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谷口あやか-05 [F組三国志-06]

 省吾さまの話が終わり…。

「この後はプロジェクトについての簡単な説明となりますが、時間の関係も有りますので一度に舞台に上がって頂きます、みなさん、どうぞ。」

 なんか色々な人たちが出て来た。
 大学生と大人が半々なのかな…。

「まず始めは、本日のチーム設立総会発案者でもあります、この大学の総長、堀中瀬十郎先生です。」
「おはようございます、堀中です。
 淀んだ状態の日本、その濁った泥沼に赤澤省吾という一石を投ずる。
 それを手伝わさせて頂く為にメンバーに加えさせて頂きました。
 これから、どんな波紋が広がるか、ワクワクしています。
 本学と致しましても大学改革の一環と捉えると共に地域との結びつきを強めながら取り組んで行きたいと…。」

「有難うございました、続きまして、株式会社嶋製作所、嶋誠一社長とプロジェクト嶋のチーフ片桐健二さんです。」
「はじめまして、嶋です。
 プロジェクト嶋では、まず就職前の学生さんに実際の会社、現場を体験して貰うことを考えていますが、従来のインターンシップとは形を変え、中小企業の活性化も視野に入れています。
 省吾リーダーからは、学校では学べないことを私達が教えるだけでなく、学生という視点から企業にとってプラスになる考えも拾って欲しいと言われています。
 知り合いの会社にも声をかけ、職種、業種ともに広げて行けたらと考えています。
 また、地元企業を中心に企業間の交流ということも目論見…。」

「片桐です、プロジェクトチーフとして嶋社長とタッグを組み、地元中小企業の活性化を視野に入れ取り組んで行ます。
 夏休みから今日まで、決して調査期間が充分だった訳では在りませんが、調査活動を通して学生をバイトとして雇って貰ったりしながら、すでに動き始めています。
 大企業だけが就職先じゃないということを皆さんに知って欲しいと考えていまして…。」

「次はプロジェクト梶田、梶田社長とプロジェクトチーフ高山剛さんです。」
「梶田です、娘が省吾リーダーと同級生だったおかげで、我が社の危機を乗り越える目途が立ちました、これからは高山チーフ達の力も借り、安定させ、チーム赤澤に貢献出来るような会社にして行きたいと考えています。」
「高山です、チーム赤澤発起人の一人というか、省吾リーダーを口説いた張本人を自覚していますが、やろうよって話してたのは六月のことで、この会場が満席になる様な状況は思ってもいませんでした。
 ここまで自分達も動きましたが、やはり省吾リーダーの力、魅力は凄いと思います。
 嶋社長とは、中小企業を活性化させ、省吾リーダー中心にこの国を変えようと…。」

「続いて、株式会社設立プロジェクトチーフ安中伸一さんと、プロジェクトSチーフの髙尾和彦さんです。」
「安中です、株式会社設立の準備は順調に進んでいます。
 設立までの流れなど、全てネットで公開して行きますので興味のある方は参考にして下さい。
 先ほどリーダーからは資本金六億という話しが出ていましたが、この総会開会前に出資を申し出て下さる方が複数みえまして、資本金十億も可能となっています。
 この額を充分生かすべく、起業を意識した相談を始めています。
 また後継者がいなくて廃業を考えている小企業を子会社化しチーム赤澤で盛り立てて行くという案も出ています。
 残したい技術を工房プロジェクトに絡めて守り…。」

「高尾です、株式会社第一弾の事業は、先ほどリーダーから紹介の有りました、CDとレコードの制作販売で、プロジェクトSとして動き始めています。
 CDだけならそれほど問題は無かったのですが、レコードもとなり緊張しました、でも逆に面白そうだと参加してくれるメンバーが増えて盛り上がっています。
 株式会社の名称は未定ですので皆さんから案を頂けたらと思い…。」

「次は卒論プロジェクトのチーフ、畠山道雄さんです。」
「畠山です、卒論プロジェクトは大学の卒論や卒業研究を見直して貰うことを目標にしています。
 今までは、卒業の為の卒論、卒業研究という意味合いが強かったと思います。
 しかし、多くの時間と労力をを費やしての研究ならば、より世の役に立つ研究に出来ないかと考えていまして、そこをどう提案して行くか検討しています。
 ここまで発表のあったプロジェクトも卒論テーマとして取り組むことを前提に参加して貰えたらと思っています。
 この後紹介されるプロジェクトも、チーム赤澤内での共同研究という形でまとめ整理し、より実践的な研究、場合によっては学生の卒論がそのまま社会貢献に繋がるということを目指しています。
 省吾リーダーから、社会の役に立つ研究なら卒論により身が入るのでは、とういう言葉を頂き発足させたプロジェクト、分野を問いませんのでよろしくお願いします。」
「次はネクスト・キャビネットプロジェクトのチーフ飯山智慧さんです。」
「我々の目標は、ずばり政治を変えることです。
 きちんとした調査研究もなく、政治家の思いつきで作られたような政策、その結果は?
 政治家の人気取りのために行われているようなバラマキ政策。
 党利党略私利私欲の政治家たち。
 政治をあきらめかけてる大人たち、無関心な若者たち。
 政治に興味のあった私も正直言って白けていました。
 でも省吾リーダーから、今まで大人達が作ってきた枠組みに囚われない心で、明日の日本を考えて行こう、という言葉とともに色々な提案を頂きまして、明日の日本を作っていくのは自分達なのだと思う様になりました。
 すぐには無理でも、省吾リーダーには総理大臣になって頂いてこの国を引っ張って頂けたらと思っています。」
「続いて、法律研究プロジェクトチーフ、半山良一さんです。」
「半山です、法律研究プロジェクトは、立法、司法の改革を考え、現行の法律全部を見直し作り直すぐらいの気持ちでスタートしました。
 膨大な量の法律をいかに分かり易くするかを目標にしています。
 他のプロジェクト同様、大学を超えての協力が始まっていまして、我々が卒論の形で検討した法案が、実際に国会の場で承認されることを視野に動き始めています。」
「続いて、組織…。」

