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舘内亜美-05 [F組三国志-04]

「でもどうやって、F組はそんな結果出せたのかしら?」
「きっかけは小テストの団体戦です。」
「団体戦…、どんな感じだったの?」
「クラスを三つに分けてテストに取り組む、スポーツの団体戦みたいにって提案をF組のみんなにさせて貰いました。
 テストは基本、個人戦じゃないですか。
 ですから上を目指す人は自分のために頑張るし、気のない人は適当に。
 でも、団体戦となると、チームのためにという気持ちが出て、個人のモチベーションが上がります。
 実際、各チームのリーダー達がみんなを引っ張ってくれて、テストに対して取り組む姿勢が大きく変わりました。」
「それだけで、その結果に?」
「いえ、それだけでは有りません。
 団体戦の場合、自分のことだけでなく他のメンバーのことも考えます。
 理解の遅れているメンバーへの手助け、教えることによって自身の理解を再確認、と言う意味合いも有っての提案だったのです。
 今回、テストで上位に入った人達は、みな、教える側の役割もしっかりやってくれた人、そう、淳一も亜美もです。」
「チームの結束は簡単に出来たのかしら?」
「いきなり定期テストではなく、数学の小テストから取り組み始めたこと、そして第一回数学小テスト団体戦でクラスとしての結果を出せたことが大きかったと思います。
 数学小テストは範囲が狭いことも有り、期待はしていたのですが、F組のクラス内三チームで競った結果、F組は平均点で他のクラスと大きな差をつけました。
 このことは、みんなの自信に繋がっただけでなく、今度はクラスとして他のクラスに勝とう、F組で協力して他のクラスに勝とうという意識を目覚めさせることに繋がりました。
 結果、今回のテスト対策企画が盛り上がりまして、ちょっと他のクラスの人に申し訳ないレベルでテスト対策が進んだのです。」
「淳一が、F組は最高って言ってたのは、そういうことだったのね。」
「はい、でも、自分達の高校は中学でそれなりに結果を出せた人達が入って来ていますので、他のクラスにも優秀な人は沢山います。
 そんな中で更に上を目指して、そうですね、クラスで協力しよう、結果を出そうってモチベーションが上がった所で、次のステップへの提案もさせて貰っています。」
「次のステップ?」
「はい、学習への取り組み方の再確認です。
 学習への取り組み方は大きく分けると、自分から取り組むか受身かに分かれます。
 モチベーションが上がって来たところで、今まで受身だった人には自発的な取り組みを提案しました。
 実は、与えられた問題集を命ぜられるがままに解き、答え合わせをして貰い、間違った所を教えて貰って、という学習を中学時代にやっていた人もいたのです。
 完全に受身で、例えそれで表面的な結果を出せたとしても、大切なことが抜け落ちて、本当に学習した意味が有るのか疑問に感じます。
 まずは、自分で考え自分で決める、そんなことを提案させて貰いました。
 仲間に助言を求め参考にすることは悪くない事です。
 でも自分で考える前に、どの問題やったら良いかなんて人に相談するような姿勢では、上は目指せません。」
「そうよね。」
「すでに、自分から主体的に取り組めている人たちへは、時間の使い方の工夫を提案しています。
 学習時間が長ければそれだけ結果を出せる、という考え方が有ります。
 間違ってないかも知れませんが、短い時間でより良い結果を出せたら、自分達の高校生活がより豊かなものになると思うのです。
 淳一も亜美も、自分にとって、より効率的な学習ということを考え始めていますが、そんなことも一人で考えるのでなく、みんなで助言し合ったりしているのです。」
「う~ん、省吾さまは本当に高校一年生なの?」
「えっ、普通の高一ですけど。」
「はは、大学の講義を受けてる気分になったわ、お母さま、我らがリーダーの力、感じて頂けましたか。」
「はい早川さん、淳一が予備校へも塾へも行かないって言う理由がよく分かりました。
 省吾さまが、みなさんから、お師匠さまって呼ばれている意味もね。
 そうね、淳一の夏期講習にと考えてたお金、チーム赤澤で生かして貰えないかしら、CDを作るのにも、資金は必要でしょ。
 赤澤省吾先生へのお礼の気持ちを込めて、如何かしら。」
「えっ、良いのですか、助かります、それなら初期投資の一部として…。」
「リーダー、やっぱ株式で行きますか?」
「髙尾さん、その方がみんなの勉強になるでしょ。
 株式会社という言葉は知っていても、その仕組みを理解出来ていない人は株式会社の社員の中にもいそうです。」
「はい、それではプロジェクト発足出来そうですね…、え~っとプロジェクト…。」
「今日の演奏を記念して、プロジェクトスワン、プロジェクトSでも良いけど、どうかな?」
「良いかも、みんなと相談してみます。
 チーフは俺でも良いですよね、リーダー?」
「大丈夫じゃないかな、高山さん達とも相談してくれれば、まずはプロジェクトの企画書をお願いしますね。」
「はい。」
「慌てなくて良いけど、初期投資がどれぐらい必要か、その回収までの見込みはどうか、と言った所を明確に示して、みんなが安心して取り組めるレベルのをお願いします。
 CDの方は…、そうだな、シングル作るコストとアルバム作るコストを考えたら、そんなに違わないと思いますのでアルバムでどうですか?
 淳一たちの演奏だけでアルバム一枚というのが難しそうだったら、大学のサークルとかと共同制作も有り。
 但し、下手な演奏を無理に入れるのはかんべんして下さいね。」
「了解です、ただ、この後、自分らはテストとかレポート提出なんて時期になりますので…。
 その前後の時間を使って早めに何とか…。」
「髙尾さん、まず自分のスケジュールきちんと決めてくれますか。
 これから、プロジェクト立ち上げの準備に入る訳ですが、まずは、その準備に向けた準備と考えて下さい。」
「あっ、そうか、下準備、前準備ってことですね。」
「大きな動きだけは自分も掴んでおきたいですので、報告、お願いします。」
「了解です。」
「へ~、ほんとに省吾さまがリーダーなのね、指示もきちんとしてる。」
「はい、正真正銘我らがリーダーですよ。
 自分はチーム赤澤で、出来ればチーフとして一つのプロジェクトを起こしてみたいと考えていました。
 自分一人で何かやろうと思っても簡単には行きません、でも省吾リーダーの周りに集まってくる仲間となら何か出来ると思っているのです。」

 やっぱ省吾さまはレベルが違うな~。
 F組三国志の事は分かってたつもりだったけど、省吾さまの説明を聞いて改めて凄いと感じたわ。
 チーム赤澤も、でも、まだまだこれから発展して行く段階なのよね。
 私も、淳一さんと一緒に登録させて貰ったけど、何か思わぬ展開になって来て…、勉強もピアノも、ふふ、恋も頑張らなくっちゃ。
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