原崎理沙-03 [F組三国志-05]
ふわ~、今日は球技大会か…。
夕べは、大地さんのこと考えてたらよく眠れなかった。
期末考査が終わってから気が抜けてるってことも有るけど。
まあ、ドッジボールで当てられないように頑張るか。
「理沙、男子バスケの応援、行くのでしょ?」
「も、もちろん。」
「一回戦目、もうすぐよ。」
「ねえ、玲菜は誰の応援?」
「誰って、みんなの…、あっ、理沙は特別な誰かさんの応援なのね。」
「えっ、えっと…。」
「ふふ、嶋くんでしょ?」
「えっ?」
「省吾さまには美咲さま、哲平さんは静さん、後の人は理沙にとって問題外だろうから、残るは嶋くんしかいないわね。」
「断言するか~。」
「違うの?」
「へへ、ばれちゃしょうがない。」
「でも、競争率高いわよ。」
「う~ん。」
「うちのクラス、カップルの成立が続いてるから、みんな刺激されちゃってさ。」
「そうよね…、そういう玲菜はどうなの?」
「私は中学から付き合ってる先輩がいるから。」
「あっ、そうなんだ、いいな~。」
「ふふ、嶋くんなら、理沙とお似合いじゃない。」
「そ、そうかな、でも、告ってだめだったらって思うとね…。」
「のんびりしてたらだめよ。」
「うん…。」
試合が始まった。
スポーツしてる男の子ってかっこいい。
大地さん、動きが良いな。
「F組がんばれ~!」
「哲平さ~ん!」
「嶋! いけ~!」
大地さんボールをとった。
省吾さまにパス。
シュート。
はいった~!
「ナイッシュ!」
「大地さん、ナイスパス!」
あっ、こっち見てくれた。
へへ、大地さんって呼んでるの私だけかも。
あっ、今度は大地さんから哲平さんへパスが通って…。
シュートも決まった!
大地さんボールについてくの早い。
またボールをとった。
右に省吾さま、左に哲平さん。
あっ、二人同時に切り込んで、大地さんからのパスは省吾さまが受け取って…。
す、すごい、あっと言う間に省吾さまから哲平さんに渡って、シュートが決まった。
すごいチームワークだ。
「ナイッシュ、哲平!」
「いいぞ~!」
「大地さん、すてき~!」
「省吾さま~!」
なんか圧勝って感じだ、球技大会特別ルールだからもうすぐ半分終わるけど、二十二対四。
ふふ、応援でも圧勝ね、F組の。
えっと、休憩は…、スポーツタオルとドリンク持ってきたけど…。
ええい、行くしかない。
ちょっと恥ずかしいけど…。
時間だ。
「お疲れ~。」
「おう。」
「圧勝だよな。」
「油断は禁物だぞ。」
「今日はシュートが冴えてるね、哲平。」
「嶋のパスがよく通ってるから。」
「はいタオル、省吾、お茶少し飲む?」
「サンキュー。」
「哲平さん、どうぞ。」
「有難う、静。」
「大地さん、タオル、スポーツドリンクで良かったかしら。」
「うん。」
「あれっ、何時の間に、理沙?」
「へへ、どさくさに紛れてしまいました、美咲さま。」
「り、理沙の声大き過ぎ、大地さんなんて他に誰も呼ばないだろ。」
「やっぱ、迷惑だったかしら…?」
「そんなことはない。」
「嶋くん、活躍の影に原崎理沙有りってこと?」
「美咲さま…。」
「さ、後半も気合入れて行くぞ。
ただし、後の試合も考えに入れて、体力温存で行こう。
ファイブゴール差になるまでは軽く流し、露木と森は次の試合に備えてパスのタイミングとかの確認をしていても良いよ。」
「はは、試合中に練習出来るとは思わなかったな。」
「嶋は一番動いてるから、ちょっと控えめにな。」
「おう、了解。」
夕べは、大地さんのこと考えてたらよく眠れなかった。
期末考査が終わってから気が抜けてるってことも有るけど。
まあ、ドッジボールで当てられないように頑張るか。
「理沙、男子バスケの応援、行くのでしょ?」
「も、もちろん。」
「一回戦目、もうすぐよ。」
「ねえ、玲菜は誰の応援?」
「誰って、みんなの…、あっ、理沙は特別な誰かさんの応援なのね。」
「えっ、えっと…。」
「ふふ、嶋くんでしょ?」
「えっ?」
「省吾さまには美咲さま、哲平さんは静さん、後の人は理沙にとって問題外だろうから、残るは嶋くんしかいないわね。」
「断言するか~。」
「違うの?」
「へへ、ばれちゃしょうがない。」
「でも、競争率高いわよ。」
「う~ん。」
「うちのクラス、カップルの成立が続いてるから、みんな刺激されちゃってさ。」
「そうよね…、そういう玲菜はどうなの?」
「私は中学から付き合ってる先輩がいるから。」
「あっ、そうなんだ、いいな~。」
「ふふ、嶋くんなら、理沙とお似合いじゃない。」
「そ、そうかな、でも、告ってだめだったらって思うとね…。」
「のんびりしてたらだめよ。」
「うん…。」
試合が始まった。
スポーツしてる男の子ってかっこいい。
大地さん、動きが良いな。
「F組がんばれ~!」
「哲平さ~ん!」
「嶋! いけ~!」
大地さんボールをとった。
省吾さまにパス。
シュート。
はいった~!
「ナイッシュ!」
「大地さん、ナイスパス!」
あっ、こっち見てくれた。
へへ、大地さんって呼んでるの私だけかも。
あっ、今度は大地さんから哲平さんへパスが通って…。
シュートも決まった!
大地さんボールについてくの早い。
またボールをとった。
右に省吾さま、左に哲平さん。
あっ、二人同時に切り込んで、大地さんからのパスは省吾さまが受け取って…。
す、すごい、あっと言う間に省吾さまから哲平さんに渡って、シュートが決まった。
すごいチームワークだ。
「ナイッシュ、哲平!」
「いいぞ~!」
「大地さん、すてき~!」
「省吾さま~!」
なんか圧勝って感じだ、球技大会特別ルールだからもうすぐ半分終わるけど、二十二対四。
ふふ、応援でも圧勝ね、F組の。
えっと、休憩は…、スポーツタオルとドリンク持ってきたけど…。
ええい、行くしかない。
ちょっと恥ずかしいけど…。
時間だ。
「お疲れ~。」
「おう。」
「圧勝だよな。」
「油断は禁物だぞ。」
「今日はシュートが冴えてるね、哲平。」
「嶋のパスがよく通ってるから。」
「はいタオル、省吾、お茶少し飲む?」
「サンキュー。」
「哲平さん、どうぞ。」
「有難う、静。」
「大地さん、タオル、スポーツドリンクで良かったかしら。」
「うん。」
「あれっ、何時の間に、理沙?」
「へへ、どさくさに紛れてしまいました、美咲さま。」
「り、理沙の声大き過ぎ、大地さんなんて他に誰も呼ばないだろ。」
「やっぱ、迷惑だったかしら…?」
「そんなことはない。」
「嶋くん、活躍の影に原崎理沙有りってこと?」
「美咲さま…。」
「さ、後半も気合入れて行くぞ。
ただし、後の試合も考えに入れて、体力温存で行こう。
ファイブゴール差になるまでは軽く流し、露木と森は次の試合に備えてパスのタイミングとかの確認をしていても良いよ。」
「はは、試合中に練習出来るとは思わなかったな。」
「嶋は一番動いてるから、ちょっと控えめにな。」
「おう、了解。」
原崎理沙-02 [F組三国志-05]
嶋くん…、大地さんが隣に座ってる。
でも、だからって…。
つかの間の幸せってことかな…。
「ねえ、原崎さん。」
「は、はい。」
「自分でデザインしたものを、って話していたけど、デザインとかやってるの?」
「デザインと言うより、私は手芸をやってるからって今日の参加者に選んで貰えたのです、省吾さまに。」
「手芸?」
「はい、何か関係のある工場かと思っていましたので全然違っていてびっくりでした。
でも、金属を使ったアート作品のことを思い出しまして。」
「アート作品か…。」
「省吾さまの話しを聞いてたら…、大地さんと一緒に私もお手伝い出来そうです。」
「ありがとう、オーダーメイドの金属装飾なんて、二人から提案されなかったら思いもしなかったよ。」
「道具を持たない素人が簡単に作れるものでは有りませんので。」
「う~ん、そこから工房にまで話が…。
工場の製品と全く関係ないものを工房から発信していくことで、会社の活性化を図る。
不用品置き場になってる倉庫の有効利用ということだから了承したけど。」
「あれだけ広い倉庫だと、工房として色々なことが出来そうですね。」
「そうかな?」
「趣味のレベルからお仕事のレベルまで、うまく運営出来れば会社の活性化に繋がると、省吾さまが話してました。」
「チーム赤澤で工房プロジェクトを立ち上げ、初期投資の問題をクリア出来ればってことだったね。
うちに余力が有れば資金を提供出来たが…、まずは倉庫内の不用品を全部片付けて、倉庫を使える状態にすることが私の役目ということだが。
ねえ、嶋くん、倉庫の不用品は売れるのだろうか?」
「はい、業者へ持ち込めばそれなりの金額になると思います。
そうだ、自分、うちと関係の有るリサイクル会社の人と顔見知りです。
資源ゴミを持ち込む時、トラックに乗せて貰ってましたから。
行くと、お菓子を貰えたりして…、工場からもそんなに遠くないです、一度その会社の人に見て貰ってはどうでしょう?
それにしても、社長、ずいぶん溜め込みましたね。」
「はは、昔は製品を大量に作っておいて倉庫に保管、注文に応じて出荷していたけど、最近は必要な物を必要なだけ、という生産方式に変わってきたからね、倉庫に余裕が出来たら、取り敢えずいらないものは倉庫へって感じになってしまってた。」
「うちは倉庫に余裕がないので考えられないことです。」
「そうか…。」
「持ち込むにしても、先方の一番都合の良い所へ持ち込めば、より高値で引き取って貰えるみたいです。
従業員の方に余裕が有るのなら、材質の違う物をバラしておくと先方の手間が減ることになって、やはり高値となります。」
「ずいぶん詳しいね。」
「はは、話し好きのおじさんがいまして、色々教えてくれたのです。」
「紹介して貰えるかな?」
「はい。」
そっか、あれだけの量があると、ちょっとしたことで、ずいぶん金額に差が出るのね。
片付けるの大変そうだけど。
大地さんって、普通に社長と話してる、なんか大人だよなぁ~。
大地さんが説明して、社長がお願いしてる。
あ~、私なんかじゃ相手にして貰えないのかな…。
でも、だからって…。
つかの間の幸せってことかな…。
「ねえ、原崎さん。」
「は、はい。」
「自分でデザインしたものを、って話していたけど、デザインとかやってるの?」
「デザインと言うより、私は手芸をやってるからって今日の参加者に選んで貰えたのです、省吾さまに。」
「手芸?」
「はい、何か関係のある工場かと思っていましたので全然違っていてびっくりでした。
でも、金属を使ったアート作品のことを思い出しまして。」
「アート作品か…。」
「省吾さまの話しを聞いてたら…、大地さんと一緒に私もお手伝い出来そうです。」
「ありがとう、オーダーメイドの金属装飾なんて、二人から提案されなかったら思いもしなかったよ。」
「道具を持たない素人が簡単に作れるものでは有りませんので。」
「う~ん、そこから工房にまで話が…。
工場の製品と全く関係ないものを工房から発信していくことで、会社の活性化を図る。
不用品置き場になってる倉庫の有効利用ということだから了承したけど。」
「あれだけ広い倉庫だと、工房として色々なことが出来そうですね。」
「そうかな?」
「趣味のレベルからお仕事のレベルまで、うまく運営出来れば会社の活性化に繋がると、省吾さまが話してました。」
「チーム赤澤で工房プロジェクトを立ち上げ、初期投資の問題をクリア出来ればってことだったね。
うちに余力が有れば資金を提供出来たが…、まずは倉庫内の不用品を全部片付けて、倉庫を使える状態にすることが私の役目ということだが。
ねえ、嶋くん、倉庫の不用品は売れるのだろうか?」
「はい、業者へ持ち込めばそれなりの金額になると思います。
そうだ、自分、うちと関係の有るリサイクル会社の人と顔見知りです。
資源ゴミを持ち込む時、トラックに乗せて貰ってましたから。
行くと、お菓子を貰えたりして…、工場からもそんなに遠くないです、一度その会社の人に見て貰ってはどうでしょう?