 うわ~、まだあるの、すごくテンポ良く簡潔に説明して貰ってるけど、政治、経済…、それから…。
 みなさん、真面目に明日の日本を考えているんだ。
 私なんか、場違いな気がしてきたけど…。
 でも、うん、私もチーム赤澤のメンバーとして何か…、ボランティアでは感謝されたのだから。
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谷口あやか-04 [F組三国志-06]

 由香のお兄さまと高三向けの説明会で少しお話し出来たのは嬉しかったのだけど、お兄さまは宮田先輩や佐々木先輩とかとも親しげで、ホントに誰にでも優しいと言うか。
 私が憧れる人を巡ってはライバルが多過ぎる、麻里子に言われた通り恋愛対象のレベルを下げるべきなのかも知れないと思う今日この頃なのだ。
 でも、今日こそ良い出会い、素敵な彼氏ゲットに向けての一歩を…。

「おはよ。」
「あっ、麻里子、ちょっとお洒落してない?」
「当たり前でしょ、今日のチーム赤澤設立総会にはテレビ局のカメラも入るのよ。
 あやかはそんな感じで彼氏を作れるとでも思ってるの?」
「うっ、これでも私なりに…。」
「私たちは美咲さまとは違うのだから、それなりに気を使わないと。」
「でもさ、麻里子って結構もてるよね。」
「もてると言ってもさ、最近も告白されたけど、なんか頼りなくて情けない人、私はか弱いから頼れる男性に守って貰いたいのに。」
「か弱いね…、麻里子は今日出番有るの?」
「今日は大学生が裏方を全部やってくれるから特別な仕事はないけど、まあ適当に手伝うかな。」
「適当に手伝う…、う~ん、そんな事を考えるんだ麻里子は。」
「だから、あやかはお子ちゃまなのよ、テストの点が良いだけじゃだめね。」
「そう言われても…。」
「私は総会に対して主催者側の人間だと思ってる、だから会の成功を考え観察し行動する。
 あやかは、一参加者として良い男はいないかと。」
「そ、それは…、否定出来ないけど…。」
「人の価値観は様々だけど、どちらが魅力的?」
「それ以前に麻里子には色々負けてるわ、今日は一人なの?」
「私だけ先に来たの、大学構内を少し見たくてね。」
「そっか、大学って高校とは建物もずいぶん違うよね、ここが第一志望?」
「地元では一番だからね、チーム赤澤の先輩も多いし、あやかも彼氏を作る事ばかりでなく、自分の進路も考えなきゃ。」
「それなりに考えてるわよ、えっと受け付けは済ませた?」
「まだこれから、一緒に行こうか。」

 受付を済ませて大講堂へ。
 麻里子はスタッフに声を掛け省吾さまの元へ、私は梨乃を見つけたので梨乃のお母さんと三人で席を取った。
 おしゃべりに夢中になっていると、舞台袖に…。

「あっ、美咲さまよ。」
「うわ~、今日は一段と大人っぽくて、お綺麗だわ~。」

「お早う御座います、本日はお忙しい中ご来場下さいまして有難う御座います。
 進行を務めさせて頂きます秋山美咲と申します、よろしくお願いします。
 開始まで今しばらくお時間が有りますが、ネット等でご案内させて頂きました通り、チェロとピアノのデュエットを楽しんで頂けたらと思います。
 サン・サーンス作曲、動物の謝肉祭より白鳥、および白鳥の主題による変奏曲、黒川淳一のチェロ、ピアノ舘内亜美でどうぞ。」

 うわっ、亜美ったら可愛いドレス、淳一くんもなんか恰好良いなぁ~。
 えっ…、えっ…。
 こんな…。
 クラシックってあんまし聴いたことなかったけど…。
 あれっ、なんか涙が…。

