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巡礼-05 [シトワイヤン-27]

旅行当日、最近は舞姫さまが清香村内の制限エリアである舞姫集落から外に出る事が無くなっていたことも有り、車で走る駅までの道のりには多くの人が見送りに集まった。
皆が胸の前で手を組んでいるのは、苗川市民の中から、舞姫さまに向かって手を合わせるというのは違う気がするという話が出て、相談した結果。
思い思いに祈りのポーズをしていたヨーロッパより統一感が有る。
駅前は事前に抽選で整理券を手に入れた人だけの限定。
一般の人が歩く舞姫さまを見られる機会はほとんど無くなっているので希望者が殺到したという。
最前列で人の整理に当たっているのは、自分でお金を払い研修を受け制服を買ったボランティアのガードスタッフ。
金銭面を自己負担としても希望者が多くて、抽選に当たった人の中から面接して決定したという狭き門。
それをくぐり抜けた人達は誇らしげにその任に当たっている。
舞姫さまのガード、たとえ短時間で有ってもそれは名誉有る事だと考えられているようだ。
見送られて特別列車に乗り込む。
単線のローカル線なので一本の通過を待って発車。
臨時列車は昨日で一旦終了し余裕は有るそうだ。
車窓から眺めていると、テレビの生放送で苗川の様子を見たのだろうか、列車に向かって手を組んでいる人達が。
後で聞いた話では列車の接近に伴って姫さまの祝福を感じ、せめて列車に向かってお礼を、という人が多かったそうだ。
スケジュールは公開してあるのでおおよその通過時間は予測できる。

「お姉ちゃん、列車の旅も良いものね。」
「気に入った?」
「うん、適当に動けるのが良いと思う、ほら、さっきまで和馬さんと三人で話してた、愛華さんと清香さん、今はそれぞれのスタッフと話してるでしょ。
自動車や飛行機だと自由度が低くて出来ないよね。」
「そこが一番のメリットかもね、駅はすれ違い以外ほとんど通過で車に比べたらかなり早いし。
あっ、そろそろかな、車内での取材だけど、これも電車だから出来ることね。」

「姫さま、寛がれているところ申し訳ありません。
これからの旅について少しお話をお聞かせ願えたら思うのですが、今回の旅行ルートは姫さまの意向も加味されていると聞きました。
ポイントはどの様なところでしょう?」
「そうですね、私の舞は神楽から発展させたものです。
今は原型をほとんど留めておりませんし、地球市民党の関係も有りまして、特定の宗教とは距離を置く形を取らせて頂いています。
それでも、日本古来の神楽というものを、もっと学ばせて頂けたらと考えており、神社関係の方ともお時間を取らせて頂くことになっています。
ヨーロッパではキリスト教やイスラム教の話を聞かせて頂き、市民生活と宗教が密接に関わっていると感じました。
日本でも信仰の厚い方が見えますが、総体的に見ると緩やかなのが日本の特徴だと感じています。
地球市民党の一員として世界平和を考えた時、この緩さこそが日本の良さなのではないか、つまり凝り固まってないからこそ他の宗教にも寛容でいられる。
神様と仏様が共存して来た日本ならではのことだと思うのです。
今回の旅では神社仏閣や古い教会にもお邪魔させて頂き、宗教についてもう一度見直す機会にしたいと考えております。」
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巡礼-06 [シトワイヤン-27]

舞姫さまからの、宗教について見直すというメッセージは、宗教が舞姫さまという存在とどう向き合って行くのか、という議論が出始めていることに対してのものでもある。
また、市民政党若葉や地球市民党は、より良い社会の形成を目指して目標を掲げているのだが、それは良き市民有って初めて成り立つこと。
その為には、長年に渡り宗教中心に行われて来た徳育的なことを、社会学に基づき科学的に行う必要が有ると考えている。
特に多種多様な宗旨宗派の党員を抱えている地球市民党にとっては、宗教を尊重しつつも、党員として共通する価値観を党員たちが持つことが必要だ。
今は、こういった市民教育をまず日本でと考えているのだが、宗教的に緩い日本で良い方向性を見い出せなかったら、世界規模では到底叶わないと思う。
姫さまに神社仏閣を巡って頂くのはそんな想いも有ってのことだ。

