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林徹-05 [F組三国志-03]

 今日は勉強会、テスト前の仕上げだ。
 え~と、生涯学習センターって…。
 あっ、あの建物みたいだ。
 施設を借りるのに大学生の人たちが動いてくれたとか哲平が言ってたけど、調査が交換条件、どんな調査なんだろ。
 え~っと自転車置き場は…。
 みんな来てるかな?
 う~ん…、あっ、哲平だ。
 一緒にいるのは大学生?

「おう、哲平。」
「おはよ、徹、調子はどうだい?」
「まあ一通りはやれたけど、全体のレベルが高そうだから。」
「だな、あっ、そうそう、こちら今回俺たちをサポートしてくれてる、早川さん。」
「よろしくね。」
「何か、調査とか…。」
「今日はテスト前だから簡単なアンケート、テスト後の打ち上げの時にまた協力をお願いしたいのだけど。」
「はい。」
「徹、部屋は二階だからな、もう六人ぐらい始めてるよ。」
「おお、みんなやる気だね。」
「えっと、徹は一班だから十一時半から休憩な。
 時間になったら省吾の家へ移動して食事と大学生さんの調査に協力、午後は状況に応じて省吾の家かここで学習となるからね。」
「了解、じゃあ二階だね。」
「ああ。」

 えっと…。
 ああ、ここだ。
 もう、みんな黙々とやってる。
 さ、俺もやるか…。

「じゃあ、時間だから一班の人は食事に行くよ。」

 えっ、もうそんな時間?
 ほんとだ、もう二時間以上たってる。
 集中してると時間が経つの早いな。

「一班のみんなは俺と一緒に省吾んちまで行くからついてきてな。」
「なあ、哲平、食事の用意までしてもらって良いのかな?」
「確かに、でも省吾はテストをイベントにしようと話してた。」
「イベントか。」
「日常とは違うイベントってことでさ、クラスのみんなが楽しめるかどうかは分からないけど、俺は面白いと思った。」
「そっか。」
「大学生まで巻き込んでのイベントだからね。」
「う~ん、俺はよく分かってないけど。」
「はは、打ち上げってイベントも用意してるから詳しくはその時にな。」
「とりあえずはテストに集中しろってことか?」
「そんなとこだ。」

 テストに向けての色々な企画…、たしかにイベントだな。
 あっ、ここなのか、省吾の家って。
 センターから近いんだ。
 うっ、カレーの良い匂い、うまそ~。
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林徹-04 [F組三国志-03]

「みんな~、テストに向けてがんばってる~?」
「おう!」
「テストまで後一週間、テスト範囲で理解出来てないところは残ってないわよね?
 残ってる人は早めに解決して、暗記と練習問題に取り組むのよ。
 後、予想問題の中から省吾が選んだ指定問題、そのままは出ないかもしれないけど、かなりの確率で役に立つってことだからね。
 省吾からの予想問題も用意したから、その中の指定問題だけでも、全員こなしておいてくれると嬉しいかな。
 それでも練習問題の足りない人には、私たちで幾つか用意したから相談してね。」

 うわっ、秋山さんめっちゃはりきってる。
 はは、絶対F組の圧勝を狙ってるな。
 でも、いつもクラスのためにって感じで色々やってくれてて、ずいぶん自分の時間を使ってるのじゃないか。
 う~ん、こりゃ、委員長のためにも、手を抜けないぞ。
 あれっ、委員長、俺に用か…。

「ねえ、林くん。」
「あ、はい、秋山さん。」
「いつも有難うね、チームの面倒みてくれて。」
「いや~、それは…。」
「チームメンバー以外でも梶田さん、お願いしてるし。」
「あっ、それは気にしないでよ、彼女、チームには入れないって言ってるけど学習には真面目に取り組んでいるから。
 ちょっと暗い表情をするけど…。
 チームに入ったってレベルを下げるような人じゃないし、みんなだって少しぐらいのことは気にしないと思うのだけどな。」
「うん、なら安心かしら、それで…、しばらくチーム正信の一員みたく扱ってあげて欲しいのだけど、どう?」
「問題ないと思う、正信はもう了解してるのでしょ、あいつは自称フェミニストだから断る訳が無い、俺も気を配るようにするよ。」
「お願いね、じゃあよろしく。」
「おう。」

 梶田さんか…、どうしてチームに入らないんだろう?
 いじめられてるとは思えないし。
 何か事情があるってことか?
 そう言えば、チームに入ってない森は哲平のチームで、三浦はチーム麻里子でって感じになってるよな。
 まあ、秋山さんにしてみれば、F組の仲間ってことなのだろう。
 仲間のために、色々気を配って、動いてくれてるよな。

