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森哲也-01 [F組三国志-05]

 ふわ~、今日は球技大会か…。
 夕べは、ゲームやり過ぎたかな。
 まだ眠い。

「おい森、一回戦目始まるぞ。」
「おう、哲平。」
「バスケはベストメンバーで優勝狙ってんだから頼むぞ。」
「ああ。」

 うちのクラスは声援多いな…。
 でも、応援の声は哲平や省吾たちばっかだ、俺の名前なんて全然聞こえて来ない…。
 あっ、嶋から省吾へ、おお、ゴール決まった。
 ちくしょう俺もゴール決めてやる。
 こっちだぞ、嶋。
 うっ、今度は哲平か。
 あいつらばっか目だってるな。
 作戦会議で何か相談したのか…。
 俺、ぶっちしちまったから。
 嶋も俺にはパスして来ないってことか?
 まあベストポジションへ走り込めば…。
 えっ、なんで、良いとこへ入ったと思ったのに、俺っておとりになっただけ?
 もしかして、俺の動きも計算の内ってか。
 あいつら頭良いもんな。
 学年一位三位六位か、俺も六位の哲平に引っ張ってもらって、学年六十位になれたけど、奇跡だよ。
 おっとパスが来た、えっと、嶋がフリーだな。

「ナイスパス。」
「森、良いぞ~!」

 はは、俺への声援は男子ばっかだ。
 まあ仕方ないか。

「森、目はさめたか?」
「えっ、嶋、起きてるぞ。」
「どうせ遅くまでゲームでもしてたんだろ、始めのうち動きが悪かったぞ。」

 あっ、そうだったかも。
 球技大会ぐらいでしか良いとこ見せられないのに俺、何やってんだろう…。
 おっと前半終了か。

「お疲れ~。」
「おう。」
「圧勝だよな。」
「油断は禁物だぞ。」
「今日はシュートが冴えてるね、哲平。」
「嶋のパスがよく通ってるから。」
「はいタオル、省吾、お茶少し飲む?」
「サンキュー。」
「哲平さん、どうぞ。」
「有難う、静。」
「大地さん、タオル、スポーツドリンクで良かったかしら。」
「うん。」

 あれっ、嶋の奴、いつの間に、原崎理沙と…。
 派手な子じゃないけど、かわいいよな。
 黒川は舘内亜美とくっついちゃうし。
 おいおい、クラスの美人系、かわいい系、どんどん彼氏作っちゃうってか。
 まあ、俺…、失敗したからな…。
 ま、今日はバスケ、頑張ってみっか。
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森哲也-02 [F組三国志-05]

 球技大会終わった~、疲れた~。
 でも、バスケは優勝したからな。

「森、お疲れ。」
「おお、省吾、お疲れ。」
「バスケ優勝の功労者は森だよな、哲平。」
「作戦通り行ったもんな、ま、俺も頑張ったけど。
 嶋からのパスを哲平か俺が受け取ってシュート。」
「今日はリズム良く決まったよな。」
「ああ、でも相手はそのパターンに合わせてくる。
 そこで森にパスが通ってシュートが決まる。」
「いや、やっぱ嶋がすごいんじゃないか、誰がよりゴールし易い位置にいるか判断して正確なパスを通して来てさ。」
「確かにな、でも、それを受け取ってシュートを決めないと得点にはならないだろ。」
「ああ。」
「今日の森はかっこ良かったぞ。」
「哲平に言われてもな。」
「はは、女子に言って貰いたいってか。」
「う~ん、俺、失敗したからな、四月はさ…。」
「反省してるって?」
「まあな、この学校なら軟弱な奴ばかりで、偉そうにしてたら勝ちとか思ってた。」
「確かに軟弱な奴は少なくない。」
「まあ言い訳にしかならないけど、うちの両親仲悪くて喧嘩ばっか、八つ当たりもされるから、こっちもいらいらしててさ。
 今も変わらないけど、入学した頃は自分の八つ当たりの対象が出来たって…、俺の勘違いだったけど。」
「はは、それに気付けて良かったと思うぞ。」
「う~ん、中学の頃は喧嘩っぱやい奴が結構いてさ。
 勝てそうにないから大人しくしてたんだ。
 でも、そいつら結構女子にもててさ、俺も高校に入ったらって思ってた。」
「そうなんだ、俺の中学では人気なかったけどな、そんな奴ら。」
「学校のレベルが違うのだろ。
 家では、親を怒らせないように勉強してたし、学校でも大人しくしてたからここに入れたけど、入学してみたら回りは頭の良さそうな奴ばかりだし。」
「なんとなく森のことが分かってきたよ。」
「省吾…。」
「森は家庭のことや、中学での体験もあって…、森を苦手とする人を作ることとなってしまったってとこかな。」
「やっぱ、嫌われてるのだろうな、俺。」
「ああ。」
「お、おい省吾そんなにはっきり言わなくても…。」
「で、森はどうしたい、これから?」
「う~ん、どうなんだろう…、哲平に引っ張ってもらってテストでは思ってたより遥かに良い結果を出せたけど…。
 やっぱ、いらいらすること多いし。
 家を出て一人暮らししたいけど、さすがにな…。」
「そっか、ねえ、気分転換になることって何、森の場合さ。」
「そうだなぁ~、やっぱゲームかな。」
「うん。」
「ただな、達成感を感じる時もあれば、虚しさを覚える時もあってさ。」
「所詮バーチャルだからな。」
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森哲也-03 [F組三国志-05]