「姫さま、今回のルートは神社仏閣が多いですが、本当は遊園地とかに行きたいのでは有りませんか?」
「それは…。」
「愛華さん、万里は遊園地、苦手なんです。
万里が小学生の頃、親に連れられて行った事が有るのですが、下の妹が平気な乗り物でも嫌がって。
ねえ、どうしてだったの?」
「なんか落ち着かなかったかな、苗川の森に帰りたいってずっと思ってた。
売店のアイスも苗川駅前の昇竜軒に比べたら全然だったし。」
「まあ、お蔭で私はほぼ二個を食べることになったのだけどね。
神社でよく遊んでいたから、神社仏閣巡りには抵抗が無いよね。」
「木が多いでしょ、ヨーロッパでは木の多い所へあまり行けなくて、私という一匹は木に囲まれて小鳥やリスと遊んだりするのが好きな生き物みたいなの。」
「今回はそういう時間を取って有るから安心してね。」
「ええ、人間を被写体にするカメラマンだけでなく、野鳥などを専門とする方にも同行して頂く時間が有り、お話を聞かせて頂けるそうで楽しみです。」
「色々な撮影が続くと思うけど大丈夫?」
「はい、平気ですよ、カメラを意識しない癖がついて来たというか、まあ、皆さん距離を取って下さいますので。」

実際、姫さまはリラックスされているようで、二日目に訪問したお寺では終始笑顔で受け答え。
緊張し困ったのは僧侶達の方で、祝福を感じてどうして良いのか分からず、結局胸の前で手を組んでいた。
手を合わせる対象ではないが尊い存在、自分達の宗派とは無縁の存在に優しいオーラで包み込まれて大いに戸惑ったのだと思う。
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巡礼-07 [シトワイヤン-27]

旅行中、所謂巡礼の人達のことはホテルのテレビで確認している。
状況的に直接触れ合う機会を作る事が難しいからだ。
姫さまだけでなく、我々もテレビ主演を通してそこそこ有名人の部類に入る。
舞姫さまを見ようと思っても、身長の関係で智里と愛華の方が映像でも目に入り易いという事情が有り、また、その美貌とスタイルの良さで智里のファンも増えている。
テレビから得られる情報によると人々の反応はヨーロッパの時とあまり変わらない。
祝福を感じ一様に幸福感に満たされるのを、脳内物質がどうこうと説明を試みた学者もいるが、そのメカニズムは推理すら不可能だ。
一人の人間を中心に広く影響を及ぼす力は現代の科学では解明できまい。

「和馬、こうして映像を見ていると、我先に前へではなく、ハンディの有る人を優先的に前列へといった心配りが自然に出来てますね。」
「そうだな、元々優しい人達なのかも知れないが姫さまの影響は有ると思う。
個人差は有るものの、感じた祝福が今も心の中で持続しているとパリからの報告にもあったな。
このまま、より民度の高い人種へと…、清香、祝福を感じ姫さまに感謝している人を、えーっと、ベジタリアンみたいな世界共通の言葉で言い表せないだろうか。」
「そうですね、上手い造語が出来、世界に広まれば、人種の壁を越えて一つになって行けます、皆で考えましょう。
インタビューでも、私は舞姫さまに守られているけど、姫さまの子どもというのではなく、と表現に苦慮している人がいましたので。」

夕食後。

「姫さまは、姫さまを慕う多くの人達のことをどう思ってるの?」
「う~ん、お友達みたいなものかしら。」
「お友達か、み~んな舞姫さまのお友達…。」
「友達の友達は友達となれるのだろうか。」
「定着するかどうか分かりませんが、姫さまの祝福を感じ感謝している人のことを舞姫さまのお友達と呼んでみますか?」
「それなら舞姫フレンズの方が簡単で良くないかしら?」
「あっ、そうですね簡単な方が定着し易いと思います。
姫さまは如何です?」
「軽い感じで良いと思います、信者という表現も出始めていますが、アイドルのファンクラブっぽくて、そちらの方が断然良いです。」
「そのまま世界共通に出来るかしら?」
「そうだな、イスラム圏だけ違う表現になってしまったら趣旨に反する、世界に向けて説明が必要だ。」
「これは、愛華からの発表が良さそうです。」
「そうね、タイミングとか考えてみるわ。
ここのメンバーは一人を除いて舞姫さまのお友達ということで良いわね。」
「まあ、本人は違うわな。」
「いえいえ、舞姫さまのお姉さまが、お一人いらっしゃるじゃないですか。」
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巡礼-08 [シトワイヤン-27]