 仲間か…。
 哲平や淳一とは入学してすぐ意気投合したけど…。
 女子も含めてクラスの仲間なんて考えてなかった。
 はは、こんなにくそ真面目に勉強するとも思ってなかったな。
 でも、悪くないぞ。
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林徹-03 [F組三国志-03]

 明日が問題予想ゲームの、予想問題提出期限。
 まあ、チーム正信として、過去問を入手できたことは大きかったな。

「林くん、英語の予想問題まとめたわよ。」
「おっ、栗原さん、有難うね。
 部活の先輩にずいぶん協力して貰えたって?」
「まあね、先輩方には結構かわいがって頂いてるから。」
「栗原さん、普通にかわいいもんな。」
「ふふ。」
「じゃあ、生物と国語は完成してるから、後は…。」
「ねえ、林くん、五年前とか六年前とかの過去問なんてどうやって手に入れたの?」
「ラッキーだったのは正信のお姉さんがここの卒業生だったってこと、それと清水さんがここの卒業生である某教育実習生と仲良くなったって事かな、数学に関しては全く教えてくれなかったそうだけど、まあ、先生が違うそうだしね。
 真面目な人は過去のテストも捨ててないんだよな~。」
「へ~、そうなんだ。」
「おかげで、生物とかは同じ先生の同じ範囲のテスト問題が四年分手に入ったからね、先生の癖がはっきり出てるよ。」
「問題になったりしないかしら?」
「教育実習生でもテスト問題には全然近づけないんだって。
 先輩や姉の力を借りることは悪いことだとは思えないし…、今回は他のクラスに圧勝するという目標があるから、奇麗事ばかりも言ってられないさ。」
「そうよね、私に色々教えて下さった先輩も、自分が一年の頃は先輩に助けられたからって話してみえたわ。」
「自分たちでも色々考えたしね。」
「ええ、問題を予想することで理解が深まったと思うし、みんなで意見を出し合えて楽しかった。」
「うん、俺もそう思う。
 もっともここからは、練習と暗記という孤独な作業が待ってるけど。」
「でも、勉強会があるじゃない、林くんはどうするの?」
「もちろん参加するよ、土曜が学校で日曜がお師匠さまのとこ。」
「学校はともかく、お師匠さまのお宅に伺うのは、なんか楽しみよね。」
「ああ、大学生の人の調査に協力ってのが条件って言われたけど、それもなんか楽しみだったりしてな。」

「林、予想問題どう?」
「おう、正信、予想問題に模範解答例、俺らで集めたり考えたりした分は、ほぼ完成だよ。」
「これでポイント稼いでおかないと、やっぱり本番は僅差になりそうだからね。」
「みんながんばってるもんな、でも俺だって高校受験の時より勉強してるくらいだぞ。」
「はは、だよな、チームの足を引っ張りたくないし、結果が悪かったらクラスで仲間はずれの気分になりそうだ。」
「そうよね、胸を張ってF組のチーム正信メンバーって言える結果を出したいわ。」
「お~、栗原さん、頼もしい~。」

 ほんとにF組だとモチベーションが上がる。
 中学の時なんて、真面目にやってるとじゃましてくる奴とかいたもんな。
 全然授業を聞いてない奴、授業の妨害する奴、公立中学だと仕方なかったのかもしれないけど…。
 中三で九九も怪しいような奴と同じ授業受けてるなんて嫌だった。
 おかげで授業時間の無駄が多かったからな。
 うん、やっぱりこの高校に入れて良かったと思う。
 F組だから、余計そう思えるのかもしれないけど。
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林徹-02 [F組三国志-03]

 さ~、ノ~コンだ。
 投票用紙は記名式なんだな。
 まずは投票者、林徹っと。
 えっと、各教科上位三名を選べば良いんだな…。

「徹のノートはどこ?」
「あっ、淳一、俺は出してないよ。」
「はは、確かに、あの暗号ノートじゃ人に見せても意味ないもんな。」
「うっ…、じゃあ、淳一、お前のはどこなんだ?」
「教科ごとで出席番号順に左からだから…。」
「お、あったけど、表紙の名前、でかすぎだぞ。」
「まあ、黒川淳一に清き一票をってとこだ。」
「おいおい、選挙じゃないだろ。」
「う~ん、各教科二十冊ちょいってとこか…。」
「見てみるか…。」
「ああ。」

