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秋山美咲-02 [F組三国志-01]

「美咲、おはよ。」
「おはよう。」
「ふふ。」
「なによ、あやか?」
「み・た・わ・よ。」
「何を?」
「赤澤くんとお二人で登校して来たじゃない。」
「あやか、ほんとなの、私は昨日二人で帰るとこ、目撃したのよ。」
「まじ?」
「美咲~、何時からなの? 告られたの? 白状なさい。」
「い、何時からって昨日おごって貰って…。」
「うんうん。」
「で…。」
「告ったの? 告られたの?」
「そ、そんなんじゃ…。」
「その割には真っ赤だぞ。」
「付き合うの?」
「ま、まだ…。」
「美咲はどう思ってるのよ?」
「ふふ、パフェおいしかった。」
「おいおい。」
「赤澤くんけっこう人気あるし、昨日のオムレツでまたポイント上げたのよ。」
「そうなんだ。」
「そうなんだって、美咲、またまた男に興味なさそうなふりしてさ。」
「そんなこと…。」
「おっ、噂の主、発見。」
「あれっ? こっちに来るみたい、おじゃまかしらね~。」
「でも由香、岡崎も一緒みたいよ。」

 赤澤くん、さっそく岡崎くんに声を掛けてくれたんだ。
 このシチュエーションで…、うわっ、またドキドキしてきた。

「おはよう、盛り上がってるね。」
「ふふ、赤澤くん、盛り上がってるわよ、誰かさんたちのことで。」
「えっ?」
「美咲とどうなのよ?」
「はは、ばれてたか。」
「ばればれ。」
「俺は美咲のことが大好きだよ。」
「うわ~、大胆発言。」
「しかも昨日は秋山さんだったのに、いったい何時から?」
「今朝、地下鉄のホームで告って…、その返事はまだ貰ってないけど、美咲って呼んで良いって。」
「へ~、赤澤くんって、けっこうやり手なんだ。」
「いや~、もうドキドキしっぱなしだよ、昨夜は全然眠れなかった。
 でも、本心を伝えたらすっきりしたってとこかな。」
「そっか、今回の美咲は何時もと違うのね。」
「由香、何時もとってどういうこと?」
「ふふ、この美咲お嬢様、今まで何回告られたのでしょう、はい、分かる人?」
「まあ、美咲なら一桁ということは有り得ないわね。」
「そ~なのです、中学生時代、私が知ってるだけで十六人。」
「で?」
「その十六人全員、その場で、ごめんなさい。」
「と、いうことは…。」
「と、いうことは?」
「赤澤くんが十七人目と言うことか?」
「岡崎、馬鹿か!」
「馬鹿ってなんだよ、藤本さん。」
「赤澤くんがまだふられていないことと、美咲の顔の赤さ、そこから導き出される結論はひと~つ!
 美咲、おめでとう。
 赤澤くん、美咲のことよろしくね。
 以上友人代表でした。」
「ははは。」
「ちょっとあなたたちね~。」
「あっ、先生来た。」
「続きは次の放課ね。」

 あ~、なんか、あっという間に…。
 みんな勝手に盛り上がってくれて…。
 でも赤澤くん、ふふ、省吾とだからいっか。

「秋山さん、秋山美咲さん。」
「はっ、はい。」
「顔が赤いけど熱でもあるんじゃない?
 大丈夫?」
「えっと…。」
「先生、近づき過ぎると火傷しますよ~。」
「赤澤くんも暑そうだな~。」
「あらあら、そういう事なの、あなた達。」
「えっ、秋山と赤澤?」
「何時から?」
「真由美、知ってた?」
「私も初耳。」
「そういうことなら保健室へは行かなくても良いわね。」
「先生、二人で保健室へ行かせたら危険で~す。」
「はいはい、では…。」

 か~、はずかし~。
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秋山美咲-01 [F組三国志-01]

 赤澤くんと明日の朝は待ち合わせ。
 楽しくて何も考えずに約束してしまったけど、男の子と待ち合わせなんて初めてのこと。
 今になって、またドキドキして来た。
 でも、もっと話していたかったなぁ~。

「美咲、ぼんやりしてるとキャベツの代わりに手を切るわよ。
 慣れて来た頃が一番怪我し易いのだから気を付けなさい。」
「うん、大丈夫よ、でも…、もう少し軽やかに切れる様になりたい、高校に入学してから毎日夕食準備を手伝ってるのにまだまだ…。」
「調理実習上手く行かなかったの?」
「そうでもないけど、包丁の扱いが凄く上手な男子がいてね、カッコ良かった。」
「もしかして、その人と?」
「えっ?」
「今日のデート。
 男の子とカフェなんて初めてじゃなかったかしら?」
「まあ、初めてかも。」
「ふふ、ご感想は?」
「ドキドキだった…、でも彼もドキドキだったみたい。」
「うぶなんだ。」
「そうなのかな…。」
「どんな人?」
「前からね、頭の良さそうな人だなって思っていたの。
 だってさ、休み時間に読んでいる本が、集団と心理、とかなのよ。」
「チェックしてたのね。」
「何となく…、数学が得意みたいで。」
「そっか、美咲にはないものを持ってるんだ。」
「ど~せ、数学ダメダメですよ~。
 でね、お堅いだけの人かなっ、とも思っていたのだけど、クラスのことを相談したら色々考えてくれてね。」
「うんうん。」
「その話しが、大人だ~って感じなの。
 ご本人が言うには、お父さんの影響が大きいのだって。」
「へ~。」
「お父さんは大学の先生。」
「なるほど。」
「でねでね、料理はお父さま直伝だとかで…。」