「森はスポーツとか、どうなんだ?」
「うん、今日のバスケは楽しかったけど、部活やるだけの根性はない。」
「だよな、哲平は尊敬に値するよ。」
「はは、楽しいからやってるだけだよ。」
「ラグビーなんてきついと思うけどな。」
「まあ、楽ではない、でもうちの部は結構自由だからね。」
「へ~、どんなん?」
「基本、練習への参加は自由なんだ、試合が近づくまではね。」
「そんなんで…、結構強いのだろ、うちのラグビー部。」
「ああ、自由な代わりに自己管理が求められている。
 レギュラーになりたかったら先輩方のアドバイスを受けながらも、自分で考えて練習しないとだめなんだ。
 どんな練習をどれくらいするか、とかね。
 で、実力が認められれば一年生でもレギュラーになれる。」
「自由だけど、自分で考えて動かないと駄目だってことか、やっぱ俺には無理そうだ。」
「はは、森には無理か、俺も時間的に無理だけど、なあ哲平、今度練習とか見学させて貰えないかな。
 出来れば先輩方とも話しをさせて欲しいのだけど。」
「もちろんオーケーさ。
 省吾のことは先輩方の間でも話題になっているからね。」
「えっ?」
「心当たりはあるだろ、美咲のこととかF組のこととか。」
「そうか…、まあ、勉強させて貰える様に頼むよ。」
「省吾が勉強させて貰うなんて、なんか違和感を感じる。」
「森、俺だって普通の高一だからな。」
「はは、あえて突っ込まんが…、なあ、森。」
「何?」
「お前、チーム赤澤に参加させて貰ったらどうだ?」
「チーム赤澤か…、真面目な活動なんだろ、俺なんかが…。」
「いや、面白いかも知れない、森が参加して損のないようにするから。」
「さすがリーダー、何か企みでも?」
「森には研究材料になって貰う。
 その代わりに、森が、もっと高校生活をエンジョイ出来るようにサポートさせて貰うよ。」
「なんか怖いような…。」
「そのままの自分を通すもよし、変わるもよし。
 まあ、チームに参加すれば、森のイメージアップにはなるからな。
 チームに参加したところで、そんなに縛られる訳でもないからね。
 よし、決定、この用紙に必要事項を記入してくれ。」
「あ、ああ。」
「夏休みの予定は?」
「特にないけど…。」
「じゃあ、そうだな…、森んちは、パソコンで気軽にネットにアクセス出来る環境?」
「親が使ってない時は結構自由に使える。」
「じゃあ、うちのサイトにアクセスしてみて。
 本核的なサイト構築は大学生の試験が落ち着いた後になるけど、もう形が出来つつ有るからね。
 プロジェクト梶田関連は時間との勝負、という一面が有るから動きが早くて。
 単位を落とさないようにって、みんなに言ってるけど。」
「省吾、リーダーとして、大学生の方々に何かアドバイスしているのか?」
「ああ、時間を区切って、だらだらやらないように。
 頭を切り替えるトレーニングが必要と言う提案はしといた。」
「あっ、限られた時間で複数の作業をこなす時の、F組でも話してたことか。」
「うん。」
「大学生の人たちの反応は?」
「それはF組と同じさ。
 すぐに納得して自分のスケジュールをきっちり決める人もいれば、色々助言の必要な人がいたりとかね。
 哲平、高校生でも大学生でも、そんなに違わないのだよ。」
「そうか、個々の力量ってことなんだな。」
「そういうこと。
 で、森さ、うちのサイト見て興味の有ることを見つけたら教えて。
 なかったらないで構わないけどね。
 あと、プロジェクトF関連で、森の担当が付くことになるけど、うざかったら、うざいって言えば良い、直接言いにくかったら俺に言ってくれな。」
「あ、ああ。」
「担当の大学生が決まったら紹介するよ。」
「う、うん。」
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森哲也-04 [F組三国志-05]

