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舘内亜美-04 [F組三国志-04]

「ねえ、黒川くん、CDとか出してみない?」

 ぼんやりしてたらそんな声が聞こえてきた。

「髙尾さん、そんなレベルじゃないですよ。」
「そうかな、う~ん、確かに沢山売ろうと思ったら、それまでの過程が大変で難しい、でも、二人の演奏の記録という形で作り、無理せずに売れる範囲で売るって感じでも制作費ぐらいは軽く回収出来る演奏だったよ。」
「そうですか?」
「CDは著作権とか販売経費とか会社の利益とかで、一枚当たりそれなりの金額になるけど、CDその物としての製造コストは大したことなくてね。
 今、チーム赤澤の経営学専攻メンバーは、将来の活動に向けて資金の確保ということを考え始めているんだ。」
「省吾、この前は営利目的では無い、と言ってなかった?」
「ああ、淳一、チーム赤澤自体は営利目的ではないのだけど、活動資金が有るに越したことは無いだろ。
 現時点では知り合いからカンパを頂く事も有るが、出来れば寄付ではなく、経営、経済学部生の実習や研究を兼ね、自力で稼げないかという取り組みを始めてさ。
 チームを入会金や会費で運営するより良いだろ。
 そのまま株式会社を起こしてしまえたら、更に面白いと考えてる。
 大学生メンバーは、起業と真面目に向き合っていてね。」
「黒川くん、その時は省吾リーダーに社長か会長になって貰う話で盛り上がり、まずは何で収益を上げるかを皆で考えてるところなんだ。」
「自分はチェロで協力出来るってことですか?」
「協力して貰えないかな。
 自分が今日来させて貰ったのは、コンクール優勝と聞いて、アマチュアのCD制作企画に繋げられないかと思ったからなのだけど、思っていたレベルの遥か上を行く演奏だったからね。」
「そういうことなら…、でも全然売れなくても知りませんよ。」
「大丈夫、損益分岐点は口コミだけで簡単に越せる自信が有るんだ。
 録音も、それなりの機材を使えるあてが有ってね。」
「亜美は、どう?」
「淳一さんと演奏出来たら嬉しいです。」
「はは、お母さんは、如何ですか?
 自分達大学生の真面目な取り組みとして、契約書もきちんとしますのでお許し頂けないでしょうか、お願いします。」
「そうね、私の一存だけではお約束出来ませんが…、学校の勉強の妨げにならない範囲でしたら。」
「あっ、それなら。」
「亜美、急にどうした?」
「淳一さんは、お母さまにテストのことお話ししましたか?」
「特には話してないけど。」
「お母さま、私たち頑張っているのです。
 淳一さんはテストで学年五位だったのですよ。」
「そうなの、中学の成績上位者が集まる高校だから、どうなるのかと思っていましたが。
 亜美さんは?」
「はい、奇跡的に学年で九位に入れました、この結果は省吾さまや淳一さんのおかげなのです。」
「省吾さまは?」
「学年トップ、美咲さまが七位、F組で学年十三位まで独占、五十位までに三十一人、名前が張り出された上位百位までに三十八人ってすごいと思いませんか、F組って?
 その仕掛け人が省吾さまで、先生の力でなく省吾さま中心にみんなで頑張った結果なのです。」
「そこまではとは…。」
「その省吾さまがリーダーを勤めているチーム赤澤のお役に立てたら、私、とても嬉しいのです。」

 CDの話が出たのは驚いたな~。
 勿論、そんな事は今まで考えたこともなかった。
 でも、お母さまにも協力して頂いて、淳一さんともっと一緒に演奏出来たら…。
 チーム赤澤のお役に立てたらと言うのも本心、省吾さまや美咲さまがF組を盛り上げてくれなかったら、淳一さんの良さに気付けなかったと思うし、仲良くなれなかったと思うもの。
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