 話しは尽きない。
 秋山美咲、蟹座生まれの十五歳。
 今まで何度か告られたことはあるけど、いつも何か違うと思ってた。
 私を好きになってくれるのは嬉しいけど、この人と一緒にいたいと思うことはなくて…。
 赤澤くんのことは気になっていた。
 授業中でも、時々妙に大人びた発言をするし、そして、それが理にかなっている。
 同じ学年とは思えない時もあった。
 今日色々話をして…。
 美咲、マジで惚れたか? 
 あ~、またドキドキしてきた。
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赤澤省吾-04 [F組三国志-01]

「へ~、お洒落なカフェだね。」

 カフェなんてめったに入らない俺にとっては、ちょいとプレッシャーを与えてくれる大人な雰囲気の店ではあった。
 でも、ここまでで緊張がほぐれ、無難にというか楽しく会話して来たのだから何とかなるだろう、秋山さんはとても話し易い人だ。

「あっ。」
「何?」
「Bud Powell のCleopatra's Dream。」
「え?」
「ほらこの曲。」
「このピアノ?」
「うん、うちの親父、JAZZが好きでさ。」
「へ~。」
「だから小さい頃から自分も耳にしていてね。」
「そっか、私んちは母さんがクラシック好きで、だから、私もショパンとかシューマンの曲が好きになったの。」
「そうなんだ、俺もシューマンのクライスレリアーナとか好きだよ。」
「うんうん、何か嬉しいな、自分の周りの友達ってみんなJポップとかばっかでさ。」

 しばしの音楽談義。
 きっかけをくれたBud Powellに、そして親父の趣味の広さに感謝だ。
 彼女が口にする演奏家のCDが家にあったりする。
 もちろんクラスのことを話し合ったりしたから、ずいぶん長くカフェにいた。

「あっ、時間良かった?」
「そうね、家には連絡入れておいたから大丈夫だけど、そろそろ…。」
「出よっか。」
「うん。」

 地下鉄の駅まではすぐ。
 そして…。

「どこで降りるの?」
「覚王山よ、赤澤くんは?」
「覚王山。」
「えっ?」

 神様、有難うございます。
 今日一日でずいぶん心の距離が近づけたと思っていたら、家も近かったなんて。
 それにしても隣の中学出身だったとは…。
 朝、自分が使う出入口とは真反対の出入り口を使い、自分は地下鉄の先頭車両、降りたら早足で学校へ、彼女は最後尾に乗り、降りたらのんびりと学校へということだったらしい。
 つまり、同じ列車に乗っていても顔を合わせることが全くなかったということだ。
 ここは思い切って…。

「ねえ、明日待ち伏せしても良いかな?」
「待ち伏せ?」

 しまった、待ち伏せと言うワードはミスチョイスだったか…。

「待ち伏せじゃなくて待ち合わせでしょ、もちOKよ。」

 やった~!
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赤澤省吾-03 [F組三国志-01]

 秋山さんは教室での真面目そうな雰囲気とは違い、可愛いらしく自分はどんな性格だとか話してくれる。
 好きな人の知らなかった一面を、その本人から最高の笑顔と共に教えて貰うという最高の幸福に浸りながら、こんな時間をこれからも持ちたいと思う。
 それには彼女に好感を持たれなくてはならないし、彼女の為に出来るだけの事をしなくてはならない。
 まずは…。