 うわ~、すごい拍手だ…。
 省吾さまが出てきた…。

「みなさん、おはようございます。」
「よっ、リーダ~!」
「ははは。」
「まずは、二人にもう一度拍手を。
 淳一、亜美、素晴らしい演奏ありがとう。」

 うん、本当に良かった。
 鳴り止まない拍手ってことは、会場のみなさんも感動したってことなのかな。
 あっ、舞台そでの美咲さまに照明があたった。

「お時間になりましたので、チーム赤澤設立総会を始めさせて頂きます。
 まずはチームリーダー赤澤省吾からご挨拶を。」
「赤澤省吾です。
 本日は大勢の方々にお集まり頂きまして有難うございます。
 今は、嬉しさと共に緊張感が高まっています。
 まずは、ネット等で今後の予定を紹介させて頂いておりますが、その中から少し。
 先ほど演奏してくれた黒川淳一、舘内亜美のCDアルバムは発売日が決定しました。
 録音はレコーディングスタジオではなく黒川淳一の自宅で、音響工学の実験も兼ねて行いました。
 ピアノを囲む形で、室内に仮設のスタジオを作っての収録です。
 ここのピアノとは一味違う年代物のピアノ、その素敵な音色を楽しんで頂けたらと思っています。
 また、録音したものはCDだけでなくレコード盤の形でも販売させて頂きます。
 CDだけならCDの売り上げで制作費を簡単に回収出来ると思っていますが、あえてマニアックなレコードの制作販売に踏み切ることにしたのは、プロジェクト梶田、ご存じの方も多いと思いますが、一企業の再生を目指す我々の取組、そこから派生して誕生した工房プロジェクトの第一弾という意味合いが有ります。
 薄利多売とは真逆、一つだけでもオーダーメイドで作ります、が工房プロジェクトの売り、そのサンプル的な意味あいを込めまして、個人でも趣味の範囲でCD作れます、少しお高くなりますがレコードだって作れます、という取り組みです。
 さらにCD、レコードの制作販売はその過程を地元テレビ局と共同で記録していまして、テレビで紹介して頂いたり、ネット上に参考映像として残す予定となっています。
 そして、このプロジェクトをきっかけに株式会社設立が確定しました。
 チーム赤澤自体は営利目的ではありません。
 しかし大きな目標として掲げている、今まで大人たちが作ってきた枠組みに囚われない心で、明日の日本を考えて行こう、を実践していく過程で、実験的実習的に会社を設立してみよう、また、自分達の手で就職先を作るという意味合いもこめて設立を決定しました。
 今後、非営利のチーム赤澤と、しっかり社員に給料を払った上で株主配当も出せる、営利を目的とした株式会社という二つの組織が平行して動いて行くと考えて下さい。
 株式会社は、我々がきちんとした企画を出すことが出来れば、現時点で資本金六億円ぐらいまでの目途が立っています。
 チーム赤澤としてはまだそれだけの資金を必要としていませんが、何時でも増資出来るとお考え下さい。
 多くの方々が期待して下さっている様々な企画を皆さんと共に実現させて行きたいと思っていますので宜しくお願いします。」

 資本金六億円と言われてもね…。
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谷口あやか-03 [F組三国志-06]

 チーム赤澤設立総会の発表が有り…。

「ねえ、梨乃、チーム赤澤設立総会ではプロジェクト梶田の報告も有るみたいだけど進んでるの?」
「うん、夏休み中に色々動いて方向性が見えて来てね、高山チーフは総会までに第一段階を終わらせると話してたわ。」
「もう、余裕?」
「そうね、嶋くんのお父さまのお蔭で新たな仕事の受注に成功したのだけど、課題は残っていて、でも社員さん達と話し合って改善中なの、社の改革に協力的でなかった人が辞表を提出してくれたから雰囲気は悪くなくてね。」
「クビにしたのではなく?」
「ええ、夏休みに工場の大掃除をしたのだけど、それをやりたくなかったとか。
 元々仕事熱心ではなかった割に威張ってた人がいなくなりすっきりしたみたいでね、他の社員さんは会社の現状を説明され納得の上で動いてくれてるのよ。」
「え~っと、不用品の売却と工場内の環境整備だっけ。」
「工場は、笑っちゃうほどすっきりしたわ。
 片付いて来ると社員さん達も楽しくなったとかでね、今回不用品を売って得たお金は社員へのささやかなボーナスになったのだけど、今後はリサイクルを徹底してそこで得られたお金を使い工場を綺麗にして行こうって。」
「そうなんだ。」
「トイレが大きなポイントだったみたい。」
「トイレ?」
「省吾さまや高山チーフが言うには、トイレの汚い会社は伸びないのだとか、従業員の士気が上がらないそうなの。
 実際古かった工場のトイレを綺麗にしたのが社員さんに好評でね。」
「予算は?」
「我が家の贅沢品を売って作ったお金、ピアノとか最近はあまり弾いてなかったし。」
「それなら社員の方々も素直に喜んでくれそうね。」
「思っていた以上に効果があったみたい、そこに新規の仕事が入り工場の活気が全然違うと社長が話してたわ。」
「ふふ、お父さんでしょ、社長って。」
「プロジェクト梶田の一員として学んだり手伝ったりしてる時は社長と呼んでるの。」
「手伝ったんだ。」
「夏休み中は掃除したり、事務作業を教えて貰いながら手伝ったりしてね、嶋くんが社員さん達に可愛がられていると話してたけど、今の私もね。」
「社長の娘が手伝うという意味は大きいのかな?」
「そう思う、だから学校が始まってからも、授業後に顔を出して片付けとか手伝っているのよ。」
「学生や社長令嬢が手伝い工場が綺麗になったのだから、社員の会社に対する気持ちが変わって当然か、ねえ、嶋くんは夏休み中、どうだったの?」
「やっぱ恰好良いのよね~、工場内のレイアウトとかをプロジェクトメンバーと考えてくれたり、彼のところの社員と交流の場をセッティングしてくれたり、工房関連でも理沙と一緒に色々な提案をしているみたい。」
「あ~、理沙が羨ましい。」
「うん、羨ましい、でもね、あやかや私では力不足と言うか…、嶋くんにとって、理沙が良かったのだろうなって思うの、嶋社長も二人に対して嬉しそうに教えて見えるのよ。」
「でもさ、まだ高一じゃない、この先心変わりとかしないのかな?」
「それは分からないけど、F組のカップル達は互いを尊重し合ってるでしょ、省吾さまや哲平さんも。」
「そう言われると…。」
「哲平さんは静のご両親に気に入られたみたいで、次男だから婿養子となって社長を継ぐという流れになりつつ有るみたいなのよ。」
「えっ、そんな話、どこから?」
「静のお父さまもチーム赤澤に興味を持たれて、うちの空き倉庫を利用した工房プロジェクトに出資を考えておられてね、形の上では哲平さんに百万円を贈与、哲平さんはそのお金でプロジェクトが設立する株式会社の株主にという話になっていて、例え静と別れたとしても、自分の会社に就職する様にと、大学なんてどこでも良いからラグビーに打ち込めともね。」
「哲平さんなら息子にしたくなって当然か。」
「私たちも、もう少し女を磨かないと駄目よね。」
「うん、梨乃、一緒に頑張ろう、でも由香のお兄さまは好きにならないでね。」
「え~、学習会の時に数学を教えて頂いたのだけど、恰好良くて優しくて素敵な方で…。」
「はぁ~、梨乃もか…。」
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谷口あやか-02 [F組三国志-06]

