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山影静-03 [F組三国志-02]

 東山公園では他のグループと個別に合流してということに。
 少々面倒な気がする。
 一箇所目はサイ。
 赤澤さんの言葉に甘えて、とりあえずスケッチを始める。
 ふむ。
 普段描くことの無いサイはモデルとして結構面白い。
 形が出来てくると、何となく周りが騒々しくなって来た。
 人に見られながら描くというのは気恥ずかしいものだが、少し新鮮さを感じる。
 程よくサイが描きあがった頃、一グループ目との交流時間が終わったみたいだ。
 絵の方は自宅に帰って仕上げるか、そのままにするか…。

「山影さん、描くの早いね、びっくりしたよ。」
「集中してると、簡単なスケッチに時間は掛からないのです。」
「そうなんだ…。」

 なにやら、星なんとかという男子が色々話し掛けて来るが…、後は、面倒になって聞き流すことに。
 時々頷くふりをしていれば良いだろう…。
 あっ、赤澤さん。
 声を掛けられたが、とっさに返事が出来ず、頷いて済ませてしまった。
 少し緊張する。
 適当にあしらって済む人じゃない、というより済ませたくない。
 彼は授業中先生に問い掛けられると他の生徒とは明らかに違う視点で発言、その話は先生の話より興味深く楽しい。
 赤澤さんに対する気持ちは恋愛感情と言うより、尊敬という感覚。
 秋山さんとはお似合いで、二人を見ていると何故か心が癒される。
 私には彼氏なんて出来ないだろうが、二人みたいなカップルには憧れが有る。
 
「ねえ山影さん、山影さんの絵をさ、クラスのプリント、ほら遠足に関する連絡とかの印刷物配ったでしょ。
 あんなのに使わせて貰えたらと思うのだけどどうかな?」
「別に…。」
「良いんだね。
 あと、遠足の企画を振り返り、まとめたものを文化祭を意識して作成する予定が有ってさ。」
「テキストデータで文を下されば、イラストを入れて、レイアウトも組んで仕上げます。」
「ほんと、そりゃ助かるし楽しみだ。」

 どうして、こんなことを口にしてしまったのだろうと、すぐに後悔。
 母の目を盗まないと…、日頃とは違うスケッチ、遠足で浮かれているのだろうか。
 でも、やってみたいのは本心。

「DTP作業は好きなのです。」
「そうなんだ、じゃあDTPのソフトなんかも持ってるの。」
「はい。」
「なに? そのDTPって?」
「岡崎、DeskTop Publishingだよ。」
「えっ?」
「直樹くん、お兄さんはこちらのお姉さんと大切なお話しがあるからね、向こうのペンギンさんのとこへ先に行っててくれないかな。」
「は~い、って、ぼくはガキか?」
「ふふ。」
「え~っと、ソフトは?」
「PageMaker。」
「それならうちにもある、バージョンが違うかもしれないけど。」
「父の会社でなら、カラー出力も出来ます。」
「それは心強い、文化祭を視野に入れているからね。
 うちも親父関係で色々出来るから、また相談しよう。」
「はい。
 あっ、写真はどうしますか?」
「う~ん、極力、絵にした方が面白いと思うけど、写真を使うにしてもちょっと加工して個性的な感じにしたらどうだろう?」
「ふふ、良いですね。」

 あれっ、なんかわくわくしてる、私…。
 でも、良いのか…、問題は親だ。

「そう言えば、お母さんが絵を描いたりすることに否定的って言ってたよね、そっちは大丈夫?」
「だめかも…。」
「それは、なんとかならないかな。」
「数学の小テストで思う様に点が取れてないので…。」
「はは、みんな数学で苦しんでいるのか。」
「赤澤さんは数学得意だからうらやましいです。」
「小テストで点が取れたら、余裕が出来そうなの?」
「はい、小テストをクリア出来れば、定期テストもそれなりにと思っています。」
「ねえ、哲平と秋山さんとで数学の勉強会をやる予定が有るのだけどさ。」
「ふふ、照れないで、美咲とかで構いませんよ。」
「へへ、まあ、良かったら参加しない?」
「えっ、良いのですか?」
「嫌じゃなかったらだけど。」
「嫌な訳ありません。」