「あ、あのさ、いじめのことだけど…。」
「うん。」
「今なら…、そうだな、ゲーム感覚で手を打てるというか、手を打ってみたら面白いと思ってね。」
「ゲーム感覚?」
「ああ、簡単に言えばクラスを三つに分けるところから始めてさ。」
「私としては一つにまとめたいのだけど…。」
「いずれはそうするが、統一までの過程という感じで。」
「どういうこと?」
「現時点でクラス運営を放置したら、いじめる側の人が増えると思うんだ。
 全員が楽しい中学生生活を送って来た訳でもなさそうで、いじめられてる子を下手にかばったら自分もいじめの標的になりかねないと考えている。
 みんなの行動とかを思い出して分析してみた結論だけど、どう?」
「そうね、いじめられない様、いじめる側になろうとしているとかも…。」
「それが固定化する前、つまり今、いじめない人達のグループを形成しておこうというのが三つのグループに分ける理由。
 まぁ、三つでなくても良いのだけどね。」
「どんな風に分けるの?」
「まず俺たちのグループ、秋山さん、君がリーダー、奥田さんや谷口さんたち、君と仲の良い人プラス…、岡崎とかも入れてやるかな。
 次は河西哲平をリーダーとするグループ。
 彼は男子の中でも人望が厚いし、彼を見つめる女の子たちの眼差しには妬けるものがある。」
「そうよね、でも私のタイプではないわ。」
「はは、いじめをしないグループが二つあれば良い。
 哲平は話せば分かる奴だと思うから、最初は俺らと哲平の三人だけがこの企みを分かっていれば良いと思う。」
「だったら三人で一つのグループを作っても良いのでは…。」
「選択肢があった方が面白いでしょ。
 俺は絶対秋山派だけどリーダーには哲平を推す奴もいるだろう、クラスを運営して行く上で二つの派閥が競いあったり協力しあったりしたら、面白いと思うんだ。」
「う~ん、そっか…、でも、その秋山派って表現はちょっとな…、赤澤くんがリーダーやってくれたら良いのに。」
「はは、俺には秋山さんのような魅力がないからね。
 まあ、リーダー論というのは小学生時代からの研究テーマでさ。
 自分も地元少年団のリーダーをやっていたのだけど、中二の頃はリーダーをサポートしながら集団を見る様にしていてね、秋山さんを色々な形で支える立場になりたいかな。」
「心強いわ。」
「まあ、研究と言っても大した事ではないのだけどね。」
「ふ~ん、あっ、河西くんのグループにも私たちのグループにも属さない人たちは?」
「派閥がはっきりしてきたらどちらかに所属しようする人も増えるだろうし、森や井原がグループを形成したら、それはそれで面白いかな、彼らも根っからの悪人という訳でもないだろう、グループは固定ではなく状況に応じて変化させて行けば良い、ただ…。」
「ただ?」
「例えば、山影静。」
「あっ、無口よね。」
「そして存在感が希薄だろ。」
「うん、どのグループにも属さないかもね、彼女が何を望んでいるのかも分からないわ。
 今の所、いじめの対象になってる訳ではなさそうだけど。
 でもクラスの一員として溶け込んで欲しいな…。
 あっ、そこの店よ。」
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赤澤省吾-02 [F組三国志-01]

 キンコンカンコ~ン♪  キンコンカンコ~ン♪

 うー、だめだ、とてもじゃないが緊張が限界を越してしまいそう。
 片思いの女の子と二人でカフェなんて初めてのこと。
 嬉しさの反面、失敗に対する恐れが高まる、嫌われたくないし勿論好感を持たれたい。
 こんな時は…。
 そうだ、親父が言ってた、こんな時は逃げ道を作っておくのも一つの手なんだ。
 そして、正直にあれ。
 余計な見栄を張るな。
 うん、うん、実行するしかあるまい…。

 教室を出てから特に会話するでもなく少し距離を置いた状態で歩いていた。
 でも目的地は同じで…。
 ちらっ、と彼女に目をやると心ろなしか頬が赤らんでいるような…。
 いつ見ても最高に可愛い。
 落ち着け~、省吾~。

 校門を出てからさりげなく距離を近づけていく。
 まぁ、帰り道が同じ方向の同級生が並んで歩いたところでどうってことないじゃないか。
 どうってこと…。
 どうってことない筈だが心臓の奴は勝手に暴走しまくっている。
 口がうまく動くか自信はなかったが…。

「あ、あのさ。」
「うん。」
「お、俺さ。」
「うん。」
「女の子とね。」
「うん。」
「二人でってさ。」
「うん。」
「全然経験なくってさ。」
「うん。」
「ちょ、ちょっと…、じゃ、じゃなくてかなり、き、緊張してて…、ご、ごめん。」
「うん…、う、ううん。
 私も約束した後、男の子と初めてのデートじゃん、って思ったらドキドキして来て、午後の授業、全然頭に入ってなかったの…。」
「えっ?」
「えっ? って?」
「秋山さんみたいな人が?」
「えっ? 私みたいな人?」
「うん。」
「私のこと、どんな風に…?」
「す、すごくしっかりしてて、俺なんかの前で緊張するなんて…。」
「ベ~、そんなんじゃありませんよ~、も、もう。」
「うん。」
「か、勝手に誤解しないで…。」
「うん。」
「赤澤くんの方こそ…、おごってくれると言うから、こういうことに慣れてる人かと思ったわ。」
「そ、そうか。」
「じゃあ、似た者同士ってことなのね。」
「はは。」

 似た者同士と言われましてもね…、俺は大好きなのですよ、あなたのことが!
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赤澤省吾-01 [F組三国志-01]