それにしても、社長、ずいぶん溜め込みましたね。」
「はは、昔は製品を大量に作っておいて倉庫に保管、注文に応じて出荷していたけど、最近は必要な物を必要なだけ、という生産方式に変わってきたからね、倉庫に余裕が出来たら、取り敢えずいらないものは倉庫へって感じになってしまってた。」
「うちは倉庫に余裕がないので考えられないことです。」
「そうか…。」
「持ち込むにしても、先方の一番都合の良い所へ持ち込めば、より高値で引き取って貰えるみたいです。
従業員の方に余裕が有るのなら、材質の違う物をバラしておくと先方の手間が減ることになって、やはり高値となります。」
「ずいぶん詳しいね。」
「はは、話し好きのおじさんがいまして、色々教えてくれたのです。」
「紹介して貰えるかな?」
「はい。」
そっか、あれだけの量があると、ちょっとしたことで、ずいぶん金額に差が出るのね。
片付けるの大変そうだけど。
大地さんって、普通に社長と話してる、なんか大人だよなぁ~。
大地さんが説明して、社長がお願いしてる。
あ~、私なんかじゃ相手にして貰えないのかな…。
原崎理沙-01 [F組三国志-05]
えっ、梶田社長、嶋くんのこと気に入ってるとは感じていたけど、梨乃の彼氏にとか考えてるの?
そりゃ、今日の発言…、ふふ、生意気ですが、とか言いつつ嶋くんの発言はしっかりしてたもんな。
私の話にものってくれてた。
あ~、梨乃はどう思ってるのだろう?
嶋くん、大地さん、ほんとは、大地って呼びたい、で、理沙って呼んでくれたら…。
嶋くん私のこと…、私じゃだめかな…。
もう、社長が変なこと言うから意識し過ぎちゃってる、私…。
でもでも、チームの中でも、さりげなくみんなの面倒みてたからな~、大地さん。
はぁ~、亜美も黒川くんと楽しそうだった…。
私も…。
あ~、もう告っちゃおうかな。
でも、だめだったら…。
梨乃みたいな子がタイプだったら…。
食事前の感じでは、私、まだ梨乃に負けてない気がするけど…。
あ~、どうしよ~。
「じゃあ送ってくよ。」
「はい。」
あっ、もうこんな時間か、時間経つの早過ぎ…。
でも、嶋くんと一緒に送って貰える。
「原崎さん、家はどこ?」
「中村公園の近くです。」
「じゃあ先に原崎さんの家で良いかな、嶋顧問。」
「はは、良いですけど、顧問はよして下さいよ。」
「ねえ原崎さん、省吾リーダーに嶋くん、今時の高校一年生は、皆、こんなにしっかりしてるのかい?」
「えっ、まさか…、二人は特別です。
省吾さまレベルの人なんて…、上級生を含めた学校中でもいないと思いますし、しま…、だ、大地さんも…、クラスの同じチームで学習して来て、他の男子とは違うと感じています。
先回のテストでも学年三位でしたから。」
「そうか、それを聞いて少し安心したよ、自分の高校生時代なんて、ただの悪がきだったからね。」
「でもさ、理沙、哲平さんや正信くん、黒川くん、美咲さまや麻里子さんだって…、F組ってレベル高くないかな?」
「うん、そう言われてみると…。」
「お互いに刺激しあって…、みんな頑張ってるから私もって気になってるし。」
そりゃ、今日の発言…、ふふ、生意気ですが、とか言いつつ嶋くんの発言はしっかりしてたもんな。
私の話にものってくれてた。
あ~、梨乃はどう思ってるのだろう?
嶋くん、大地さん、ほんとは、大地って呼びたい、で、理沙って呼んでくれたら…。
嶋くん私のこと…、私じゃだめかな…。
もう、社長が変なこと言うから意識し過ぎちゃってる、私…。
でもでも、チームの中でも、さりげなくみんなの面倒みてたからな~、大地さん。
はぁ~、亜美も黒川くんと楽しそうだった…。
私も…。
あ~、もう告っちゃおうかな。
でも、だめだったら…。
梨乃みたいな子がタイプだったら…。
食事前の感じでは、私、まだ梨乃に負けてない気がするけど…。
あ~、どうしよ~。
「じゃあ送ってくよ。」
「はい。」
あっ、もうこんな時間か、時間経つの早過ぎ…。
でも、嶋くんと一緒に送って貰える。
「原崎さん、家はどこ?」
「中村公園の近くです。」
「じゃあ先に原崎さんの家で良いかな、嶋顧問。」
「はは、良いですけど、顧問はよして下さいよ。」
「ねえ原崎さん、省吾リーダーに嶋くん、今時の高校一年生は、皆、こんなにしっかりしてるのかい?」
「えっ、まさか…、二人は特別です。
省吾さまレベルの人なんて…、上級生を含めた学校中でもいないと思いますし、しま…、だ、大地さんも…、クラスの同じチームで学習して来て、他の男子とは違うと感じています。
先回のテストでも学年三位でしたから。」
「そうか、それを聞いて少し安心したよ、自分の高校生時代なんて、ただの悪がきだったからね。」
「でもさ、理沙、哲平さんや正信くん、黒川くん、美咲さまや麻里子さんだって…、F組ってレベル高くないかな?」
「うん、そう言われてみると…。」
「お互いに刺激しあって…、みんな頑張ってるから私もって気になってるし。」
嶋大地-05 [F組三国志-05]
「ねえ、今日の黒川くんと亜美ってさ。」
「うん、何か急に親密になりましたって雰囲気だったよね。
亜美の、淳一さんって呼ぶ時の表情ったら、もう、恋してますが全開でさ。」
「打ち上げの時に、朋美の前で告って成立したばかりなのにね。」
「朋美はちょっとかわいそうだったな。
あこがれの哲平さんは、どうやら静さんにぞっこんみたい、淳一くん優しそうで良いなぁ~、なんて言ってたら、亜美に目の前で先越されて…。」
「でも彼女はめげないわよ、きっと。」
「性格的には林くんの方がお似合いじゃないのかしら。」
「かもね。」
女の子同士の噂話…、やっぱ淳一は人気者なのか…。
「ね、嶋くんのタイプってどうなの?」
「えっ、タイプ?」
「好きな女の子のタイプ。」
「う~ん。」
「ロングかショートか?」
「えっ?」
「ロングヘアーの女の子かショートカットの女の子か、どちらがお好き?」
「そんなこと考えたことなかったけど…。
あっ、ロングヘアーの梶田さんと、ショートカットの原崎さん…。
そんなこと、ここで答えられる訳ないだろ。」
「ふふ、私のことは理沙って呼んでくれないかな、この前、ちさとが提案してたでしょ。」
「あ、ああ。」
「私のことは梨乃って。」
「あらっ、梨乃お嬢さまじゃなくても良いの?」
「ちさとじゃないわよ。」
「ね、大地さんって呼んでも良い?」
「う~ん、女の子からそう呼ばれたことはないから、ちょっと照れくさいかも。」
「だめじゃないのね。」
「まあ…。」
「あっ、母さんみたい。」
「梨乃、お食事にしましょ。」
「は~い。」
「嶋くん、今日はほんとに有難う。」
「い、いえ、ずいぶん生意気なこと言ってしまって…。」
「はは、生意気なことを言われるだけ、私の脇が甘かったと言うことだよ。」
「そうよね、赤澤くんに嶋くん、高校一年生にすがらなきゃならないなんて、あなた、しっかりして下さいね。」
「ふふ、でも、母さん、省吾さまは高校一年のレベルじゃないのよ、大学生の人たちにも普通に指示出してるし。」
「学年トップなのよね。」
「高校のテストの結果なんて彼の評価には関係ないのじゃないか、なあ、嶋くん。」
「その通りです、自分たちとは、全然違う次元で物事を考えていると感じます。」
「そうなの…、嶋くん、今日工場見学してどうだった?」
「えっ、えっと…。」
「こらこら、嶋くんには今日色々教えて貰ったと、さっき話したろ。」
「どう、何とかなりそうかしら?」
「はい、我らが師匠の省吾やチーム赤澤が動き始めましたから、社長、後は時間との勝負ですか?」
「ああ、高山チーフからはあせってはいけないけど、のんびりしてる余裕はないと言われたよ。」
「そうですか。」
「でも、学生の夏休みを最大限に活用して、チーム赤澤を世に知らしめつつ、会社も再生しましょうって。」
「高山チーフも本気だ。」
「そう言えば、嶋くんのお宅も工場を経営していらっしゃるとか?」
「はい、機械部品を中心に。」
「やはり、不況の影響は厳しいのかしら?」
「いえ、全く影響がない訳では有りませんが、父のリスク分散型経営が今のところは上手く行ってるみたいです。」
「そっか…。」
「おいおい、そんな目で見るなよ。」
「はは、社長、大変ですね。」
「まあな、でもね嶋くん、娘の梨乃は優しい子で、母親とは似てないから安心してな。」
「と、父さん…。」
「あなた、嶋くんも困った顔なさってるでしょ。」
「はは、梨乃もぼんやりしてると、原崎さんにとられちゃうぞ。」
「も~、まだ、そんなんじゃないのに~。
御免ね、嶋くん、理沙。」
「う、うん。」
何やら話しが変な方向へ進んでしまった。
梨乃さんは、まだ、って言わなかったか、ということは…。
原崎さんは黙ったまま、さっきは、大地さんって呼んでも良いかな、なんて言ってた。
この状況ってラッキーなのかやばいのか…。
二人のこと、良く知ってる訳じゃないし、二人とも嫌いな訳じゃない。
ロングかショートかって?