 やっぱ、出してる人たちのはみんな綺麗だな。
 ふ~ん、色をふんだんに使ってる人もいれば、ほとんど使ってない人も…。
 色数が少ない分ポイントが強調されるってことか、でも色分けもそれなりに見やすいかな。
 現代社会、あっ、このノートわかり易い、そうかこの前微妙だったとこ、こういうことだったんだ。
 なるほど…。

「おい、徹、ずいぶん熱心だな。」
「ああ、俺、現社クリアできたぞ。
 ちょっと理解しきれてなかった所、このノートで解決さ、後は暗記だけだな。」
「えっ、俺にも見せろよ…。
 へ~、なるほど…、確かに分かりやすいな…。
 おっ、このノート、省吾&美咲になってる、ご丁寧にハートで囲ってさ。」
「ほんとだ、あの二人の合作か。」
「まいったね。」
「英語も合作みたいだぞ…。」
「どれどれ…。」
「あ~、これって下手な参考書より使えそうじゃないか?」
「確かに、自分の為って言うよりチームメンバーに教える時にさ。」
「ああ、その通りだ…、これコピーとかさせて貰えないのかな。」
「どうなんだろう…。」
「あっ、哲平。」
「おう、ノ~コンの審査中か?」
「まあな、それより、このノートってさコピーとかさせてもらえないのかな?」
「メンバーに教える時、すごく使い易そうだからさ。」
「はは、あいつらが嫌って言う分けないだろ。
 とりあえず師匠たちのノートは全部、各チームに二部ずつコピーしておいたから、後はチームで上手に使ってくれって感じだ。
 後、他のノートでもみんなの役に立ちそうなのは持ち主と交渉するから、早めに言ってくれな。」
「これって、他のクラスの奴らには…。」
「今回はF組以外には流さないで欲しいって、省吾が言ってた。
 まあ二学期以降に関しては、また違った展開が有るかもしれない。」
「そうか、まだまだ色々企んでいそうだな、我らが師匠は。」
「俺もお師匠さまって呼ぼうかな、星屋みたいに。」
「はは、淳一も、門下生ってことか。」
「でも門下生になると、清水のことを、ちさとお嬢さまって呼ばなきゃなんないぞ。」
「はは、俺は構わないが、徹は嫌なのか?」
「う~ん、そうでもないか。」
「じゃあ、門下生の中で誰がちさとお嬢さまに気に入って頂けるかって勝負をするか?」
「そんな哲平有利な勝負、受けられねえ。」
「ははは。」

 清水ちさとか…、元気があってかわいくはあるな。
 おっと、待て、今はテストに向けて集中だ。
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林徹-01 [F組三国志-03]

 あっぶね~、遅刻ぎりぎりだった~。
 コンビニでのんびりしすぎたな。
 でも、あの雑誌はちょっと見ておきたかったし…。

「おい林、遅いぞ~、ほい、F組通信。」
「おお、サンキュ~、正信。」

 F組通信、いつもながら綺麗に仕上がってるな~、とてもクラス新聞のレベルじゃないぞ。
 毎号、山影さんの絵が添えてあって。
 ここのところハイペースで発行されてるけど大変じゃないのかな。
 哲平は、文章データと絵のデータを、山影さんがちょちょいと整理して、あっという間に完成とか言ってたけど。
 えっと…。

『ノーコンのお知らせ』
 何? 何のことだ?
『テスト二週間前から部活も停止になりますから、それに合わせてテスト対策企画を行います。
 参加はもちろん自由。
 授業ノートは各自がきちんととっているとは思いますが、この機会に他の人のノートの作り方とか参考にしても良いのではという意見が出ました。
 そこで、みんなのノートを見せ合って評価し合う、ノートコンテスト、略してノーコンを開催します。
 コンテストは…。』
 なるほど、各教科ごとにみんなで投票して、上位者の所属チームに団体戦のポイント加算か。
 俺もチームに貢献したいが無理だぞ、俺の字は自分でも読めない時があるからな。
 テストで高得点とって貢献するしかない。

「林くんは問題予想ゲームって得意そうじゃない?」
「えっ、清水さん、なんのこと?」
「あら、まだそこまで読んでなかったんだ。
 ほら、ここ。」
「ああ、これか…。」

『問題予想ゲームをやりましょう』
 これも、テスト対策企画ってことだな。
『やはり自由参加ですが、チームリーダーの了解はとってあります。
 チームごとで、教科ごとに、テストに出そうな問題を予想して発表して貰い、予想した問題の的中率とその問題の配点などで得点を決定します。
 各チームが予想した問題はクラス全員で共有しますが、どのチームからの問題かはテスト終了後の審査が終わるまで、審査員に漏れないようお願いします。
 より厳正な審査のためです。
 なお、審査員は赤澤、秋山の他、外部有識者を予定しております。』