 秋山さんの前に哲平って…。
 哲平さんは私にないものを色々持っている、かっこいいし憧れている。
 遠い存在ではあるが、彼と一緒で嫌な訳がない。

「哲平のことは、あまり知らないかも知れないけど良い奴だよ。
 意外と真面目だしね。」
「はい、それで、何時ですか?」
「おっ、乗り気になってくれた?
 一回目は次の日曜日、基本、哲平の都合に合わせることになってるから二回目以降は未定だけどね。」
「ほんとに私も良いのですか。」
「うん、大丈夫、二人には俺から話しておくから。
 場所は俺んち、ほら地下鉄でここに来る途中、覚王山ってあっただろ、あそこから歩いて十分ってとこなんだ。
 で、少しお願いが有るのだけど。」
「はい。」
「当日はね、まず数学、それから今回の遠足のまとめ、ここまでは時間を区切ってやりたいんだ。
 だらだらとやるのではなくね。」
「はい。」
「で、終わったら、ちょっとおしゃべりしたりとかさ。
 俺も、まだ哲平や、み、美咲のこととかも、よく知ってる訳じゃないからね。」
「そうなのですか。」
「そうなんです~。
 で、もう一つ個人的なお願いがあって。」
「はい。」
「み、美咲を家へ呼ぶの初めてなんだ。
 で、ちょっとドキドキでさ。」
「ふふ、赤澤さんも普通の人みたい。」
「え~、俺、普通だよ~。」
「大丈夫です、ちゃんと協力しますよ。」
「よろしくね。
 あ、そろそろペンギンの前で集合する時間だ。」

 赤澤さんも普通の人なんだ~、ふふ、ちょっぴりかわいいかも。
 あれっ、そう言えば…、男の子と気軽に話してた…、私。
 始めは緊張してたのに。
 赤澤さんは不思議な人だ。
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山影静-02 [F組三国志-02]

 東山公園までの時間、色々聞かれた。
 今まで皆と話さない様にして来たから仕方ないのかも知れないが、それに答えている自分が滑稽だ。
 赤澤さんは、そんな私を、にこにこしながら見てるだけ。

「スケッチブックを持って来たということは、絵が趣味なの?」

 スケッチブックを広げて見せる。
 最近描いた中では自分でもお気に入りの一枚。
 
「おっ、うまいじゃん!」
「ほんと、素敵ね。」
 いつもの様に褒められる。
 中学の頃から当たり前になっていた。
 でも、それが嬉しいから必要のないものまで持って来てしまうのだろうか。

「ねえねえ、画家志望なの?」
「そうですね…。」

 色々訊かれ、それに答える自分。
 少し面倒。
 赤澤さんが見ていなかったら、黙っていたかもしれない。

 赤澤さんには、いきなりグループに誘われた。
 しかも強引にだ。
 驚いたというか戸惑った。
 でも、さすがに遠足で単独行動という訳には行かず、断る理由もなく…。
 赤澤さんから遠足で絵を描いて欲しいと頼まれたのには本当に驚いた。
 私が絵を描くことを母は好ましく思っていない。
 当然、美術科進学は無理で、あきらめてから、高校では絵を描くまいと思った。
 だから美術部にも入っていない。
 私が人並み以上の絵を描くという事をこの学校で知っている人はいない筈だった。

「どうして私に絵を?」
「だって上手じゃん。」
「えっ、見せたことない筈だけど。」
「ほら、ノートの表紙に描いてたでしょ。」
「今度の遠足はね、クラスのみんなが親しくなれるきっかけにしたいと思っているんだ。
 で、山影さんは、話さなくて良いから絵を描いてくれたらと思ってさ。」
「授業中の暇な時に描いていましたが落書き程度の絵で…。」
「落書きで良いよ、描くのは好きでしょ。」
「はい…。」

 少し強引な赤澤さんに戸惑いはあったが、退屈そうな遠足が少しはましになるかもと思い準備していたら、荷物が増えてしまった。
 考えてみたら、動物を描くのは久しぶりのことで…、遠足を楽しみにしている自分がいた。
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山影静-01 [F組三国志-02]

「あらっ、静、スケッチブック、持って行くの?」
「うん、遠足だから。」
「今日は良いけど、勉強、しっかりしてね。」
「はい、いってきま~す。」

 母の話しは、私を憂鬱にしてくれることが多い。
 よく出てくるのは、山影家の長女だから、という言葉。
 兄か弟がいたら、もっと自由で、ずいぶん違ったのだと思う。
 妹は学校の成績もいまいちで…。
 でも、今日は遠足。
 スケッチとか考えてたら無駄に荷物が増えてしまった。

