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森哲也-05 [F組三国志-05]

「森くんね、はじめまして、私は根岸恭子、こっちが酒田充、二人とも三回生ってとこ、よろしくね。」
「よろしくな。」
「は、はい、こちらこそ。」

 担当の学生って省吾から聞いてたけど、こんなきれいなお姉さんが来るとは思ってもいなかった。
 うっ、緊張する…。

「省吾リーダーから少しは聞いてるけど、色々話して頂くことになると思うから…、そうね…、え~と…、話したくないことはそう言ってくれれば深く追及したりしないから気軽にね。」
「は、はい。」
「今日は酒田くんの車でドライブでもしながらと思っているのだけど、どうかしら?」
「え、ええ。」
「どこか、行きたいとことかある?」
「べ、別に…。」
「そっか、じゃ、思い出の場所とかないかしら?」
「え~っと…、東山公園か…。」
「ドライブにはちょっと近過ぎる気がするけど、行こうか。」
「はい。」

「東山公園に何か想い出があるの?」
「たいした想い出もないけど、ドライブなんてあまり経験がないし、春の遠足で行ったから思い出したって程度で。」
「省吾リーダー達が色々企画したって遠足ね。
 どうだったの、その遠足って。」
「じ、自分たちは省吾の企画に乗らなかったから…、まあ、今思えば勝手に仲間外れになってたって感じで。」
「ふ~ん。」
「俺、失敗したなって、遠足の後で気付いて。」
「そうなんだ、それで…。」

 気が付いたら自分のことをずいぶん話してた。
 根岸さんが、俺が話し易いように訊いてくれたからだと思う。
 親のことまで話したらなんかすっきりした。
 あっ、とっくに東山公園に着いていたけど、酒田さんは車止めて俺たちの話を聞いていてくれてたみたいだ。

「ね、飲み物とかは持って来てるけど、どっかでお茶する、それとも…、そうだ、グリーンロード走って山の方へ行ってみない?」
「はい。」
「酒田くん、香嵐渓とかどう?」
「うん、行こうか。」
「森くんのことずいぶん話して貰えたから、私たちのことも少し話させてね。」
「はい。」
「酒田君も私も、いじめられたり、いじめた経験があるの。」
「えっ?」
「そんな経験は忘れるようにして来たのだけどね、教育学部に入ったら向き合わざるを得なくなって…。」

 そうなんだ、失敗したのは俺だけじゃないってことか。
 省吾はそれを俺に分からせるために?
 親が親だけに、誰も俺のことなんか考えてくれないって思ってた。
 今からでも遅くないのかな…。
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