「なるほど、こういうゲームにすれば、自分のチームのためだけでなくクラスみんなのためにもなるってことだね。」
「どう、私のお父さまの発案?」
「うん、これで他のクラスに平均点とかで負けたら恥だな…。
 で、どうして、清水が自慢げなんだ?」
「だって、私のお父さまなんだもの。」
「はいはい、問題予想ゲームの方は俺でもチームに貢献できそうだ。
 えっと、提出期限は…、そうか、リーダーの正信が取りまとめるのではなくて、各チームに担当者か…。
 お~い、正信~。」
「なんだ~、林~。」
「問題予想ゲームの担当、やっても良いぞ~。」
「おう、有難うな~、頼むよ~。」
「ふふ、林くん、やる気満々ね。」
「そりゃあな、数学小テスト団体戦では、淳一のいるチーム麻里子に負けて、哲平のチームに負けてと連敗中だろ。
 今度はビッグイベントだから、ここで勝って借りを一気に返さないと…。」
「返さないと?」
「ずっと二人のパシリになっちまう。」
「はは、三人でそんな勝負してたんだ。」
「しかも、言い出したのが自分だったりする、あのチーム麻里子には絶対負けないと思ってたのに…。」
「ふふ、林くんは、あのチームを外見で判断してたのね。」

 ほんとにそうだ、岡崎、田中、星屋、平岩…、足を引っ張りそうな奴ばかりだと思ってた。
 そしたら、あいつらそれなりに…、星屋なんて二回とも満点で俺より上なんてな。
 次は教科も多いから…、もう、負けられね~。
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清水ちさと-05 [F組三国志-03]

 ふ~、今日の授業は濃かったな~、疲れた~。
 でも、何とかなりそう…。
 あらっ、星屋くん、麻里子さんと…、はは、へい、がってんで、なんて言ってる。
 真面目なのか、ふざけているのかよく分からない人だな~。
 話しは済んだみたいね。
 ふふ、それじゃあ…。

「ねえねえ、星屋くん、姉御との世界に私が入っちゃ嫌かな?」
「えっ…、そんなこと考えたことなかったけど。」
「ちさとお嬢さまはね、なかなか、おてんばぶりを発揮できてなくて、ちょっと欲求不満なの。」
「ご両親の前では、はめをはずせないのですね。
 でも、ちさとさんは…、姉御と子分の自分…、え~っと、どんな役柄で?」
「そうね、姉御の命を狙う刺客とかさ。」
「え~、ち、ちさとさんが…、そしたら、自分はどうしたらいいのか…、会話出来ないし。」
「そうね、じゃあ、麻里子さまに、こっちでの役もって、お願いしてくれないかな、いまいちキャスト不足で、幅が広がらなくてさ。」
「う~ん。」

 うん、悩んでる悩んでる。
 星屋くんは根が真面目だからかわいいのよね…。

「清水さん。」
「あっ、林くん、なに?」
「期末考査に向けては、どう?」
「そうね、一通り真面目にやってるわよ。
 まあ、教科によっての役作りが難しいっ、てとこだけどね。」
「えっ、どういうこと?」
「ふふ、昨日は、林くんの解けなかった問題、真っ先に解いたでしょ。」
「あれは、まじでくやしかった~、だってさ、数学はずっと俺が教えてたじゃん。」
「まあ、昨日は数学の得意な女の子を演じてたのよ。」
「え、演技ってこと?」
「そしたら、ほんと、たまたまだったんだけど解けちゃったのよ、あの問題。
 でさ、今日はこれ。」
「あっ、メガネ。」
「どう? メガネをかけるとほんとに数学の得意な女の子って雰囲気にならない?
 で、英語の時は帰国子女っぽくね…。」
「あ~、だめだ、これじゃチーム正信、また負けだ~。」
「何言ってるのよ、外見だけじゃないわよ、ほんとに良い役者はとことん役にこだわるものなの。
 チーム正信の勝利に向けてしっかり準備してるわよ。」
「ほんとに?」
「林くん、ちさとさんなら大丈夫だと思うよ、自分も聞かれたとこ少し教えたけど、質問はポイントをはずしていなかったからね。」
「えっ、星屋、ちさとさんって呼んでんだ。」
「も~、和彦さんはちゃんと、ちさとお嬢さまって呼んでくれなきゃ。」
「えっ? 和彦さん? お嬢さま?」
「はい、ちさとさまは、赤澤先生の娘ですから、お師匠さまの門下生である自分は、ちさとお嬢さまと呼ばさせて頂いております…。」
「え~っと、よく分かんない…、演劇部の延長ってこと?」
「ふふ、そんなレベルじゃないけど…、まあ、林くんにはお父さまの深い思いは理解出来ないだろうから、今はそれで良いわよ。」
「う~ん、なんかなぁ~。」
「はは、林くんも、お父さまの門下生になる?」
「門下生? 門下生になったら?」
「私のことは、ちさとお嬢さまって呼んでね。」
「え~。」
「お師匠さまは立派なお方です、門下生になられて損はないと思います。」
「う~ん、考えておくよ。」

