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大銀河帝国-15 [シトワイヤン-33]

中南米の旅には時間を掛けている。
姫さまには空から全土に祝福をもたらして頂きたいと、祝福を感じられるエリアの範囲を確認しながら航路を設定したが、気象状況による修正をしながらの旅。
今回は聖地が空を飛んでいる様なもので有り、巡礼者とならなくても待っていれば良い。
これは巡礼者に対応するこちらの手間を省くという利点がある。
勿論ビジネスチャンスでは有るので、舞姫さまグッズの販売部隊はファルコン号が通り過ぎたエリアを幾つにも分かれて行商の旅を展開中。
彼らはグッズの販売だけでなく情報収集を行い、MAIHIME TOWNの情報センターに送っている。
情報センターで整理された情報は、スタッフの判断で一般向けとスタッフ対象、幹部のみの三段階に分けて公開。
ファルコン号はハリケーンを避け地上基地に降りる事は有ったが、それ以外は点検作業ですら空中で行い、最新型飛行船の性能を実証している。
各国の要人は小型飛行船を利用して乗船し姫さまと謁見。
その度に、空中宮殿ファルコン号として世界中から注目を集めている。
その空中宮殿では…。

「明日の来客に関するデータはこれぐらいです、実務者協議で問題は無く、今までの国と同様、大銀河帝国との国交は結ばれるでしょう。
行商部隊の売り上げは予定以上ですので、舞姫さまの社、大使館、姫さまグッズの製造販売拠点などの建設は、この地でもすぐに取り掛かれます。」
「姫さま、昨日、補給船で届いた新作衣装に問題は有りませんでした、カメラマンからは朝日か夕日を絡めて撮影したいとのことですが、よろしいでしょうか?」
「天気は良さそうです、明日の朝、お客様方の到着前に済ませましょう。
同時に舞の撮影も、今回、隼には大人しくして貰って、この地の野鳥を紹介する形にします。」
「分かりました、その撮影分を含めて新作DVD完成でよろしいですね?」
「ええ、今までの撮影分もそれぞれの繋がりを計算した上で、編集担当と打ち合わせして来ましたので。
その新作の利益は、森林火災対策に回して下さい。」
「そうですね、地球防衛軍の規模を拡大しないと追いつきそうに有りません。
消化活動と並行して火事を起こさせない取り組みにも予算を配分したいです。」
「火災が安定雇用の場を作り出すと言うのは微妙な話しですが、しっかり取り組んで行かないと、大きな焚火をしながら地球温暖化対策と言っても説得力は無いです。
鎮火後の緑地再生を計画的に進める事業も視野に入れて進めて行きたいですね。
安く買えるのなら、土地を購入して行くのも有りでしょうか。
焼けた土地を購入して緑地再生をメインに開発、乱暴な焼き畑農業から脱却して貰いたいです。」
「その辺りの事を含めて、必要ならチームの再編を考える様、指示を出しておきます。
実際に燃えてる光景、燃えた後の光景を見せられては動かざるを得ないでしょう。」
「ですね、その映像は大銀河帝国の国民で共有出来ていますか?」
「はい、姫さまが解説をして下さいましたので、遠くの火災でも他人事だと考えてはならないと、日本でも樹齢何百年という木々が火災で焼失する事の無き様、私達の森を守ろうという動きが広がっています、気候の変動により、そのリスクが高まっていると理解されていまして。」
「自然環境は人が力を加えて行かないと維持出来ない状況になっています、砂漠化を食い止め、森林を守って行く事業予算が足りないのなら、大銀河帝国として新たな事業展開を考えなくてはいけませんね。」
「国際的信用度の高い大銀河帝国です、そろそろ独自の通貨を考えても良いかも知れません。」
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大銀河帝国-14 [シトワイヤン-33]