「山影さん、荷物多いね、持とうか。」
「あ、ありがとう。」
「ぼ、ぼくも持ってあげるよ。」

 えっと…、始めに声を掛けて来たのは、確か…、星なんとか、もう一人はいたぶられるのが好きな人…、興味が無くて名前を覚える気にもならない。

「自分で持てますので…。」
「学校まで大変だったんじゃない? 気にせず楽しなよ。」
「あらっ、お二人って意外と紳士なのね、じゃあ、はい。」
「はい、って? 斉藤さん?」
「私のは持ってくれないの?」
「斉藤さんに、その荷物は小さ過ぎないか?」
「そうかな、乙女の私にとっては充分重いのだけど。」
「う~ん、斉藤さんに言われても説得力がいまいちでさ。」
「どうして、山影さんと私じゃ…。」
「えっと…。」

「ごめん、待った?」
 あっ、赤澤さんだ。

「打ち合わせは済んだのね。」
「ああ、こっからは五人で行動するよ。」
「でもさ、同じとこへ行くのだから、みんな一緒でも良かったでしょ? 地下鉄だし。」
「斉藤さん、それも悪くは無いのだけどね、班員同士が語り合える時間があっても良いだろ。
 向こうでの企画を考えた上でね。」
「ふ~ん、色々考えてんのか…、でもね、この二人、私の荷物、持ってくんないのよ。」
「えっ? その荷物? 俺、持とうか?」
「いいの? ラッキー。」

 赤澤さんは大人だ。
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河西哲平-05 [F組三国志-01]

 さて次はキリンの所で省吾たちとか…。
 はっきり言って、あの班は俺には無理だな。
 山影静は美人だけど何話したら良いか分からない、岡崎は油断してると気軽にいじめちゃいそう、星屋はオタク系なのか話しが合うとは思えない、う~ん、斉藤真由美は…、まともなのかな?
 でも自分のタイプとは掛け離れ過ぎている…。
 おっ、省吾だ。

「省吾、一人なのか?」
「ああ、ちょっと場所を変えてくれないかな?」
「赤澤くん、何かあったの?」
「うん、纐纈さん、特に困った事ではないのだけどね。」
「どこへ行くの?」
「あっちのホッキョクグマのところ。
 今回七班だから、二班ずつ合流すると一班余るじゃん、今まではその時間でね。」
「それで、どこ?」
「あそこさ。」
「人が集まってるわね。」
「岡崎たちもいるな。」
「何してんだ?」
「行けば分かるよ。」

 えっ、山影静が絵を描いてる?

「うわ~、すご~い。」
「上手ね~。」
「ほんとだ、シロクマが生き生きしてる。」
「えっとね、山影さんはね、ほんとは…。」
「岡崎は黙って、で、斉藤さん、どうなの?」
「山影さんは美術科へ行きたかったんだって、でも、家の人に反対されたそうでね。」
「うんうん、それで、こういう絵ばかり描いてたの?」
「のんのん、漫画系のイラストもうまいのよ、さっき見せて貰ったけど、星屋くんに言わせると、すぐにでもプロのアシスタントとか出来るレベルなんだって。」

「あの~。」
「あっ、山影さんが口を…。」
「おいおい失礼だろ。」
「ご、ごめん。」
「はずかしいのですけど…。」
「ごめんね、山影さん、俺が頼んだばかりに。」
「そ、そんなことないです…。」
「で、今日はどう? 楽しい? 山影さん。」
「あっ、はい、河西さん、とっても。」
「はは、俺のことは哲平って呼んでくれよ。」
「はい。」
「じゃあ、ぼくも。」
「岡崎は絶対だめ! 河西様と呼びなさ~い!」
「え~。」
「ははは。」

 う~ん…、山影の才能はすごいけど、省吾が彼女に絵を描くことを頼んだという事は、彼女の才能を見つけて…、それをみんなに知らしめたのは省吾だよな。
 うん、山影とは話題が無いと思ってたけど、彼女のことをもっと知りたいと俺に思わせてくれたのは省吾の才能なのかも知れない…。
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河西哲平-04 [F組三国志-01]

「哲平くん、こっちこっち。」
「加藤さん、そんなにあわてなくても…。」
「へへ、だめだめ、同じ班になったのだから朋美って呼んでくれなきゃ。」
「はいはい。」
「朋美、はしゃぎすぎよ。」
「ふふ、そういう榛香だってさ~。」
「はは、でも何か新鮮な感じよね。」
「そうだな、高校の遠足ってどんなものかと思ってたけど。」
「露木、女子は所詮、哲平のファンなんだぞ。」
「あらっ、そうばかりではなくてよ。」
「えっ?」
「う~ん、話しの途中で申し訳ないというか、俺も続きを聞きたいが、ペンギンの前で奥田さんたちが待ってるからね。」
「あ、ああ。」