外見の問題じゃないだろ。
二人ともかわいいけど、原崎理沙は…。
「うん、何か急に親密になりましたって雰囲気だったよね。
亜美の、淳一さんって呼ぶ時の表情ったら、もう、恋してますが全開でさ。」
「打ち上げの時に、朋美の前で告って成立したばかりなのにね。」
「朋美はちょっとかわいそうだったな。
あこがれの哲平さんは、どうやら静さんにぞっこんみたい、淳一くん優しそうで良いなぁ~、なんて言ってたら、亜美に目の前で先越されて…。」
「でも彼女はめげないわよ、きっと。」
「性格的には林くんの方がお似合いじゃないのかしら。」
「かもね。」
女の子同士の噂話…、やっぱ淳一は人気者なのか…。
「ね、嶋くんのタイプってどうなの?」
「えっ、タイプ?」
「好きな女の子のタイプ。」
「う~ん。」
「ロングかショートか?」
「えっ?」
「ロングヘアーの女の子かショートカットの女の子か、どちらがお好き?」
「そんなこと考えたことなかったけど…。
あっ、ロングヘアーの梶田さんと、ショートカットの原崎さん…。
そんなこと、ここで答えられる訳ないだろ。」
「ふふ、私のことは理沙って呼んでくれないかな、この前、ちさとが提案してたでしょ。」
「あ、ああ。」
「私のことは梨乃って。」
「あらっ、梨乃お嬢さまじゃなくても良いの?」
「ちさとじゃないわよ。」
「ね、大地さんって呼んでも良い?」
「う~ん、女の子からそう呼ばれたことはないから、ちょっと照れくさいかも。」
「だめじゃないのね。」
「まあ…。」
「あっ、母さんみたい。」
「梨乃、お食事にしましょ。」
「は~い。」
「嶋くん、今日はほんとに有難う。」
「い、いえ、ずいぶん生意気なこと言ってしまって…。」
「はは、生意気なことを言われるだけ、私の脇が甘かったと言うことだよ。」
「そうよね、赤澤くんに嶋くん、高校一年生にすがらなきゃならないなんて、あなた、しっかりして下さいね。」
「ふふ、でも、母さん、省吾さまは高校一年のレベルじゃないのよ、大学生の人たちにも普通に指示出してるし。」
「学年トップなのよね。」
「高校のテストの結果なんて彼の評価には関係ないのじゃないか、なあ、嶋くん。」
「その通りです、自分たちとは、全然違う次元で物事を考えていると感じます。」
「そうなの…、嶋くん、今日工場見学してどうだった?」
「えっ、えっと…。」
「こらこら、嶋くんには今日色々教えて貰ったと、さっき話したろ。」
「どう、何とかなりそうかしら?」
「はい、我らが師匠の省吾やチーム赤澤が動き始めましたから、社長、後は時間との勝負ですか?」
「ああ、高山チーフからはあせってはいけないけど、のんびりしてる余裕はないと言われたよ。」
「そうですか。」
「でも、学生の夏休みを最大限に活用して、チーム赤澤を世に知らしめつつ、会社も再生しましょうって。」
「高山チーフも本気だ。」
「そう言えば、嶋くんのお宅も工場を経営していらっしゃるとか?」
「はい、機械部品を中心に。」
「やはり、不況の影響は厳しいのかしら?」
「いえ、全く影響がない訳では有りませんが、父のリスク分散型経営が今のところは上手く行ってるみたいです。」
「そっか…。」
「おいおい、そんな目で見るなよ。」
「はは、社長、大変ですね。」
「まあな、でもね嶋くん、娘の梨乃は優しい子で、母親とは似てないから安心してな。」
「と、父さん…。」
「あなた、嶋くんも困った顔なさってるでしょ。」
「はは、梨乃もぼんやりしてると、原崎さんにとられちゃうぞ。」
「も~、まだ、そんなんじゃないのに~。
御免ね、嶋くん、理沙。」
「う、うん。」
何やら話しが変な方向へ進んでしまった。
梨乃さんは、まだ、って言わなかったか、ということは…。
原崎さんは黙ったまま、さっきは、大地さんって呼んでも良いかな、なんて言ってた。
この状況ってラッキーなのかやばいのか…。
二人のこと、良く知ってる訳じゃないし、二人とも嫌いな訳じゃない。
ロングかショートかって?
外見の問題じゃないだろ。
二人ともかわいいけど、原崎理沙は…。
嶋大地-04 [F組三国志-05]
話は盛り上がったが、時間通りに今日の予定は終了。
その後梶田社長から…。
「今日は色々有難う、早速明日から工場内の整理に取り組ませて頂きます。
この後、みなさんは?」
「リーダーたちはお買い物、黒川くんと舘内さんは黒川くんの家で食事だったよね。」
「はい。」
「嶋くんは?」
「特に予定は有りませんが。」
「良かったら、うちで晩御飯どうかな?
高山チーフも如何です。」
「自分達はそれぞれ予定が有りまして。」
「嶋くん、理沙、遊びに来てよ。」
「梨乃、良いの?」
「うん、帰りは父さんが送ってあげるのでしょ?」
「もちろんだ。」
「なら安心だね。
嶋くんは、プロジェクト梶田の顧問として、これからも、省吾リーダーと同じように意見を出して欲しいから、今日はゆっくりして行きなよ。」
「えっ、高山チーフ、さっき話してた顧問ってこと、決定ですか?」
「もちろんだよ、俺達にはない視点を持ってるから今後も色々教えて欲しいんだ。
考えても見てよ、大学の教授が工場の実情に詳しいと思うか?」
「う~ん…。」
「はは、ちゃんと家まで送って、家の方にも今日のお礼やプロジェクトに参加して頂くにあたってのご挨拶をさせて欲しい、お願い出来ないかな。」
「社長…、分かりました、家に連絡しておきます。」
「有難うな。」
何かとんでもないことになってしまった気がする…。
親父の考え方、うちの工場のことを伝えて行けば良いのかな。
師匠と同じ様には出来ないけど…。
まあ、自分にとっても勉強になることだとは思う。
おっと、電話しとかなきゃ。
梶田社長のお宅へお邪魔するのは原崎さんと二人、社長の車で移動。
「いらっしゃい、今日はゆっくりして行って下さいね。」
「はい、おじゃまします。」
「嶋くん、理沙、私の部屋に案内するわ、母さん、食事の時間まで良いでしょ?」
「ええ。」
「梨乃んち広いのね。
わっ、素敵なお部屋、センス良いなぁ~。」
「はは、でも、もう他人の家になりそうでね、父さんは先祖からの土地や建物だから簡単には諦めたくないって言ってるけど、会社の危機を乗り越えられなかったら…。」
「そうなんだ…。」
「大丈夫だよ、まだ間に合う、俺も親父達と相談して協力するから。」
「嶋くん、有難う。」
「省吾さまも…、ねえ、みんなの感想とか一通り聞き終わってからの話し凄くなかった?」
「敷地内で有効利用されてない倉庫の活用、余剰人員を使ってリスクの少ない事業展開、学生を巻き込んでのアイデアコンテスト…、聞いてて圧倒させられたな。」
「そのほとんどが、今、無駄になってる部分の活用だから、例え上手く行かなかったとしても、マイナスにはなりにくいって、色々考えてるのよね。」
「うん、さすが師匠だよな、勉強が出来ても仕事の上では使えない人がいくらでもいるって、うちの親父が話してたけど、彼が大学生に指示を出したり社長に話したりしてるとこ見てると、レベルが違うと感じたよ。」
「そうよね、でも嶋くんの話しもすごく参考になったわ。
私もこれから工場内の掃除とか手伝おうって思うの。
それと、プロジェクトの顧問になってくれて有難うね。」
「はは、何か簡単に、されてしまったって感じだけど。」
「梨乃、私もチーム赤澤に登録させて貰ってるから、手伝えることが有れば気軽に声を掛けてね。」
「うん、有難う。」
女の子二人と女の子の部屋で会話してるぞ、俺。
お~、何か幸せな気分。
原崎理沙はやっぱ可愛いし。
これを切っ掛けに…。
その後梶田社長から…。
「今日は色々有難う、早速明日から工場内の整理に取り組ませて頂きます。
この後、みなさんは?」
「リーダーたちはお買い物、黒川くんと舘内さんは黒川くんの家で食事だったよね。」
「はい。」
「嶋くんは?」
「特に予定は有りませんが。」
「良かったら、うちで晩御飯どうかな?
