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舘内亜美-06 [F組三国志-04]

「なあ、省吾さまから俺たちの学年順位が今後下がって行くってこと、母さんに話しておいて貰えないかな。」

 そうそう大切な事。

「ああ、そうだな、誤解されても行けないし。」
「下がって行くことが予定に入っているの?」
「はい、みんな今後も頑張ると言ってます。
 ただ、F組で成功した取り組みを、F組だけで終わらせたくないと考えているのです。
 今回F組で作った予想問題は、先輩方の協力を頂き過去の問題も参考にさせて貰ったおかげで、かなり中身の濃い予想問題となりましたが、F組外へは漏らさないようお願いしました。
 インパクトのある結果を出したかったからです。
 その目標が達成されましたので、今後は他のクラスとも、競い合ったり協力し合ったりということを視野に入れています。
 学年のレベルアップを目指して、これからの敵は全国の進学校。
 F組、みんなの学年順位は下がっても、偏差値は上げる、全国模試を受ける人の結果に注目という取り組みです。」
「自分達だけのことではなく、一年生全員のことを考えているのね。」
「はい、F組の皆は納得してくれています。
 二年になったらクラスが変わります、今から協力し合っていれば、その時、他のクラスの人達とも早く仲良くなれると思うのです。」
「先のことも考えて…。
 では淳一が、頑張っているのかどうか、私はどう判断すれば良いのかしら?」
「そうですね、クラスの数を考えてみて下さい。
 淳一のクラス順位は五位、八クラス有りますから、単純計算なら学年四十位でもおかしくありません。
 得点も、これから変化が予測されます。
 学年の平均点が上がると、より難しい問題を出題する先生が出て来ると思います。」
「リーダー、ということは、点数も順位も下がるってことなの?」
「表面的にはね。
 それと、テストのことばかり考えていたのでは、つまらない高校生活になってしまいますので、無理はして欲しくないと思っていまして…、そのあたりの取り組みも考えています。
 淳一みたいに、テストで結果を出しつつ、コンクールで優勝、素敵な彼女がいる、なんてのは理想ですが。」
「そうよね、私も惚れそうだな。」
「早川さん!」
「ふふ、亜美ちゃん、また淳一くんにしがみついて、大丈夫よ取ったりしないから。」
「あっ、私…、今日…、お母さまの前なのに…。」
「では、私からお母さまに一言、普段の亜美、舘内亜美は真面目で明るい人です。
 面倒見が良くてクラスのためにも色々積極的に動いてくれる、そう、いい加減な人じゃなくて素敵な人なのです。」
「ありがとう、美咲さま。
 それにね、母さん、真っ直ぐな人なんだ、嬉しい時は嬉しいって、はっきり言ってくれてね。」
「う~ん、淳一も、なんか急に大人になったわね。」
「えっと私…。」
「どうしたの? 亜美さん。」
「私、今日、ちょっと、淳一さんのチェロにびっくりしてしまって、あの…、ちょっと…、御免なさいです…。」
「亜美さんは、淳一のことどう思ってるの?」
「そ、それはもう、大好きです!」
「なら、謝ることはないわよ。」
「は、はい…。」
「そうね、淳一が高校生の内は、孫の顔を見たくないかしら。」
「えっ?
 え~、やっだ~!」
「はは、うちの親と同じだな。」
「ふふ、うちの母は早く孫の顔が見たいと言ってます。」
「あら、省吾さまのところは、ご両家ご両親公認なの?」
「美咲は俺が紹介する前から両親に気に入られまして。」
「もう、あれはね~。」
「自分も何となく美咲の母さんに気に入って頂けたみたいです。」
「うちの母は息子が出来たと喜んでいるのです、省吾は家が近いので良く遊びに来てくれて…。
 あっ、遊びに来るというより勉強かクラスの仕事ばかりだったかも。」
「はは、勉強にクラスの仕事、省吾リーダーはデートの口実作りに頑張ったのよね。」
「勿論、色々考えたさ。」
「ははは。」
「えっと、お母さま、私、またお邪魔させて頂いても宜しいでしょうか?」
「ええ、是非いらして下さいな、ピアノも弾いてね、亜美さん。」
「はい、有難うございます、私、こんな素晴らしいピアノに触れたの、初めてで。」
「ちゃんと楽器のことも分かっていらしたのね。
 このピアノは私のお婆さまがお使いになってたもの、古くても本当の職人が丹精込めて仕上げた逸品、この家を建てる時もこのピアノをリビングの中心に据えるという所から設計を始めて貰ったぐらいで、私の宝物なのよ。」
「そう言えば、俺の使ってるチェロも…。」
「そのチェロは、私のお爺さまが使ってた物で、ふふ、安物じゃないのですよ。
 淳一は、バイオリンやってたのに、このチェロ見つけたら弾きたいって言い出したのよね。」
「駿が俺の使ってたバイオリンを使いたいって言ってたこともあるけど、子ども心に惹かれるものがあった…。
 でも、さすがに最初は苦労したな。」
「そりゃ、小学生にとってチェロは大き過ぎだろ。」
「まあ、子ども用から始めてね、先生からこのチェロを使う許可を貰えた時は嬉しかったな。」
「あっ、それでは、淳一くんの、ひいお婆さまとひいお爺さまがこのピアノとそのチェロで一緒に演奏してたってことですか?」
「ええ、美咲さん、私は小さい頃に聞いたのが最後だったから良く覚えてないのだけど、写真は残っているのよ。」
「うわ~、その楽器でひ孫が演奏なんて…、なんか浪漫を感じさせるな~、二人の演奏、神がかり的だったし。」
「う~ん…、お二人の霊が楽器を通して淳一くんたちに…。」
「よして下さいよ、髙尾さん。」
「私は、それでも良いわ。」
「亜美。」
「だって、すごく暖かくて優しかったもの、淳一さんのチェロ。
 ピアノの音も自分が弾いてるなんて思えないぐらいに。」
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