大銀河帝国は人類全体の課題に取り組んでいる。
大銀河帝国の建国以来、様々な分野で、一つの地球、その地球市民という考え方が広まりつつ有り、世界統一通貨を、国家間に於ける貧富の差を越えて成立させることが出来ないかという研究が始まっても、それを誰も笑わないぐらいに、私達の地球は変わろうとしている。
行き過ぎた競争社会を生み出してしまった自由主義経済、計画通りに行かなかった計画経済の長所を生かそうという人が増えつつ有り、彼らは経済的なバランスを取りながら社会を発展させて行く道筋を模索中。
実験的な取り組みも行われている。
富裕層が、貧困層を養いつつ働かせ教育を施すと言った形は、身分の違いを印象付けるものだが、自力で貧困状態から抜け出せない人にとっては守られる安心感が有り決して悪いことではない。
舞姫さまの祝福を感じ癒された人達が、その価値観を大きく変えた結果、ホームレスが極端に減少した都市も少なくない。
掃除の仕事で雇われた元ホームレスは町を綺麗にしている。
その作業を進めた公務員達は、元から貧困層を養って行けるだけの経済力が有った事に気付かされたという。
様々な改革が進んではいるが、思いっ切り過渡期だということは誰しもが理解していること。
大銀河帝国から発信される社会改革の現状は、その課題と共に多くの人が共有認識。
そんな世界の状況を、舞姫さまは空中宮殿とも呼ばれ始めたファルコン号上で確認している。

「自分の利益、家族の利益、自分の属する集団の利益、そして自国の利益を考えるのは人間として当たり前のことでしたが、変わりつつ有りますね。」
「全て姫さまの力による所だと思います、人が利己的なのは人の本能に由来すると考えていましたが、その変化は、まさしく人類が進化しようとしている証ではないのでしょうか。
進化しなければ、有り得なかった様々な改革が進行中。
皮肉なもので独裁者と言われていた人が姫さまの信奉者となった国では改革の速度が速く、改めて指導者の資質を考えさせられています。」
「独裁者では有りませんが王子さまの王国も活気づいていますね、民主的な選挙で選ばれた指導者の力量が必ずしも高い訳ではないという事が証明されてしまいましたね。」
「はい、選挙に勝てる力と、政治家としての判断力や指導力といった資質とは別物です。
日本でも、無能な大臣を量産した政権が有りました。
政権を維持する為にやむを得なかったとは言え、人間的にもまともな大臣に失礼なレベルで、まあ、市民政党若葉が政権を取る後押しになってくれた訳ですが。
今は、姫さまと共に歩める国、もしくは軍備を無くし大銀河帝国領となる道を求める人が増えているとの報告が上がって来ていますので、まだまだ国際情勢は変化して行きそうです。」
「そうですか、そんな地球市民の皆さんには、このファルコン号から見える夕日を、映像では充分伝わらないとは思いますがお見せしたいですね。」
「はい、ファルコン号からの映像を楽しみにしている人は多いのですよ、映像スタッフは美しき地球をテーマの一つにし、姫さまの映像だけでなく空から見た熱帯雨林の様子も届けています。
並行して森林火災の現場がどうなったのかを、地球温暖化の視点から紹介する作品を制作しています。」
「熱帯雨林を燃やして作った畑は充分な収益を上げているのでしょうか?」
「中東の畑よりコストパフォーマンスは良さそうですが、大きな利益には至ってないでしょう、我々としては熱帯雨林を大切にして欲しいです。
この国でも改革が進んで行くと思うのですが、姫さまの影響を受けにくい麻薬使用者が少なからずいますので時間が掛かるかも知れません。」
「改革の進んでいる地域では薬物の使用量が大きく減っているそうです、この辺りの人達の収入にも影響を与えてるのでは有りませんか。」
「ええ、麻薬による自分達の収入を大きく減らす切っ掛けを作った姫さまの乗るファルコン号を、姫さまに癒されながら見上げ、複雑な思いをしている人が大勢いるでしょう。
彼等には別の仕事を見つけて上げる必要が有ります。」
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大銀河帝国-13 [シトワイヤン-33]

キャッシーが用意した最新式の大型飛行船はファルコン号と名付けられ、気象条件さえ良ければ長時間飛行を続けられる。
補給用小型飛行船を簡単にドッキングさせられるので地上に降りる必要は少ない。
その小型飛行船は、すでに中南米で七機が遊覧飛行や宣伝飛行を行っていて、ファルコン号のサポートにも当たる。
姫さまの中南米歴訪に向け、飛行船の地上基地を各地に建設したのは、この小型飛行船の運用とファルコン号の姉妹機を観光目的で就航させる為でもある。
豪華客船による海の旅と飛行船を利用する空の旅を組み合わせることを可能にする為、地上基地は港の近くにも建設された。
ファルコン号の雄姿を見れば誰もが飛行船の旅をしてみたくなるだろう。
このファルコン号には隼の為の部屋が有り、姫さまに贈られた隼がこの機体のシンボルともなっている。