「おいおい、岡崎、なんだその切り方は、高校生にもなって包丁一本まともに扱えない様じゃ人も殺せないぜ。」
「ば、馬鹿言うなよ、人殺しになる気なんてないよ、お前は殺人鬼にでもなるつもりか。」
「はは、まあ包丁貸してみな。」

 もちろん、俺も人を殺める気は毛頭ない。
 五月のさわやかな風が調理実習室のカーテンを静かに揺らし、小さい頃から料理に慣れ親しんでいる身としては、つい、さわやかなジョークも口をついて出るというもの。
 サクサクっとキャベツを切ってみせる。

「赤澤、うまいな。」
「ほんと、上手ね。
 私も料理の手伝いしてるけど、そこまでは出来ないわ。」

 岡崎に続いてのほめ言葉は秋山美咲、学年一の美少女で笑顔がまばゆい。
 やば、ちょっとドキドキしてきた。

「ちっちゃい頃からやってるからね。」
「そうなんだ。」
「親の方針でね、料理が出来ればとりあえず喰っていけるのだとか。
 親父の趣味でもあってさ。」
「へ~、なんかうらやましいな。
 うちの父さんなんて包丁すら握ったことの無いような人なのよ。」
「はは。」

 入学して、まだ一か月と少し、秋山さんとはほとんど話せて無くて、短い会話でも嬉しい。
 もっと話していたいが、今は調理実習の時間…。

「あっ、おいおい岡崎、違うよそんなことしたらオムレツにならないだろ。
 ほんとに、お前はどんくさいな。」
「ごめん、不器用でさ…。」
「それ以前の問題だぞ。」
「そっちは私がやるわ、岡崎くんはお皿の用意とかしてくれる?
 麻里子、こっちお願いね。」
「オッケー。」

 自然に指示を出す、秋山さんはそんなリーダータイプ。
 作業もけっこう手早くこなしていて、その姿をずっと見ていたくなる知的美人。
 そんな彼女が作業しながら話し掛けて来て、少し緊張…。

「ねえ、赤澤くん。」
「うん、な、何?」
「岡崎くんって、ちょっといじめられてない?」
「えっ? お、俺はそんなつもりじゃ。」
「分かってるわよ、赤澤くんの場合は、ちょっとからかっているって感じだから、どんくさいと言われても岡崎くん、そんなに嫌そうじゃなかったもの。
 でもね、森くんとかがさ…。」
「う~ん、確かに、森たちはなぁ…。」
「何とかならないかな?」
「さすが委員長だね。」
「委員長だからと言うよりもね…。」
「うん。」
「私もね小学生の頃にちょっとあってさ…。
 でも、中学、特に中三の時のクラスはみんな仲良くて、すっごく楽しかった。
 それが、この高校のこのクラス…、少し微妙だな~って感じてるのよ。」
「なる程、その感じは分かる。」
「何とかならないかな。
 せめて、岡崎くんだけでもいじめられないようにさ。」
「う~ん、あいつ、ほんとにどんくさいからなぁ~、よくここに受かったものだ。」

 緊張感がばれない様に、めんどくさげに返事はしているものの…、なにせ秋山さんからの頼みごとだ。
 入学してから今日まで、彼女に会える事を楽しみに通学している自分にとって…。
 一目ぼれだが、容姿だけの人ではない、これは神が与えたもうたチャンスではないのか。
 オムレツを焼きながらクラスの状況その他を考察してみる。

「いただきま~す。」

 みごとに焼きあがったオムレツに対する賛辞の言葉を一身にあびる頃には、随分考えがまとまっていた。

「ねえ、秋山さん、さっきの話だけどさ。」
「ええ。」
「ちょっと提案があるのだけど、ゆっくり話す時間とれないかな。」
「もち、いいわよ、私、今日の予定は特にないから。」
「じゃあさ、帰りにちょっとおごるよ、バイト代が入ったところなんだ。」
「あ~、アルバイト禁止よ、うち。」
「はは、バイトって言っても、親の手伝いだから問題ないさ。」
「お父さん?」
「うん、大学で教えているのだけど、ちょくちょく手伝っていてね。」
「へ~。」
「手伝う中で色々な知識に触れることが出来て面白いんだ。
 まぁ学校帰りにデナーとはいかないけど、どこか行きたい店とか有る?」
「ほんとに良いの?」
「ああ。」
「じゃあさ…、え~っと赤澤くんって家どこ?」
「千種区。」
「じゃあ地下鉄よね?」
「うん。」
「駅の近くにおしゃれなカフェがあって、そこのパフェがね。」
「了解、了解。」
「でも、何か悪いかな、私からお願いしといて…。」
「ノープロブレム。」