 九月になって色々な動きが有る。

「美咲さま、F組三国志は新たな展開に突入するのですね。」
「あやか、そんな硬い話し方はやめてよ。」
「いえいえ、美咲さまはチーム赤澤の象徴です、それで、他クラスからの参加者はどれぐらいになるのですか?」
「まずは十三名、第一段階として各チームに振り分けた後、様子を見ながら増員しチームを分裂させたり再編したり、参加希望者は部活繋がりとかで結構いるのよ。」
「短い間だったけど、F組三国志が終わってしまうのは少し寂しいです。」
「そうね、でも、発展的に区切りをつけるのだから悪くないと思うわ、先生方も私達の取り組みに協力して下さいますからね。」
「今後の名称は?」
「どうなるのかしら、信長の野望なんて案が出てたけど。」
「戦国時代ですか。」
「平和なゲームだけどね、クラスを越えてチームを増やし競い合って行くけど、本当のライバルは他の進学校。
 でも、単に偏差値を上げると言うのではなく、人としての成長を目標に掲げているでしょ。」
「それを教師ではなく、一生徒で有る省吾さま中心に進めて行くのですね。」
「う~ん、中心は省吾かも知れない、でも、みんなの力が無かったら先へは進めないわ。」
「分かってますよ、漠然と大学へ行って就職してと考えていましたが、夏休みには社会的弱者と接し、施設の方からも色々教えて頂きました。
 何をするにもお金が必要ですが、大学生の先輩方は色々考えておられます。
 私もその一員として自分の力を発揮して行くことを考えています。」
「なんだ、あやかも真面目に考えてるのね、彼氏を作る事ばかりかと思ってた。」
「美咲さま~、それは確かに最重要課題ですが、それだけではないのですよ~。」
「ふふ、夏休みは沢山の出会いが有ったのでしょ?」
「有りましたが、素敵な殿方にはすでにそれなりの方がお見えになられまして…。」
「だから、大学合格まで恋愛を封印してらっしゃる、由香のお兄さまなのね。」
「ライバルが多いのは分かっていますが、三年生向けの説明会には私も参加させて下さい。」
「そうね、理数系の人達中心で、由香のお兄さま以外にも素敵な方が参加されるみたい、真面目にチーム赤澤の紹介をしてくれるのなら問題ないわよ。」
「お願いします。」
「文化祭の方は大丈夫?」
「勿論です、自分の役目は多く無いですから、最低限の労力で最大限の効果を生み出す、留美は苦労したみたいですが、それでもやりがいの有る作業だと話していました。」
「無理なくが私たちのモットーだけど、頑張った経験もいつか青春の想い出になる、F組のみんなが頑張る時は楽しんでいるのよね。」
「みんな美咲さまに影響されてますから。」
「私に?」
「ずっと頑張って来られて…、まあ、省吾さまとご一緒で羨ましくてしょうが有りませんが、F組のリーダーで有り、女神で有りお母さん。」
「なによ、それ…。」
「みんな大好きってことです、美咲さまのことが、それで従弟に写真を送って自慢したいのですが。」
「そうね…、省吾とのツーショットにしてくれる。」
「省吾さまは虫よけですか?」
「それも有るけど、チーム赤澤設立総会にはテレビ局の取材も入るみたいなの、ネットでも配信する予定だから、その宣伝もしてね。」
「十月の終わりで確定したのですか?」
「明日、チーム赤澤のサイトで正式発表よ。」
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谷口あやか-01 [F組三国志-06]

 嶋くんが理沙を選んでちょっぴり泣いたけど、省吾さまにパフェをおごって貰って励まされ、新たな恋をと考えて始まった夏休みは、チーム赤澤関連のボランティアや学習会などで充実したものに、残念ながら彼氏は出来なかったが…。

