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嶋大地-05 [F組三国志-05]

「ねえ、今日の黒川くんと亜美ってさ。」
「うん、何か急に親密になりましたって雰囲気だったよね。
 亜美の、淳一さんって呼ぶ時の表情ったら、もう、恋してますが全開でさ。」
「打ち上げの時に、朋美の前で告って成立したばかりなのにね。」
「朋美はちょっとかわいそうだったな。
 あこがれの哲平さんは、どうやら静さんにぞっこんみたい、淳一くん優しそうで良いなぁ~、なんて言ってたら、亜美に目の前で先越されて…。」
「でも彼女はめげないわよ、きっと。」
「性格的には林くんの方がお似合いじゃないのかしら。」
「かもね。」

 女の子同士の噂話…、やっぱ淳一は人気者なのか…。

「ね、嶋くんのタイプってどうなの?」
「えっ、タイプ?」
「好きな女の子のタイプ。」
「う~ん。」
「ロングかショートか?」
「えっ?」
「ロングヘアーの女の子かショートカットの女の子か、どちらがお好き?」
「そんなこと考えたことなかったけど…。
 あっ、ロングヘアーの梶田さんと、ショートカットの原崎さん…。
 そんなこと、ここで答えられる訳ないだろ。」
「ふふ、私のことは理沙って呼んでくれないかな、この前、ちさとが提案してたでしょ。」
「あ、ああ。」
「私のことは梨乃って。」
「あらっ、梨乃お嬢さまじゃなくても良いの?」
「ちさとじゃないわよ。」
「ね、大地さんって呼んでも良い?」
「う~ん、女の子からそう呼ばれたことはないから、ちょっと照れくさいかも。」
「だめじゃないのね。」
「まあ…。」

「あっ、母さんみたい。」
「梨乃、お食事にしましょ。」
「は~い。」

「嶋くん、今日はほんとに有難う。」
「い、いえ、ずいぶん生意気なこと言ってしまって…。」
「はは、生意気なことを言われるだけ、私の脇が甘かったと言うことだよ。」
「そうよね、赤澤くんに嶋くん、高校一年生にすがらなきゃならないなんて、あなた、しっかりして下さいね。」
「ふふ、でも、母さん、省吾さまは高校一年のレベルじゃないのよ、大学生の人たちにも普通に指示出してるし。」
「学年トップなのよね。」
「高校のテストの結果なんて彼の評価には関係ないのじゃないか、なあ、嶋くん。」
「その通りです、自分たちとは、全然違う次元で物事を考えていると感じます。」
「そうなの…、嶋くん、今日工場見学してどうだった?」
「えっ、えっと…。」
「こらこら、嶋くんには今日色々教えて貰ったと、さっき話したろ。」
「どう、何とかなりそうかしら?」
「はい、我らが師匠の省吾やチーム赤澤が動き始めましたから、社長、後は時間との勝負ですか?」
「ああ、高山チーフからはあせってはいけないけど、のんびりしてる余裕はないと言われたよ。」
「そうですか。」
「でも、学生の夏休みを最大限に活用して、チーム赤澤を世に知らしめつつ、会社も再生しましょうって。」
「高山チーフも本気だ。」
「そう言えば、嶋くんのお宅も工場を経営していらっしゃるとか?」
「はい、機械部品を中心に。」
「やはり、不況の影響は厳しいのかしら?」
「いえ、全く影響がない訳では有りませんが、父のリスク分散型経営が今のところは上手く行ってるみたいです。」
「そっか…。」
「おいおい、そんな目で見るなよ。」
「はは、社長、大変ですね。」
「まあな、でもね嶋くん、娘の梨乃は優しい子で、母親とは似てないから安心してな。」
「と、父さん…。」
「あなた、嶋くんも困った顔なさってるでしょ。」
「はは、梨乃もぼんやりしてると、原崎さんにとられちゃうぞ。」
「も~、まだ、そんなんじゃないのに~。
 御免ね、嶋くん、理沙。」
「う、うん。」

 何やら話しが変な方向へ進んでしまった。
 梨乃さんは、まだ、って言わなかったか、ということは…。
 原崎さんは黙ったまま、さっきは、大地さんって呼んでも良いかな、なんて言ってた。
 この状況ってラッキーなのかやばいのか…。
 二人のこと、良く知ってる訳じゃないし、二人とも嫌いな訳じゃない。
 ロングかショートかって?
 外見の問題じゃないだろ。
 二人ともかわいいけど、原崎理沙は…。
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