 問題がある訳ない。
 こんなにあっさりデートの約束が出来るとは思ってもいなかった。
 とは言え妹以外の女の子と二人でなんて初めて。
 仲良くなれたらという気持ちと緊張感の入り混じった状態で、午後の授業を軽く流しながら、もう一度作戦を検討してみる。
 まぁ、授業の内容なんざ教師の口から聞く必要もないから、ノープロブレム。
 いかん、舞い上がって恥ずかしいとこ見せたら残念な男だと思われてしまう。
 落ち着け、省吾!
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F組三国志 17-5 [F組三国志 17 秋山美咲]

冬休み中は毎日省吾と一緒だった。

「美咲は冬休み中も忙しかったの?」
「そうね、チーム赤澤関連の忘年会や新年会が少しあったし、新年になっての親戚回りがね、赤澤家関係にもお邪魔させて頂いたから、お年玉の贈与税について考える事になるとは思ってなかったわ。」
「そんなに?」
「互いの親族を紹介しあって婚約しますと報告したから、そのお祝いも含まれているの。」
「そこまで話が進んでいるのか…。」
「省吾がね、私達の将来設計を父さんに話してくれてね。
早過ぎると誰もが思うかもしれないけど、大きな仕事に取り掛かってしまったから早めに身を固めたい、昔なら元服を済ませている年齢で私と共に歩みたいとね。」
「省吾さまカッコいいな~、婚約って…、結納とかも?」
「世話好きのおばさんが、お爺ちゃん達を喜ばせましょうって盛り上がってしまったの。
春休み頃に両家顔合わせの食事会とかも、私達は学校やチーム赤澤のことで忙しいだろうからと言って、何か実行委員会を作るみたいな感じになってしまってさ。
チーム赤澤がテレビで取り上げられて、うちの親戚は赤澤省吾に興味深々という事もあってね。」
「そこまでか~、もう結婚披露宴を開いた方が早くない?」
「そんな話も出てたけど、まだ入籍とか出来ないでしょ。」
「私の叔母さんが聞いたら妬みそうだな~、かなり焦ってるみたいだから。」
「そうなんだ、チーム赤澤では婚活プログラムを企画する話が出てるから、形が出来たら紹介しようか?」
「そんな事にも取り組むの?」
「大切なことでしょ、少子化問題は社会の活力に大きく影響して行くと思わない?」
「そっか、私にとってはうんと先の話で実感ないけど。」
「あまり先送りして高齢出産となるとリスクが増えるのよ、私は両親の若い内に赤ちゃんを儲けて、子育てを手伝って貰うつもりなの、私のお婆ちゃん達も手伝いたいって言ってくれてね。」
「美咲と省吾さんの子なら多くの人に祝福され大切にされるのだろうな。」
「ふふ、省吾ったらね、ひいお婆ちゃん達にも協力をお願いしてたのよ。
高校を卒業してからの話なのに、でも、私の負担が減らせるし、お年寄りの生甲斐になるからとね。」
「省吾さんらしいわ、確かに共働きで子育てしてる従姉は大変だって言ってた。」
「安心して専業主婦になれる余裕が、金銭的にも精神的も無くなっているみたいでしょ。
女性の社会進出というテーマと育児のバランスを考えて、私達は大家族をイメージしているの。」
「大変な事も有りそうだけど…。」
「何とかなるでしょ、住まいはスープの冷めない距離にするのだけど、その辺りの考え方が両家で似ていてね、親戚が結構近くに住んでるの。
省吾の叔母さんと私の伯父さんちが歩いて三分ぐらいの所だと分かって盛り上がったのよ。」
「へ~。」
「そんなに近くても面識は無かったのだけど、両家には婚期を逃し掛けてる人がいてね、この際だから見合いをさせようと言う話まで出て来てどうなることやら。」
「なんか楽しそう。」
「うん、この歳で婚約でしょ、始めは反対する人がいてもおかしくないと思って少し緊張気味だったのだけど、省吾と私ならお似合いだって誰もが喜んでくれてさ。」
「良かったね、私もなんか楽しく…、幸せな話は周りも幸せな気分にしてくれるね、うちは相続で揉め始めてさ。」
「あらま、大変じゃない。」
「でもね、父さんはお爺ちゃんの遺産をあてにする様な仕事をしてこなかったと言い切ってカッコよかった。」
「うん、カッコいいわ、由香はお父さまの血をしっかり引きついでるから素敵なのね。」
「あん、美咲ったら…。
でも美咲の所も親族が多そうで相続とか大変になりそうじゃない?」
「ふふ、赤澤のお父さまとうちの父さんは親族の仲の良さを自慢し合ってたわよ。
省吾だって、弟や妹の事を考え、親に頼らずに私達の家を建てるつもりですからね。」
「う~ん、省吾さんなら十年後とかではないよね?」
「ええ、お年玉を沢山頂いたから資本金が増えて一段と早まりそうなの。
新会社設立には多くの方々が協力を申し出て下さっていてね。」
「会社?」
「もう少ししたら省吾の事を、社長って呼ぶ人が、う~ん、何人ぐらいになるのかな…。」
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F組三国志 17-4 [F組三国志 17 秋山美咲]