「あやか、夏休みはどうだった?」
「そうね、彼氏こそ出来なかったけど、色んな人との出会いが有って…、麻里子もでしょ。」
「うん、中学の頃なんて話すのは同級生ばかり、今にして思えば視野が狭くなって当然という環境だったわね。」
「それが大学生と沢山話せる様になったし、私はボランティアに参加したことで中学生や施設の大人ともね。」
「ボランティアは大変だったの?」
「数回のことだったから全然、私は幸せな家庭で暮らしていることを表に出さない様、気を付けてたけど、中学生とは結構仲良くなったのよ。」
「へ~、話題は?」
「森くんネタが一番盛り上がったかな。」
「森くん?」
「麻里子も知ってるF組の元問題児、彼も一緒だったのよ。」
「チーム赤澤に参加とは聞いてたけど。」
「数学を教えるのが上手くて女子の中で人気だったの、少しぶっきらぼうな所が恰好良いとかでね、身長高いし岡崎と違って不細工な訳でもない、進学校に通ってるから、高校入学当初いじめっ子を目指していたと告白してもね。」
「そう言われてみると…、そうね顔つきが穏やかになった気がするわ。」
「反省しマシな人間になろうと思ってると話してて、小学生の遊び相手もしてたのよ。
 一度だけかと思ってたら、私たちより回数が多くなっててね、次の日曜日も遊びに行くとか話してた、彼にとっても良い経験になっていて、小中学生の面倒を見る中で彼なりに自信を持ち始めてるのだと思うわ。」
「そっか、それなら私たちも付き合い方を考え直さないとね。」
「でも、彼氏にと考えるのならライバルは多いわよ、本人も人生最大のモテ期だと話してたから。
 しばらくは特定の彼女を作らず、兄的ポジションで中学生に学習アドバイスをして行くそうでね。」
「すでに、あやかは森くんと色々話してるのね。」
「F組の仲間でしょ、由香もよ。」
「由香が彼を狙ってるとか。」
「まさか、由香はお兄さまが基準だから彼は問題外、由香のお兄さまって素敵なのよね~、由香を義妹にするのも悪くないかな。」
「選んで貰えるの?」
「そこなのよ、由香が言うには大学合格までは恋愛を封印してるそうでね。
 その間にどれだけ自分をアピール出来るかに掛かってるのよ。」
「学習の妨げになったら嫌われるだけでは済まないから気を付けなさい。
 まあ、それなら私にもチャンスが有ると言うことね。」
「え~、麻里子も狙ってたの?」
「学習会の時に数学を教えて貰ったのだけど、なんか優しさが滲み出て来るのよ、由香の兄貴自慢が控えめだったと気付くぐらいにね。
 今の所はチーム赤澤唯一の高校三年生として私たちとの接点を維持してくれそうだから、別に彼氏どうこうと言う事なく親しくなりたいわ。」
「そ、そうよね…。」
「どうしたの?」
「私が好きになる人って人気の有る人ばかりでさ。」
「嶋くんと付き合い始めて理沙は頑張ってるわよ、単に嶋くんの事が好きというだけでは駄目みたいでね。」
「えっ、そうなの?」
「夏休み中に互いの両親を紹介し合い、嶋くんが将来社長になるだろう会社の事を教えて貰ったりしたそうでね、自分は何を学ぶ必要が有るのか真剣に考えているって話してたわ。」
「そっか~、理沙はそういうタイプよね、嶋くんも分かっていたのだろうな~。」
「遊びに行くより二人で会社の事を学ぶのが楽しいそうでね。」
「そういうものなのか~、私が思い描いてた嶋くんとのデートとは掛け離れてるじゃん。」
「あやかは己を知り恋愛対象のレベルを下げるべきね、森くんはどうなの?」
「いや~、それはマジで無理なのよ、不幸な生い立ちの妹分達のことが可愛くてしょうがないみたいでさ、自身も児童養護施設のお世話になる可能性が有ったと話してたし。
 頼られたら守りたいとも、彼女達は私の友達でも有るから森くんはちょっとね。」
「中学生に魅力で負けてると言うことではないの?」
「うっ、それは言わないで。」
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藤本慎吾-06 [F組三国志-06]

 由香たちのやり取りから逃れるべく、近くにいた宮田さんに…。

「どう、チーム赤澤のことは掴めた?」
「ええ、少しだけ…、藤本くんは、今の学校制度を前提にして議論したところで、本当に新しく効果的な教育制度は出て来ないと話してたでしょ…。」
「ああ、あの時は話題が違う方向へ行ってしまったけど、宮田さんは気になってたんだね。
 ねえ、宮田さんは人の能力を年齢だけで判断して良いと思う?」
「年齢が高ければ…、能力が高い訳でもないか…、え~と…。」
「幼い頃は一年で大きく成長、小学一年生でも三月生まれと四月生まれの能力差はそれなりに有る。
 その差は成長するにつれ小さくなって行くが、人生に影響してると言う人がいるぐらいだ、でも、その能力差は年齢だけで決定付けられるものでは無く、家庭環境や遺伝によっても違うだろ。」
「ええ。」
「だが、現行の教育制度では能力に関係なく年齢で区切られて来た、日本は飛び級制度が無いからね。」
「飛び級制度については私も調べた事が有るのだけど弊害も有るのよね。」
「うん、人としてのバランスを考えたら、現状だと飛び級の対象になった時点で社会性とかに問題を生じさせる可能性が有るかも知れない。
 正直言って全ての人にとって完全な制度は有り得ないと思うが、その中で自分達の社会が選択している教育制度がベターなのかと言うと、優越感に浸って育って来られた身とは言え、どうかと思うんだ。」
「私も問題が有ると感じてるわ。」
「チーム赤澤では教育制度に関して色々な案が有ってね。
 例えば、自分で調べ考える自学自習能力アップを目的としたプログラムを強化、それと並行して、ネット上に教科書と参考書、授業などを組み合わせたデータバンクを構築する。
 自学自習能力の高い人はそれを活用して学習を進めて行けば良い。
 テストはゲーム感覚、初級中級上級とかランク分けした問題をクリア出来るかどうかで競う。
 興味有る分野なら年齢に関係なく今の高校卒業程度まで進んで構わない、小学生でもね。」
「知識に偏りが生じないかしら?」
「読み書きや算数とかの必修教科、一市民として持つべき資質は何年掛かっても良いから身に着けて欲しいが、それ以上の事、中級上級へ進むか、職業訓練や心を豊かにする趣味的な領域に時間を掛けるかは、助言を受けながらの自由で良いと思う、まあ就職までの道筋を示しながらだけどね。
 勿論、全てがネット上で完結する訳ではないから、理科の実験観察や体育と言った場は必要、でもそれだって同じ年齢だけの集団で行う必要は無い。
 現行の教育制度化では個人評価とその整理に時間を掛け過ぎているが、それは教師の負担を増やしているだけで大した意味は無い、だから…。」
「う~ん、ちょっと待って、色々な案が出てる一部なのよね。」
「ああ、制度として完成させて行くのは簡単ではないからな。」
「現行制度を前提にしてたら出て来ない発想という事は分かったけど…、私には考える時間が必要だわ。」
「チーム赤澤でもまだ整理中だからね、ベースは省吾リーダーの考えで大学生はその検証作業をしながら可能性を探っているという感じなんだ。」
「学校制度の問題点を考えては来たけど、授業形式の学校…、私の頭ではそこから離れる事が出来なかった、う~ん、それも私が受けて来た教育の弊害なのかしら。」
「宮田さんは真面目だからね、その視点から省吾リーダーの描いてる教育システムを検証してみるのも悪くないと思うよ。」
「そうね、いじめとか不登校とかも意識しているのでしょ。」
「固定化された学級という存在の代わりに年齢関係なく形成される集団で社会性を伸ばすとかね。
 人をいじめる事で自己の優位性を確認するのではなく、年下の面倒を見る事で自己確認をするとか、妹の話ではすでに幾つかの場面で成果が上がってるみたいだよ、なあ、由香。」
「ええ、ボランティア活動を通してとか、宮田先輩、私は環境によって人が変わるということを夏休みに実感しました。」
「これはチーム赤澤に参加するしかないわね。」
「由香、手続きを頼めるか、話を聞いていて宮田さんのこと分かっただろ。」
「うん、宮田先輩は、まずプロジェクトFに所属して頂いて、教育制度研究チームを紹介すれば良いのね、並行して大学受験研究チームにも…。
 宮田先輩、理数系を選ばれた理由を教えて頂けますか?」
「私は、ぼんやりと理科の先生になりたいと思っていてね…、でもチーム赤澤の考えでは教師の在り方が随分変わりそうだわ。」
「そうだな、知識を身に着けるだけなら俺達にとって教師の役割は低い、でも実験観察を通して体験して行くには、それをプログラムしてくれる人が必要だと思う。
 それこそが教師の役割で有り、宮田さんならそれが出来るのじゃないかな。」
「私に出来るかしら…、でも、藤本くん有難う、自分の方向性が見えて来た気がする。」
「宮田先輩も藤本先輩の彼女さん候補なのですか~?」
「あやか!」
「ふふ、今は受験に集中したいから、そういう話は封印中なの。」
「やはり受験って大変なのですね。」
「上を目指すとね、親が言うには学校のレベルによって学友に差が出来る、あやかさんもこの高校に入学して感じたでしょ。」
「あっ、はい、中学の成績上位者が集まる高校ですから。」
「あやかは頭が悪い訳ではないのだけど…。」
「由香、それ以上は言わないで!」
「はいはい。」
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九月入学-02 [このブログのこと-03]