「お姉ちゃん、飛行船はヘリと違って静かなのが良いね。」
「気に入った?」
「うん、低速航行時は室外デッキで遊べるでしょ、隼が部屋にいる時は地元の鳥が来てくれて、昨日は珍しい鳥に出会えたとカメラマンが喜んでたのよ。」
「のんびり空の旅というのは飛行機では味わえない感覚よね。
キャッシーが造らせたから、客室は豪華ホテル並み、オフィスとしての機能も充実していて、ずっと暮らすのも有りかしら。
今回の旅で問題が無ければ、アフリカにも飛行船の地上基地を展開して行く計画だけど、アフリカで野生動物を保護してる団体からは舞姫さまに早く来て欲しいとね、前向きに考えるとは伝えて貰ったけど、どう?」
「アフリカは問題が多くて…、そうね、人間の前に野生動物の保護を優先させたいかも。
人間に対して支援を行うと、人口が増え過ぎてしまいそうでしょ」。
「そうよね…、和馬さんは人口問題の先に、人類が宇宙へ移住して行く可能性を話してたけど、万里はどう思う?」
「地球の環境がこの先どうなるかは分からないよね。
住環境の悪いエリアではドームで覆われた都市を真剣に考え始めている、ならばその都市を、もっと過酷な宇宙空間や月や火星に造っても良いとは思うかな。
当然莫大な費用が掛かるけど、軍事費を減らして経済活動を活発にして行けば出来なくはないし、新たな雇用の場を生み出すことにも繋がるのよね。」
「万里は宇宙で暮らしてみたいと思う?」
「宇宙と言っても、まだ可能なのは地球の表面みたいな所でしょ、う~ん、短期の滞在なら楽しめるのかしら、でも長期間は飽きると思わない?」
「そうね、今の国際宇宙ステーションの規模では窮屈だろうし。」
「それでも、月の地下に月の資源を利用した宇宙船を建造出来るような工場を作れたらとは思うの。
平和な暮らしに満足出来ない人達のフロンティアスピリットを満足させる為にもね。」
「どんな資源が有るのかにもよるのでしょうけど、このまま地球が平和になって行けば、それぐらいの余裕は出来そうね。
まずは各国の月基地計画がどう進んで行くのかだけど。」
「大銀河帝国としては地球の環境改善に予算を回したい、でも、どちらも大規模な事業、それで世界の雇用状況が改善されて行くのなら積極的に進めて行きたいかな。」
「そうね、大銀河帝国中央研究所の状況を確認して、各国政府の方針も聞いてみるわ、大銀河帝国の方針を固めて行くべきでしょ。」
「うん、今までは中東関連に目を向けて貰って来たけど、次のステップだけでなく、その先も見据えて行かないとね。」
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大銀河帝国-12 [シトワイヤン-33]

舞姫さまの祝福を感じた人々は戸惑いもしたが確実に良い方向へ変化しつつある。
個人差は有るものの人としての内面が恰好良くなっているのだが、それと共に大銀河帝国ではユートピア計画が進められている。
清香村から苗川市全域へ広がって行った、桃源郷、ユートピアで暮らしているという思い、それは環境では無く意識の問題で有り、贅沢三昧出来るのがユートピアでは無く、人と人が尊重し合う中で形作られて行くのが理想郷。
市民としての意識改革に取り組むことが、地上をユートピアにする一番の近道なのだと、大銀河帝国や地球市民党、舞姫フレンズをリードする人達は考え、その思いを世界中に広めつつある。
富める者はその財力を人の為に活かす事を考え、貧しき者は助けを得ながら自身の出来る事を考えている。
舞姫さまと共に歩まんとする市民はすでに膨大な人数になった。