愛華中心に舞姫フレンズをどういう形で広めて行くかが旅行中のテーマに加わった。

「舞姫フレンズを姫さまファンの総称として、ファンクラブも作る?」
「作っても良いが、会員数が億単位になるかも知れないぞ。
DVDが売れてるのも、巡礼で近くまで来る程ではないにしろ、祝福を感じているからだろ。
今のグッズ販売体制を強化するだけにしておいた方が良くないか?」
「メッセージを送るのでしたら、ファンクラブでなくとも…、ただ言語面の拡充が必要でしょうか?」
「そうだな、メッセージとしては舞姫フレンズ心得みたいなのを告知して行くことにするか…、姫さま、如何です?」
「舞姫フレンズの心得的なものは簡単に『弱者に愛の手を』ぐらいにしておいて、後は地球市民党の紹介をして行く形はどうでしょう?」
「欲張らずSimple is best という事ですね。
舞姫フレンズはシンプルに、そこから地球市民党へどう繋げて行くかは今後の課題になりますが、難しい話がなければ、自分は舞姫フレンズだと名乗り易くなると思います。」
「愛華は、舞姫フレンズ、どのタイミングでの発表を考えてる?」
「姫さまに舞を舞って頂いた後はマスコミが一段と盛り上がると思うの、その辺りでどうかしら。
シンプルに行くので有れば準備も簡単に済ませられると思うわ。」
「確かにパリでも舞の反響は大きかったからな。
今回は海外へも映像が配信される、そう考えると、舞姫フレンズは祝福を感じ感謝している人の総称で、姫さまからは、弱者に愛の手を差し伸べて下さる方とだけで済ませるのがベストだな。」
「でも、和馬さん、それだと、自身のことを弱者だと捉えている人が残念な気持ちになりませんか?」
「あっ、弱者側の視点か、彼等こそ舞姫フレンズの一員になって欲しいのだから…、隣人を愛せよ、とかにした方が良いのかな。」
「智里と姫さまの原点に立ち返って『内面の恰好良い人を目指そう』というのは如何でしょう、人間的な格好良さの基準は国によって異なるでしょうが、苗川大改造に関する書物は、姫さまの生い立ちを辿る上で欠かせないとパリでも大人気だそうです。
女性を軽んじて来た国の方々に対して、差別する人は恰好良くないと伝えて行く努力が前提ですが、自己の成長を望む、という意味で、市民教育の原点となるかも知れません。」
「確かに清香の言う通りだ、苗川で成功したのは難しい言葉ではなく『内面の恰好良い人を目指そう』といった、多少曖昧では有るけれど分かり易い言葉で、智里は意識してた?」
「勿論ですよ、小学校の低学年に説教しても始まりません。
掃除を積極的にしている子に対して、恰好良いね、と褒める事が私達の小学校で始めたことです。
そうですね、世界中の政治家に対しても、バランスの取れた政策を進めている人には…、私から格好良いねと言って差し上げたいものです。」
「うん、それは良いかも。
今後、姫さまの発言は重く受け止められ不用心な事は話しづらくなると思うんだ。
智里や愛華が地球市民党のスポークスマンとして、政治家達を時に褒め、時に苦言を呈する。
バックに姫さまの存在という形は悪くないと思うな。」
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巡礼-09 [シトワイヤン-27]

