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星屋和彦-03 [F組三国志-03]

「省吾、机の配置も変えるってことか?」

 放課後、席替えが自分の思いつきとは違った次元で進行してる。
 お師匠さまと哲平さんに呼ばれて話を聞いているが、やっぱ、お師匠さまはすごい。
 チームごとの席、って自分ではすごく斬新なことと思って提案したのに、お師匠さまのお考えはそんなレベルではない。

「うん、哲平、星屋からの提案を俺なりに検討してみたんだ。」
「ああ。」
「四角い教室に四十人の生徒を効率良くと考えたら、確かに今までの、小学生の頃から変わらない机の配置が良いのかもしれないけど、今のF組だったら机の配置を変えることによって違った効果が期待できると思うんだ。」
「違った効果?」
「そうだな、先生に対して左右が前に出て、席の間の通路もなくす、教室の前の方の密度を高める訳だ。」
「そうすると?」
「前提は、前の方に座るみんなが授業に真面目に取り組む気持ちを持っていることだけどね。
 授業中、自分の視野に入る人たちが真剣に授業を受けていたら、自分もって気にならないかな?
 逆に言えば、寝てる奴とかの姿が目に入ったら、心理的にマイナスになると思うんだ。」
「う~ん、確かにそうかも。」
「で、美咲が言ってたみたいに、授業によって席を移動しても良いと思う。
 それぞれ、集中したい科目とかあるだろうし、時には教室の後ろの方で、のんびりしたいだろうからね。」
「そうだな…、ねえ、星屋はどう思う?」
「えっ、えっと…。」

 哲平さんにいきなり話を振られてしまった。
 が…、正直言って、彼と、彼らと話すのは苦手だ。
 人気者の哲平さんや、お師匠さまたちと親しくなれたら良いとは思うのだけど、そう思うと、どうしても緊張してしまう。
 自分なんかと話しても彼らは楽しくないだろうし…。

「星屋は前か後ろ、どちらが良い?」
「えっと、お師匠さま、前が良いです。」
「はは、師匠と呼んでるのは俺だけじゃないんだ、それにしても、お師匠さまとはね。」
「そ、尊敬していますので、て、哲平さんもですけど…。」
「はは、有難うな、でも、同い年なんだからもっと気楽にしなよ。」
「はい…。」
「なあ、姉御とは、どうなんだ?」
「はい、少しずつ雑用で使って頂けるようになりました。」
「お前は、麻里子のパシリで良いのか?」
「いえ、パシリという感じではなくチームの用とか…。」
「それにしても子分ってことだろ。」
「それでも嬉しいので…、自分、中学の頃は…、みんなから無視されるか、オタクってバカにされるか…。」
「そっか…、でも麻里子と親分子分じゃ、師匠と美咲のようにはなれないぞ。」
「そんな大それたことは考えていません、普通に話せませんし…。」
「まあ、星屋が良いっていうのなら構わないが…、そうだ、省吾はお師匠さまとして、他の連中の呼び方は?」
「まだ、考え中で…、秋山さんは奥方さまかなって程度です。」
「なあ省吾、みんなにニックネームってどうだ?」
「うん、面白いかも。」
「俺は麻里子のこと、姉御なんて呼べないけどな。」
「はは、麻里子的には、編集長とか呼ばれた方が嬉しいのじゃないか。」
「そっか、色んな呼び方があって良いわけだ。」
「哲平は親分、親方、大将、ボス…、ってとこか?」
「ひねりがないな…、星屋、どう?」
「哲平さんは入学した頃から、哲平って呼んでくれよ、って…、えっと、優しい感じなら哲平兄さん…。」
「う~ん、女子からそう呼ばれたら、少し嬉しいかも…、なあ星屋、俺のことは、哲平さんじゃなくて、哲平って呼んでくれないか?」
「でも…。」
「そうだな、星屋が哲平の前で緊張してしまうのは分かる気がする。
 俺だって美咲の前ではかなり緊張したからな。」
「それがあっという間にね…、ホントに緊張したのか?」
「初めてのデートの時なんて心臓が爆発寸前だった。
 あんな知的な美人と、何話したら良いか分からなかったけど、とにかく仲良くなりたかったからね。
 嫌われたり、自分のことダメな奴って思われたらどうしようって思ってた。」
「省吾って意外と普通だよな。」
「意外じゃないよ、俺は普通さ、哲平みたく女の子にもてるわけでもないしさ。
 星屋も、哲平とどう接したら良いか分からないから、哲平さんって呼んでるのだろ。
 でも、麻里子がね、星屋はクラスのことを考えてくれる仲間だって言ってたよ。
 つまり、星屋も俺たちの仲間ってことさ。」
「えっ…。」
「仲間なのだから気軽に話してくれよな。」
「は、はい…。」
「おっ、省吾の奥方さまは用が済んだみたいだぞ。」
「御免、星屋、この後美咲と約束が有ってね、また話そうな。」
「はい…。」

 えっ、仲間? 
 お師匠さまや哲平さんと?
 姉御が自分を認めてくれた?
 なんか、ドキドキする…。
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