 ふふ、北村は纐纈榛香の視線を感じてなかったのか、鈍い奴だな。
 まあ俺に出来ることは同じ班に入れてやるとこまでだから。
 さてと…。

「奥田さん、お待たせ。」
「私たちも着いたばかりよ、みんなペンギンに夢中だけど。」
「無邪気だな。」
「そっちはどう?」
「加藤さんは、はしゃぎすぎ、北村は鈍いということが分かった。」
「なあにそれ。」
「あっ、我が班の連中もペンギンに夢中か。」
「動物園に来て、みんな小学生気分に帰ったと言うことかしら…。」
「適度にみんなで会話してるみたいだから、俺たちが特に動く必要もなさそうだね。」
「うん、でもこうしてると保護者になった気分。」
「はは、じゃあ、俺たちも混ざるか…。」

 写真を撮り合ったりしてる内に移動時間となる。

「お~い、みんな、次行くぞ~。」
「は~い。」
「次は?」
「俺たちは、ゾウの所で井原亜衣の班と、奥田さんたちは?」
「アムールトラの前で美咲たちと、班長はあやかだけどね。」
「そっか、じゃあ、また後で。」
「ふふ、後でね。」

 淳一の班、奥田さんの班とも順調に終わった。
 次は井原亜衣か。
 秋山さんのグループでも俺たちのグループでもないが、班長になって企画に参加してくれた。
 ただ、今の所は目立ってないけど、一部の女子をまとめて、いじめる側になりそうなタイプらしい。
 まあ、クラスの雰囲気が良くなれば問題ないというのが省吾の判断だから、フレンドリーに接しておくかな。
 でも、この企画に参加しなかった森たちはどうしてるのだろう、先生がくっ付いて行くとか話していたけど…。
 おっ、いたいた。

「お~い、こっちよ~。」
「はは、井原さんも楽しそうだね。」
「へへ、ねえ、哲平くん。」
「うん。」
「今回のこの企画って赤澤くんの発案なの?」
「ああ、そうだよ。」
「そっか、ちょっとしたことだけど面白いなって。」
「どんなとこが?」
「ほら、学校と全然違うとこでさ、クラスメートとの出会いがあって。」
「そして、別れが。」
「北村は黙ってなって。」
「今日は五人ずつが学校と違ってなんか気軽に出会って話せて、入学してから初めて話した人が何人もいるのよ。」
「それが省吾の狙いだったのさ。
 話題に困ったら目の前の動物をネタに振れば良いと言われてたけど、実際には特に気を使う必要もない、クラスのみんなをぐっと身近に感じてる。」
「私も。」
「そう言えば省吾たちのグループとは?」
「まだよ。」
「そっか、俺たちはこの次だけど…。」
「赤澤くん、ずいぶん個性的な人達を集めたわよね。」
「ああ、少し怖い気がするのだが。」
「何が起こるのか楽しみだったりして。」
「はは。」
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河西哲平-03 [F組三国志-01]

「それでは遠足のグループを決めます。
 朝配った資料の形にしたいと思っていますが、特に意見など有りましたらお願いします、なければ…。」

 さすが秋山委員長、要領が良いな。
 資料にはグループ分けの案も書いて有り、意見があったら昼休みまでに。
 反対意見の出にくい提案だから、すぐグループ分けが始められる。
 中学では、分ける前にどうやって分けるとか、班の人数はとか、どうでも良い事に時間を使っていた…。
 おっと、俺の出番だ。

「じゃあさ。」
「おう、哲平。」
「固まって座るか。」
「うん。」
「あらっ? 私たちだけじゃなく他も早く決まったのね、哲平くん。」
「ちょっとした根回しをしてたのは俺だけじゃないってことさ。」

 はは、あっという間に五つの班が出来上がった。
 徹たちも根が真面目だから協力的、女の子の人数勝負よりバランスの取れた班分けを提案してくれた。
 さあ、残った奴らはどうする…。
 おっ、省吾は山影静を口説いているのか?

「山影さん、俺のグループに入らない?」
「えっ…、っと…。」
「良いでしょ?」
「う…。」
「オッケイなんだね、じゃ決定。」

 おいおい、省吾の奴、秋山との時はすごく緊張したとかドキドキだったと言ってたのに、あの軽さというか強引さは、だいたい、うんって言ってないだろうが。
 でも山影静は…、う~ん、人と話してるところを見たことない、美人の部類に入ると思うけど…。
 あっ、省吾も五人集めたのか。
 残りは…。

