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清水ちさと-04 [F組三国志-03]

「お父さま。」
「どうした、ちさと。」
「お父さまは、昨日、小山先生とどの様なお話しをされたのですか?」
「まあ、テスト団体戦のこととかね、とりあえずは次の授業がF組のみんなにとって、より有益になるよう、授業内容のお願いをしておいたよ。」
「さすがお師匠さまです、学問所の見習い先生にもご指導なさるなんて。」
「和彦、指導じゃないよ、簡単に説明させて貰っただけさ。
 で、これが次回の授業に向けたプリント。」
「えっ、先回よりずいぶん多くないですか…、お父さま?」
「小山先生にもこれを渡して、テスト範囲まで一気に済ませて貰おうと考えている。
 密度が高くなるから、ついて行けない人が出てくるかもしれないけど、そこは復習で補う。
 予習に比重を置いていた部分を、復習に回すと考えてくれてもいい。
 とにかくテスト範囲まで早めに済ませて、後に余裕を作るという作戦さ。」
「ということは、予習は軽めでも良いってことですか?」
「うん、でも一度はこのプリントに目を通しておいて欲しいかな。」
「じゃあ省吾、プリントを配る時に、そのあたりの事も話しておいた方が良いわね。」
「ああ、美咲、頼むよ。
 そうだ、和彦、プリントの印刷とか、美咲の手伝いを頼めないかな。
 俺は、別で作っておきたいプリントがあってさ。」
「承知いたしました、お師匠さま。」
「お父さま、私もお手伝いしますわ。」
「おお、ちさと、有難うな。」
「いつも美咲さまにはご迷惑をおかけしてしまって。」
「あら、和彦さん、お父さまとお母さまは楽しんでやってるのよ、ね、お母さま。」
「ふふ、そうね、夫婦で一緒に働くって楽しいことなのよ、和彦。」
「でも、お師匠さま達は何時も忙しそうです。」
「ああ、美咲にはテストが終わったら少しゆっくりしてもらうつもりだよ。
 俺はいつも適当だから。」
「そういえば、お父さまって授業中はあまり目立たないですね。」
「まあ、授業と違うところを学習してることが多いからな。」
「えっ?」
「数学の時間は数学やってるけど、高三の内容だったりする。」
「でも…、お師匠さまが先生に注意されたりしないのは、こっそりやってるからですか?」
「ふふ、先生方も省吾が高一の内に高三までの範囲を終わらせるつもりだってご存知なのよ。」
「ほんとに!?」
「ああ、中二の終わり頃から高校の学習内容に入っていたからね。
 時間の無駄を減らしたかったから、高木先生に相談したんだ。」
「そしたら高木先生が色々動いて下さったそうなの。
 で、最近は、私が職員室へ行くと、なぜかすぐに省吾の話題で盛り上がるのよね~、先生方。
 大学はどこを目指してるとか、将来は理系か文系か、とか…、いつ結婚するのか、なんて…。」
「あら~、お母さまったら、職員室でものろけて来るのですか?」
「う~ん、私はそんなつもりじゃないのだけど。」
「はは、でもね、まだ先生方にも話してない企みがあって微妙に進行中なんだ。」
「えっ? お師匠さま、どんな企みなのです。」
「鶴翼の陣には秘密があってね、実は教室の後ろの方こそが重要なんだ。」
「えっ、後ろの方は寝てたい人のためとか…。」
「昨日誰が座ってた?」
「え~と、哲平さん、麻里子さん、うちのチームの正信くん、お父さまとお母さま、誰も授業中に寝てたいお人じゃないわね。」
「もちろんさ、で、三人のリーダーと美咲は授業中に余裕があると感じたら、自分の苦手なとこの学習に取り組んでいたんだ。
 前の席で先生と向き合う人たちが頑張ってくれてたから、ずいぶん自分の学習がはかどったみたいだよ。」
「え~っと真面目に授業に取り組むための鶴翼の陣だと思ってたけど…。」
「はは、これから、鶴翼の陣は変えていきたいっていうか変わっていくと思っている。
 根本は、授業は何かってことだよ。」
「授業は教えて貰う場ですよね。」
「まあそうだけど、自分から学習に取り組んだら、教えて貰う必要のないことはいくらでもある。
 自分で、教科書や参考書を読めば理解出来るだろ。
 教科書に書いてあること以上の、内容の濃い授業は大いに聞くべきだけどね。
 大きな声じゃあ言えないが、F組のメンバーが聞く価値のない部分が授業中に結構あると思わないかな?」
「そう言われてみると…、がんばろうってモチベーションあげても、いまいち集中できなかった授業は…。」
「無駄でしょ、その時間を自分の苦手克服に当てた方が有効だし、哲平なんて部活でずいぶんな時間を費やしているから、はっきり言って学習時間は貴重なんだ。
 授業時間をより有効に生かすことを、F組のみんなが考え始めたら、鶴翼の陣はその形を変えるということだな。」
「自分は、最前列で岡崎たちへ刺激を与えて、と考えていたのですけど。」
「その必要はもう無いのじゃないかな、彼らも自覚し始めてる。
 それより、後ろへ下がって自分の時間を有効に使い、岡崎たちに教える時のことを考えてた方が効率的かもしれないよ。」
「はい、一度、麻里子さまとも相談してみます。」
「ふふ、姉御じゃなくて、麻里子さまなのね。」
「この世界にいる時は、ってことで、ちゃんと麻里子さまのお許しも得てあります。」
「そうなんだ。」
「でも、お師匠さま、自分が陣の後方へ下がると、ちさとお嬢さまのお世話が出来なくなりますが。」
「ちさと、どうする?」
「私も…、教科によって動いても良い訳だから、はは、和彦さんが近くにいなくても大丈夫よ。」
「はは、和彦はちょっと残念そうだな。」
「は、はい…、ちさとお嬢さまは、自分の大切な味方ですから…。」

 あっ、それって…、私のことを大切に思ってくれてるってこと?
 星屋くん、はっきり言ってくれた。
 ほんとに積極的になろうとしてる現われなのかな…。
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