「亜紀、九月入学問題の解決策は思い浮かんだ?」
「だめだったわ、私なりに調べてみたのだけど、結局小学生になるのを遅らせるしかないみたい。」
「どうして答えが見つからないと思う?」
「誰かと違って現実的に物事を見てるから…。」
「だろうな、では非現実的な視点で考えてみよう。
 そもそも、能力の異なる子ども達を年齢という条件だけで区切ってる理由は何だ?」
「う~ん、機会均等と言えば良いのかしら、平等とか、それと手続きが簡単で分かり易いかな。」
「そこに何の意味が有る?」
「実力重視なのは知ってるけど、能力的に劣る子の気持ちとかは考えられないの?」
「では、全く理解出来ない授業の場に座らされている子の気持ちを考えた事は有るのか?」
「それは…。」
「決して少なくない子ども達がそういう目に遭っている、でだなテストで悪い点を取って惨めな思いをしてると思うか?」
「えっ、どういう事?」
「彼らなりに自分の実力を理解しているのさ。
 そんな事で自分を卑下してる子もいるだろうが、そうでない子は沢山いるだろう、元々学習に興味がないのだから。」
「そ、そういうものなの?」
「価値基準が違うのさ。
 その価値基準は間違っていない、大学に行きたいとも考えてないからね。
 そんな彼らにも、生活に必要の無い大学入試までの過程を意識した教育を施している。」
「そうね…、因数分解とか…。」
「頭のトレーニングにはなるが、それをほとんど理解出来ない子にとって、その授業に何の意味が有る?」
「無意味か…。」
「簡単に言えば九月入学とかはどうでも良い問題でね。
 根本的に学校教育を変え、無駄を排除し効率的で広い視野を持てるシステムは、教育現場のネット環境を充実させて行くことが出来たらと可能だと思う、少なくとも今よりはましな状態に。
 個人の実力に応じてゲームの次へ進む感覚で学習と向き合うシステムを構築したいかな。」
「あっ、それが、今の学校制度を前提にして議論したところで、本当に新しく効果的な教育制度は出て来ないと、藤本慎吾に語らせていたことなのね。」
「ああ、それこそがチーム赤澤メンバーの考えてる事だよ。」
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九月入学-01 [このブログのこと-03]