「和馬さん、万里も大銀河帝国も何の強制もしないのに…、いえ強制しないから順調に拡大して来たのでしょうか?」
「ああ、そう思うね、姫さまを始め大銀河帝国に関わっている者達は、思想的なことを人に押し付けない姿勢を守っている。
宗教だって、信仰の自由を大前提にして来た。
もっとも、神の如き姫さまの存在を前に、適当なことを言って金儲けして来た宗教家は職を失いつつ有るようだがな。
中南米やアフリカでも同様に広がって行くだろう。」
「でも、あまりに環境の悪い所へは万里を行かせたくないです。」
「まずは、キャッシーが建造を進めさせていた最新型の飛行船で空からの視察になるのだから大丈夫じゃないかな。
気象状況を見ながらの運行になるが、空から祝福を与えて頂くことが中心になる。
招待してくれた国としても、地球上に一人しかいない神の如き存在を丁重に扱ってくれるだろう。
映像では、美しき姫さまの姿を沢山見て来ただろうし、巡礼者として祝福を感じた人も少なからずいる筈だ。」
「和馬さんは、このまま地球が一つになって行くと思いますか?」
「勿論さ、私達には姫さまがいるからね。
姫さま抜きでは絶対に不可能だったことを、大銀河帝国は幾つも成功させてきた。
これから先、更にユートピア計画は進んで行くだろう。」
「ただ、人口の増加はどうでしょう、中東の住環境は改善されていますが、平和になって地球のキャパシティを越えてしまわないでしょうか。」
「姫さまの祝福を感じた人でも、そこからの行動にはバリエーションが有るだろ。
特に犯罪者の中には、フロンティアスピリッツに目覚める人が多いと聞いている。
砂漠化を食い止めようという動きも。
もし、このまま人口が増え続けるのであれば、人類は宇宙を目指すのではないかな。
海水温が上昇し地球の環境だってこのままとは行かないだろ。
姫さまが大銀河帝国というという国名を推されたのは、将来を見据えての事だと思うんだ。」
「人間の可能性を…、以前の世界では考えられなかった人類を宇宙に進出させるということですか…。」
「何百年後になるか分からないが、宇宙に広がる文字通りの大銀河帝国、その一歩を踏み出す時が来たのではないかな。」
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大銀河帝国-11 [シトワイヤン-33]

姫さまが臨時政府を立ち上げてから一年。
国の復興が順調に進んでいるのは、大銀河帝国を支える多くの人達の思いによる。
自分達を大きな愛で包み込み癒して下さる舞姫さまの国がみすぼらしいままではならない。
姫さまが、中途半端な支援では生活が向上しないまま不満を募らせ、また内乱状態になりかねないが、逆に多くの投資を集中的に行えば経済効率が高まり効果的だと話された事も有り各国の企業家たちが立ち上がってくれた。
姫さまの中東各国歴訪により中東は安定の方向に向かいつつある。
ならば、今後中東エリアでマーケット規模が拡大して行く事は明白。
そんな状況下、姫さま主導の新国家は大きな可能性を秘めていると判断した彼らは、暫定政府と将来像を見据えながら開発計画を策定し進めている。
海辺では複数の外国資本による海水淡水化事業がスタート、現地の元兵士たちを教育しながら建設工事が進む。
同時に進行している工場の建設は、ヨーロッパからの難民帰還事業とリンク。
難民問題に頭を悩ませて来た各国は難民を減らせると有って協力的。
人を帰すだけの事業とはせず帰還後の生活に配慮し、市民としての教育や職業訓練をしてくれている。
就職を決めて母国へ帰る人達の帰還費用を企業が負担していることも有って積極的だ。
予算は、姫さまの祝福効果で大きく減った犯罪関連から転用。
他国からの難民が、母国では無く姫さまの新しい国で暮らしたいと希望するのも自然なこと。

「姫さま、難民の帰還による人口増加はバランスが取れていますね。」
「ええ、帰還者を受け入れる態勢に各国が配慮して下さっています、お礼の為にヨーロッパ訪問をしたいです。」
「はい、その様に指示を、姫さま専用機の稼働率がこれほど高くなるとは思ってなかったのですが、お体の負担になってはいませんか?」
「長時間のフライトにならないスケジュールを組んで貰っていますし、どの国でも至れり尽くせりの歓迎をして下さいます、大銀河帝国の国民ばかりですからね。」
「世界は大きく変わりました、姫さまの祝福を感じた人達の国とそうでない国という枠組み、姫さまの調停で中東全体が落ち着いて来ましたので、中南米やアフリカからの招待にもそろそろ応えて頂けたらという声が強まっています。」
「そうですね、この国は対立していた民族という意識が薄れて指導者の教育も進みました、もう臨時政府から臨時の文字をとっても問題ないと思います。
中東全体が安定の方向に向かっていますので、私の活動エリアを広げましょう。」
「お願いします、国境や人種を越え、姫さまを慕う人達は地球市民となろうとしています。
地上の全てとは行かなくとも、姫さまを女王と頂く大銀河帝国の下に多くの地球市民が結集すれば、多くの無駄を省き色々な意味でバランスの取れた地球を目指せると思うのです。」
「既存の軍隊を兵器を持たない地球防衛軍に移行させ、大銀河帝国領にと考える小国からの打診も来ていますものね。」
「周辺諸国の情勢が変わり、仮想敵国すら無くなって軍隊は必要ない、経済的な弱さを克服しユートピアにしたいという事でした、多くの人達が国の在り方を考えていますので大銀河帝国はリアルに領地を拡大して行くと思います。
領土問題で揉めている国々も、その落しどころとして、関係する両国と大銀河帝国、三か国による共同統治を模索し始めています。
これから益々大銀河帝国の影響力は大きくなって行くでしょう。」
「当分の間、世界中を飛び回ることになりそうですね。」
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大銀河帝国-10 [シトワイヤン-32]