高山チーフも如何です。」
「自分達はそれぞれ予定が有りまして。」
「嶋くん、理沙、遊びに来てよ。」
「梨乃、良いの?」
「うん、帰りは父さんが送ってあげるのでしょ?」
「もちろんだ。」
「なら安心だね。
嶋くんは、プロジェクト梶田の顧問として、これからも、省吾リーダーと同じように意見を出して欲しいから、今日はゆっくりして行きなよ。」
「えっ、高山チーフ、さっき話してた顧問ってこと、決定ですか?」
「もちろんだよ、俺達にはない視点を持ってるから今後も色々教えて欲しいんだ。
考えても見てよ、大学の教授が工場の実情に詳しいと思うか?」
「う~ん…。」
「はは、ちゃんと家まで送って、家の方にも今日のお礼やプロジェクトに参加して頂くにあたってのご挨拶をさせて欲しい、お願い出来ないかな。」
「社長…、分かりました、家に連絡しておきます。」
「有難うな。」
何かとんでもないことになってしまった気がする…。
親父の考え方、うちの工場のことを伝えて行けば良いのかな。
師匠と同じ様には出来ないけど…。
まあ、自分にとっても勉強になることだとは思う。
おっと、電話しとかなきゃ。
梶田社長のお宅へお邪魔するのは原崎さんと二人、社長の車で移動。
「いらっしゃい、今日はゆっくりして行って下さいね。」
「はい、おじゃまします。」
「嶋くん、理沙、私の部屋に案内するわ、母さん、食事の時間まで良いでしょ?」
「ええ。」
「梨乃んち広いのね。
わっ、素敵なお部屋、センス良いなぁ~。」
「はは、でも、もう他人の家になりそうでね、父さんは先祖からの土地や建物だから簡単には諦めたくないって言ってるけど、会社の危機を乗り越えられなかったら…。」
「そうなんだ…。」
「大丈夫だよ、まだ間に合う、俺も親父達と相談して協力するから。」
「嶋くん、有難う。」
「省吾さまも…、ねえ、みんなの感想とか一通り聞き終わってからの話し凄くなかった?」
「敷地内で有効利用されてない倉庫の活用、余剰人員を使ってリスクの少ない事業展開、学生を巻き込んでのアイデアコンテスト…、聞いてて圧倒させられたな。」
「そのほとんどが、今、無駄になってる部分の活用だから、例え上手く行かなかったとしても、マイナスにはなりにくいって、色々考えてるのよね。」
「うん、さすが師匠だよな、勉強が出来ても仕事の上では使えない人がいくらでもいるって、うちの親父が話してたけど、彼が大学生に指示を出したり社長に話したりしてるとこ見てると、レベルが違うと感じたよ。」
「そうよね、でも嶋くんの話しもすごく参考になったわ。
私もこれから工場内の掃除とか手伝おうって思うの。
それと、プロジェクトの顧問になってくれて有難うね。」
「はは、何か簡単に、されてしまったって感じだけど。」
「梨乃、私もチーム赤澤に登録させて貰ってるから、手伝えることが有れば気軽に声を掛けてね。」
「うん、有難う。」
女の子二人と女の子の部屋で会話してるぞ、俺。
お~、何か幸せな気分。
原崎理沙はやっぱ可愛いし。
これを切っ掛けに…。
嶋大地-03 [F組三国志-05]
「そうだな、えっと…、ストレッチフィルムがね。」
「えっ、それ何?」
「簡単に言えば、原料や製品の輸送時に荷崩れを起こさないため固定するフィルムだけど、それが無造作に捨てられていてね。」
「どういうこと?」
「使用済みのストレッチフィルムはお金になるごみなんだ。」
「資源ごみってことかな?」
「そう、だからうちでは紙とかも剥がしてきちんと分別してる、そうしておくとリサイクル業者が引き取ってくれる単価が上がるらしい、うちはかなり忙しくて余裕がない時以外、ごみもきちんと分別し、資源ごみとして金にしてるんだ、もちろんダンボールとかもね。」
「なるほど。」
「で、工場の作業が優先だけど、いつも忙しい訳ではないから、余裕のある時に空いてるトラックを使ってリサイクル業者の所へ持ち込んでいる、きちんと分別して持ち込めば、それなりのお金を貰えるからね。
引き取りに来て貰うと、お金を払う場合も有るらしい。」
「ということはゴミの処理費用が安く済むってことなんだね。」
「ああ、うちの工場では資源ごみを売って得たお金を社員の福利厚生に当てていてね。」
「それなら従業員のリサイクルに対する取り組み方も真面目なものになるのかな。」
「うん、会社としても、ごみ処理の経費削減と福利厚生の充実と言うことでプラスになってる。」
「ということは、この工場、かなり損してる?」
「鉄屑だって放置しておけばじゃまにしかならないけど、売れば金になる。
作業工程で出る屑はリサイクルに回しているみたいだけど、それとは関係ない資源ごみを結構見かけたからね。」
「嶋、有難う。
みんなに相談、通常のリサイクルは嶋の指摘にそって改善して行けると思うけど、それ以外に製造過程で出る材料の切れ端とかを使って、何か作れないか考えて貰えないかな。
それこそ、ばかげてるかも、とか、的外れかもと思う様なものでもね。
そのままでは、突飛な案でも、そこに違った案を組み合わせて行くと、面白いアイディアとなる可能性がある、原価の安い商品を増やせないかと思ってね。」
「確かに廃棄物置き場には、何かに使えそうな物も有ったわね。」
「でしょ、えっと、嶋には、もっと色々聞きたいけど、他の人の感想とかも聞いておきたい。
みんな、どうかな?」
「ここの部品って色んな形をしているのですね。」
「理沙はそこに興味を持ったの?」
「ええ、どんな形の物でも作れるのでしょうか?」
「梶田社長、どうです?」
「ああ、平面的な物なら余程複雑でない限りどんな形にも加工出来る、立体的なのは制約が有るけど、それなりに作れるよ。
もっとも、我が社の特殊技術ってことでもないけどね。」
「では、自分でデザインしたものを金属で作って貰うことも可能ですか?」
「技術的に問題ないけど、一個だけだと高くつくよ。」
「お金を出せば作れるってことですね、梶田社長。」
「そうだけど。」
「大量生産ばかりが工場じゃないとも思うのです。」
「う~ん、効率とかどうなのかな…。」
「梶田社長、原崎さんの話は面白いと思いますよ。」
「嶋くん、どういうことかな?」
「うちの工場ではトレーニングを兼ねて、製品とは無関係な物を作ることも有るのです。
社員さんが遊びで作った物が結構面白くて、郵便受けとか文鎮とか色々、我が家の郵便受けを見て同じのを作って欲しいという人が居るぐらいで、自分も社員さんに作って貰ったオリジナル文具を友達に自慢してます。」
「そうか、原崎さんもそんな感じで?」
「はい、オリジナルに拘る人は値段を気にしません。」
「うん、良いかも、理沙、嶋、有難う、商品と言えば大量生産だけに目が行きそうだけど、個性的な物が有っても良いよね。」
「師匠、サンプルになりそうなの見せるよ、原崎さんがイメージしてるのも、直ぐには無理だけど教えてくれたら親父を通して作って貰えると思う。」
「梶田社長、この工場では如何ですか?」
「直ぐには難しいが、会社が落ち付いたら考えてみたいかな。」
「ですね、嶋、甘えてしまって良いのか?」
「大丈夫だよ、原崎さんのイメージしてるもの次第では有るけどね。」
「理沙、どう?」
「そ、そんなに複雑な物ではないです…、ちょっとした装飾で…。」
「はは、原崎さん、少しぐらい大変そうな作品の方が職人は燃えるからね。」
そこから話が弾み、色々な提案をさせて貰った。
「えっ、それ何?」
「簡単に言えば、原料や製品の輸送時に荷崩れを起こさないため固定するフィルムだけど、それが無造作に捨てられていてね。」
「どういうこと?」
「使用済みのストレッチフィルムはお金になるごみなんだ。」
「資源ごみってことかな?」
「そう、だからうちでは紙とかも剥がしてきちんと分別してる、そうしておくとリサイクル業者が引き取ってくれる単価が上がるらしい、うちはかなり忙しくて余裕がない時以外、ごみもきちんと分別し、資源ごみとして金にしてるんだ、もちろんダンボールとかもね。」
「なるほど。」
「で、工場の作業が優先だけど、いつも忙しい訳ではないから、余裕のある時に空いてるトラックを使ってリサイクル業者の所へ持ち込んでいる、きちんと分別して持ち込めば、それなりのお金を貰えるからね。
引き取りに来て貰うと、お金を払う場合も有るらしい。」
「ということはゴミの処理費用が安く済むってことなんだね。」
「ああ、うちの工場では資源ごみを売って得たお金を社員の福利厚生に当てていてね。」
「それなら従業員のリサイクルに対する取り組み方も真面目なものになるのかな。」
「うん、会社としても、ごみ処理の経費削減と福利厚生の充実と言うことでプラスになってる。」
「ということは、この工場、かなり損してる?」
「鉄屑だって放置しておけばじゃまにしかならないけど、売れば金になる。
作業工程で出る屑はリサイクルに回しているみたいだけど、それとは関係ない資源ごみを結構見かけたからね。」
「嶋、有難う。
みんなに相談、通常のリサイクルは嶋の指摘にそって改善して行けると思うけど、それ以外に製造過程で出る材料の切れ端とかを使って、何か作れないか考えて貰えないかな。
それこそ、ばかげてるかも、とか、的外れかもと思う様なものでもね。
そのままでは、突飛な案でも、そこに違った案を組み合わせて行くと、面白いアイディアとなる可能性がある、原価の安い商品を増やせないかと思ってね。」
「確かに廃棄物置き場には、何かに使えそうな物も有ったわね。」
「でしょ、えっと、嶋には、もっと色々聞きたいけど、他の人の感想とかも聞いておきたい。
みんな、どうかな?」
「ここの部品って色んな形をしているのですね。」
「理沙はそこに興味を持ったの?」
「ええ、どんな形の物でも作れるのでしょうか?」
「梶田社長、どうです?」
「ああ、平面的な物なら余程複雑でない限りどんな形にも加工出来る、立体的なのは制約が有るけど、それなりに作れるよ。
もっとも、我が社の特殊技術ってことでもないけどね。」
「では、自分でデザインしたものを金属で作って貰うことも可能ですか?」
「技術的に問題ないけど、一個だけだと高くつくよ。」
「お金を出せば作れるってことですね、梶田社長。」
「そうだけど。」
「大量生産ばかりが工場じゃないとも思うのです。」
「う~ん、効率とかどうなのかな…。」
「梶田社長、原崎さんの話は面白いと思いますよ。」
「嶋くん、どういうことかな?」
「うちの工場ではトレーニングを兼ねて、製品とは無関係な物を作ることも有るのです。
社員さんが遊びで作った物が結構面白くて、郵便受けとか文鎮とか色々、我が家の郵便受けを見て同じのを作って欲しいという人が居るぐらいで、自分も社員さんに作って貰ったオリジナル文具を友達に自慢してます。」
「そうか、原崎さんもそんな感じで?」
「はい、オリジナルに拘る人は値段を気にしません。」
「うん、良いかも、理沙、嶋、有難う、商品と言えば大量生産だけに目が行きそうだけど、個性的な物が有っても良いよね。」
「師匠、サンプルになりそうなの見せるよ、原崎さんがイメージしてるのも、直ぐには無理だけど教えてくれたら親父を通して作って貰えると思う。」
「梶田社長、この工場では如何ですか?」
「直ぐには難しいが、会社が落ち付いたら考えてみたいかな。」
「ですね、嶋、甘えてしまって良いのか?」
「大丈夫だよ、原崎さんのイメージしてるもの次第では有るけどね。」
「理沙、どう?」
「そ、そんなに複雑な物ではないです…、ちょっとした装飾で…。」
「はは、原崎さん、少しぐらい大変そうな作品の方が職人は燃えるからね。」
そこから話が弾み、色々な提案をさせて貰った。
嶋大地-02 [F組三国志-05]
あっ、みんな来てる、二十人ぐらいと言うことだから、俺達が最後かな。
でも、大学生と高校一年生って変わった集団…、あっ、原崎理沙も来てるのか…。
「今日のメンバー、揃ったね、みんな、こちらが梶田社長だよ。」
「梶田です、今日は来てくれて有難う。
まずは工場内を案内させて頂いて、その後、会議室で感想などお聞かせ願えたらと考えています。
今日は休日で稼動していませんが、機械の中には不用意に触れると怪我をする危険な物も有りますので、くれぐれもご注意下さい。
それでは、こちらへどうぞ。」
へ~、色んな機械が有るんだ、うちの機械とはずいぶん違うなぁ~。
特殊技術、特殊な機械か、やっぱり他社と違う特色を出さないと企業間の競争に勝てないというのはうちと同じなのだろう。
師匠も大学生も熱心に梶田社長の話しを聞いてる…。
特殊な機械の応用か、確かに師匠の質問通り、特殊だと応用が利きにくくなるってことか。
コストパフォーマンス、うん、親父もよく口にする言葉だ。
稼働率…、この機械…、動いてない時間が長いってことかな?
今度は原材料の搬入から加工、製品の出荷まで、その流れの確認か…。
ロスがないかの見直しってことかな。
はは、女の子たちに師匠が解説を付け加えてる。
そうだよな、俺は親の工場見てるから大体の流れは理解出来るけど、秋山さん達にはな。
えっ、ごみ置き場?
廃棄物も見学か…。
う~ん、そう言えばこの工場って、整理が行き届いてない気がする、雑然とした感じで。
はは、こんなに整理されてなかったら、仁さん、激怒だろうな。
ふ~ん、ごみの分別、普通はこんな感じなのかな…、あれっ?