「ねえ、九月入学が話題になってるけどどう考えてるの、学校の制度改革はテーマの一つなのでしょ?」
「コロナのどさくさに紛れて表面化したが単純な話ではないだろ、亜紀は問題点を把握出来てるのか?」
「私はそんなに気にしてないけど、甥の小学校入学に影響が有りそうなのよ。」
「そうか、まず大前提として理解しておいて欲しいことに、政治家の皆さんは現場の都合なんて考えて無いという事が有る。」
「どういう事?」
「今回のコロナに関する動きでも、保健所や厚生労働省の職員の人数を考えてない発言が多数有ったと思わないか?」
「あっ、現場って、そういうことか…。
 限られた人数で慣れない作業に当たって苦労している人達の実情を考えて無い様な…。」
「さも素晴らしい意見だと胸を張って発言している人達は、それを実現させる為にどれだけの労力が掛かるのか全く考えてなくてね。
 小さな自治体ならいざ知らず、全国規模でやろうとすると大変なんだ。」
「そうよね、余計な仕事が増えて公務員が混乱、時間が掛かったりミスしたり。」
「マスコミもだけどね、言論の自由を良いことに憶測だけで人や会社を貶める様な発言をしてる元官僚だとか、結論有きで発言を勝手に捻じ曲げてみたりとかしながら、現場で働いてる役所の人達の苦労を感じるだけの能力の無い人達が、適当に無責任な発言をしているのが現実なんだよ。」
「うん、私も沢山調べた訳ではないけど、マスク不足の中、苦労して国がマスクを調達したら、多数の不良品、でも、無意味に叩かれたユースビオだけは不良品が無かったとか、会社の規模に関係なく良い製品を納入した企業が憶測だけで非難されてたでしょ。」
「ああ、そんなことを数え始めたら切りが無いという悲しい現実を踏まえて、九月入学問題を考えてみる訳だが、学校関連の現場にとって、コロナ問題で右往左往してる最中にいきなり九月入学に変更しますと言われたら大変だと思わないか?」
「そうね、オンライン授業に取り組み始めたり、学校再開後のスケジュールを練ったりとかで。」
「では九月入学のメリットってなんだ?」
「えっと…、コロナで休校が続いた学習日程の調整と…、国際標準に合わせるとかかしら。」
「では、デメリットは?」
「現場の混乱でしょ。」
「ああ、混乱を最低限にと考えると、現行通りの年齢基準のまま九月入学、とすると小学校への入学年齢が国際標準からかなり遅くなるらしい。
 だからと言って年齢基準を変更したら、いきなり小学一年生が増える、それを調整しようとしたら教師と教室が確実に不足するだろうな。」
「なら、中学以降は問題無いってことになるの?」
「う~ん、何が問題なのかは人の価値観によって異なるからな、進学や就職関係で混乱しそうだ。」
「制度を変えるって簡単な事ではないのね。」
「まあな、柔軟な発想を受け入れられない人が多い、それこそが今の学校制度が生み出した問題でも有るのだがね。
 亜紀なら九月入学問題にどんな答えを出す?」
「そうね…。」
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藤本慎吾-05 [F組三国志-06]

 高三への説明会には結局十一人のクラスメイトと他のクラスから三人が参加、大学生の他、妹のクラスからの参加も有って賑やかなものに。
 会の進行は一年生の奥田麻里子さん。

「三年生の先輩方には事前にチーム赤澤のサイトを見て頂き、質問を文章で送って頂きましたので、その質問に応えることから始めて行きます。
 まずは、総合的な話を、彼の事は哲平と呼んでやって下さい。」
「よろしくお願いします。
 チーム赤澤は発足から間が無いのですが、多くの大学生が参加を表明したことにより多岐に渡る分野で意見交換が進んでいます。
 内容によってはプロジェクトとして動いていたり、ボランティア活動、学習会という形で人が集まることも有れば、ネット上での活動も進んでいます。
 今は、それぞれに短期目標、中期目標、長期目標の設定を検討しています。
 自分たち一年生はそれを見て学んでいる段階です。
 先輩方からの質問ではチーム赤澤に参加して何をするのか、というのが有りましたが、まずは高校三年生という視点で活動を見て頂き、自分たちとも意見交換をして下されたらと思っています…。」

 哲平くんは無理のない範囲で一年生とも交流することを提案しつつ、大学生との関係や大きく動いているプロジェクト梶田などの話も簡潔に話してくれた。
 続いて大学受験に向けての話はプロジェクトFから派生して誕生したチームから三枝さん。

「チーム赤澤としては、大学や大学受験の在り方に対しての見直しをしていますが、現状、優秀な後輩には是非希望する大学に合格し、我々と共に歩んで欲しいと考えています。
 まずは藤本くんを研究材料としていますが、彼は少し優秀過ぎて、我々の助力が無くても何らかの間違いが起こらない限り志望校に合格出来ます。
 我々が取り組んでいるのは、入試を分析、人を選抜する手段として入試が有る訳ですが…。」

 三枝さんは、遠回しでは有るが自分たちの研究材料になって欲しいと、協力してくれたら学習効率を上げる手伝いをすると、まあそういうチームのメンバーなのだ。
 学校改革については、秋山美咲さん、妹と同学年とは思えない程大人びた美人の登場に場の雰囲気が変わる。

「学校制度の見直しは私たちにとって大きなテーマです、簡単にどうこう出来ることでは有りません。
 何の為の教育なのか、何の為に学習するのか、という根本に立ち返る必要が有ると考えていますが、それは学歴社会、大学入試の存在によって、本来の目的が歪められているからです。
 公立の小中学校では全員が同一に扱われている児童生徒ですが、その能力は人それぞれ、本来はそれぞれが、それぞれの能力に合わせて成長し、この社会の中で責任有る大人として生活して行ける様にと在るべき教育の場に歪みが生じ、そんな視点から…。」

 さすが省吾リーダーの彼女なのだが、野郎連中の頭に話が届いているのかは疑問、いや女子達も…。
 美人過ぎるというのは…、由香ぐらいの可愛さが丁度良いのかも知れない。
 と、思ってたら、由香がボランティア活動について経験談を交えながら話し始めた。
 我が妹ながら…。

「藤本くんの妹さんも素敵ね、あんな可愛い妹ならシスコンになっても不思議じゃないわ。」
「た、頼むからそのワードをこの場で口にするのは…、ここからは交流の時間だからな。」
「そうね、ちょっと由香さんと話して来るわ。」
「あ、ああ…。」