省吾は真面目に受け止めてくれた。
そして…。

「クリスマスを前に省吾と美咲が益々熱々だと感じるのは私の気のせいかしら?」
「ふふ、麻里子の気のせいよ、チーム赤澤に、また新しい部会を発足させる話が出ててるから、その調整作業で少し忙しそうにしてるだけよ。」
「そうかしら、で、新しい部会って?」
「貧困問題の内、若い女性が陥り易い問題、経済的基盤がしっかりしていないのに、赤ちゃんを産んだ後、すぐに男の人と別れるとか有るでしょ。」
「有るわね、中学の先輩にもいて噂になってた。
高校さぼって遊び歩いて、親に内緒で出産したけど、男に捨てられたとか。
その後どうなったのかは知らないけど…、生まれて来た子が可哀そうかも。」
「でしょ、調べてみたら、想像したくない様な人生を送る事になった人が少なからずいて、根性の有る人は逞しく生きているけど、そういう人ばかりではないみたい。
子どもも貧困状態で育つと、似た様な道を歩んでしまって貧困状態から抜け出せないのよ。」
「私達とは違う世界だけど、チーム赤澤として関わって行くの?」
「ええ、再教育の環境から考えて行く事になりそう。」
「う~ん、そういう人達に今更数学や英語でもないでしょ?」
「勿論よ、学校制度にも問題が有ると思うもの、中学のテストで百点満点中一桁しか取れなかった人達に高校の授業って意味有る?」
「そうね、無意味と言い切ってしまうのはどうかと思うけど、手を抜いてもしっかり点をとってしまう誰かさんとは違うものね。」
「私の手抜きに関して省吾は、必要の無い受け身の知識を沢山詰め込まされるより、チーム赤澤のメンバーから学ぶ生きた知識こそが大切だと話してくれてね。
点数の為に必死になる程の内容では無いのだから、私が数学で零点だとしても全然問題ないって、まあそう言いつつ、ポイントを教えてくれるのだけど。」
「ふふ、そんな話を数学零点の人が語ったら説得力も零点、でも省吾さんならね。
そうすると…、再教育って?」
「生きて行く力、この社会で生きて行く力を身に付ける為の教育。
省吾が料理上手なのは、料理が出来れば仕事に困らず生活出来るという、お父さまの考えでね、子ども達が好きに選んだ道で失敗しても大丈夫な様に保険を掛けたのだって。
お父さま自身が料理好きだった事もあってね。
本来の教育は子ども達が成長した時に生きて行く力になるべきものの筈、でも現状はどう?」
「高卒資格や大卒資格を取る為に進学してる人が少なくないみたいね、チーム赤澤の学習部会でも問題提起されてたわ。
そこから、もう一歩踏み出すという事かしら?」
「ええ、社会のシステムを見直してみようとね。」
「切っ掛けは何か有ったの?」
「そうね、私が避妊に失敗して、省吾の子を高校生の内に身籠ってしまったらとか話しててね。
まあ、私達の場合は、すでに収入が有るし先々の目途も立っているから大丈夫なのだけど。」
「あっ、そういう事だったのか、美咲は真面目だからどうなのかと思ってた。
ねえ、彼とはどんな感じだったの?」
「えっ、はは、まあね…。」
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F組三国志 17-3 [F組三国志 17 秋山美咲]

昨夜、よく眠れなかったから今朝は少し眠い、それでも何時もの様に省吾と地下鉄の駅で待ち合わせ。

「美咲、寝不足?」
「うん、省吾はすぐ気付くから、隠し事は無理ね。」
「何か有ったの?」
「母さんからアドバイスされてね、でも電車の中ででは無く二人きりで話したい事なの。」
「分かった、じゃあ今日は美咲の部屋にしよう。
妹達も冬休み気分になり始めていて大人しく出来なさそうだからね。」
「真奈美ちゃん達、期末テストはどうだったの?」
「二人とも何時も通りさ、ゲームで高得点を目指す感覚だけど、如何に効率良く高得点を叩き出すかを考えているからね。
で、真奈美は英語で古文について語るとどうなるのか、美咲と試してみたいのだとか。」
「英語で古文についてとは、試されるのかなぁ~、私。」
「まあ、それは単なる口実で美咲に遊んで貰いたいだけだよ、綺麗なお姉さんが出来たのにちっとも遊んで貰えないと漏らしていたから。」
「彼女の部活やチーム赤澤の関係でなかなか時間が取れなかったものね。
ねえ、真奈美ちゃん、日本では兄以上の男性に出会える確率が低いからアメリカ留学を目指しているのでしょ?」
「えっ、そんな事言ってた?」
「ふふ、兄を宜しくとも、随分前、夏休みの頃よ。」
「日本にだって…、う~ん、真奈美に紹介したくなる様な奴らには全員彼女がいるかもな…。」
「妹の恋愛事情とか気になる?」
「そりゃあ兄として…、美咲が家に来る様になってから、また甘えるようになった気がしててね。」
「私には素敵な兄がいないから…、でも、私が省吾の妹だったら、兄の彼女に敵意を抱くかも。」
「それは物騒だね、まあチーム赤澤のことは中学でも知られていて、俺の彼女が知的な美人で鼻が高いと話してたから嬉しくは有るみたい、冬休みこそは沢山おしゃべりしたいとか。
適当に付き合ってやってくれな。」
「ふふ、私だって省吾の話を色々教えて貰って、妹と仲良くなりたいわ。
そうね、うちにお泊りに来て貰ったり、真奈美ちゃんの部屋に泊めて貰ったりってどう?」
「うん、頼むよ。」