 省吾があんなに強引だとは知らなかった。
 普段は色々提案しても、やるもやらないも自由って、強制しない奴なのに。
 チーム赤澤か…。
 今日は親父が帰って来てないから、パソコンOKだな。
 ま、見てみるか。

 うん、ここだ。
 チーム赤澤…、トップは絵か…、あっ、Shizuka Yamakageとある。
 これって山影静の絵なのか、うまいもんだ、近寄りがたい美人だけど。
 えっと、プロジェクトFか…。
 えっ?
 プロジェクトスワン、プロジェクト梶田…。
 株式会社を立ち上げる?
 そんなレベルなのか…。

 トップは赤澤省吾。
 大学生六十三名、院生七名、高校生二十四名…。
 えっ、バックアップメンバー?
 こっちは名前が肩書き付きで公開か…。
 大学教授?
 会社社長?
 え~と二十人ぐらいはいるぞ。
 学生だけじゃないんだ。

「おう~、帰ったぞ~!」

 あっ、親父だ。
 また酔っぱらってる…。
 省吾の親は大学教授、俺の親父は酔っぱらいか…。
 どうなるのか、わかんないけど、すがってみるしかないのかな…。
 チーム赤澤に。
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森哲也-05 [F組三国志-05]

「森くんね、はじめまして、私は根岸恭子、こっちが酒田充、二人とも三回生ってとこ、よろしくね。」
「よろしくな。」
「は、はい、こちらこそ。」

 担当の学生って省吾から聞いてたけど、こんなきれいなお姉さんが来るとは思ってもいなかった。
 うっ、緊張する…。

「省吾リーダーから少しは聞いてるけど、色々話して頂くことになると思うから…、そうね…、え~と…、話したくないことはそう言ってくれれば深く追及したりしないから気軽にね。」
「は、はい。」
「今日は酒田くんの車でドライブでもしながらと思っているのだけど、どうかしら?」
「え、ええ。」
「どこか、行きたいとことかある?」
「べ、別に…。」
「そっか、じゃ、思い出の場所とかないかしら?」
「え~っと…、東山公園か…。」
「ドライブにはちょっと近過ぎる気がするけど、行こうか。」
「はい。」

「東山公園に何か想い出があるの?」
「たいした想い出もないけど、ドライブなんてあまり経験がないし、春の遠足で行ったから思い出したって程度で。」
「省吾リーダー達が色々企画したって遠足ね。
 どうだったの、その遠足って。」
「じ、自分たちは省吾の企画に乗らなかったから…、まあ、今思えば勝手に仲間外れになってたって感じで。」
「ふ~ん。」
「俺、失敗したなって、遠足の後で気付いて。」
「そうなんだ、それで…。」

 気が付いたら自分のことをずいぶん話してた。
 根岸さんが、俺が話し易いように訊いてくれたからだと思う。
 親のことまで話したらなんかすっきりした。
 あっ、とっくに東山公園に着いていたけど、酒田さんは車止めて俺たちの話を聞いていてくれてたみたいだ。

「ね、飲み物とかは持って来てるけど、どっかでお茶する、それとも…、そうだ、グリーンロード走って山の方へ行ってみない?」
「はい。」
「酒田くん、香嵐渓とかどう?」
「うん、行こうか。」
「森くんのことずいぶん話して貰えたから、私たちのことも少し話させてね。」
「はい。」
「酒田君も私も、いじめられたり、いじめた経験があるの。」
「えっ?」
「そんな経験は忘れるようにして来たのだけどね、教育学部に入ったら向き合わざるを得なくなって…。」

 そうなんだ、失敗したのは俺だけじゃないってことか。
 省吾はそれを俺に分からせるために?
 親が親だけに、誰も俺のことなんか考えてくれないって思ってた。
 今からでも遅くないのかな…。
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森哲也-06 [F組三国志-05]

 夏休みに入り、根岸さんからお誘いを受けた。
 興味の有る事ではなかったが、美人女子大生からのお誘いを断るなんて出来る訳がない。

「根岸さん、今日の集まりは施設の関係だと聞きましたがどういうものですか?」
「児童養護施設はね、保護者のいない子とか親の虐待を受けてた子とかを預かっているのだけど、夏休みは職員の負担が増える時期なの。
 そこをボランティアで手助けしている学生がいてね。
 どう、小学生の相手とかは?」
「小学生ですか、中学生になってからは話したこと無いです。」
「一人っ子だとそうなるのね。
 今日は小学生と遊んだり、中学生の勉強を見て上げたりとかだけど…、嫌になったらはっきり言って良いのよ、但し注意事項としてはね…。」