姫さまとの旅行中、特筆すべき出来事としては、まず『舞姫さまの社』の事が上げられる。
姫さまは自身のホログラム映像を不思議そうにご覧になられていたのだが、それを見ていた人達がホログラム映像の舞姫さまと実物の舞姫さまが僅かな時間入れ替わったと話す。
姫さまは目の錯覚ですと取り合わなかったのだが、翌日、それまではただの3D映像でしかなかったホログラム映像に姫さまの力が宿りました、と管理スタッフたちが興奮気味に報告して来た。
その時はまだ社自体が姫さまの影響下にあるタイミングのことだったので話半分に聞いていた。
だが、姫さまがその地を離れた後も姫さまの祝福を感じられるだけでなく、ホログラム映像が本来映し出される筈の舞とは異なる動きをしているそうだ。
そのことを姫さまに尋ねても、いたずらっぽく笑うだけで何も教えてくれない。

もう一つは鳥達との戯れ。
姫さまは旅行中、何処へ行っても歓迎されたが、それは人間からだけではない。
姫さまが空を見上げると鳥が舞い降りて来ることは何度も有った。
テレビ局のカメラマンはそんな光景を逃さない。
降りて来た鳥の種類などを番組で紹介しているのだが、旅の中盤には二十種類を超えていた。
姫さまによると、隠れて出て来ないが、鳥だけでなく多くの生き物が歓迎してくれてるそうで、舞姫フレンズは人間だけではないのだとか。

そして旅のメインイベントである姫さまの舞。
今回は屋外ステージでの披露。
市民政党若葉主催、数万人規模のビッグイベント、そのトリを飾る。
企画の段階で一番心配されたのは雨だが、智里から「万里は運動会とか大きな行事で雨に降られことがなのですよ、ほらヨーロッパ旅行中、雨が降っても夜だけとかじゃなかったですか。」と言われた。
思い起こしてみても姫さまが雨の中に立つシーンを見た記憶がなかったのでゴーサインを。
より多くの人に見て貰いたいということで広い公園の芝生広場に大型モニター付きの仮設ステージを組んだ。
小雨ぐらいなら姫さまさえ濡れなければ良いと考えていたが、程よい晴れ。
数組の歌手が愛と平和を歌い、最後のプログラムとして舞姫さまの登場。
まずは歌を披露。
途中から一羽の小鳥が舞い降りて来てさえずり始めるが、そのさえずりは伴奏というか良い効果をもたらし歌を引き立てる。
舞が始まると今度はタカが舞台上を何度も横切る。
姫さまが合わせているのかタカが合わせているのか分からないが、手にした鈴に合わせて飛んでいる様に見える。
そして…、十分程舞ったところで、姫さまが宙に浮き始めた。
勿論種も仕掛けも用意されていない、両足はその重要な役目を中断し舞の一部としてのみ機能している。
優美。
パリでの舞とは比べ物にならないぐらい感動的な舞を体験させて貰えたことに感謝しかない。
我らが舞姫さまは観客を魅了しつくした後、静かに着地して舞を終える。

これからは、姫さまが普通の女の子だと話しても誰も同意しないだろう。
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巡礼-10 [シトワイヤン-27]

舞姫さまが宙に舞うというか宙で舞う一分だけの映像をテレビ局に流した。
全編はDVDにして発売予定で、その予告となる。
その映像が何度も放送されたことも有り愛華の記者会見には何時も以上に多くの記者が詰めかけた。

舞姫さまファンの人には、舞姫フレンズを名乗り、外見に拘らず内面が綺麗で恰好良い人を目指して貰う。
愛華が記者たちに向けて発表したのはこれだけのことなのだが、海外を意識し説明を加えた。
全ての言語においてMaihime friendsと発音される言葉のみが正式なもので、勝手な名称で集団を作っても認めない。
それは姫さまが国境を越えて人々が仲良く交流することを望んでいるからだ、ということを特に強調。
質疑応答では…。

「信者という呼び方は好ましく無いのでしょうか?」
「私達は宗教団体では有りません、舞姫さまを信じ慕って下さることは嬉しいのですが、姫さま自身、舞姫さまの信者という表現がお好きではないのです。
姫さまのファン、もしくは舞姫フレンズと表現して頂きたいです。」

