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藤本慎吾-06 [F組三国志-06]

 由香たちのやり取りから逃れるべく、近くにいた宮田さんに…。

「どう、チーム赤澤のことは掴めた?」
「ええ、少しだけ…、藤本くんは、今の学校制度を前提にして議論したところで、本当に新しく効果的な教育制度は出て来ないと話してたでしょ…。」
「ああ、あの時は話題が違う方向へ行ってしまったけど、宮田さんは気になってたんだね。
 ねえ、宮田さんは人の能力を年齢だけで判断して良いと思う?」
「年齢が高ければ…、能力が高い訳でもないか…、え~と…。」
「幼い頃は一年で大きく成長、小学一年生でも三月生まれと四月生まれの能力差はそれなりに有る。
 その差は成長するにつれ小さくなって行くが、人生に影響してると言う人がいるぐらいだ、でも、その能力差は年齢だけで決定付けられるものでは無く、家庭環境や遺伝によっても違うだろ。」
「ええ。」
「だが、現行の教育制度では能力に関係なく年齢で区切られて来た、日本は飛び級制度が無いからね。」
「飛び級制度については私も調べた事が有るのだけど弊害も有るのよね。」
「うん、人としてのバランスを考えたら、現状だと飛び級の対象になった時点で社会性とかに問題を生じさせる可能性が有るかも知れない。
 正直言って全ての人にとって完全な制度は有り得ないと思うが、その中で自分達の社会が選択している教育制度がベターなのかと言うと、優越感に浸って育って来られた身とは言え、どうかと思うんだ。」
「私も問題が有ると感じてるわ。」
「チーム赤澤では教育制度に関して色々な案が有ってね。
 例えば、自分で調べ考える自学自習能力アップを目的としたプログラムを強化、それと並行して、ネット上に教科書と参考書、授業などを組み合わせたデータバンクを構築する。
 自学自習能力の高い人はそれを活用して学習を進めて行けば良い。
 テストはゲーム感覚、初級中級上級とかランク分けした問題をクリア出来るかどうかで競う。
 興味有る分野なら年齢に関係なく今の高校卒業程度まで進んで構わない、小学生でもね。」
「知識に偏りが生じないかしら?」
「読み書きや算数とかの必修教科、一市民として持つべき資質は何年掛かっても良いから身に着けて欲しいが、それ以上の事、中級上級へ進むか、職業訓練や心を豊かにする趣味的な領域に時間を掛けるかは、助言を受けながらの自由で良いと思う、まあ就職までの道筋を示しながらだけどね。
 勿論、全てがネット上で完結する訳ではないから、理科の実験観察や体育と言った場は必要、でもそれだって同じ年齢だけの集団で行う必要は無い。
 現行の教育制度化では個人評価とその整理に時間を掛け過ぎているが、それは教師の負担を増やしているだけで大した意味は無い、だから…。」
「う~ん、ちょっと待って、色々な案が出てる一部なのよね。」
「ああ、制度として完成させて行くのは簡単ではないからな。」
「現行制度を前提にしてたら出て来ない発想という事は分かったけど…、私には考える時間が必要だわ。」
「チーム赤澤でもまだ整理中だからね、ベースは省吾リーダーの考えで大学生はその検証作業をしながら可能性を探っているという感じなんだ。」
「学校制度の問題点を考えては来たけど、授業形式の学校…、私の頭ではそこから離れる事が出来なかった、う~ん、それも私が受けて来た教育の弊害なのかしら。」
「宮田さんは真面目だからね、その視点から省吾リーダーの描いてる教育システムを検証してみるのも悪くないと思うよ。」
「そうね、いじめとか不登校とかも意識しているのでしょ。」
「固定化された学級という存在の代わりに年齢関係なく形成される集団で社会性を伸ばすとかね。
 人をいじめる事で自己の優位性を確認するのではなく、年下の面倒を見る事で自己確認をするとか、妹の話ではすでに幾つかの場面で成果が上がってるみたいだよ、なあ、由香。」
「ええ、ボランティア活動を通してとか、宮田先輩、私は環境によって人が変わるということを夏休みに実感しました。」
「これはチーム赤澤に参加するしかないわね。」
「由香、手続きを頼めるか、話を聞いていて宮田さんのこと分かっただろ。」
「うん、宮田先輩は、まずプロジェクトFに所属して頂いて、教育制度研究チームを紹介すれば良いのね、並行して大学受験研究チームにも…。
 宮田先輩、理数系を選ばれた理由を教えて頂けますか?」
「私は、ぼんやりと理科の先生になりたいと思っていてね…、でもチーム赤澤の考えでは教師の在り方が随分変わりそうだわ。」
「そうだな、知識を身に着けるだけなら俺達にとって教師の役割は低い、でも実験観察を通して体験して行くには、それをプログラムしてくれる人が必要だと思う。
 それこそが教師の役割で有り、宮田さんならそれが出来るのじゃないかな。」
「私に出来るかしら…、でも、藤本くん有難う、自分の方向性が見えて来た気がする。」
「宮田先輩も藤本先輩の彼女さん候補なのですか~?」
「あやか!」
「ふふ、今は受験に集中したいから、そういう話は封印中なの。」
「やはり受験って大変なのですね。」
「上を目指すとね、親が言うには学校のレベルによって学友に差が出来る、あやかさんもこの高校に入学して感じたでしょ。」
「あっ、はい、中学の成績上位者が集まる高校ですから。」
「あやかは頭が悪い訳ではないのだけど…。」
「由香、それ以上は言わないで!」
「はいはい。」
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