交渉がスムーズに進んだのは、彼らが姫さまを神の如き存在と認めたからに他ならない。
そして、姫さまが国中を飛び回った事により国民達も、美しき女神の如き存在を女王として受け入れた。
だが、これはとてつもなく特別なこと、中東に女王、しかも他国の人間だ。
これまで争って来た人達が連名で、舞姫さまを中心とした臨時政府を樹立し大銀河帝国の保護下に入るとした宣言は多くの人達に衝撃を与えた。
その宣言を受け、復興のプロセスを早め支えたのは、地球防衛軍。
疲弊した一つの国を舞姫さまの下に再生する為、様々なチームが組まれた。
教育の分野だけでも、子ども達に対する基礎教育、若者中心の技術教育、市民教育、そして教育者を育成するシステムなど多岐に渡る。
大人達は地球防衛軍に志願し職を得たり、経済活動再生チームが立ち上げた会社に就職して行く。
武器は防衛軍が買い上げ、転売出来る物は転売し、それが叶わぬ物は鉄くずとしてリサイクルへ。
停止していた油田関連事業は国営企業として、日本企業による全面バックアップの元、再スタート。
それらの活動を後押しする為、姫さまは精力的に動かれている。
中東各国を歴訪し各国首脳と会談。
舞姫さまが自国に足を踏み入れる事は各国の指導者にとって、かなり微妙なことだったが、一国を代表しての訪問なので断れない。
勿論国民は美しき姫さまの来訪を大歓迎だ。
こうした二国間の話し合いとは別に、王子に手伝って貰いながら様々な国際会議を開き中東の問題と向き合っている。

「姫さま、姫さまの祝福を体験した人が中東総人口の七割を超えたとの試算が出ていまして、それに伴いイスラム教の弱体化が進んでいます
また、大銀河帝国が目指す処の、人と国の在り方が、宗教が如く広まりつつ有るようで、姫さまの中東諸国歴訪は大きな成果を得られたと思います。」
「でも、紛争に明け暮れて来たこの地を、住民がユートピアだと思えるレベルにまで出来るのでしょうか?」
「まだ経済的には心許ないですが、内戦が終わった段階ですぐに支援を開始出来ましたので、人の意識が大きく変わっているみたいです。
我々の目にはまだ貧しい状態でも、以前より生活が安定したことで姫さまに感謝する気持ちがかなり強くなっているとの報告が届いています。」
「まあ、あちこちの国に随分おねだりしましたからね。」
「後ろめたい思いの有る国や難民を帰還させて楽になろうと目論んでいる国ばかりですよ。
姫さまのお小遣いは子どもの教育に使われていますので、投資の回収は難しそうですが。」
「ふふ、良い子が住んでる良い町になれば良いのです。」
「えっ?」
「よい子が住んでる♪ よい町は♪ 楽しい楽しい♪ 歌の町♪
昔の童謡ですが小さい頃に本間さんから教えて頂いて、本間さんは苗川をこの歌の様な町にしたいって。
この地でつらい経験をして来た子ども達が、ひねくれた大人にならず明るい町にしてくれたら、それで充分じゃないですか。」
「は、はい。」

オイルマネーによる裕福な国と紛争により不安定な状態を続けて来た国の混在する中東、宗教上の聖地が混乱の元凶になりもして来たが、姫さまは富める者に経済的支援をさせつつ、自身が意識しないまま、イスラム教を弱体化させていった。
ヨーロッパでも、姫さまの登場によりカトリック系の団体がダメージを受けていることが、イスラムの指導者にとっての僅かな救いだったが、彼らの信仰心もまた姫さまの祝福によって大きく揺らぎ、姫さまと共に歩むべく…。
そう、人々の価値観は姫さまによって大きく変わり、アッラーへの礼拝はDVDで舞姫さまの舞を見、大銀河帝国について学ぶ時間に。
地上に存在する唯一の神、それが舞姫さまなのだ。
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大銀河帝国-09 [シトワイヤン-32]