「舞姫フレンズとして自己の研鑽ということですが、約束事は今後増えますか?」
「自己研鑽の過程に於いて地球市民党の理念などを参考にして頂けたらと思います。
この一言に多くの意味合いが含まれていますので、舞姫フレンズとして細かいルールは必要ないと考えています。
因みに女性差別人種差別などをするのはとても格好の悪い事です。」

「人の行動を全て恰好良いかどうかで判断する訳ですが、価値観は多様ですよね?」
「おっしゃる通りです、そこを地球規模で、特に争いの原因になっていることに対して価値観自体から見直せないかと地球市民党で研究しています。
自分と意見の異なる人に対して、排除することしか考えられない人は恰好悪いとか。
こういった価値観を今後、舞姫フレンズの人達と考えて行きたいです。」

「舞姫さまのお力を考えるとフレンズという表現には違和感を覚える人も少なからずいると思うのですが。」
「姫さま自身が慕って下さる方々とは友人で有りたいと考えておられます。
宗教について考えた上で、宗教とは一線を画して行くのが私達の出した結論、ですから信者ではなくフレンズなのです。」

「舞姫フレンズというのはスタッフ全員が同意してということでしょうか?」
「いえ、舞姫騎士団の面々は方向性を理解しつつも、自分達はあくまでも家来であってフレンズとは名乗れないと話す人が多いです、問題はないと思いますが。」

「地球市民党としては舞姫フレンズを世界中に広げたいと考えているのでしょうが、勝算は如何です?」
「そうですね、最大の問題はイスラム圏に舞姫フレンズを如何にして浸透させるかだと思っています。
イスラム圏の方々が姫さまを認めて下されば、地球市民という我々の理念が世界中に広がって行くことになると考えていまして。
そして、私には、私達の姫さまを受け入れられない人の存在がイメージ出来ないのです。」

記者会見を受けて、すぐに舞姫フレンズというワードがネット上で飛び交い始めた。
そして舞姫さまの祝福の経験者達中心に『外見に拘らず内面が綺麗で恰好良い人』について意見が交わされる。
地球市民としてどうあるべきか、多くの人達が考え始めてくれたみたいだ。
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社-01 [シトワイヤン-28]

姫さまが宙に浮かびながら舞う映像とともに舞姫フレンズの名は海外でも広がりを見せている、と言っても欧米が中心。
地球市民党として目標に掲げている中東での展開は足掛かりすら作れていないのが実情だ。
姫さまも気にかけて下さって…。

「和馬さん、舞姫の社を中東にも建ててみませんか?」
「そうだな、予算に問題はないが場所がね。」
「都市の近郊に緑化事業と並行して、とイメージしているのですが。」
「う~ん、ダメ元で募集という情報を流してみましょうか、中東では姫さまの認知度が低いので難しいかも知れませんが。」

早速、スタッフに指示を出し動いて貰ったのだが反響はなかった。
だが諦めかけ他の手を考え始めていた頃、具体性の有る二件の問い合わせが相次いで寄せられた。
国の王子と実業家、どちらも、たまたま滞在していたパリで姫さまの祝福を感じた人だ。
問い合わせまでに時間が掛かったのは彼らなりに調査や準備をしていたからとのこと。
当人達が舞姫フレンズだと名乗る。
宗教と一線を画している状態なら建設は可能、費用も負担する、勿論姫さまに来て頂きたいと。
早速二か国へスタッフを送り込み調整を始める。