「森君たちは男の子ばかりなのね、井原さんたちは女の子で固まった? 決定?」
「う、うん…。」
「じゃあ調度五人づつで八班出来たということね。」

 はは、男ばかり、女ばかりで不満そうな顔をしてる奴もいるな、あいつなんか秋山さんが調整してくれるとでも思ってたみたいだ。
 もう高校生なのだから、自分達で何とかしなきゃ。

「では企画の案を見て下さい。
 これはあくまでも案ですから、他に提案が有ったり、この案に対する対案が有れば出して欲しいのですが、如何でしょうか?」
「自由参加ってあるけど本当に?」
「ええ、ただし参加はグループ単位になります、一人だけ参加しないということはNGになります。
 特に意見がなければ、そのあたりも含めて、この後グループで話し合って貰います。
 それでは…。」

 意見を出してくれそうな奴らには、俺たちで手分けして事前の説明がして有り、ここまで早く済んだ、それでは我が班の…。

「じゃあ、グループでの話し合いを始めようか。」
「は~い。」
「まずは班長だけど。」
「哲平く~ん!」
「さんせ~い。」
「けって~い!」
「あ、そうきたか、まあ五人しかいないから決とるまでもないね。」
「自分が班長やるなら、企画にはきちんと取り組みたいけど良いかな。」
「い~よ~。」
「って、いうより面白そうじゃん。」
「うん、じゃあ、そっちも問題なしってことで。
 でさ、大きな声では言えないのだけど…。」
「えっ、何?」
「ちょっとした企みがあってさ…。」
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河西哲平-02 [F組三国志-01]

「なあ省吾、今日の数学、よく分からなかったのだけどさ。」
「そうだな、中学生の頃とは色々違う、でもポイントを押さえて行けば決して難しくはないんだ。」
「この辺りだけど…。」
「うん、ああ、これはね…。」

 えっ、そんな簡単なこと?
 数学の先生より省吾の説明の方が分かり易いじゃんか。

「サンキュー、なんか先生の話を聞いて難しく考え過ぎていたよ。」
「はは、あの先生は簡単な事を難しそうに話す傾向が有るからな。
 まあ俺は先生の話を聞く前に理解してるから、あんな分かりにくい説明は必要ないけどね。」
「師匠と呼ばせて下さい。」
「ははは。」

「あらっ、昼休みに二人でお勉強?」
「美咲。」
「おっと、おじゃまかな?」
「よせよ、それより、哲平、この前のこと考えてくれた?」
「ああ、だから気軽に数学の質問をさせて貰ったのさ。」
「へ~、どういうことなの?」
「哲平中心のグループ。」
「交換条件に俺は省吾から数学を教えて貰う話しをしてね。」
「あっ、私も教えて欲しい、今日の数学よく分からなかったの。」
「ははは、先生より省吾の方が分かり易いぞ。」
「ほんと?」
「さてね、まぁ近い内に勉強会でも開くかな?」
「やろ、高一から進学塾なんて行く気なかったけど、今日の授業聞いてたら不安になって。」
「そうか、あのせんせ、進学塾から金貰ってるのかも、なあ省吾。」
「はは、有り得ない話しじゃない所が怖い、その内進学塾の案内なんか配り始めたりしてさ。」
「まさか、そこまではしないでしょう。」
「ははは。」
「そうそう、グループの話しは省吾から聞いて考えているけど、遠足はどうなってる?」
「遠足と言っても、まぁクラスの親睦を深めるって程度の簡単なもの、でもそこが重要なのよね。」
「そのグループ分けって明後日?」
「うん。」
「幾つのグループに?」
「そうね、一グループ五人、八つでどうかしら?」
「うん賛成、省吾は?」
「問題ない、高校生にもなって大勢でぞろぞろ歩くことに抵抗感を覚える奴もいるだろう。」
「だよな、それでさ、林徹と黒川淳一とは話が合って良く話すのだけど、この二人、微妙に対抗意識があってさ。」
「ああ、分かる気がする。」
「俺含めて三人がリーダーになりメンバー集めをしたら面白くなるかも。」
「もしかしてゲーム感覚ってこと?」
「うん、秋山さん、省吾から提案があったからね。」
「どんなゲームに?」
「まずは人数集め、自分以外に四人集められなかったら負けだ。
 次は女子の人数、野郎三人で競うのだから当然でしょ。
 ただ、これだけじゃゲームとしての面白みに欠けるかな。」
「徹だと、かわいい子はポイントが高いとか言い出しそうだね。」
「うん、それだと省吾たちの思いとずれてしまう。」
「メンバーたちが遠足を楽しめたかどうか、遠足の後でアンケートをとって、それでポイントをつけたらどうかしら?」
「それなら、秋山派でも、女子の人数では競えないけど…、麻里子さんならリーダーやってくれそうだろ、後は美咲と俺とでこっちも三つのグループを作るか?」
「おいおい彼女と別で良いのか?」
「はは、まあ行く先は同じにするよ。」
「と、いうことは六グループが同じとこで集合ということも有るのね?」
「うん、残りの二グループにも声を掛けておけば、問題ないだろ。」
「グループ分けうまく行くかしら?」
「そうだな、まずは自由に集まり、五人揃ったところから固まって座って貰えば良いだろう。
 俺は残りそうな人を中心にゆっくり集めていくよ。」
「省吾、ぴったりにならなかったら?」
「四人でも六人でも良いと思う。」
「そうね、五人でなきゃいけない理由はないわ、後は森くんたちがどう動くかかしら。」
「ああ、パシリとかで狙われそうな連中は早めに俺たちのグループに引き入れないとな。」
「私も気をつけるから、河西くんもお願いね。」
「まぁ任せときなって、根回しして置けば話が早くなると思うよ。」