彼らが交渉のテーブルに付くまで時間が掛かったのは、対立の構図が複雑だった事や大銀河帝国に対して組織内でも意見が分かれた事が原因だった。
それでも何とか五つの組織から代表者が日時を合わせて我々のキャンプに来ることに。
それぞれに対する護衛をこちらから派遣して、まず国境を越えて来る前、姫さまの祝福を充分感じられる様に時間を取る。
代表者を送って来た兵士達が他の組織と交戦しない様に距離を取り、休戦を確約させ、休戦が守られなかった場合、今後の交渉で大きく不利になると脅しをかけて貰ったが、姫さまの祝福を感じ美味しい食事を提供された兵士達に戦意はなさそうだとの報告が入る。
各組織の代表達も穏やかな表情になったというので、国境を越えてキャンプ地へ来て貰うことに。
私達の前に現れた代表者達は、神妙に考え込んでいる様に見えた。
一同が揃いテーブルに着いた所で姫さまの登場。
彼らは立ち上がり、胸の前で手を組む、それが自然なことの様に。
姫さまは遠路来てくれた事に感謝の言葉を述べたそうだが、私は生憎アラビア語が分からない。
そこからの会議は全てアラビア語でなされた。

「姫さま、結局話はまとまったのですか?」
「多分ね、それぞれに地球市民党のスタッフと特別警護隊の隊員がついて、内戦終結に向けてのプロセスを調整して行くことになります。
今まで政府軍を名乗っていた人達も一旦他の組織と同格とし、臨時政府を大銀河帝国の保護下、監視下の元に成立させることで合意に至りました。
一旦各陣営間の境界線をはっきりさせますが、国境では有りませんので自由に行き来出来ます。
私は、ヘリで空から国中を見た後、各組織の拠点を訪問して行きます。」
「祝福をまずは空から、広い範囲にという事ですね。
攻撃目標にされたりしないでしょうか?」
「特別警護隊が護衛のヘリを用意してくれますし、監視衛星からの映像を常に確認。
私に対して軍事行動を起こしたら、今回合意してくれた五つの組織に対する攻撃で有るとみなされ、瞬時に抹殺されるそうです。
でも、こちらが余程の高速で移動しない限り、私の影響下に入るので大丈夫だろうと皆さん仰ってました。」
「自身がそれだけのインパクトを姫さまから感じたと言う事ですね。」
「ええ、皆さん私への忠誠を誓って下さいまして、大銀河帝国領となり私と共に歩みたいとの発言に反対する人はいませんでした。」
「対立の原因は解消されたのですか?」
「そうですね、暫定的に国のトップを私に預けて貰うことになりましたので、一番大きな部分は先送り出来ました。
当面は大銀河帝国の自治領といった形を模索して行く事になりそうです。
帝国の力で、経済面を安定させて行けば落ち着いて行くでしょう。
二つの国家、場合によっては三つの国に分けるという提案もしたのですが、それでは国力が弱くなると分かっているそうで、何とか現状を維持、ただ周辺諸国との不自然な国境問題は大銀河帝国も気に掛けて欲しいとのことでした。
人を無視して乱暴に一直線の国境を定めてしまったが為に多くの争いを生み出したのですからね。
まあ、国境を持たない大銀河帝国の理想も考えて欲しくは有りますが。」

出口の見えなかった内戦状態からの脱却、それは姫さまにしか成し得なかった事だと誰しもが思う。
根本的な部分での人と人の対立は、本当に力有る存在が必要なのだ。
姫さまの介入により、政府軍を支援していた国も反政府軍を支援していた国も手を引かざるを得なくなり、大銀河帝国の存在を世界にアピールする事となった。
だが内戦によって疲弊し切った国の復興は容易な事ではない。
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大銀河帝国-08 [シトワイヤン-32]