「姫さま、日本はキリスト教ではないので話が早いそうです。
姫さまの舞が神楽に由来していても何ら問題ない、もし、キリスト教に由来していたら協力どころか攻撃対象になっていてもおかしくないと。」
「一部のイスラム教徒は過激なのですね。
それで緑化事業込みでの建設は進みそうですか?」
「緑化は利益に繋がらないと言って来ましたが、舞姫さまの社を中心に大きな公園として整備、新たな観光地とする案を提示しました。
初期投資は海水淡水化装置関連など、かなり掛かりますが、イスラム圏に二か所の拠点が築けるのであれば安いものです。
姫さまのDVDなどグッズも売れる様になりますので。」
「勝算は有るのですね。」
「はい、キャッシーも乗り気です、ただ、結果が出て来るまでは裏方に徹すると話していました。
アメリカ資本を動かすより日本の方が絶対上手く行くだろうと。
舞姫さま専用機のテストフライトが終了したら、漠然と海外旅行とだけ決めてあったスケジュールを中東の二か国としても良いですね。
舞姫さまの社だけを小規模で建設するのなら日程的に充分間に合います。
姫さまご訪問の後、施設を拡充拡大、周辺の緑化を進め公園化という流れで如何でしょう。」
「良いですね、緑化事業は大学の研究室にも参加して貰いましょう。
予算が足りなければ私のお小遣いから出しますよ。」
「その必要はないですが、姫さまが個人的に費用を出される、ということは良いアピールになると思います。
新作DVDも勢い良く売れてますので、大きな投資も可能です。
緑化事業のコストは公園の売り上げでカバー出来るとは考えにくいですが、これを切っ掛けに中東で姫さまグッズの売り上げが伸びればトータルでカバー出来ると思います。」
「中東に足掛かりが出来るのであれば、マイナスでも構いませんね。
世界のトータルでプラスになれば良いのですから。」
「でも、愛華はCitoyenブランドの中東向け商品開発を指示してマイナスにする気はなさそうです。
清香も、ユニットハウスの中東向け仕様を考えていますし。」
「エアコンの効きを良くする工夫とかですか?」
「地下室仕様を社の地下に、地上の工事が進む前に地下迷宮を作っておきたいとか。
スタッフ達が盛り上がっていましてね。」
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社-02 [シトワイヤン-28]

舞姫さまの社、その経済効果は大きい。
DVDよりホログラムの方が姫さまを強く感じられるとの噂が広がり、苗川まで来られない人達が過疎化の進む田舎の村に足を運ぶ。
それに対応して店を増やし、道路拡張工事が始まる。
無秩序な開発にならぬ様、社を建てる際に周辺の土地を安く取得して有るので、言わば門前町が整然と形成されて行く。
現時点では五か所の過疎地で稼働中だが、全国から問い合わせが来ていて、どこに建てて行くか検討中。
ただ、姫さまが立ち寄らないと、ホログラムでもDVD程度にしか姫さまを感じられないという事情が有り簡単に量産とは行かない。
今の所、各都道府県に一か所を目標にしているのだが、欧米からも問い合わせが来始めた。

「海外に建てる社は宗教性を弱める意味でも日本のもの以上に娯楽施設を併設したいですね。」
「なあ、智里、だからと言って中東の地下迷宮計画はやり過ぎじゃないだろうか。」
「中途半端なものを作るより良いと思いますよ、拡大を続け絶対完成させないという方針は工事関係者に安定した雇用の場を提供し、その変化がリピーターを呼び込むでしょう。」
「ただ、その規模がな、こっちのスタッフが盛り上がっていた規模を遥かに超えているだろ。」
「二か国同時進行の効果でしょうね、仲の良い国ではないのでライバル心が働いて。
両方へ行って比べる人もいるでしょうから相乗効果が見込めますね。
国の為に観光で雇用を生み出すとか、お二方とも色々考えておられるのでしょう。
建設計画の発表が有ってからDVDが売れ始めて、社が完成する頃には万里の知名度が現地でも上がってると思います。」
「そうだな、その社も地下だから外観のデザインを気にしなくて良いのは助かったよ、モスクっぽいのは建てたくなかっただろ。」
「大きく掘って完成したら土を被せて地上は緑化、換気口は植物で隠すとか、水道関係が大変そうですが。」
「自前の海水淡水化装置が稼働を始めるまでは、本格的な緑化は出来ないみたいだよ。」
「暑そうですが工事は大丈夫なのでしょうか?」
「重機も大型ダンプカーも冷房が効いているだろう。
現場でユニットを組み立てるのも涼しい時間帯に一気に出来る様、簡単にしたと聞いている。
暑い時間帯は冷房の効いた屋内で、姫さまがアラビア語っぽく歌ってるCDを聴きながら内装工事という事らしいから大丈夫さ。」
「万里がひたすら聴いて真似してみたというCDですね。
取り敢えず発売したけど、売れるのかしら?」
「現地の人でも違和感はないそうだから、姫さまの訪問に合わせて、簡単に品切れとならない量は送っておきたいね。
王子が姫さまを国賓として招くと発表したから、実業家の方も国に働き掛けているそうだよ。
向こうでは皇室とは別で、日本の姫さまという扱いになってるらしくてね、皇室が続いていても幕府が実権を握っていた歴史が紹介されているとのことだ。」
「そこから、どう話を大規模娯楽施設に結び付けて行くのか見ものですね。
しかも地下。
巨大ホールの天井を地上に出して自然光を取り入れるとか、地上から地下五階までの吹き抜けとかも有って地下施設の暗いイメージを出さない反面、迷宮エリアではドキドキの体験が出来るアトラクションを満載、プールも地下に、迷宮エリアが有る程度出来上がってから行きたいですね。」
「私達が行く時は、社と数軒の飲食店だけだからな。
その後は、大きな施設が完成する度にイベントを開催して、リピーターを飽きさせない工夫をして行くそうだから、その度に呼ばれるかも知れないよ。
ヨーロッパで舞姫さまの祝福を感じた人達の新たな聖地となるのだから集客に問題は無いと思うのだがね。」
「う~ん、聖地を巡る争いは起きないですよね。」
「たぶんな。」
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社-03 [シトワイヤン-28]