 はは、省吾じゃないけど、秋山さんからお願いされたら断れないわな。
 でも、高校ってこんなことを真面目に考える奴なんていないと思っていたけど、なかなかどうして、また中三の時みたいに出来るかもしれない。
 まずは徹と淳一に話して、後は…。
 ふっ、たかが遠足が楽しくなって来たぞ。
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河西哲平-01 [F組三国志-01]

「お~い、哲平、ボールとってくれよ。」
「おう、いくぞ。」

 バスケも久しぶりにやると面白い、まあ体育レベルの球技なら、何をやっても楽しいけどね。
 部活のラグビーは好きだけど厳しくもあるからな…。
 あっ、省吾。

「さすが哲平だな、バスケもうまいじゃん。」
「まあな、そういう省吾もなかなかじゃないか。
 さっきは絶対抜けるって思ったのにさ。」
「はは、たまたまだよ。」
「たまたまね、お前はただのガリ勉かと思っていた。」
「よせやい。」
「手は早いしな。」
「え?」
「秋山のことだよ。」
「ああ、あれは完全に偶然、自分でもびっくりしてる。」
「秋山って知的美人だよな。」
「なんだ、お前も狙ってたのか?」
「当たり前だろ、美人なだけでなく性格も良さそうで。」
「哲平なら女子には不自由しないのだろ。」
「はは、まあ、選ばなければな。」
「このモテモテ野郎が。」
「でも誰でも良いという訳ではない。」
「確かに。」
「どういうきっかけを作ったんだ?」
「きっかけか…、きっかけは向こうからやって来た。」
「ふ~ん。」
「でさ、哲平に頼みが有るのだけど。」
「何だよ。」
「彼女とのきっかけはクラスのことでさ。」
「あっ、学級委員長だったな、彼女。」
「ああ、クラス内のいじめ問題を持ちかけられてね。」
「いじめ?」
「そうか、そういえば哲平って休み時間、あまり教室にいないよな。」
「ああ、中学から仲の良い奴が隣のクラスでさ。」
「まあ、ちょちょいとやってる奴がいるわけよ、F組には。」
「そうか、それは良い気しないな。」
「うん、で、何とかならないかって相談されてね。」
「なるほど、何とかしないと男がすたるってことか?」
「まあ、そんなとこだ、それで頼みがあるのだけど。」
「ああ。」
「グループを作って欲しいんだ。」
「グループ?」
「うん、まだ、F組はバラバラの状態だと思う。
 今は仲良しグループ的なのがあっても小さいが、このままいじめっ子たちがグループを形成し始めると大きくなってしまう可能性が有る。
 でも、今の内にいじめないグループを作っておけば、それを防げる可能性が高まるだけでなく、F組が楽しいクラスになると思ってね。」
「そうか…、そんなこと考えてなかった。」
「哲平なら男女問わず人気が有るだろ。」
「はは、照れるなあ~、でもお前らで、そのグループ作れば済むことじゃないのか?」
「それじゃあ限界が有るし、色々な選択肢があった方が面白い。
 美咲たちのグループと哲平中心のグループとが、競いあったり協力しあったら、クラスが盛り上がると思ってね。」
「う~ん、そうか…、俺の中三の時のクラスは結構まとまっていて楽しかった。
 ここに入学して、少し違和感を感じているが…。」
「何も堅苦しいグループを作る必要はない、俺も協力するから考えてみてくれないか。」
「ああ…、協力…、そうだ、省吾って数学得意だよな。」
「まあ苦手ではない。」
「俺、だめなんだよ、教えてくんない?」
「はは、交換条件ってことか、それぐらいならお安い御用だよ。」
「部活やってるとどうしても時間が足りなくなりそうでさ。」
「そうらしいな。」
「部活の先輩たちは、一浪して上を狙うか、それなりに妥協するかの二者択一だって言ってる。
 でも、妥協するにしてもそれなりのところへ入りたいじゃないか。」
「うん、今回の企みは、その辺も考えているから考えがまとまったら話すよ。」
「分かった。」
「とりあえずは、仲良しグループ作りを考えてみてくれるか?」
「ああ。」
「それでさ、ゲーム感覚で…。」

