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嶋大地-01 [F組三国志-05]

 よし、約束の十分前に到着。
 人を待たせる、しかも年上の人を待たせるなんて有り得ないからな。
 秋山さんからの連絡では予定通りみたいだから、大して待つこともないだろう。
 淳一の家で演奏を聴いてからとか言ってたけど、チェロとピアノと言われてもな、音楽はやっぱJポップだよ、うん、この新曲なかなか良いぞ。
 おっと、音量を上げ過ぎると耳を悪くする、気をつけなきゃ…。
 にしても、淳一は羨ましいよな、館内さんは可愛いだけじゃない、そんな人に好かれて。
 まあ確かに淳一は良い奴だよ、ピアノ伴奏に名乗りを上げた他の三人にきちんと謝ってたもんな。
 うん、俺も恰好良く在りたいね。
 おっ、真っ赤な車、あれかな…。

「お待たせ、嶋くん。」
「こんにちは早川さん、えっと、俺、助手席で良いのですか?」
「良いも悪いも、お二人の邪魔をするようなお人なの、嶋くんは。」
「はは、まいったなぁ~、館内さん幸せそうだ、淳一、邪魔はしないがあんまし見せつけてくれるなよ。」
「そんな事言って、大地なら彼女の一人や二人、居るのだろ?」
「いや~、誰でも良いとは行かないからな。」
「嶋くんなら女の子から告白されそうだけど。」
「何故か自分のタイプではない子からしか告られたことがなくて、自分からと言うのもまだ…。」
「彼女は欲しくないの?」
「欲しいですよ。」
「F組にならタイプの子、いるでしょ?」
「気になる子はいますが…、早川さん、そんな事より梶田さんの会社は遠いのですか?」
「それ程でもないけど、地下鉄の駅からは少し距離が有るの。」
「それで車か…、でも早川さんってプロジェクトFのサブチーフでプロジェクト梶田とは違うのでしょ。」
「私は省吾リーダーの活動を記録して行くって役目も担っていてね、だからリーダーには極力同行するつもりなの。」
「そっか、でも省吾さまは乗ってませんね、この車に。」
「そ~なのよ~、美咲ちゃんたら、さっさと髙尾さんの車に乗り込んじゃってさ。
 そしたら私の力ではどうにもならないじゃない。」
「ははは、早川さんは二人の邪魔をするようなお人じゃないですものね。」
「ふふ、微妙に邪魔はしてるけど。」
「え~。」
「だって悔しいじゃない、美咲ちゃんたら私達のリーダーとアツアツでさ。」
「はは、省吾さまのことはリーダーって呼んでるのですね。」
「そうね、彼のことをどう呼ぶかで、私たち結構戸惑っているのよ。
 私は、省吾さんとも呼んでるけど。」
「はい?」
「リーダーに対して省吾くんではおかしいし、大学生が高一に対して省吾さんっていうのも、しっくりこないって人がいて…。
 今のところ省吾リーダーという呼び方にしてるのは、リーダーが誰なのか他の人にも分かって貰うって意味合いが有るのだけどね。」
「なるほど、チームメンバー、今日は大勢集まるのですか?」
「今回は高校生と大学生合わせて二十人ぐらいかな。
 他のメンバーには、ある程度情報を整理してから効率良くというのが、リーダーのお考えなの。
 嶋くんと黒川くんは希望者の中からリーダーが最優先で選んだと聞いたけど。」
「うちは親が小さいながらも会社を経営していて、跡取りとしての興味が有ると伝えましたので。」
「そっか、じゃあ経営学部志望なのね。」
「いえ、工学部の電気、電子の関係かコンピューター関連への進学を考えています。
 経営のことを学習するのはもっと後でも良いみたいで。」
「そっか、高一でも、しっかりしてるのね。」
「そんなことはないですよ。」
「はは、ご謙遜。」
「工場って親のとこしか見たことなかったので、今日はちょっと楽しみです。」

 これは正直な話だ、長男として親の会社を継ぐ覚悟は出来ていながら、具体的な事は今まで何もして来なかった。
 それでも、自分の代で会社を潰すなんて事は考えたくもない訳で、今日の工場見学を参考にさせて貰えたらと思っている。
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