 門下生か…、そうよね、もっと人数増やしておかないと、文化祭で劇とまではいかないよね…。
 でも、テストが終わってからかな。
 ふふ、さりげなく林くんや星屋くんよりテストの順位が上だったら…、お嬢さまから女王さまに格上げとか。
 その方がインパクト強そうだし。
 領民をいたぶる嫌われ者の女王さま、そんな役もやってみたいわね。
 でも、女王さまに虐げられ苦しめられている領民たちを救おうと立ち上がる、一人の名もなき乙女とか…、謎に包まれた魔法使いの老婆…。
 ふふ、色々な役をやってみたいな。
 でも、まずは文化祭で、お嬢さまか…。
 おっと、その前にテストだから…。
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清水ちさと-04 [F組三国志-03]

「お父さま。」
「どうした、ちさと。」
「お父さまは、昨日、小山先生とどの様なお話しをされたのですか?」
「まあ、テスト団体戦のこととかね、とりあえずは次の授業がF組のみんなにとって、より有益になるよう、授業内容のお願いをしておいたよ。」
「さすがお師匠さまです、学問所の見習い先生にもご指導なさるなんて。」
「和彦、指導じゃないよ、簡単に説明させて貰っただけさ。
 で、これが次回の授業に向けたプリント。」
「えっ、先回よりずいぶん多くないですか…、お父さま?」
「小山先生にもこれを渡して、テスト範囲まで一気に済ませて貰おうと考えている。
 密度が高くなるから、ついて行けない人が出てくるかもしれないけど、そこは復習で補う。
 予習に比重を置いていた部分を、復習に回すと考えてくれてもいい。
 とにかくテスト範囲まで早めに済ませて、後に余裕を作るという作戦さ。」
「ということは、予習は軽めでも良いってことですか?」
「うん、でも一度はこのプリントに目を通しておいて欲しいかな。」
「じゃあ省吾、プリントを配る時に、そのあたりの事も話しておいた方が良いわね。」
「ああ、美咲、頼むよ。
 そうだ、和彦、プリントの印刷とか、美咲の手伝いを頼めないかな。
 俺は、別で作っておきたいプリントがあってさ。」
「承知いたしました、お師匠さま。」
「お父さま、私もお手伝いしますわ。」
「おお、ちさと、有難うな。」
「いつも美咲さまにはご迷惑をおかけしてしまって。」
「あら、和彦さん、お父さまとお母さまは楽しんでやってるのよ、ね、お母さま。」
「ふふ、そうね、夫婦で一緒に働くって楽しいことなのよ、和彦。」
「でも、お師匠さま達は何時も忙しそうです。」
「ああ、美咲にはテストが終わったら少しゆっくりしてもらうつもりだよ。
 俺はいつも適当だから。」
「そういえば、お父さまって授業中はあまり目立たないですね。」
「まあ、授業と違うところを学習してることが多いからな。」
「えっ?」
「数学の時間は数学やってるけど、高三の内容だったりする。」
「でも…、お師匠さまが先生に注意されたりしないのは、こっそりやってるからですか?」
「ふふ、先生方も省吾が高一の内に高三までの範囲を終わらせるつもりだってご存知なのよ。」
「ほんとに!?」