ストレッチフィルムは…。
工場内の見学は終わりか…。
「みんな、ここからはみんなの感想とか聞かせて貰う時間だけど、梶田社長には生意気な意見、的外れな発言が出ることを承知して頂いてるからね。
みんなが思ったことを遠慮なく出してくれたら、面白いアイデアに繋がるかも知れないから。
ま、お茶とお菓子を頂きながらとしようか。」
今日は師匠が仕切るのか、俺たち高校生組がいるから高山チーフは一歩下がったのかな?
え~っと、うん、ずいぶん生意気な発言になるけど…。
「おう、嶋、どうぞ、社長、嶋大地です。」
「ああ、よろしく。」
「よろしくお願いします、えっと、すごく生意気なことなのですが…。」
「はは、その自覚が有っての発言なら、私も心して受け止めるよ。」
「えっと~、やはり今は人が足りてない状態なのでしょうか?」
「そんなことはないと言うか、むしろ余り気味で…、一気に社員を減らさなくはいけないのかも知れないけどね、でも、そうするときちんとした仕事を受注出来なくなってしまい、難しいところでね。」
「と言うことは、仕事中に手が空くことも有るのですか?」
「そうだね。」
「そんな時、社員の皆さんはどうしていらっしゃるのです?」
「休憩室でだべってたりとか…。」
「掃除とか工場内の整理とかはされないのですか?」
「ああ…、そうだね…。」
「工場内の掃除、整理整頓をする時間は有るのですね?」
「うん…、ただ…、従業員の中のリーダー格が、やることやったら休憩って感じで…。」
「うちの親も小さいながら工場を経営しています。
家から近いのですが、工場は子どもの遊び場じゃないと父に言われまして、小さい頃は、なかなか工場の中を見せて貰えませんでした。
でも、六年生になった頃、もう見学ぐらいは大丈夫だろうと言うことで許しが出まして。
機械が動くのを見るのが楽しかったので、それからは度々見学させて貰いに行くようになりました。
作業スケジュールに余裕のある日限定でしたが。
つまり、自分が見学させて貰える様な日は、従業員の皆さんの手が空くことも有ったのです。
手が空くと、皆さんは、暇つぶしなんだよとか言いながら工場内の掃除、整理整頓を始めて。
そんな時は、子ども心に、製造の仕事がない時ぐらいはゆっくりしたくないのかな、と思いつつ手伝っていました。
現場の作業はさせて貰えませんから、例え掃除でも、大人のみなさんの仲間入りが出来て嬉しかったのです。
そんな時、えっと、仁さんと皆から呼ばれている現場責任者の人がですね、自分達が働く場を綺麗にすることは当たり前のことなのだと、話して下さって…。
綺麗な方が、みんな気持ち良く働ける、逆に整理整頓が行き届いていないと、作業効率が落ちたり、事故に繋がることもある、とても大切なことだからと、詳しく説明して下さいました。
例えば工場内の通路が交差する所に、物を不用意に置くと見通しが悪くなり事故の危険性が増すとか、物が通路にはみ出していると、フォークリフトがひっかけたり、人がつまづいたりするとか。
今日工場を見学させて頂いて、えっと、事故とか起こっていないのでしょうか?」
「う~ん、お恥ずかしい気分だ…、大きな事故こそ起きてはいないが…、今考えると、私の至らなさが原因だったかもしれない事故は幾つか…。」
「大きい事故が起きる前に改善すべきことが有るかも知れません。」
「そうだな…、指摘してくれて有難う。
素直に頭を下げさせて貰うよ。」
「いえ、生意気言ってしまって…。」
「嶋が話してくれて助かったよ、梶田社長に耳が痛い生意気発言を話し易くなったからね。」
「お、お願いします。」
「取引先や融資元との交渉過程で、工場見学は有りませんか?」
「そうだね、うちの機械を見て頂いたりとかは有るよ。」
「そんな時、取引先も金融機関の担当者も工場全体を見て値踏みをしているのです。
つまり、この工場に部品の製造を依頼をして大丈夫か、この会社に融資して大丈夫か、それは特殊な機械を持ってるかどうかだけで判断している訳ではないのです。
安心して取引関係を結べる会社かどうか、今日見学させて頂いて、自分が取引を考える立場だったらかなり躊躇します。
自分の生意気発言は本やネットの情報が元ですが、嶋の話しは身近な体験によるもので核心をついていると思うのです。
なあ、嶋、後でこちらの本間さんと工場内の整理整頓のポイントをまとめてくれないかな。」
「おっけい。」
「社長、それを参考に工場内をきちんとしませんか?」
「ああ、了解したよ、私、自ら指示を出して…、う~ん、高校生に指摘される様な状態になってることに気付けなかった自分も恥ずかしいが、社員達も何とかしないといけないな。」
「そうですね、色々検討する必要が有りそうです。
本間さん、記録の方は、そのあたりも含めてお願いします、梶田社長には失礼になるぐらい、写真もしっかり使って、ビフォアーの記録を残しておきたいですね。」
「了解しました、省吾リーダー。」
師匠は本気だ。
本気でこの会社を変えようとしている。
そうだ、親父や仁さんにも話してみようかな。
「ねえ、嶋、他に気付いたことはないの?」
でも、大学生と高校一年生って変わった集団…、あっ、原崎理沙も来てるのか…。
「今日のメンバー、揃ったね、みんな、こちらが梶田社長だよ。」
「梶田です、今日は来てくれて有難う。
まずは工場内を案内させて頂いて、その後、会議室で感想などお聞かせ願えたらと考えています。
今日は休日で稼動していませんが、機械の中には不用意に触れると怪我をする危険な物も有りますので、くれぐれもご注意下さい。
それでは、こちらへどうぞ。」
へ~、色んな機械が有るんだ、うちの機械とはずいぶん違うなぁ~。
特殊技術、特殊な機械か、やっぱり他社と違う特色を出さないと企業間の競争に勝てないというのはうちと同じなのだろう。
師匠も大学生も熱心に梶田社長の話しを聞いてる…。
特殊な機械の応用か、確かに師匠の質問通り、特殊だと応用が利きにくくなるってことか。
コストパフォーマンス、うん、親父もよく口にする言葉だ。
稼働率…、この機械…、動いてない時間が長いってことかな?
今度は原材料の搬入から加工、製品の出荷まで、その流れの確認か…。
ロスがないかの見直しってことかな。
はは、女の子たちに師匠が解説を付け加えてる。
そうだよな、俺は親の工場見てるから大体の流れは理解出来るけど、秋山さん達にはな。
えっ、ごみ置き場?
廃棄物も見学か…。
う~ん、そう言えばこの工場って、整理が行き届いてない気がする、雑然とした感じで。
はは、こんなに整理されてなかったら、仁さん、激怒だろうな。
ふ~ん、ごみの分別、普通はこんな感じなのかな…、あれっ?
ストレッチフィルムは…。
工場内の見学は終わりか…。
「みんな、ここからはみんなの感想とか聞かせて貰う時間だけど、梶田社長には生意気な意見、的外れな発言が出ることを承知して頂いてるからね。
みんなが思ったことを遠慮なく出してくれたら、面白いアイデアに繋がるかも知れないから。
ま、お茶とお菓子を頂きながらとしようか。」
今日は師匠が仕切るのか、俺たち高校生組がいるから高山チーフは一歩下がったのかな?
え~っと、うん、ずいぶん生意気な発言になるけど…。
「おう、嶋、どうぞ、社長、嶋大地です。」
「ああ、よろしく。」
「よろしくお願いします、えっと、すごく生意気なことなのですが…。」
「はは、その自覚が有っての発言なら、私も心して受け止めるよ。」
「えっと~、やはり今は人が足りてない状態なのでしょうか?」
「そんなことはないと言うか、むしろ余り気味で…、一気に社員を減らさなくはいけないのかも知れないけどね、でも、そうするときちんとした仕事を受注出来なくなってしまい、難しいところでね。」
「と言うことは、仕事中に手が空くことも有るのですか?」
「そうだね。」
「そんな時、社員の皆さんはどうしていらっしゃるのです?」
「休憩室でだべってたりとか…。」
「掃除とか工場内の整理とかはされないのですか?」
「ああ…、そうだね…。」
「工場内の掃除、整理整頓をする時間は有るのですね?」
「うん…、ただ…、従業員の中のリーダー格が、やることやったら休憩って感じで…。」
「うちの親も小さいながら工場を経営しています。
家から近いのですが、工場は子どもの遊び場じゃないと父に言われまして、小さい頃は、なかなか工場の中を見せて貰えませんでした。
でも、六年生になった頃、もう見学ぐらいは大丈夫だろうと言うことで許しが出まして。
機械が動くのを見るのが楽しかったので、それからは度々見学させて貰いに行くようになりました。
作業スケジュールに余裕のある日限定でしたが。
つまり、自分が見学させて貰える様な日は、従業員の皆さんの手が空くことも有ったのです。
手が空くと、皆さんは、暇つぶしなんだよとか言いながら工場内の掃除、整理整頓を始めて。
そんな時は、子ども心に、製造の仕事がない時ぐらいはゆっくりしたくないのかな、と思いつつ手伝っていました。
現場の作業はさせて貰えませんから、例え掃除でも、大人のみなさんの仲間入りが出来て嬉しかったのです。
そんな時、えっと、仁さんと皆から呼ばれている現場責任者の人がですね、自分達が働く場を綺麗にすることは当たり前のことなのだと、話して下さって…。
綺麗な方が、みんな気持ち良く働ける、逆に整理整頓が行き届いていないと、作業効率が落ちたり、事故に繋がることもある、とても大切なことだからと、詳しく説明して下さいました。
例えば工場内の通路が交差する所に、物を不用意に置くと見通しが悪くなり事故の危険性が増すとか、物が通路にはみ出していると、フォークリフトがひっかけたり、人がつまづいたりするとか。
今日工場を見学させて頂いて、えっと、事故とか起こっていないのでしょうか?」
「う~ん、お恥ずかしい気分だ…、大きな事故こそ起きてはいないが…、今考えると、私の至らなさが原因だったかもしれない事故は幾つか…。」
「大きい事故が起きる前に改善すべきことが有るかも知れません。」
「そうだな…、指摘してくれて有難う。
素直に頭を下げさせて貰うよ。」
「いえ、生意気言ってしまって…。」
「嶋が話してくれて助かったよ、梶田社長に耳が痛い生意気発言を話し易くなったからね。」
「お、お願いします。」
「取引先や融資元との交渉過程で、工場見学は有りませんか?」
「そうだね、うちの機械を見て頂いたりとかは有るよ。」
「そんな時、取引先も金融機関の担当者も工場全体を見て値踏みをしているのです。
つまり、この工場に部品の製造を依頼をして大丈夫か、この会社に融資して大丈夫か、それは特殊な機械を持ってるかどうかだけで判断している訳ではないのです。
安心して取引関係を結べる会社かどうか、今日見学させて頂いて、自分が取引を考える立場だったらかなり躊躇します。
自分の生意気発言は本やネットの情報が元ですが、嶋の話しは身近な体験によるもので核心をついていると思うのです。
なあ、嶋、後でこちらの本間さんと工場内の整理整頓のポイントをまとめてくれないかな。」
「おっけい。」
「社長、それを参考に工場内をきちんとしませんか?」
「ああ、了解したよ、私、自ら指示を出して…、う~ん、高校生に指摘される様な状態になってることに気付けなかった自分も恥ずかしいが、社員達も何とかしないといけないな。」
