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清水ちさと-02 [F組三国志-03]

 さてと、数学の授業が始まるから、頭のスイッチを切り替えなきゃね。
 清水ちさとは数学の得意な女の子、予習もきちんと済ませてある、数学の授業は大好きで…。
 う~ん…、まだ役になりきれてないかな…。
 ふふ、自己暗示、数学の得意な女の子になりきれたら、ほんとに数学が得意になるかもって。
 省吾さんのアドバイスは、なんか不思議。
 演技の練習しながら学習への集中度を高めるなんて、考えもしなかったわ。
 さ~、大好きな授業の始めは、やっぱ先生の自己紹介なんだろうな、教育実習生だから。

「えっと、みなさんこんにちは。
 教育実習でお世話になります、こ、小山勇です。
 私はこの高校の卒業生で…。」

 うわ~、先生、緊張してる~。
 そりゃそうか、慣れてるわけじゃないし、この席の配置じゃプレッシャーも大きいわね。
 公民の先生も、いつもと違って緊張してたみたいだったもんな。
 私があそこに立つとしたら…、やっぱ何事にも動じないベテラン教師。
 これくらいの舞台がこなせなかったら、大舞台なんて無理でしょ。
 でも、舞台は観客との距離が離れているから、どうなのかしら?
 今日部活の先輩に訊いてみようかな。
 おっと、数学、数学。
 でも、このあたりは教科書と省吾さんのプリントで理解済みなのよね。
 こんな時、先生の話しは適当に聞き流して、練習問題を解いてみたり、先の内容の予習をしたりしても良いって省吾さんは言ってたけど…。
 あれっ?
 あの数式おかしくないかな?
 おっ、みんなもざわついてる。

「先生、その数式違ってませんか?
 エックスが抜けてるのか、えっと…。」
「あっ、ご、ごめんごめん、君の言う通りエックスが抜けてたよ。」

 うわ~、先生、ミスして、さらにガチガチじゃん。
 手も震えてるし…。

「先生、俺代わりに書いたげるよ。」
「おっ、林、かっこいいぞ~。」
「はは、まかせとけ。」

 はは、林くんたら、調子に乗って。

「さあ書けた、はい、この例題解ける人。」
「林~、先生の仕事取っちゃだめだぞ~。」
「ははは。」
「解けない人を聞いた方が早いんじゃないのか。」
「うん、そうかもな、まあ面倒だから俺が解いておくよ。」
「あっ、ずっる~い。」
「そんな簡単な問題解いたっていばれんぞ。」
「ははは。」
「さあ、解けた、ついでに解説もしようか?」
「必要な~し!」
「じゃあ、続けて、次の問題。」
「ちょっと待て、徹。」
「あっ、淳一、質問か?」
「な、訳ないだろ。
 昨日予習していてちょっと面白い問題見つけたんだ、次は俺にやらせろ。」
「え~。」
「林、替われ~。」
「替わってやれよ。」
「ち、仕方ないな、淳一、つまんない問題だったら許さないぞ。」
「はは、ちょっとひねりが入るから徹に解けるかな。」
「お~、バトルだ~。」
「林、解けなかったらチームの恥だと思えよ。」
「それより、みんながあっさり解いたら、チーム麻里子のポイントダウンだよな。」

 はは、みんな小山先生そっちのけで勝手に盛り上がってる。
 でも、一応、数学やってるのよね。
 え~と、あっ、応用ってことか、これは…。

「あっ、解った。」
「えっ、まじ。」
「ちさと、早すぎ。」
「あっ、そうか、俺も解けたぞ、お~い林、まだ解んないの~?」
「え~、解んね~。」
「はは、じゃあ、清水さんに解いて貰って、解説は小山先生にお願いするかな。」

 ふふ、黒川くんは小山先生に授業をお返しするつもりだったのね。
 さ~て、たぶん間違ってないと思うぞ~。
 なんたって数学は得意だから。
 うそだけど。

「先生、どうでしょう?」
「うん、いいよ、林徹くん、黒川淳一くん、そして清水ちさとさんありがとう。
 じゃあこの問題のポイントを確認してみようか。」

 小山先生、少し落ち着いたみたい。
 はは、先生の話しは適当に聞き流そうかと思ってたけど、暖かく見守ってあげなきゃだめよね。
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