「ああ、中二の終わり頃から高校の学習内容に入っていたからね。
 時間の無駄を減らしたかったから、高木先生に相談したんだ。」
「そしたら高木先生が色々動いて下さったそうなの。
 で、最近は、私が職員室へ行くと、なぜかすぐに省吾の話題で盛り上がるのよね~、先生方。
 大学はどこを目指してるとか、将来は理系か文系か、とか…、いつ結婚するのか、なんて…。」
「あら~、お母さまったら、職員室でものろけて来るのですか?」
「う~ん、私はそんなつもりじゃないのだけど。」
「はは、でもね、まだ先生方にも話してない企みがあって微妙に進行中なんだ。」
「えっ? お師匠さま、どんな企みなのです。」
「鶴翼の陣には秘密があってね、実は教室の後ろの方こそが重要なんだ。」
「えっ、後ろの方は寝てたい人のためとか…。」
「昨日誰が座ってた?」
「え~と、哲平さん、麻里子さん、うちのチームの正信くん、お父さまとお母さま、誰も授業中に寝てたいお人じゃないわね。」
「もちろんさ、で、三人のリーダーと美咲は授業中に余裕があると感じたら、自分の苦手なとこの学習に取り組んでいたんだ。
 前の席で先生と向き合う人たちが頑張ってくれてたから、ずいぶん自分の学習がはかどったみたいだよ。」
「え~っと真面目に授業に取り組むための鶴翼の陣だと思ってたけど…。」
「はは、これから、鶴翼の陣は変えていきたいっていうか変わっていくと思っている。
 根本は、授業は何かってことだよ。」
「授業は教えて貰う場ですよね。」
「まあそうだけど、自分から学習に取り組んだら、教えて貰う必要のないことはいくらでもある。
 自分で、教科書や参考書を読めば理解出来るだろ。
 教科書に書いてあること以上の、内容の濃い授業は大いに聞くべきだけどね。
 大きな声じゃあ言えないが、F組のメンバーが聞く価値のない部分が授業中に結構あると思わないかな?」
「そう言われてみると…、がんばろうってモチベーションあげても、いまいち集中できなかった授業は…。」
「無駄でしょ、その時間を自分の苦手克服に当てた方が有効だし、哲平なんて部活でずいぶんな時間を費やしているから、はっきり言って学習時間は貴重なんだ。
 授業時間をより有効に生かすことを、F組のみんなが考え始めたら、鶴翼の陣はその形を変えるということだな。」
「自分は、最前列で岡崎たちへ刺激を与えて、と考えていたのですけど。」
「その必要はもう無いのじゃないかな、彼らも自覚し始めてる。
 それより、後ろへ下がって自分の時間を有効に使い、岡崎たちに教える時のことを考えてた方が効率的かもしれないよ。」
「はい、一度、麻里子さまとも相談してみます。」
「ふふ、姉御じゃなくて、麻里子さまなのね。」
「この世界にいる時は、ってことで、ちゃんと麻里子さまのお許しも得てあります。」
「そうなんだ。」
「でも、お師匠さま、自分が陣の後方へ下がると、ちさとお嬢さまのお世話が出来なくなりますが。」
「ちさと、どうする?」
「私も…、教科によって動いても良い訳だから、はは、和彦さんが近くにいなくても大丈夫よ。」
「はは、和彦はちょっと残念そうだな。」
「は、はい…、ちさとお嬢さまは、自分の大切な味方ですから…。」