「そうですね、色々検討する必要が有りそうです。
本間さん、記録の方は、そのあたりも含めてお願いします、梶田社長には失礼になるぐらい、写真もしっかり使って、ビフォアーの記録を残しておきたいですね。」
「了解しました、省吾リーダー。」
師匠は本気だ。
本気でこの会社を変えようとしている。
そうだ、親父や仁さんにも話してみようかな。
「ねえ、嶋、他に気付いたことはないの?」
嶋大地-01 [F組三国志-05]
よし、約束の十分前に到着。
人を待たせる、しかも年上の人を待たせるなんて有り得ないからな。
秋山さんからの連絡では予定通りみたいだから、大して待つこともないだろう。
淳一の家で演奏を聴いてからとか言ってたけど、チェロとピアノと言われてもな、音楽はやっぱJポップだよ、うん、この新曲なかなか良いぞ。
おっと、音量を上げ過ぎると耳を悪くする、気をつけなきゃ…。
にしても、淳一は羨ましいよな、館内さんは可愛いだけじゃない、そんな人に好かれて。
まあ確かに淳一は良い奴だよ、ピアノ伴奏に名乗りを上げた他の三人にきちんと謝ってたもんな。
うん、俺も恰好良く在りたいね。
おっ、真っ赤な車、あれかな…。
「お待たせ、嶋くん。」
「こんにちは早川さん、えっと、俺、助手席で良いのですか?」
「良いも悪いも、お二人の邪魔をするようなお人なの、嶋くんは。」
「はは、まいったなぁ~、館内さん幸せそうだ、淳一、邪魔はしないがあんまし見せつけてくれるなよ。」
「そんな事言って、大地なら彼女の一人や二人、居るのだろ?」
「いや~、誰でも良いとは行かないからな。」
「嶋くんなら女の子から告白されそうだけど。」
「何故か自分のタイプではない子からしか告られたことがなくて、自分からと言うのもまだ…。」
「彼女は欲しくないの?」
「欲しいですよ。」
「F組にならタイプの子、いるでしょ?」
「気になる子はいますが…、早川さん、そんな事より梶田さんの会社は遠いのですか?」
「それ程でもないけど、地下鉄の駅からは少し距離が有るの。」
「それで車か…、でも早川さんってプロジェクトFのサブチーフでプロジェクト梶田とは違うのでしょ。」
「私は省吾リーダーの活動を記録して行くって役目も担っていてね、だからリーダーには極力同行するつもりなの。」
「そっか、でも省吾さまは乗ってませんね、この車に。」
「そ~なのよ~、美咲ちゃんたら、さっさと髙尾さんの車に乗り込んじゃってさ。
そしたら私の力ではどうにもならないじゃない。」
「ははは、早川さんは二人の邪魔をするようなお人じゃないですものね。」
「ふふ、微妙に邪魔はしてるけど。」
「え~。」
「だって悔しいじゃない、美咲ちゃんたら私達のリーダーとアツアツでさ。」
「はは、省吾さまのことはリーダーって呼んでるのですね。」
「そうね、彼のことをどう呼ぶかで、私たち結構戸惑っているのよ。
私は、省吾さんとも呼んでるけど。」
「はい?」
「リーダーに対して省吾くんではおかしいし、大学生が高一に対して省吾さんっていうのも、しっくりこないって人がいて…。
今のところ省吾リーダーという呼び方にしてるのは、リーダーが誰なのか他の人にも分かって貰うって意味合いが有るのだけどね。」
「なるほど、チームメンバー、今日は大勢集まるのですか?」
「今回は高校生と大学生合わせて二十人ぐらいかな。
他のメンバーには、ある程度情報を整理してから効率良くというのが、リーダーのお考えなの。
嶋くんと黒川くんは希望者の中からリーダーが最優先で選んだと聞いたけど。」
「うちは親が小さいながらも会社を経営していて、跡取りとしての興味が有ると伝えましたので。」
「そっか、じゃあ経営学部志望なのね。」
「いえ、工学部の電気、電子の関係かコンピューター関連への進学を考えています。
経営のことを学習するのはもっと後でも良いみたいで。」
「そっか、高一でも、しっかりしてるのね。」
「そんなことはないですよ。」
「はは、ご謙遜。」
「工場って親のとこしか見たことなかったので、今日はちょっと楽しみです。」
これは正直な話だ、長男として親の会社を継ぐ覚悟は出来ていながら、具体的な事は今まで何もして来なかった。
それでも、自分の代で会社を潰すなんて事は考えたくもない訳で、今日の工場見学を参考にさせて貰えたらと思っている。
人を待たせる、しかも年上の人を待たせるなんて有り得ないからな。
秋山さんからの連絡では予定通りみたいだから、大して待つこともないだろう。
淳一の家で演奏を聴いてからとか言ってたけど、チェロとピアノと言われてもな、音楽はやっぱJポップだよ、うん、この新曲なかなか良いぞ。
おっと、音量を上げ過ぎると耳を悪くする、気をつけなきゃ…。
にしても、淳一は羨ましいよな、館内さんは可愛いだけじゃない、そんな人に好かれて。
まあ確かに淳一は良い奴だよ、ピアノ伴奏に名乗りを上げた他の三人にきちんと謝ってたもんな。
うん、俺も恰好良く在りたいね。
おっ、真っ赤な車、あれかな…。
「お待たせ、嶋くん。」
「こんにちは早川さん、えっと、俺、助手席で良いのですか?」
「良いも悪いも、お二人の邪魔をするようなお人なの、嶋くんは。」
「はは、まいったなぁ~、館内さん幸せそうだ、淳一、邪魔はしないがあんまし見せつけてくれるなよ。」
「そんな事言って、大地なら彼女の一人や二人、居るのだろ?」
「いや~、誰でも良いとは行かないからな。」
「嶋くんなら女の子から告白されそうだけど。」
「何故か自分のタイプではない子からしか告られたことがなくて、自分からと言うのもまだ…。」
「彼女は欲しくないの?」
「欲しいですよ。」
「F組にならタイプの子、いるでしょ?」
「気になる子はいますが…、早川さん、そんな事より梶田さんの会社は遠いのですか?」
「それ程でもないけど、地下鉄の駅からは少し距離が有るの。」
「それで車か…、でも早川さんってプロジェクトFのサブチーフでプロジェクト梶田とは違うのでしょ。」
「私は省吾リーダーの活動を記録して行くって役目も担っていてね、だからリーダーには極力同行するつもりなの。」
「そっか、でも省吾さまは乗ってませんね、この車に。」
「そ~なのよ~、美咲ちゃんたら、さっさと髙尾さんの車に乗り込んじゃってさ。
そしたら私の力ではどうにもならないじゃない。」
「ははは、早川さんは二人の邪魔をするようなお人じゃないですものね。」
「ふふ、微妙に邪魔はしてるけど。」
「え~。」
「だって悔しいじゃない、美咲ちゃんたら私達のリーダーとアツアツでさ。」
「はは、省吾さまのことはリーダーって呼んでるのですね。」
「そうね、彼のことをどう呼ぶかで、私たち結構戸惑っているのよ。
私は、省吾さんとも呼んでるけど。」
「はい?」
「リーダーに対して省吾くんではおかしいし、大学生が高一に対して省吾さんっていうのも、しっくりこないって人がいて…。
今のところ省吾リーダーという呼び方にしてるのは、リーダーが誰なのか他の人にも分かって貰うって意味合いが有るのだけどね。」
「なるほど、チームメンバー、今日は大勢集まるのですか?」
「今回は高校生と大学生合わせて二十人ぐらいかな。
他のメンバーには、ある程度情報を整理してから効率良くというのが、リーダーのお考えなの。
嶋くんと黒川くんは希望者の中からリーダーが最優先で選んだと聞いたけど。」
「うちは親が小さいながらも会社を経営していて、跡取りとしての興味が有ると伝えましたので。」
「そっか、じゃあ経営学部志望なのね。」
「いえ、工学部の電気、電子の関係かコンピューター関連への進学を考えています。
経営のことを学習するのはもっと後でも良いみたいで。」
「そっか、高一でも、しっかりしてるのね。」
「そんなことはないですよ。」
「はは、ご謙遜。」
「工場って親のとこしか見たことなかったので、今日はちょっと楽しみです。」
これは正直な話だ、長男として親の会社を継ぐ覚悟は出来ていながら、具体的な事は今まで何もして来なかった。
それでも、自分の代で会社を潰すなんて事は考えたくもない訳で、今日の工場見学を参考にさせて貰えたらと思っている。
舘内亜美-06 [F組三国志-04]
「なあ、省吾さまから俺たちの学年順位が今後下がって行くってこと、母さんに話しておいて貰えないかな。」
そうそう大切な事。
「ああ、そうだな、誤解されても行けないし。」
「下がって行くことが予定に入っているの?」
「はい、みんな今後も頑張ると言ってます。
ただ、F組で成功した取り組みを、F組だけで終わらせたくないと考えているのです。
今回F組で作った予想問題は、先輩方の協力を頂き過去の問題も参考にさせて貰ったおかげで、かなり中身の濃い予想問題となりましたが、F組外へは漏らさないようお願いしました。
インパクトのある結果を出したかったからです。
その目標が達成されましたので、今後は他のクラスとも、競い合ったり協力し合ったりということを視野に入れています。
学年のレベルアップを目指して、これからの敵は全国の進学校。
F組、みんなの学年順位は下がっても、偏差値は上げる、全国模試を受ける人の結果に注目という取り組みです。」
「自分達だけのことではなく、一年生全員のことを考えているのね。」
「はい、F組の皆は納得してくれています。
二年になったらクラスが変わります、今から協力し合っていれば、その時、他のクラスの人達とも早く仲良くなれると思うのです。」
「先のことも考えて…。
では淳一が、頑張っているのかどうか、私はどう判断すれば良いのかしら?」
「そうですね、クラスの数を考えてみて下さい。
淳一のクラス順位は五位、八クラス有りますから、単純計算なら学年四十位でもおかしくありません。
得点も、これから変化が予測されます。
学年の平均点が上がると、より難しい問題を出題する先生が出て来ると思います。」
「リーダー、ということは、点数も順位も下がるってことなの?」
「表面的にはね。
それと、テストのことばかり考えていたのでは、つまらない高校生活になってしまいますので、無理はして欲しくないと思っていまして…、そのあたりの取り組みも考えています。
淳一みたいに、テストで結果を出しつつ、コンクールで優勝、素敵な彼女がいる、なんてのは理想ですが。」
「そうよね、私も惚れそうだな。」
「早川さん!」
「ふふ、亜美ちゃん、また淳一くんにしがみついて、大丈夫よ取ったりしないから。」
「あっ、私…、今日…、お母さまの前なのに…。」
「では、私からお母さまに一言、普段の亜美、舘内亜美は真面目で明るい人です。
面倒見が良くてクラスのためにも色々積極的に動いてくれる、そう、いい加減な人じゃなくて素敵な人なのです。」
「ありがとう、美咲さま。
それにね、母さん、真っ直ぐな人なんだ、嬉しい時は嬉しいって、はっきり言ってくれてね。」
「う~ん、淳一も、なんか急に大人になったわね。」
「えっと私…。」
「どうしたの? 亜美さん。」
「私、今日、ちょっと、淳一さんのチェロにびっくりしてしまって、あの…、ちょっと…、御免なさいです…。」
「亜美さんは、淳一のことどう思ってるの?」
「そ、それはもう、大好きです!」
「なら、謝ることはないわよ。」
「は、はい…。」
「そうね、淳一が高校生の内は、孫の顔を見たくないかしら。」
「えっ?