 へ~、省吾って、もっと付き合いづらい奴かと思ってたけど、面白いことを考えるのだな。
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秋山美咲-04 [F組三国志-01]

 キンコンカンコ~ン♪  キンコンカンコ~ン♪

 ふ~、やっと授業が終わった。
 でも、今日は授業に集中出来なかったな…。
 省吾のことばかり考えてしまって…。

「美咲。
 美咲!」
「えっ、な、なに? 麻里子。」
「大丈夫?」
「な、何が?」
「その動揺ぶりからすると、赤澤くんのこと考えてたでしょ。」
「えっ、その…。」
「なんだ、図星か。」
「えっと、なんか、その、自分でもよく分からなくて。」
「男嫌いかと思ってたら、いきなり恋する乙女に変身、そりゃあ、分からんだろうなぁ~。」
「ど、どうしよう?」
「どうしようって、どうしたいの?」
「え~とぉ…。」

 あっ、赤澤くんがこっちへ来る。
 ド・キ・ド・キ・

「美咲、今日も一緒に帰らない?」
「う、うん。」
「あらま、省吾さんってそういう積極キャラだったの。」
「はは、ドキドキしながらだったけど思い切って告ったら…、そうだな開き直ったら、自分に正直になれたってとこかな。
 まだ、断られた訳じゃないし。」
「ふふ、私はじゃましないわよ。」
「麻里子…。」
「遠くから生暖かく見守っていてあげるわ。」
「由香ったら…。」

 断る…、そんなこと…。
 朝は、なんだか恥ずかして直ぐに返事出来なかったけど…。
 今日も一緒に帰れるんだ。
 嬉しいけど、恥ずかしいような。
 でもでも…、うわ~、私どうしちゃったのだろう。
 省吾に告白されて、凄く嬉しかったのだから…、うん、しっかりしなきゃ。
 もう堂々と一緒に帰ろう…。

「美咲、とりあえず秋山派はオッケイってことだね。」
「うん、でもみんな…、はぁ~、なんか今日は疲れたな~。」
「はは、ごめんよ。」
「し、省吾があやまることじゃないわ。」
「隠しておけなくてさ。」
「そうよね…、隠れてこそこそ付き合うより、ずっと良いかも、省吾、好きだよ。」
「えっ、あ、有難う。」
「ふふ。」
「ははは。」
「私たちのグループの次は河西哲平くんね。」
「ああ、そっちは俺に任せな。
 すごく親しいという訳でもないけど、ちょくちょく話しはしてるから。」
「うん。」
「そうだ、今日もカフェに寄ってく?」
「良いの?」
「もちろん。」
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秋山美咲-03 [F組三国志-01]

 はぁ~、やっとお昼休みだ。
 今日は放課の度にみんなから冷やかされて…。
 ふふ、なんか変な感じ。
 でも、これからが大切な本番かな。
 赤澤くん…、ふふ、省吾はどうかしら。

「さ~、岡崎もこっち来いよ。」
「えっ、ぼくは…。」
「遠慮するなよ。
 秋山さ、じゃなくて美咲、岡崎も連れてきたよ。」
「ええ、じゃあ麻里子たちも机移動してさ。」
「了解~、はは、男子も混じるとなんか新鮮ね。」
「でも、彼女持ちと岡崎じゃあな~。」
「ぼく、やっぱり…。」
「まぁ、今日は一緒に食おうや。」