 あっ、それって…、私のことを大切に思ってくれてるってこと?
 星屋くん、はっきり言ってくれた。
 ほんとに積極的になろうとしてる現われなのかな…。
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清水ちさと-03 [F組三国志-03]

 さ、授業も終わったし、今日は…、あらっ?

「小山先生、どうかされました?」
「ああ、確か清水さんだったね。」
「はい。」
「今日の授業は大失敗だったからみんなに謝らなきゃ、と思って。」
「そうなんですか…、え~っと、じゃあ。
 お~い、みんな~、小山先生よ~!」
「声、でかいね。」
「ふふ、演劇部で鍛えてますから。」

「F組のみんな、今日は緊張しすぎてごめんな。」
「はは、仕方ないですよ、鶴翼の陣はかなり攻撃的な陣形ですからね。」
「公民の先生もびびってましたよ~。」
「実は昨日、教育実習の先生にはかなり酷かも、なんて話しをしてたのです。」
「あっ、黒川くんそれで…、有難うな。」
「へへ。」
「C組の授業は普通にやれたので油断もしてた、でも、この席の配置…、そうか、鶴翼の陣なんだ。」
「どうでした? 鶴翼の陣。」
「C組とは雰囲気がずいぶん違っていて…、正直言ってプレッシャーが強過ぎだったよ。」
「でも、俺らのやる気の現れだから先生も許可してくれたのです。」
「すごいね、自分の高一の頃はC組みたいな普通のクラスだったから。」
「まあC組とは…、先生、小テストの平均点の差、ご存知です?」
「ああ、F組は前回の数学小テストでダントツだったと、さっき聞いたよ、前もって聞いていればもう少し心の準備が出来たのに。」
「はは、その前の小テストは、他のクラスと大差なかったのですけどね。」
「えっ、そうなの? じゃあ短期間で大きく差がついた理由は?」
「やっぱ赤澤夫妻のおかげでしょ。」
「えっ、赤澤夫妻?」
「あら、私たち婚約はしてるけど、結婚はまだよ。」
「あ~ん、お母さまったら、それじゃ娘の立場が~。」
「ちさとは美咲の隠し子だったのか?」
「いつの間に?」
「おいおい、そんな話ししてたら小山先生がわかんないだろ。」
「ぼくもわかんない。」
「岡崎は黙ってなって。」
「小山先生、私たちの数学の先生は、実質、赤澤さんなんです。」
「大久保先生には内緒ですけどね。」
「いや、もう大久保先生も気付いてるだろ。」
「大久保先生、自信失ってないのかな~。」
「赤澤さんって?」
「彼です。」
「ども。」
「君がみんなに数学を教えたの?」
「そうですね…、直接教えることもあったけど…、ほんとの先生はクラスのみんなです。
 自分は、少々策略を練っただけで、後はみんなの実力ですよ。」
「お師匠さま、そこまでご謙遜なさらなくとも、みなの実力を引き出したのはお師匠さまのお力ですから。」
「はは、嶋は星屋の真似か?」
「ははは。」
「赤澤くん、もっと話しを聞かせてくれないかな?」
「良いですけど、とりあえずみんなは部活とかあるんで、ここで区切りをつけますね。」
「あ、すまん。」
「じゃあ美咲。」
「うん。
 みんな、明日も鶴翼の陣で行くわよ。」
「おう。」
「それから、一学期期末考査まで日があると思わないでね。
 こっちのチーム戦も、反対意見が出なかったから、配ったプリント通りで行くわよ。」
「うお~、ガチンコ勝負、燃えるぜ。」
「個人賞もあるんだよな。」
「チーム対抗だけど、大きな目標はF組が一年のクラスでダントツ一位になることだからね。
 みんなで結果を出して楽しい夏休みを向かえましょう。」
「美咲は省吾さんとの楽しい夏休みを思い描いていそうね。」
「当たり前でしょ、もうワクワクよ、でもその前に、そのために。」
「あたしゃ彼氏いないけど、しゃ~ないから付き合ったげるよ。」
「ははは。」

 確かに期末考査で結果を出しておけば、というより、結果を出さないとね~、予備校とか進学塾の夏期講習には行かないって、親に宣言したから。
 クラス順位は、みんなもがんばりそうだから難しそうだけど、学年順位で結果を示さないとね。
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清水ちさと-02 [F組三国志-03]

 さてと、数学の授業が始まるから、頭のスイッチを切り替えなきゃね。
 清水ちさとは数学の得意な女の子、予習もきちんと済ませてある、数学の授業は大好きで…。
 う~ん…、まだ役になりきれてないかな…。
 ふふ、自己暗示、数学の得意な女の子になりきれたら、ほんとに数学が得意になるかもって。
 省吾さんのアドバイスは、なんか不思議。
 演技の練習しながら学習への集中度を高めるなんて、考えもしなかったわ。
 さ~、大好きな授業の始めは、やっぱ先生の自己紹介なんだろうな、教育実習生だから。

「えっと、みなさんこんにちは。
 教育実習でお世話になります、こ、小山勇です。
 私はこの高校の卒業生で…。」

 うわ~、先生、緊張してる~。
 そりゃそうか、慣れてるわけじゃないし、この席の配置じゃプレッシャーも大きいわね。
 公民の先生も、いつもと違って緊張してたみたいだったもんな。
 私があそこに立つとしたら…、やっぱ何事にも動じないベテラン教師。
 これくらいの舞台がこなせなかったら、大舞台なんて無理でしょ。
 でも、舞台は観客との距離が離れているから、どうなのかしら?
 今日部活の先輩に訊いてみようかな。
 おっと、数学、数学。
 でも、このあたりは教科書と省吾さんのプリントで理解済みなのよね。
 こんな時、先生の話しは適当に聞き流して、練習問題を解いてみたり、先の内容の予習をしたりしても良いって省吾さんは言ってたけど…。
 あれっ?
 あの数式おかしくないかな?
 おっ、みんなもざわついてる。

