SSブログ

嶋大地-03 [F組三国志-05]

「そうだな、えっと…、ストレッチフィルムがね。」
「えっ、それ何?」
「簡単に言えば、原料や製品の輸送時に荷崩れを起こさないため固定するフィルムだけど、それが無造作に捨てられていてね。」
「どういうこと?」
「使用済みのストレッチフィルムはお金になるごみなんだ。」
「資源ごみってことかな?」
「そう、だからうちでは紙とかも剥がしてきちんと分別してる、そうしておくとリサイクル業者が引き取ってくれる単価が上がるらしい、うちはかなり忙しくて余裕がない時以外、ごみもきちんと分別し、資源ごみとして金にしてるんだ、もちろんダンボールとかもね。」
「なるほど。」
「で、工場の作業が優先だけど、いつも忙しい訳ではないから、余裕のある時に空いてるトラックを使ってリサイクル業者の所へ持ち込んでいる、きちんと分別して持ち込めば、それなりのお金を貰えるからね。
 引き取りに来て貰うと、お金を払う場合も有るらしい。」
「ということはゴミの処理費用が安く済むってことなんだね。」
「ああ、うちの工場では資源ごみを売って得たお金を社員の福利厚生に当てていてね。」
「それなら従業員のリサイクルに対する取り組み方も真面目なものになるのかな。」
「うん、会社としても、ごみ処理の経費削減と福利厚生の充実と言うことでプラスになってる。」
「ということは、この工場、かなり損してる?」
「鉄屑だって放置しておけばじゃまにしかならないけど、売れば金になる。
 作業工程で出る屑はリサイクルに回しているみたいだけど、それとは関係ない資源ごみを結構見かけたからね。」
「嶋、有難う。
 みんなに相談、通常のリサイクルは嶋の指摘にそって改善して行けると思うけど、それ以外に製造過程で出る材料の切れ端とかを使って、何か作れないか考えて貰えないかな。
 それこそ、ばかげてるかも、とか、的外れかもと思う様なものでもね。
 そのままでは、突飛な案でも、そこに違った案を組み合わせて行くと、面白いアイディアとなる可能性がある、原価の安い商品を増やせないかと思ってね。」
「確かに廃棄物置き場には、何かに使えそうな物も有ったわね。」
「でしょ、えっと、嶋には、もっと色々聞きたいけど、他の人の感想とかも聞いておきたい。
 みんな、どうかな?」
「ここの部品って色んな形をしているのですね。」
「理沙はそこに興味を持ったの?」
「ええ、どんな形の物でも作れるのでしょうか?」
「梶田社長、どうです?」
「ああ、平面的な物なら余程複雑でない限りどんな形にも加工出来る、立体的なのは制約が有るけど、それなりに作れるよ。
 もっとも、我が社の特殊技術ってことでもないけどね。」
「では、自分でデザインしたものを金属で作って貰うことも可能ですか?」
「技術的に問題ないけど、一個だけだと高くつくよ。」
「お金を出せば作れるってことですね、梶田社長。」
「そうだけど。」
「大量生産ばかりが工場じゃないとも思うのです。」
「う~ん、効率とかどうなのかな…。」
「梶田社長、原崎さんの話は面白いと思いますよ。」
「嶋くん、どういうことかな?」
「うちの工場ではトレーニングを兼ねて、製品とは無関係な物を作ることも有るのです。
 社員さんが遊びで作った物が結構面白くて、郵便受けとか文鎮とか色々、我が家の郵便受けを見て同じのを作って欲しいという人が居るぐらいで、自分も社員さんに作って貰ったオリジナル文具を友達に自慢してます。」
「そうか、原崎さんもそんな感じで?」
「はい、オリジナルに拘る人は値段を気にしません。」
「うん、良いかも、理沙、嶋、有難う、商品と言えば大量生産だけに目が行きそうだけど、個性的な物が有っても良いよね。」
「師匠、サンプルになりそうなの見せるよ、原崎さんがイメージしてるのも、直ぐには無理だけど教えてくれたら親父を通して作って貰えると思う。」
「梶田社長、この工場では如何ですか?」
「直ぐには難しいが、会社が落ち付いたら考えてみたいかな。」
「ですね、嶋、甘えてしまって良いのか?」
「大丈夫だよ、原崎さんのイメージしてるもの次第では有るけどね。」
「理沙、どう?」
「そ、そんなに複雑な物ではないです…、ちょっとした装飾で…。」
「はは、原崎さん、少しぐらい大変そうな作品の方が職人は燃えるからね。」

 そこから話が弾み、色々な提案をさせて貰った。
nice!(10)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 10

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。