国境近くのキャンプ地は大規模なものになった。
大銀河帝国舞姫さま特別警護隊が守る外側をこの国の軍隊が更に固めてくれたが、その周囲には姫さまの祝福を感じられるエリアが広がり、隣国の内戦を気にしない人達が集まって来ている。
過去の遺物の様な神では無く、人々を分け隔て無く癒して下さる姫さまの噂は大きく広まっていて、舞姫さまの前にイスラム教は無力化されつつある様だ。
陸路や空路で補給物資が届けられているので食事の質は落ちる事無く、給水車や電源車が姫さまに不自由な思いをさせていない。
大銀河帝国の移動販売車は姫さまグッズを売りまくっているが、巡礼者目当ての行商人も来ている。
元々何もない所だったのだが、隣国で争う勢力の支配地域を考慮して選ばれただけのこの地は、今後新たな町となるのかも知れないと朧げに考えている。
ただ、この地に来て一週間、状況は進展せず思わしくない。

「和馬さん、彼らからの動きは無いのですか?」
「ああ、智里が叱り飛ばさないと駄目なのかもな。」
「ホント、叱り飛ばしてやりたいわ、はっきりしない態度で。」
「それでも、国境の向こう側、姫さまの祝福を充分に感じらる筈のエリアに人が集まってるのだから、この時間も無駄にはなっていないと思っているよ。
国境を越えて来る人でも武器を持っていなければ、このキャンプ地での買い物を自由にさせてるしね。
姫さまの祝福をどれぐらいの人が感じてるのかは、さっぱり分からないが、その中に各陣営の幹部が紛れ込んでいてもおかしくない。
互いに牽制し合いつつも、彼らなりに落とし所を模索してると信じているんだ。」
「根拠は有るのですか?」
「王子さまが交渉を始めてから、戦闘行動はすっかり納まっていることが確認されてる。
姫さまからの調停案の中には、大銀河帝国を信じられないと受け入れられない案も有る。
客観的に見て最も楽に内戦状態からの復興が出来る案だから、彼らなりに調べているのではないかな。」
「如何にして他の勢力を出し抜いて優位に立つのか考えていそうな人達ですが…。」
「入って来ている情報では、各陣営とも指導者を支持する力が弱まっているみたいなんだ。
まあ、命ぜられるがままに動いて来た人達が疲弊している所へ、姫さまの登場というタイミングなのではないかな。
内戦に疲れて内部分裂の可能性も有る、更なる混沌を招きかねない状況を解決するには、絶対的な指導者が必要だね。」
「そんな人がいたら内戦状態にはならなかったでしょうが、指導者に心当たりでも?」
「姫さまに従う人は少なくないと思うのだが。」
「それは…。」
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大銀河帝国-07 [シトワイヤン-32]

陸路を選んだのは姫さまの祝福をより多くの人に感じて貰う為、今回の旅行は通過する国を大銀河帝国の側に引き込む狙いも有る。
姫さまの存在を恐れているイスラム指導者は少なからずいて、どこからミサイルが飛んで来てもおかしくはないのだが、大銀河帝国を積極的に支持している国々のことを考えると、それは自殺行為に等しいと彼らは理解している様だ。
まあ、こちらの目論見通り、国境を越えてからも巡礼者の出迎えを受けている。
姫さまが、その影響力を及ぼす範囲は広いので実数は把握出来ないが、宿泊地に選んだ町や村での歓迎ぶりは国内外に広く伝えられ、何よりも日本人だと言う事で好感を持たれているという。
それには日本が十字軍に関わっていなかったという歴史的な事実が影響していると話す人もいて、改めて国民感情の難しさを考えさせられた。
この国四日目の宿泊地に到着し。

