
 ちさとお嬢さま、自分は嬉しいです、お師匠さまの心遣いが身に沁みています。
 これから、よろしくお願いします。」
「ふふ、しっかりしてね、私の兄貴的存在なんだから、がんばんないと、おてんば娘に引っ張りまわされるわよ。」
「はい、お嬢さま。」
「じゃあ、ここでスイッチ切って。」
「え?」
「私もずっとお嬢さまをやってる訳じゃないの、演技としての、ちさとお嬢さまと、星屋くんのクラスメート、普段の私、清水ちさととは別なのよ。」
「そっか、了解…、えっと、ちさとさん…。」
「ふふ、普段の星屋くんはどんな人なの?」
「えっと…、内気だけど、もっと積極的になろうって、時には空回りしてしまうかも知れないけど…。」
「それを省吾さんと美咲さんが暖かく見守っているって、ははは。」
「ほんとに空回りしちゃうかもだけど、今は頑張ろうって思ってるんだ。」
「おっけいおっけい、清水ちさとは星屋くんの味方だからね。」
「ありがとう。」

 自信はない、ないけど…、演じるか…。
 お師匠さまは、姉御の子分を演じてた自分のことを考えてくれたのだろう。
 ほんとにがんばってみよう。
 仲間も…、味方もいるんだ。
nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 8

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。