 心に傷を負ってる子もいるそうで、言葉に気を付ける様にと言われた。
 施設に着いてからは小学生に紹介されサッカーの相手とか。
 まあ、無難に終わり…。
 
「森くん、どうだった?」
「そうですね…、接し方が分からなくて戸惑いましたが、色々考えさせられました。
 この子達は辛い目に遭って来たのかな、なんて。」
「沢山考えてね。
 答えを出す必要はなく、ただ、彼らの事を考え自分の事を考える。
 それが今日のテーマだからね。
 省吾リーダーからは、森くんの視野を広げて欲しいと言われているの。」
「そっか…、何となく分かります、今まで自分は自分の事しか考えて来なかった…。」
「でも、頭が悪い訳ではないのでしょ。
 私達の役目は、森くんに今までして来なかった体験をして貰うこと。
 後は森くん次第ってとこね。」
「はい、始めは省吾が何を考えているのか良く分かりませんでしたが、根岸さん達の話を聞いて、その…、今は、視野を広げる、という言葉の意味が分かる気がします。
 この後はどうなりますか?」
「小さい子と遊ぶか、中学生の学習を手伝うかだけど、どう?」
「小さい子はちょっと…、中学の学習内容なら、まだ忘れていません。」
「受験勉強は頑張ったのね。」
「はい、結果を出していれば親に怒られる口実を与えなくて済みましたし、中学でバカやってる奴らと同じ高校には絶対行きたくないと思っていました。」
「それが原動力だったのか、でも学年六十位なのだから、元々頭は悪くなかったのよね。」
「はは、どうでしょう、視野の狭い小さな男です。」
「そこに留まる気は無いのでしょ?」
「そうですね、このままだったら根岸さんや省吾に申し訳ないです。
 この間、根岸さん達とドライブに行ってから、自分なりに考えてはいるのですよ。」
「そんな気持ちが有るのなら、是非中学生の学習を手伝って欲しいわ。」
「はい。」

 中学生の内容とは言え、教えることに自信が有る訳ではない。
 でも、哲平にアドバイスして貰った経験から、教え方というのを考えながら真面目に中学生と向き合う。
 F組の谷口あやかと藤本由香も手伝いに来ていて、少し照れ臭かったが、彼女達に真面目なとこを見て貰いたいとも。
 今は、岡崎とかで遊んでた自分が恥ずかしい、でも、そんな自分に対し哲平達は普通に接してくれる。
 根岸さん達も自分を子ども扱いしていないと感じる。
 そうなると悪ガキみたいな態度は取れなくなると言うか…。
 学習時間が終わってからは、中学生達と谷口、藤本を含め、お菓子を食べながら雑談の時間、中学生の質問に答える。

「谷口さん、やっぱ中三の頃は沢山勉強したのですか?」
「したわよ、絶対合格したかったからね。」
「高校ってどうです、進学校ですよね?」
「そうね、楽しく学習に励んでるわよ。」
「う~ん、高校に入ったら勉強しなくて良い訳では無いもんな~、でも楽しいの?」
「ええ、山口くんには学習方法の見直しをレクチャーしたから、彼から聞いて欲しいけど。
 私達は、如何に学習効率を上げるかを考えてるの。」
「森さんもですか?」
「ああ、自分は…、人の道を外しかけたけど、クラスの仲間に助けられてね。」
「えっ、人の道を外しかけるって?」
「まあ、いじめっ子一直線を目指しかけてたんだ。」
「ひど~い。」
「でも、反省して、今はマシな人間になろうと思ってるよ。」
「そうなのね、数学、分かり易く教えてくれて…。」
「休み前のテストに向けて、クラスの人気者が色々教えてくれてさ、それを思い出しながら説明したんだ。」
「あっ、美人なの、その人?」
「男だよ。」
「藤本さん、森さんって学校ではどうなの?」
「そうね、弱い者いじめをしてたから、女子は今でも…、でもね、男の子って良いな~って思うのは、そんな森くんでもクラスの男子は、ずっと普通に接してる人が多くて。
 まあ、私達のクラスが特別だからかもだけど。」
「特別?」
「ええ、世界で一番素敵なクラスなの。」
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