え~、やっだ~!」
「はは、うちの親と同じだな。」
「ふふ、うちの母は早く孫の顔が見たいと言ってます。」
「あら、省吾さまのところは、ご両家ご両親公認なの?」
「美咲は俺が紹介する前から両親に気に入られまして。」
「もう、あれはね~。」
「自分も何となく美咲の母さんに気に入って頂けたみたいです。」
「うちの母は息子が出来たと喜んでいるのです、省吾は家が近いので良く遊びに来てくれて…。
あっ、遊びに来るというより勉強かクラスの仕事ばかりだったかも。」
「はは、勉強にクラスの仕事、省吾リーダーはデートの口実作りに頑張ったのよね。」
「勿論、色々考えたさ。」
「ははは。」
「えっと、お母さま、私、またお邪魔させて頂いても宜しいでしょうか?」
「ええ、是非いらして下さいな、ピアノも弾いてね、亜美さん。」
「はい、有難うございます、私、こんな素晴らしいピアノに触れたの、初めてで。」
「ちゃんと楽器のことも分かっていらしたのね。
このピアノは私のお婆さまがお使いになってたもの、古くても本当の職人が丹精込めて仕上げた逸品、この家を建てる時もこのピアノをリビングの中心に据えるという所から設計を始めて貰ったぐらいで、私の宝物なのよ。」
「そう言えば、俺の使ってるチェロも…。」
「そのチェロは、私のお爺さまが使ってた物で、ふふ、安物じゃないのですよ。
淳一は、バイオリンやってたのに、このチェロ見つけたら弾きたいって言い出したのよね。」
「駿が俺の使ってたバイオリンを使いたいって言ってたこともあるけど、子ども心に惹かれるものがあった…。
でも、さすがに最初は苦労したな。」
「そりゃ、小学生にとってチェロは大き過ぎだろ。」
「まあ、子ども用から始めてね、先生からこのチェロを使う許可を貰えた時は嬉しかったな。」
「あっ、それでは、淳一くんの、ひいお婆さまとひいお爺さまがこのピアノとそのチェロで一緒に演奏してたってことですか?」
「ええ、美咲さん、私は小さい頃に聞いたのが最後だったから良く覚えてないのだけど、写真は残っているのよ。」
「うわ~、その楽器でひ孫が演奏なんて…、なんか浪漫を感じさせるな~、二人の演奏、神がかり的だったし。」
「う~ん…、お二人の霊が楽器を通して淳一くんたちに…。」
「よして下さいよ、髙尾さん。」
「私は、それでも良いわ。」
「亜美。」
「だって、すごく暖かくて優しかったもの、淳一さんのチェロ。
ピアノの音も自分が弾いてるなんて思えないぐらいに。」
そうそう大切な事。
「ああ、そうだな、誤解されても行けないし。」
「下がって行くことが予定に入っているの?」
「はい、みんな今後も頑張ると言ってます。
ただ、F組で成功した取り組みを、F組だけで終わらせたくないと考えているのです。
今回F組で作った予想問題は、先輩方の協力を頂き過去の問題も参考にさせて貰ったおかげで、かなり中身の濃い予想問題となりましたが、F組外へは漏らさないようお願いしました。
インパクトのある結果を出したかったからです。
その目標が達成されましたので、今後は他のクラスとも、競い合ったり協力し合ったりということを視野に入れています。
学年のレベルアップを目指して、これからの敵は全国の進学校。
F組、みんなの学年順位は下がっても、偏差値は上げる、全国模試を受ける人の結果に注目という取り組みです。」
「自分達だけのことではなく、一年生全員のことを考えているのね。」
「はい、F組の皆は納得してくれています。
二年になったらクラスが変わります、今から協力し合っていれば、その時、他のクラスの人達とも早く仲良くなれると思うのです。」
「先のことも考えて…。
では淳一が、頑張っているのかどうか、私はどう判断すれば良いのかしら?」
「そうですね、クラスの数を考えてみて下さい。
淳一のクラス順位は五位、八クラス有りますから、単純計算なら学年四十位でもおかしくありません。
得点も、これから変化が予測されます。
学年の平均点が上がると、より難しい問題を出題する先生が出て来ると思います。」
「リーダー、ということは、点数も順位も下がるってことなの?」
「表面的にはね。
それと、テストのことばかり考えていたのでは、つまらない高校生活になってしまいますので、無理はして欲しくないと思っていまして…、そのあたりの取り組みも考えています。
淳一みたいに、テストで結果を出しつつ、コンクールで優勝、素敵な彼女がいる、なんてのは理想ですが。」
「そうよね、私も惚れそうだな。」
「早川さん!」
「ふふ、亜美ちゃん、また淳一くんにしがみついて、大丈夫よ取ったりしないから。」
「あっ、私…、今日…、お母さまの前なのに…。」
「では、私からお母さまに一言、普段の亜美、舘内亜美は真面目で明るい人です。
面倒見が良くてクラスのためにも色々積極的に動いてくれる、そう、いい加減な人じゃなくて素敵な人なのです。」
「ありがとう、美咲さま。
それにね、母さん、真っ直ぐな人なんだ、嬉しい時は嬉しいって、はっきり言ってくれてね。」
「う~ん、淳一も、なんか急に大人になったわね。」
「えっと私…。」
「どうしたの? 亜美さん。」
「私、今日、ちょっと、淳一さんのチェロにびっくりしてしまって、あの…、ちょっと…、御免なさいです…。」
「亜美さんは、淳一のことどう思ってるの?」
「そ、それはもう、大好きです!」
「なら、謝ることはないわよ。」
「は、はい…。」
「そうね、淳一が高校生の内は、孫の顔を見たくないかしら。」
「えっ?
え~、やっだ~!」
「はは、うちの親と同じだな。」
「ふふ、うちの母は早く孫の顔が見たいと言ってます。」
「あら、省吾さまのところは、ご両家ご両親公認なの?」
「美咲は俺が紹介する前から両親に気に入られまして。」
「もう、あれはね~。」
「自分も何となく美咲の母さんに気に入って頂けたみたいです。」
「うちの母は息子が出来たと喜んでいるのです、省吾は家が近いので良く遊びに来てくれて…。
あっ、遊びに来るというより勉強かクラスの仕事ばかりだったかも。」
「はは、勉強にクラスの仕事、省吾リーダーはデートの口実作りに頑張ったのよね。」
「勿論、色々考えたさ。」
「ははは。」
「えっと、お母さま、私、またお邪魔させて頂いても宜しいでしょうか?」
「ええ、是非いらして下さいな、ピアノも弾いてね、亜美さん。」
「はい、有難うございます、私、こんな素晴らしいピアノに触れたの、初めてで。」
「ちゃんと楽器のことも分かっていらしたのね。
このピアノは私のお婆さまがお使いになってたもの、古くても本当の職人が丹精込めて仕上げた逸品、この家を建てる時もこのピアノをリビングの中心に据えるという所から設計を始めて貰ったぐらいで、私の宝物なのよ。」
「そう言えば、俺の使ってるチェロも…。」
「そのチェロは、私のお爺さまが使ってた物で、ふふ、安物じゃないのですよ。
淳一は、バイオリンやってたのに、このチェロ見つけたら弾きたいって言い出したのよね。」
「駿が俺の使ってたバイオリンを使いたいって言ってたこともあるけど、子ども心に惹かれるものがあった…。
でも、さすがに最初は苦労したな。」
「そりゃ、小学生にとってチェロは大き過ぎだろ。」
「まあ、子ども用から始めてね、先生からこのチェロを使う許可を貰えた時は嬉しかったな。」
「あっ、それでは、淳一くんの、ひいお婆さまとひいお爺さまがこのピアノとそのチェロで一緒に演奏してたってことですか?」
「ええ、美咲さん、私は小さい頃に聞いたのが最後だったから良く覚えてないのだけど、写真は残っているのよ。」
「うわ~、その楽器でひ孫が演奏なんて…、なんか浪漫を感じさせるな~、二人の演奏、神がかり的だったし。」
「う~ん…、お二人の霊が楽器を通して淳一くんたちに…。」
「よして下さいよ、髙尾さん。」
「私は、それでも良いわ。」
「亜美。」
「だって、すごく暖かくて優しかったもの、淳一さんのチェロ。
ピアノの音も自分が弾いてるなんて思えないぐらいに。」
舘内亜美-05 [F組三国志-04]
「でもどうやって、F組はそんな結果出せたのかしら?」
「きっかけは小テストの団体戦です。」
「団体戦…、どんな感じだったの?」
「クラスを三つに分けてテストに取り組む、スポーツの団体戦みたいにって提案をF組のみんなにさせて貰いました。
テストは基本、個人戦じゃないですか。
ですから上を目指す人は自分のために頑張るし、気のない人は適当に。
でも、団体戦となると、チームのためにという気持ちが出て、個人のモチベーションが上がります。
実際、各チームのリーダー達がみんなを引っ張ってくれて、テストに対して取り組む姿勢が大きく変わりました。」
「それだけで、その結果に?」
「いえ、それだけでは有りません。
団体戦の場合、自分のことだけでなく他のメンバーのことも考えます。
理解の遅れているメンバーへの手助け、教えることによって自身の理解を再確認、と言う意味合いも有っての提案だったのです。
今回、テストで上位に入った人達は、みな、教える側の役割もしっかりやってくれた人、そう、淳一も亜美もです。」
「チームの結束は簡単に出来たのかしら?」
「いきなり定期テストではなく、数学の小テストから取り組み始めたこと、そして第一回数学小テスト団体戦でクラスとしての結果を出せたことが大きかったと思います。
数学小テストは範囲が狭いことも有り、期待はしていたのですが、F組のクラス内三チームで競った結果、F組は平均点で他のクラスと大きな差をつけました。
このことは、みんなの自信に繋がっただけでなく、今度はクラスとして他のクラスに勝とう、F組で協力して他のクラスに勝とうという意識を目覚めさせることに繋がりました。
結果、今回のテスト対策企画が盛り上がりまして、ちょっと他のクラスの人に申し訳ないレベルでテスト対策が進んだのです。」
「淳一が、F組は最高って言ってたのは、そういうことだったのね。」
「はい、でも、自分達の高校は中学でそれなりに結果を出せた人達が入って来ていますので、他のクラスにも優秀な人は沢山います。
そんな中で更に上を目指して、そうですね、クラスで協力しよう、結果を出そうってモチベーションが上がった所で、次のステップへの提案もさせて貰っています。」
「次のステップ?」
「はい、学習への取り組み方の再確認です。
学習への取り組み方は大きく分けると、自分から取り組むか受身かに分かれます。
モチベーションが上がって来たところで、今まで受身だった人には自発的な取り組みを提案しました。
実は、与えられた問題集を命ぜられるがままに解き、答え合わせをして貰い、間違った所を教えて貰って、という学習を中学時代にやっていた人もいたのです。
完全に受身で、例えそれで表面的な結果を出せたとしても、大切なことが抜け落ちて、本当に学習した意味が有るのか疑問に感じます。
まずは、自分で考え自分で決める、そんなことを提案させて貰いました。
仲間に助言を求め参考にすることは悪くない事です。
でも自分で考える前に、どの問題やったら良いかなんて人に相談するような姿勢では、上は目指せません。」
「そうよね。」
「すでに、自分から主体的に取り組めている人たちへは、時間の使い方の工夫を提案しています。
学習時間が長ければそれだけ結果を出せる、という考え方が有ります。
間違ってないかも知れませんが、短い時間でより良い結果を出せたら、自分達の高校生活がより豊かなものになると思うのです。
淳一も亜美も、自分にとって、より効率的な学習ということを考え始めていますが、そんなことも一人で考えるのでなく、みんなで助言し合ったりしているのです。」
「う~ん、省吾さまは本当に高校一年生なの?」
「えっ、普通の高一ですけど。」
「はは、大学の講義を受けてる気分になったわ、お母さま、我らがリーダーの力、感じて頂けましたか。」
「はい早川さん、淳一が予備校へも塾へも行かないって言う理由がよく分かりました。
省吾さまが、みなさんから、お師匠さまって呼ばれている意味もね。
そうね、淳一の夏期講習にと考えてたお金、チーム赤澤で生かして貰えないかしら、CDを作るのにも、資金は必要でしょ。
赤澤省吾先生へのお礼の気持ちを込めて、如何かしら。」
「えっ、良いのですか、助かります、それなら初期投資の一部として…。」
「リーダー、やっぱ株式で行きますか?」
「髙尾さん、その方がみんなの勉強になるでしょ。
株式会社という言葉は知っていても、その仕組みを理解出来ていない人は株式会社の社員の中にもいそうです。」
「はい、それではプロジェクト発足出来そうですね…、え~っとプロジェクト…。」
「今日の演奏を記念して、プロジェクトスワン、プロジェクトSでも良いけど、どうかな?」
「良いかも、みんなと相談してみます。
チーフは俺でも良いですよね、リーダー?」
「大丈夫じゃないかな、高山さん達とも相談してくれれば、まずはプロジェクトの企画書をお願いしますね。」
「はい。」
「慌てなくて良いけど、初期投資がどれぐらい必要か、その回収までの見込みはどうか、と言った所を明確に示して、みんなが安心して取り組めるレベルのをお願いします。
CDの方は…、そうだな、シングル作るコストとアルバム作るコストを考えたら、そんなに違わないと思いますのでアルバムでどうですか?