ほんとは、省吾に泊まって行って欲しいし、省吾の部屋で一緒に…、一緒に暮らすってどんな感じなのだろう。
今日はそんな事ばかり考えてたから、つい静に…。

「ねえ、静は哲平と一緒に暮らすとか考えたこと有る?」
「ええ、哲平さんが心変わりしなければ。」
「う~ん、モテる男を彼氏にすると落ち着かない時が有るのよね…。」
「えっ、美咲さんは自信満々で、省吾さんを絶対誰にも渡さないと思っていました。」
「うっ、まあそうだけど…、哲平をうちの人に紹介してからどうなの?」
「それがですね、ほんとに嫌だった母の違う一面を知りまして。」
「厳しいお母さんなのよね。」
「哲平は次男だから、うちの婿にと、何か夢中になってしまって、この前もラグビーの練習試合に来ていましたでしょ。」
「そっか、あれは娘の付き添いとかでは無く、純粋に哲平の応援だったのね。」
「チーム赤澤の取り組みも有り、父もすっかりその気になって、会社経営にホントに必要なのは学歴ではなく、ラグビーとかスポーツを通して身に付く根性や仲間を大切にする心だとか、彼に話していまして、哲平さんが来て下さると家が明るくなるのです。」
「そこまで進んでるのか…、哲平は?」
「大学の学部を父と相談しています、私がこんなに幸せになれたのは省吾さんと美咲さんのお蔭です。
今は絵を描いていても、何も言われませんから。
期末テストでは、他のクラスに情報を流し刺激を与えて学年全体のレベルアップを。
省吾さんの指導の元に実行した事で、私は学年順位を下げましたが、両親はもう私の成績何て気にもしてないのです。
チーム赤澤の一員となり、私達高校生が入試に過大な力を注がねばならないシステムを考え直しているぐらいです。」
「そっか、だから哲平さえ心変わりしなければなのね。
ね、ねえ…、哲平とはどこまで行ったの?」
「どこまでって…、気になりますか?」
「なるのよ~、省吾は紳士でしょ、抱きしめてくれるけど…、私に気を使ってくれるから…、自分からは言えないでしょ。」
「そうですか、私は哲平さんにおねだりしました。
親は学生結婚して欲しいぐらいで、高校生で妊娠というのは世間体が悪いからと、あれは母が買ってくれましてね。」
「世間体か…、それより経済力が無いのに出産して貧困生活とか、中絶とかが、世間体以前に問題よね。」
「ですね、うちは経済的に問題は有りませんが、まだ、哲平さんのご両親とは婿養子の話を進めていませんので。」
「御両親はそのつもりなのね。」
「はい、哲平さんと別れる様なことが有ったら絶対後悔するからと、父からは何でも相談する様に言われて、哲平さんを紹介した後、中二ぐらいから殆ど会話の無かった父と話すようになりました。
哲平さんを息子にしたいようで。」
「ふふ、別れるなんて事になったら、お父さまの方が残念がりそうね。」
「ええ、美咲さんのところは如何ですか?」
「同じだわ、親って娘の…、もっと反対したり止めるものだと思ってたのだけど。」
「省吾さんに娘を嫁がせる事以上に、娘が幸せになる事はないでしょう。」
「そうよね、相手がどこの馬の骨か分からない様な男ではないのだから。」

静と話して安心はしたが、省吾ともっと近づくことを考えたらドキドキする。
静みたいにおねだりして…。
あ~、こんな気持ち…、期末テスト前だったらやばかっただろうな。
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F組三国志 17-2 [F組三国志 17 秋山美咲]

私が期末テストで手抜きした話は、あやかがしっかり広めてくれたから、その結果が前回とあまり変わらなかった事に皆から驚かれた。
でも、一番驚いたのは自分自身かも知れない。
省吾は日頃の積み重ねが有ったからだと言うが、テストに向けての学習時間をどれだけ減らしたのかは自分自身が一番分かっている。
一学期の期末テストは色々必死だった、省吾と付き合い始めた事が成績に悪影響をもたらしたとは思われたくなかったし。
そんな事も含めて一番分かっているのは母だと思う。