 佐々木さん、お願いだから妹に余計な話をしないで下さい…。
 彼女と入れ替わりに一年生が…。

「由香ご自慢のお兄さまは、プログラミングについて大学生の方と情報交換をされているのですよね、どんな感じなのです?」
「そうだな、先輩とは視点が少し違っていて面白い、アプローチの仕方が違うと言うかね。」
「先輩に教えたりもしているのですか?」
「教えるというか、情報交換だね、協力することによって効率が良くなったかな。」
「頻繁に連絡を取り合っているのですか?」
「そうでも無くてね、これは実験的にやってる事なのだけど、互いに情報を送るだけで、それに関しての返信はあまりしない様にしているんだ。」
「効率重視ということですか?」
「うん、人間味が無いと言われそうだけど、時間の使い方を考えていてね。」
「時間の使い方を考えないと、由香が怒るとか?」
「由香は怒ったりしないよ。」
「先輩、ブラコンの妹を持つって、兄としてどうなのです?」
「えっ、そ、それは…。」
「ちょっと~、あやか、お兄ちゃんと何話してるのよ~。」
「羨ましい兄妹だと思って…。」

 日頃見る事のない妹の怒った顔も可愛いが、妹がブラコンと思われ、俺はシスコンと…、これってやばくないのか…。
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藤本慎吾-04 [F組三国志-06]

「なあ、そもそも学校って本当に必要だと思うか?」
「う~ん、そう来たか…。」
「うんと昔は親が生きて行く術を子に教えていたのでしょ。」
「学制は明治時代の1872年に発布されたけど、江戸時代だって藩校や寺子屋が有ったのよね。」
「何の為に?」
「富国強兵、殖産興業を推し進める為には…。」
「そうね、豊かな国を維持して行くためには教育が必要、その為の学校。」
「別の視点で考えると、社会の中で一個人が生きて行く力を身に着ける為という事が有るのかな。」
「そうだろうけど、そのシステムは明治時代から随分変わった現代社会に至る過程で正常に発展、進歩して来たと思うか?」
「言いたいことは分かる、思い起こせば小中学校の授業なんて…、私はお利口さんだったから黙って座ってたけどね。」
「うちの生徒は皆感じて来たことだと思うし、逆も有るだろう、生きて行くのに必要の無い知識を強要されてる子達もいるのだから。」
「そうよね、頭の悪い子に色々強要するから問題児を生み出すとか。」
「彼らだって悪くない、問題は学校のシステムに有り、今のネット環境を最大限に活用すればそれをましな方向へ持って行けるのでは無いかと、チーム赤澤のメンバーは考えているんだ。」
「一年生達も?」
「勿論。」
「そのシステム構築とかを藤本くんは考えているのかしら?」
「まあな。」
「じゃあ、絶対第一志望に合格しないといけないのね。」
「いや、そうでもなくてさ。」
「どういうこと?」
「最近、大学の先輩と情報交換していてね、本気で自分のスキルアップを目指すのなら大学以外にも道が有ると感じているんだ。
 大学という枠組みに拘る必要は無いのかもとね、まあ実際問題として大学に籍を置くメリットは大きいから大学には入りたいと思っているが。」
「そうよね、肩書で判断する人もいるのだから。」
「うん、人脈をうまく作ることに成功したら、アメリカの名門大学と繋がれるかもと思っている。」
「えっと…、その切っ掛けもチーム赤澤ってことなの?」
「ああ、省吾リーダーは海外との情報交換も指示しているからね。」
「指示か…、赤澤省吾ってやっぱ天才?」
「ご本人は普通の高校生だと話してるけどな、普通の高校一年生の下に大人を含めた多くの人が集まると思うか?」
「大学生に指示する高一が普通だとは思えないわ。」
「うん、大学間の垣根を越えて、という壮大な計画がすでに進み始めているからね。
 自分のポジションは、それを円滑に進める為のシステム構築だと考えている。」
「将来の目標がより鮮明になったのね、藤本くんは良いな~。」
「佐々木さんだって、目標が有るじゃないか。」
「でも、キャリアウーマンなんて漠然とし過ぎてるでしょ、自分の力を発揮したいけど。」
「佐々木さんもチーム赤澤に登録する?
 受験向けの学習ばかりでなく視野が広がる、自分は学習効率を上げる助言を貰って時間の使い方を見直したよ。」
「私でも参加出来るの?」
「今はメンバーの紹介という形だからね。」
「藤本くんに紹介して貰えるのならお願いしたいわ、受験の方は余裕の有るとこを狙ってるから。」
「ねえ、もし登録したら何をするの?」
「まずは、省吾リーダーの主張に触れて考える事、勿論マイペースでね。」
「そっか、特別縛られるとかは無いのね。」
「ああ、その辺りは自由なんだ。」
「縛って欲しかったら俺が縛ってやろうか?」
「あなたは黙ってて!」
「藤本くん、私もお願い、教育を考えていたけど、視野が狭かった気がする、既存のシステムに囚われていないのよね、チーム赤澤は。」
「うん、宮田さん、今の学校制度を前提にして議論したところで、本当に新しく効果的な教育制度は出て来ないと思うんだ。」
「大学受験に取り組んでいてたまに思うのよね。
 世界史とかさ、入試が終わったら頭から消去しても全く問題ないでしょ、そりゃあ、そこから学ぶものは有るのだろうし役に立つことが有るのかも知れないけど、所詮世界史の目次みたいなことでしかなくて。」
「暗記能力を試されているとしても、人の能力は多岐に渡るよな、藤本、俺はこいつと違って真面目に考えてる、俺もチーム赤澤に参加させてくれないか?」
「そうだな、大学はまだ夏休み、時間を合わせて自分の担当者と相談する、何時が良いかな…。」

 クラスの仲間を巻き込めるのは嬉しい、由香のクラスと交流出来るかも知れない。
 参加を希望しているのは大学受験に向けて比較的余裕の有る真面目な連中ばかりだから安心して紹介出来る。
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