「いっただきま~す。」
「美咲、赤澤くんとのきっかけについて話してくれるのよね。」
「赤澤くんのオムレツがとても美味しくて惚れてしまったのでしょ。」
「確かに美味しかったな、でもね、このクラスでのいじめについて相談に乗って貰ったの。」
「えっ?」
「ぼくは、いじめられている奴なら一人知ってるけど。」
「誰?」
「ぼく。」
「確かに、岡崎ってそうゆうキャラよね。」
「あやかったら普通に呼び捨てだし。」
「私も小学生の頃にいじめられた事があってね。」
「美咲が?」
「うん、私、普通に真面目な子だったから、いじめられている子をかばったりしているうちにさ。」
「そっか。」
「このクラスも、いじめが広がりそうな雰囲気がないとは言えないでしょ。
 この前、先生と話してたら不登校になった先輩がいて、いじめが原因かもって。」
「あ~、私も先輩から聞いた。」
「私は自分のクラスがそんな風になったら嫌だなと思って。」
「そっか、岡崎って、いじめたら楽しそうだと思ったのだけどな。」
「おいおい。」
「奥田さんって怖いんだ、かわいいのに。」
「岡崎、おだてても何もあげないわよ。」
「ははは。」
「それで、赤澤くんに相談したの。」
「ちっ、ちっ、ちっ、そこは省吾にって言わなきゃ。」
「えっ、ま、まだ慣れてなくて…。」
「それと、いちいち真っ赤になるな。」
「う、うん。」
「で、相談された俺は、色々考えた訳だ。」
「どうやったら美咲と親しくなれるかでしょ?」
「もちろん、でも、ついでにいじめのことも考えたのさ。」
「ついでかよ。」
「で、結論は?」
「いじめが広がる前に、いじめないグループを作ろうってこと。
 いじめは、人間の本能に由来する部分があるから簡単にはなくせないと思うんだ。」
「本能?」
「ああ、人が他人より優位に立とうとするのは、生存競争の中で自然なことだと思わないか?
「確かに麻里子は自然だよなぁ~。」
「何よ、あやかだって!」
「奥田さんは、岡崎が言う通りかわいいよ。」
「えっ、そ、そうかな。」
「麻里子は単純だから。」
「ど~せ、あたしゃ…。」
「色んな人がいて、それが集団を形作ってさ、他人の集まりが何時も仲良くなんて有り得ないだろ。
 そんな集団の中でも、学校のクラスなんて閉鎖的な環境だから、クラスの中に逃げ場がないとつらいと思うんだ。」
「逃げ場か…。」
「どうしたの岡崎くん。」
「秋山さん、ぼく時々逃げ出したくなる。」
「はは、なあ岡崎、何時もなら森たちのおもちゃになってる時間じゃないのか?」
「えっ。」
「あの子たちのいじめは見ていて気分が悪くなるのよね。」
「でも、俺も含めて誰も止めようとはして来なかった。」
「だって、岡崎のために自分までやばくなるようなリスク、冒せないもの。」
「だよね~。」
「みんなひど~い。」
「でも、今日はここにいてどうだ?」
「美女に囲まれて楽しい想いをしつつ、ふふ、岡崎くんったら幸せ者じゃない。」
「あっ、だから赤澤くんはぼくを…。」
「と、いうことだ。
 後は岡崎次第だけどな。」
「ぼく次第?」
「ああ、美咲の友達グループと仲良くやっていけるのかどうか。」
「ぼく、話すのあんまり得意じゃないし…。」
「えっ、お前ここで話すつもりでいたの?」
「違うの?」
「話しても良いけど、人の話しを聞くことが大切なのさ。」
「話しを聞く?」
「人間なんて誰しも自分の話しを聞いて貰いたいもの。
 でも自分の話しを聞いてくれる人なんて限られているからね。
 奥田さんだって岡崎にきついこと言ってるけど、根は優しい人だから岡崎がきちんと接したらきっと仲良くなれると思うよ。」
「うん。」
「ねえ、赤澤くん。」
「何?」
「私のこと奥田か麻里子って呼び捨てにしてくんないかな~。
 彼女の友達ってことでさ。」
「わかった、俺のことも省吾とかで良いよ。」
「じゃあぼくも麻里子って。」
「岡崎は絶対だめ!」
「ふふ女王様とお呼びって感じね。」
「はは。」
「ということは、私たちがいじめないグループってこと?」
「うん、谷口さん、そういうつもりだけどどうかな。」
「私は賛成、どうせなら楽しい高校生生活送りたいし、私のこともあやかでお願い。」
「了解。」
「私も由香って呼んで、藤本でも良いけど…。
 とりあえずは、省吾さんと美咲、麻里子、あやかと私、おまけで岡崎ってことね。」
「ぼくはおまけかい。」
「ははは、まあ細かいことは気にするなって。」
「でも私達だけでは…。」
「ふふ、そこはまだ企みがあってね。」
「そっか~、お二人はこんな企みごとを相談しているうちに仲良くなったんだ。」

 まず、私達のグループは何とかなりそう。
 でも、麻里子たち…、由香なんて省吾さんって呼んでる…。
 省吾は私の…。
 う~ん、二人っきりになりたい。
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