「美咲、省吾さんに見て貰うと学習時間を減らしても点が取れてしまうのね。
毎日のデートは勉強ばかりではなかったのでしょ。」
「うん、省吾んちにいる時はチーム赤澤の人が訪ねて来たりするけど、誰もテストの事なんて気にしてなかったわ。」
「あら、赤澤さんのお宅ではのんびり出来ないのかしら。」
「いつもと言う訳では無いのだけど、省吾にとってはうちの方がくつろげるみたい、何となく使い分けているのよ。」
「赤澤さんのお宅でも英語で会話したりしてるの?」
「私にとっては、うちでの会話より、うんとハードな時が有るのよ、赤澤のお父さまは省吾と違って甘くないから、知らない単語がどんどん出て来て大変なの。」
「省吾さんがフォローしてくれるのでしょ?」
「彼がどうでも良いと感じた時は放置状態、まあ、彼が必要を感じたらフォローしてくれるのだけど。」
「意外と冷たいのね。」
「知らない外国人と話す事に慣れる為だとか、でもね字幕なしで映画を一緒に見てる時、ピンポイントでアドバイスしてくれた事が英語のテストに出たのよ。
テスト中にニヤリと笑って鼻歌が出そうになってしまったわ、映画の曲を思い出してさ。」
「ふふ、テストが楽しかったのね。」
「うん、テストに対する価値観を彼が変えてくれて楽しめたかも。
省吾はね、私の魅力にテストの点数は関係ないって言ってくれて、でもちゃんと結果が出る様にしてくれるでしょ。
私なんか彼の為に何もしてあげられないけど、甘えさせてくれるし。」
「そこら辺の大人達より余程大人なのね。
一応子どもは高校を卒業してからでしょ、避妊具とかはちゃんと用意してるの?」
「えっ、やっだ~、お母さんたら…。」
「急ぐ必要は無いけど、人間の本能なのだから、ついって事が有るかも知れないじゃない。」
「そういうものなの?」
「そういうものよ、それと雑誌に書いてあったのだけど、性に関していい加減な情報が信じられていたりするから真面目に学習、そうね、数学より大切なことだと思うわよ、命にも係わる事なのだから。」
「そうか…。」
「クラスには、もう色々経験済みの子もいるの?」
「どうかな…、F組はカップルの成立が多いけど…。
そういう事も省吾と話した方が良いのかしら?」
「変に気持ちがすれ違わない為にも、彼から男の子の事情を教えて貰い、女の子の事情を教えておくべきだと思うわね。」
「なんか恥ずかしいかも…。」
「彼を狙ってる人は少なくないのでしょ。」
「そうなのよ~、真面目な顔して、結婚出来なくて良いし一人で育てるから省吾の子を産みたいと言ってる人が…、男に縛られたくないけど、子どもは産みたいのだとか。
酔っぱらいの女子大生には困ったものだわ。」
「美咲が知ってる内は良いけど、省吾さんだって男の子なんだから、美咲がじらし過ぎてると分かんないわよ。」
「え~、じらしてって、そんな感じじゃないわ、でも好き過ぎてどうしたら良いのか分からないかも。」
「抱きしめて貰ったりはしてるの?」
「う、うん…。」
「なら大丈夫かな、美咲は真面目過ぎる所が有るから心配してたのよ。」
「親から不順異性交遊のお勧めをされるとは思わなかったわ。」
「何、その古めかしい言い方は、高校生なんて所詮失敗を経験する時期なの、でもね、省吾さん程の人とすれ違って別れたとしたらあなたは一生後悔すると思う。
そのリスクを減らす為に、二人できちんと、美咲が恥ずかしいと思う事も話し合って行くべきなの。」
「う~ん…。」
「省吾さんは学校の学習以外にも大切な事が有ると話してくれたのでしょ。」
「うん…。」

母は省吾をとても気に入っていて、彼が家に来ると確実にテンションが上がる。
彼の好みは全てマスター済で、男子高校生の食べっぷりが嬉しいと話す。
私達はほとんど毎日、どちらかの家で夜を過ごし、省吾の家で過ごした時は省吾が送ってくれる。
雨の日には省吾のお父さまが一緒に送って下さることも。
まさしく両家公認の仲なのだ。
省吾はとても紳士的で今まで何の不満もない。
でも女子大生に迫られたら、省吾は受け入れてしまうのだろうか。
子孫を残すことを生物学的に考えると、オスとメスではどう考えてもメスの方が大きな負担を負う事になる。
男の子はどう考えているのだろう。
省吾と沢山話をして来たから、気持ちのすれ違いなんて考えてなかったけど、男女の具体的な話はまだ…。
明日思い切って話して…、うん、省吾には何も隠したくないし、少し戸惑ってる気持ちを伝えたい。
結婚するのだから、何時かは経験して行くことだけど、それを何時にとかは考えてなかった…。
うわ~、何かドキドキして来た…。
今夜は眠れそうにないな…。
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