「先生、その数式違ってませんか?
 エックスが抜けてるのか、えっと…。」
「あっ、ご、ごめんごめん、君の言う通りエックスが抜けてたよ。」

 うわ~、先生、ミスして、さらにガチガチじゃん。
 手も震えてるし…。

「先生、俺代わりに書いたげるよ。」
「おっ、林、かっこいいぞ~。」
「はは、まかせとけ。」

 はは、林くんたら、調子に乗って。

「さあ書けた、はい、この例題解ける人。」
「林~、先生の仕事取っちゃだめだぞ~。」
「ははは。」
「解けない人を聞いた方が早いんじゃないのか。」
「うん、そうかもな、まあ面倒だから俺が解いておくよ。」
「あっ、ずっる~い。」
「そんな簡単な問題解いたっていばれんぞ。」
「ははは。」
「さあ、解けた、ついでに解説もしようか?」
「必要な~し!」
「じゃあ、続けて、次の問題。」
「ちょっと待て、徹。」
「あっ、淳一、質問か?」
「な、訳ないだろ。
 昨日予習していてちょっと面白い問題見つけたんだ、次は俺にやらせろ。」
「え~。」
「林、替われ~。」
「替わってやれよ。」
「ち、仕方ないな、淳一、つまんない問題だったら許さないぞ。」
「はは、ちょっとひねりが入るから徹に解けるかな。」
「お~、バトルだ~。」
「林、解けなかったらチームの恥だと思えよ。」
「それより、みんながあっさり解いたら、チーム麻里子のポイントダウンだよな。」

 はは、みんな小山先生そっちのけで勝手に盛り上がってる。
 でも、一応、数学やってるのよね。
 え~と、あっ、応用ってことか、これは…。

「あっ、解った。」
「えっ、まじ。」
「ちさと、早すぎ。」
「あっ、そうか、俺も解けたぞ、お~い林、まだ解んないの~?」
「え~、解んね~。」
「はは、じゃあ、清水さんに解いて貰って、解説は小山先生にお願いするかな。」

 ふふ、黒川くんは小山先生に授業をお返しするつもりだったのね。
 さ~て、たぶん間違ってないと思うぞ~。
 なんたって数学は得意だから。
 うそだけど。

「先生、どうでしょう?」
「うん、いいよ、林徹くん、黒川淳一くん、そして清水ちさとさんありがとう。
 じゃあこの問題のポイントを確認してみようか。」

 小山先生、少し落ち着いたみたい。
 はは、先生の話しは適当に聞き流そうかと思ってたけど、暖かく見守ってあげなきゃだめよね。
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清水ちさと-01 [F組三国志-03]

「ちさと、午前の授業どうだった?」
「まあまあってとこね、席が変わって新鮮だったから授業に集中できたかしら。
 そうそう、ちょっとした発見があったわ。」
「なに?」
「隣の星屋くんがさ。」
「あのオタクっぽくて頼りなさそうな人?」
「はは、美香もそう思ってたのね、それが結構頼れる人だったのよ。」
「そうなの?」
「うん、授業でちょっと分かんなかったとこ訊いたら、分かり易く教えてくれてね。
 テスト団体戦が始まってから、チームのメンバーに教えるようになり、自然と教えることを意識しながら学習するようになったんだって。」
「へ~、ということは頭良いんだ、彼。」
「と、思うわ。」
「人は見かけによらないものなのか~。」

 ほんとに見かけによらない、と言うよりきちんと接しないと彼の良さとか分かんないってことだろうな。
 ふふ、ちさとは味方だよ、星屋くん。

「ちさと、午後の数一って教育実習の先生なのよね。」
「あっ、そうだった、省吾さんの予習プリント…、じゃなかった、お父さまの予習プリントを…。」
「えっ? お父さま?」
「うん、省吾さんは私のお父さまってことになったの。」
「どういうこと?」
「私が演劇部に入ったのは色々な役を演じてみたかったからなのだけどね、今は道具を作ったり基礎練習ばかりで、役を演じるなんて全然だめ、って話したことがあってね。
 省吾さんは、それを覚えていてくれて、文化祭のネタになるかどうかは微妙だけど、ちょっと遊んでみないかって。」
「お遊び?」
「うん、最初はそう思ってた。
 でもね、今日気付いたのだけど、私のお父さまは色々企んでたの。
 和彦さんとかが絡んでくるのだけど…、あっ和彦さんって、星屋くんのことよ。
 そのことに和彦さんも気付いて、すごく嬉しそうだった。」
「う~ん、よく分かんないわ。」
「ふふ、しばらくすれば分かると思うから、ちょっと待ってて。
 で…、美香の役はね、十三歳のおてんば娘の友達…、はは、やっぱ近所の嫌なおばさんかな~。」
「なによ、それ!」
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