宗教とは一線を画すと言いながら、舞姫さまの社や賽銭箱は門前町も含めて神社のビジネスモデルをそのまま模している。
社の管理スタッフからお祭りの提案が有ったのも自然な流れだ。
そもそも清香村で新たに作られたお祭り、そこで舞を披露したのが舞姫さまという芸名の始まりでもある。

「姫さまは提案の有りました、社でのお祭り、どう思われます?」
「管理スタッフの仕事に変化が出来て良いのでは有りませんか。
乱暴な祭りでなければ、来客数の落ちる時期を狙っての開催に問題は無いと思います。」
「それぞれの社で独自にやって貰うか統一した何かを提示するかですが。」
「独自で良いでしょう、海外も含め観光業としてのメリットが有れば良いのです。
お賽銭収入からの寄付額が高止まりしていますので自治体も協力してくれるのでは有りませんか。
門前町含めかなりの収益です、税収の伸びも期待されているでしょう。」
「はい、舞姫さまの社を展開し始めて、改めて神社という存在を見直しました。
伊勢神宮とか、昔から多くの人が参拝に訪れる所は地元経済を支えて来たのですね。
人を集める力、姫さまは神様に負けてないです、舞姫さまの社も過疎地の経済を支える存在になり始めていると思います。」
「周辺の開発まで進めて行けそうなのですか?」
「ええ、店の利益が大きいので、それぞれの地元に新たな観光資源を作って行く事で還元し、来客数を維持して行く方針です。
観光地としての魅力を高め安定した集客を目指して行く、お祭りもその柱の一つになればと。」
「お祭りで何をするか具体的な案は有るのですか?」
「3Dプロジェクションマッピングを使う案が出て来たのですが、それならお祭り限定でなくとも良い訳で、でも映像をお祭りバージョンにするという手も有ります。」
「見て楽しむのですね、参加型のは如何でしょう?」
「盆踊り的なものですか?」
「う~ん、プロジェクションマッピングの映像に合わせて踊るとか、踊りも年齢層に関係なく踊れるものと、それぞれの年齢層に合わせたものとか…、海外の社でも作って貰って教え合うとか。
何の伝承も謂れもないのですから自由に楽しめたら良いですね。」
「確かにそうです、祭りに関係なく3Dプロジェクションマッピングは社を盛り立てるべく使って行こうと考えていますので、上手く使えないか検討して貰います。」
「楽しいお祭りになりそうなら、私も行きたいです。」
「う~ん、スケジュールが合えば…、姫さま、ヘリコプターという選択肢は如何ですか?」
「ヘリコプターってヘリポートが必要なのではありませんか?」
「それぐらい簡単に出来ます。
災害時の備えを兼ねて社の近くに作ります、ヘリも購入して…。」
「それなら普段は観光用にしても良いですね。」
「はい、調べて検討して見ます。」
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社-04 [シトワイヤン-28]