淳一たちの演奏だけでアルバム一枚というのが難しそうだったら、大学のサークルとかと共同制作も有り。
但し、下手な演奏を無理に入れるのはかんべんして下さいね。」
「了解です、ただ、この後、自分らはテストとかレポート提出なんて時期になりますので…。
その前後の時間を使って早めに何とか…。」
「髙尾さん、まず自分のスケジュールきちんと決めてくれますか。
これから、プロジェクト立ち上げの準備に入る訳ですが、まずは、その準備に向けた準備と考えて下さい。」
「あっ、そうか、下準備、前準備ってことですね。」
「大きな動きだけは自分も掴んでおきたいですので、報告、お願いします。」
「了解です。」
「へ~、ほんとに省吾さまがリーダーなのね、指示もきちんとしてる。」
「はい、正真正銘我らがリーダーですよ。
自分はチーム赤澤で、出来ればチーフとして一つのプロジェクトを起こしてみたいと考えていました。
自分一人で何かやろうと思っても簡単には行きません、でも省吾リーダーの周りに集まってくる仲間となら何か出来ると思っているのです。」
やっぱ省吾さまはレベルが違うな~。
F組三国志の事は分かってたつもりだったけど、省吾さまの説明を聞いて改めて凄いと感じたわ。
チーム赤澤も、でも、まだまだこれから発展して行く段階なのよね。
私も、淳一さんと一緒に登録させて貰ったけど、何か思わぬ展開になって来て…、勉強もピアノも、ふふ、恋も頑張らなくっちゃ。
「きっかけは小テストの団体戦です。」
「団体戦…、どんな感じだったの?」
「クラスを三つに分けてテストに取り組む、スポーツの団体戦みたいにって提案をF組のみんなにさせて貰いました。
テストは基本、個人戦じゃないですか。
ですから上を目指す人は自分のために頑張るし、気のない人は適当に。
でも、団体戦となると、チームのためにという気持ちが出て、個人のモチベーションが上がります。
実際、各チームのリーダー達がみんなを引っ張ってくれて、テストに対して取り組む姿勢が大きく変わりました。」
「それだけで、その結果に?」
「いえ、それだけでは有りません。
団体戦の場合、自分のことだけでなく他のメンバーのことも考えます。
理解の遅れているメンバーへの手助け、教えることによって自身の理解を再確認、と言う意味合いも有っての提案だったのです。
今回、テストで上位に入った人達は、みな、教える側の役割もしっかりやってくれた人、そう、淳一も亜美もです。」
「チームの結束は簡単に出来たのかしら?」
「いきなり定期テストではなく、数学の小テストから取り組み始めたこと、そして第一回数学小テスト団体戦でクラスとしての結果を出せたことが大きかったと思います。
数学小テストは範囲が狭いことも有り、期待はしていたのですが、F組のクラス内三チームで競った結果、F組は平均点で他のクラスと大きな差をつけました。
このことは、みんなの自信に繋がっただけでなく、今度はクラスとして他のクラスに勝とう、F組で協力して他のクラスに勝とうという意識を目覚めさせることに繋がりました。
結果、今回のテスト対策企画が盛り上がりまして、ちょっと他のクラスの人に申し訳ないレベルでテスト対策が進んだのです。」
「淳一が、F組は最高って言ってたのは、そういうことだったのね。」
「はい、でも、自分達の高校は中学でそれなりに結果を出せた人達が入って来ていますので、他のクラスにも優秀な人は沢山います。
そんな中で更に上を目指して、そうですね、クラスで協力しよう、結果を出そうってモチベーションが上がった所で、次のステップへの提案もさせて貰っています。」
「次のステップ?」
「はい、学習への取り組み方の再確認です。
学習への取り組み方は大きく分けると、自分から取り組むか受身かに分かれます。
モチベーションが上がって来たところで、今まで受身だった人には自発的な取り組みを提案しました。
実は、与えられた問題集を命ぜられるがままに解き、答え合わせをして貰い、間違った所を教えて貰って、という学習を中学時代にやっていた人もいたのです。
完全に受身で、例えそれで表面的な結果を出せたとしても、大切なことが抜け落ちて、本当に学習した意味が有るのか疑問に感じます。
まずは、自分で考え自分で決める、そんなことを提案させて貰いました。
仲間に助言を求め参考にすることは悪くない事です。
でも自分で考える前に、どの問題やったら良いかなんて人に相談するような姿勢では、上は目指せません。」
「そうよね。」
「すでに、自分から主体的に取り組めている人たちへは、時間の使い方の工夫を提案しています。
学習時間が長ければそれだけ結果を出せる、という考え方が有ります。
間違ってないかも知れませんが、短い時間でより良い結果を出せたら、自分達の高校生活がより豊かなものになると思うのです。
淳一も亜美も、自分にとって、より効率的な学習ということを考え始めていますが、そんなことも一人で考えるのでなく、みんなで助言し合ったりしているのです。」
「う~ん、省吾さまは本当に高校一年生なの?」
「えっ、普通の高一ですけど。」
「はは、大学の講義を受けてる気分になったわ、お母さま、我らがリーダーの力、感じて頂けましたか。」
「はい早川さん、淳一が予備校へも塾へも行かないって言う理由がよく分かりました。
省吾さまが、みなさんから、お師匠さまって呼ばれている意味もね。
そうね、淳一の夏期講習にと考えてたお金、チーム赤澤で生かして貰えないかしら、CDを作るのにも、資金は必要でしょ。
赤澤省吾先生へのお礼の気持ちを込めて、如何かしら。」
「えっ、良いのですか、助かります、それなら初期投資の一部として…。」
「リーダー、やっぱ株式で行きますか?」
「髙尾さん、その方がみんなの勉強になるでしょ。
株式会社という言葉は知っていても、その仕組みを理解出来ていない人は株式会社の社員の中にもいそうです。」
「はい、それではプロジェクト発足出来そうですね…、え~っとプロジェクト…。」
「今日の演奏を記念して、プロジェクトスワン、プロジェクトSでも良いけど、どうかな?」
「良いかも、みんなと相談してみます。
チーフは俺でも良いですよね、リーダー?」
「大丈夫じゃないかな、高山さん達とも相談してくれれば、まずはプロジェクトの企画書をお願いしますね。」
「はい。」
「慌てなくて良いけど、初期投資がどれぐらい必要か、その回収までの見込みはどうか、と言った所を明確に示して、みんなが安心して取り組めるレベルのをお願いします。
CDの方は…、そうだな、シングル作るコストとアルバム作るコストを考えたら、そんなに違わないと思いますのでアルバムでどうですか?
淳一たちの演奏だけでアルバム一枚というのが難しそうだったら、大学のサークルとかと共同制作も有り。
但し、下手な演奏を無理に入れるのはかんべんして下さいね。」
「了解です、ただ、この後、自分らはテストとかレポート提出なんて時期になりますので…。
その前後の時間を使って早めに何とか…。」
「髙尾さん、まず自分のスケジュールきちんと決めてくれますか。
これから、プロジェクト立ち上げの準備に入る訳ですが、まずは、その準備に向けた準備と考えて下さい。」
「あっ、そうか、下準備、前準備ってことですね。」
「大きな動きだけは自分も掴んでおきたいですので、報告、お願いします。」
「了解です。」
「へ~、ほんとに省吾さまがリーダーなのね、指示もきちんとしてる。」
「はい、正真正銘我らがリーダーですよ。
自分はチーム赤澤で、出来ればチーフとして一つのプロジェクトを起こしてみたいと考えていました。
自分一人で何かやろうと思っても簡単には行きません、でも省吾リーダーの周りに集まってくる仲間となら何か出来ると思っているのです。」
やっぱ省吾さまはレベルが違うな~。
F組三国志の事は分かってたつもりだったけど、省吾さまの説明を聞いて改めて凄いと感じたわ。
チーム赤澤も、でも、まだまだこれから発展して行く段階なのよね。
私も、淳一さんと一緒に登録させて貰ったけど、何か思わぬ展開になって来て…、勉強もピアノも、ふふ、恋も頑張らなくっちゃ。