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嶋大地-02 [F組三国志-05]

 あっ、みんな来てる、二十人ぐらいと言うことだから、俺達が最後かな。
 でも、大学生と高校一年生って変わった集団…、あっ、原崎理沙も来てるのか…。

「今日のメンバー、揃ったね、みんな、こちらが梶田社長だよ。」
「梶田です、今日は来てくれて有難う。
 まずは工場内を案内させて頂いて、その後、会議室で感想などお聞かせ願えたらと考えています。
 今日は休日で稼動していませんが、機械の中には不用意に触れると怪我をする危険な物も有りますので、くれぐれもご注意下さい。
 それでは、こちらへどうぞ。」

 へ~、色んな機械が有るんだ、うちの機械とはずいぶん違うなぁ~。
 特殊技術、特殊な機械か、やっぱり他社と違う特色を出さないと企業間の競争に勝てないというのはうちと同じなのだろう。
 師匠も大学生も熱心に梶田社長の話しを聞いてる…。
 特殊な機械の応用か、確かに師匠の質問通り、特殊だと応用が利きにくくなるってことか。
 コストパフォーマンス、うん、親父もよく口にする言葉だ。
 稼働率…、この機械…、動いてない時間が長いってことかな?

 今度は原材料の搬入から加工、製品の出荷まで、その流れの確認か…。
 ロスがないかの見直しってことかな。
 はは、女の子たちに師匠が解説を付け加えてる。
 そうだよな、俺は親の工場見てるから大体の流れは理解出来るけど、秋山さん達にはな。

 えっ、ごみ置き場?
 廃棄物も見学か…。
 う~ん、そう言えばこの工場って、整理が行き届いてない気がする、雑然とした感じで。
 はは、こんなに整理されてなかったら、仁さん、激怒だろうな。
 ふ~ん、ごみの分別、普通はこんな感じなのかな…、あれっ?
 ストレッチフィルムは…。

 工場内の見学は終わりか…。

「みんな、ここからはみんなの感想とか聞かせて貰う時間だけど、梶田社長には生意気な意見、的外れな発言が出ることを承知して頂いてるからね。
 みんなが思ったことを遠慮なく出してくれたら、面白いアイデアに繋がるかも知れないから。
 ま、お茶とお菓子を頂きながらとしようか。」

 今日は師匠が仕切るのか、俺たち高校生組がいるから高山チーフは一歩下がったのかな?
 え~っと、うん、ずいぶん生意気な発言になるけど…。

「おう、嶋、どうぞ、社長、嶋大地です。」
「ああ、よろしく。」
「よろしくお願いします、えっと、すごく生意気なことなのですが…。」
「はは、その自覚が有っての発言なら、私も心して受け止めるよ。」
「えっと~、やはり今は人が足りてない状態なのでしょうか?」
「そんなことはないと言うか、むしろ余り気味で…、一気に社員を減らさなくはいけないのかも知れないけどね、でも、そうするときちんとした仕事を受注出来なくなってしまい、難しいところでね。」
「と言うことは、仕事中に手が空くことも有るのですか?」
「そうだね。」
「そんな時、社員の皆さんはどうしていらっしゃるのです?」
「休憩室でだべってたりとか…。」
「掃除とか工場内の整理とかはされないのですか?」
「ああ…、そうだね…。」
「工場内の掃除、整理整頓をする時間は有るのですね?」
「うん…、ただ…、従業員の中のリーダー格が、やることやったら休憩って感じで…。」
「うちの親も小さいながら工場を経営しています。
 家から近いのですが、工場は子どもの遊び場じゃないと父に言われまして、小さい頃は、なかなか工場の中を見せて貰えませんでした。
 でも、六年生になった頃、もう見学ぐらいは大丈夫だろうと言うことで許しが出まして。
 機械が動くのを見るのが楽しかったので、それからは度々見学させて貰いに行くようになりました。
 作業スケジュールに余裕のある日限定でしたが。
 つまり、自分が見学させて貰える様な日は、従業員の皆さんの手が空くことも有ったのです。
 手が空くと、皆さんは、暇つぶしなんだよとか言いながら工場内の掃除、整理整頓を始めて。
 そんな時は、子ども心に、製造の仕事がない時ぐらいはゆっくりしたくないのかな、と思いつつ手伝っていました。
 現場の作業はさせて貰えませんから、例え掃除でも、大人のみなさんの仲間入りが出来て嬉しかったのです。
 そんな時、えっと、仁さんと皆から呼ばれている現場責任者の人がですね、自分達が働く場を綺麗にすることは当たり前のことなのだと、話して下さって…。
 綺麗な方が、みんな気持ち良く働ける、逆に整理整頓が行き届いていないと、作業効率が落ちたり、事故に繋がることもある、とても大切なことだからと、詳しく説明して下さいました。
 例えば工場内の通路が交差する所に、物を不用意に置くと見通しが悪くなり事故の危険性が増すとか、物が通路にはみ出していると、フォークリフトがひっかけたり、人がつまづいたりするとか。
 今日工場を見学させて頂いて、えっと、事故とか起こっていないのでしょうか?」
「う~ん、お恥ずかしい気分だ…、大きな事故こそ起きてはいないが…、今考えると、私の至らなさが原因だったかもしれない事故は幾つか…。」
「大きい事故が起きる前に改善すべきことが有るかも知れません。」
「そうだな…、指摘してくれて有難う。
 素直に頭を下げさせて貰うよ。」
「いえ、生意気言ってしまって…。」
「嶋が話してくれて助かったよ、梶田社長に耳が痛い生意気発言を話し易くなったからね。」
「お、お願いします。」
「取引先や融資元との交渉過程で、工場見学は有りませんか?」
「そうだね、うちの機械を見て頂いたりとかは有るよ。」
「そんな時、取引先も金融機関の担当者も工場全体を見て値踏みをしているのです。
 つまり、この工場に部品の製造を依頼をして大丈夫か、この会社に融資して大丈夫か、それは特殊な機械を持ってるかどうかだけで判断している訳ではないのです。
 安心して取引関係を結べる会社かどうか、今日見学させて頂いて、自分が取引を考える立場だったらかなり躊躇します。
 自分の生意気発言は本やネットの情報が元ですが、嶋の話しは身近な体験によるもので核心をついていると思うのです。
 なあ、嶋、後でこちらの本間さんと工場内の整理整頓のポイントをまとめてくれないかな。」
「おっけい。」
「社長、それを参考に工場内をきちんとしませんか?」
「ああ、了解したよ、私、自ら指示を出して…、う~ん、高校生に指摘される様な状態になってることに気付けなかった自分も恥ずかしいが、社員達も何とかしないといけないな。」
「そうですね、色々検討する必要が有りそうです。
 本間さん、記録の方は、そのあたりも含めてお願いします、梶田社長には失礼になるぐらい、写真もしっかり使って、ビフォアーの記録を残しておきたいですね。」
「了解しました、省吾リーダー。」

 師匠は本気だ。
 本気でこの会社を変えようとしている。
 そうだ、親父や仁さんにも話してみようかな。

「ねえ、嶋、他に気付いたことはないの?」
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