ヘリコプター利用の話は、キャッシーが新たに作っている町MAIHIMEまで、空港からの交通手段として検討していると聞いていて思い浮かんだ。
MAIHIME TOWN、新たな町作りに関しては舞姫さま関連の英語版サイトで公開している。
それは本当に何も無い原野に、水道などのインフラ整備と並行して道路を作る所から始まった。
作業員の宿舎用ユニットハウスは道路工事の進捗に合わせ移動したが、今は町に落ち着いた。
食堂など作業員の生活に必要な建物に続いて学校など家族の為の施設が建てられていく。
初期工事のユニットハウスはほぼ完成した物を日本から送ったが、今送っているのは一部の部材のみ。
現場に完成した組み立て工場が稼働を始めている。
もちろん舞姫さまの社は町の中央に建設中。
キャッシーは町建設に際し教会やモスクなど宗教施設は建てないと宣言していて、その条件を呑み地球市民党の理念に賛同した人達が雇われている。
町の産業としては舞姫さまグッズの工場をメインに進めているが、舞姫さまの社を中心とした観光も検討中。

「和馬、中東二か国の後、アメリカのMAIHIME TOWNだけど、姫さまの友達となる様な鳥や小動物はいるのかしら、どちらも緑の少ない土地みたいだから少し心配だわ。」
「そうだな、向こうでペットを用意して貰うか、姫さまとも相談しておこう。
特に中東は言葉の問題も有るから姫さまのストレスに気をつけないとな。」
「三か所とも社のオープンに合わせての訪問だけど、お祭りの話はどう?」
「ああ、それぞれオープニングイベントを企画しているよ、近い内に概要が届くのではないかな。」
「姫さまの衣装をベストにしたいのよね、イベントの概要だけではデザイナーもイメージが湧かないでしょう、取り敢えずデザイナーを送り込んでおいた方が無難よね。」
「だろうな、特に中東は気を遣うべきだろう。
まだ時間は有るから、しっかり準備をしておきたいところだ。」
「そうねスタッフをもう少し送り込んで向こうの雰囲気とか報告して貰うだけでも安心かしら、私達もイスラム圏の人達とは付き合いが無かったから。」
「中東二か国を乗り切り、MAIHIME TOWNで寛げたら良いのだけどな。」
「MAIHIME TOWNと言えばキャッシーも宗教としっかり向き合ってるみたいね。
不慮の事故で亡くなった場合の葬式についてもMAIHIME TOWNの住人となった時点で本人に確認しているのでしょ。
連絡すべき親族なども強制ではないけど住民として登録の際に。
でも、教会やモスクを建てないという条件を呑んだ人達だからと言って葬式とかを考えるとどうなのかしら、微妙じゃない?」
「それについては住民たちが話し合ってるそうでね、舞姫さまの社に冠婚葬祭の施設を併設という話が来ている。
墓についてもいずれ必要になると言う事で検討を始めたそうだ。
自分達の死とも向き合っているのだな。」
「こうなってくると宗教とは一線を画しながらも、ほとんど宗教組織を兼ねているようなものになってしまったわね。
教えは地球市民党の理念、信仰の象徴は舞姫さま。
誰も見た事のない、天国とか地獄の話が出ないのが大きな違いだけど。」
「MAIHIME TOWNの住人たちは、今まで所属して来た宗教での葬式となると聖職者が必要になるが、聖職者の居場所がないということで、新たな葬式の形を考え始めているそうだよ。
姫さまのホログラム映像を利用出来ないか打診して来た。」
「死にそうな人はいないのでしょ、随分気が早いわね。」
「葬式の為だけに宗教、という人もいるのだろう、ならば、そこさえ解決しておけば心の中には舞姫さまがいらっしゃる、既存の宗教抜きで安心出来るのさ。」
「う~ん…、舞姫教とか名乗る?」
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