「姫さま、ここまで時間を掛けた甲斐が有りまして、この国に中東三か所目の社を建設する話が進み、場所の選定に入りました。」
「中東の拠点が一つ増えるのですね、宗教指導者の不機嫌そうな顔が思い浮かびます。」
「大銀河帝国に歩み寄ることにより政治的経済的な安定を優先する方向に傾きました。
この国も国民が一致団結というのには程遠い状況ですが、巡礼者達は姫さまの祝福を感じて国の改革に取り組む方向に。
隣国からの情報も刺激になっていた様で、古い因習からの脱却、それを成功させないと隣国との国力差が広がり過ぎるとの危機感を感じていたそうです。」
「あの王子さまは、派手な投資しつつ、しっかり稼いでいますからね。
そして、イスラムの戒律を緩める方向性は国民の支持を得ています。
それだけに、新たな対立を生み出しかねないのですが…、その兆候は有りませんか?」
「今回の訪問が、その出鼻を挫く形になったみたいです。
世界中の注目を集めている今の状況下で、姫さまや大銀河帝国に対する批判を展開したくても、その根拠は用意出来ないでしょう。
姫さまの祝福を感じた人達の間にはイスラムの戒律に対する疑問が膨らんでいますが、中東各国の権力者達は、姫さまに対して忠誠を誓う者達を抑え込もうなんて事をしようものなら暴動になり兼ねず動けないのです。
巡礼者の人数はそれだけの規模になっていますので。」
「今回の目的地で対立してる人達の反応はどうですか?」
「今の所、姫さまにお見せした彼らの自己主張から進展は有りません。」
「調停案に対する返答も無いのですね。」
「はい、彼等にもプライドが有って引っ込みがつかないのだろうと王子は話していました。」
「そっか、小娘の提案は飲めないと…。」
「ここで、姫さまから怒りの鉄槌とかはないのですか?」
「えっ、そもそも怒っていませんし…、呆れてはいますが…、鉄槌を下すより彼の地に舞姫フレンズを増やせば何とかなると思いません?」
「どうなのでしょう、彼らの価値観が今一つ理解出来ていなくて。」
「対立の構図は単純では無いのですが、皆さんが大銀河帝国の価値観を理解して下さればシンプルに解決すると思います。
この国も隣の王国を見習って宗教改革が進みそうだと、特別警護隊の方が話しておられました。
そのまま様々な対立構造が緩んで行けば、いずれ国を離れた難民たちも元の国に落ち着けるとも。」
「そうですね、時間が掛かっても何とかしたいです。
ヨーロッパに余力を作らないと、アフリカの問題にまで踏み込めないと思うのです。」
「まずは明日からですね。」
「はい、明日は国境近くまで移動、その地に内戦の当事者達を集めたいのですが、まだはっきりしていなくて、国連関係ではない、大銀河帝国舞姫さま特別警護隊の存在を彼らがどう捉えてるのかも分かりません。」
「焦る必要はないです、じっくり取り組みましょう。」
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大銀河帝国-06 [シトワイヤン-32]

町に滞在中、巡礼者を標的に自爆テロを計画していた者が、姫さまの祝福を感じて投降してきた。
舞姫さま特別警護隊を緊張させたが、それは以前にも有った事、姫さまの力を改めて確認出来、安心させもした。
警護隊にとって悩ましいのは姫さまがしばしば宙に浮いてしまわれること。
狙撃されたらと思うと、何も出来ない自分の無力さを感じるのだが、宙を舞う姿が美し過ぎて、見とれてしまうそうだ。

「姫さま、今回は宙に浮かれる事が今までより多いのですが、何か理由が有るのですか?」
「宗教に関係している人達は過去の亡霊に縛られていると思いませんか、民族間の対立もですが。」
「そうですね。」
「そんな人達に向けて、宇宙人みたいな私の存在をインパクト有る形で示す一番の方法だと思うのです。」
「警護隊からは無防備過ぎて心配する声が、一応、姫さまの足が地を離れると姫さまを視認出来る範囲の警戒度を高めてはいるそうですが、せめて高さは控えめにして頂きたいとか。」
「そうね、気を付けるわ、でも多くの人にハヤブサと共に空を舞う姿を見て頂きたくも有るのです。」
「あのハヤブサは姫さまのことを覚えていたのですか?」
「それはあの子に失礼です、飼い主が嫉妬するぐらいに仲良しなのですから。」
「そうでしたか、確かに随行のカメラマンが撮影した姫さまの腕にとまるハヤブサの写真は誇らしげに見えました。
明日からはリムジンバスでの移動になりますが、マスコミ関係者はハヤブサを旅のシンボルにしたいと話していまして、彼と絡むシーンを色々撮影したいそうです。」
「移動中は変化が少ないですものね、バスの車内や停車時などにカメラマンにサービス出来る様、考えておきます。
後、警護隊の人達とのシーンもお願いしたいですね、非番の方々と。
多国籍をアピールしたいですし、下手でも私がアラビア語を使えば、中東を重視しているとアピールすることにもなると思います。」
「彼らも喜ぶでしょう、警護隊に選ばれただけでも名誉だと考えている連中です。
今の所、最新の監視機器は正常に働いているそうで、明日からのルートに問題は無いとの報告を受けています。
本当に緊張感が高まるのは先の事ですので、明日はリムジンバスに乗り込む隊員達と交流して下さい。
リムジンバス内でしたら何を話されても構いません、撮影はしますが外部へは編集したものしか出しませんので。」
「そんなややこしい話はしませんよ。」
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