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それから-05 [シトワイヤン-35]

平和になっても災害は無くならない。
地球防衛軍が災害対策を行ってはいるが、被害を無くす事は不可能だ。
ただ、災害が発生した所では、災害前より安全で暮らし易い環境整備を災害復興の目標とし取り組んでいる。
災害によって過疎化が進むのではなく、災害に強い町にし移住者を受け入れ活性化を図る。
被災地の中には思い切った土地区画整理事業を進め、海外からの移住者も受け入れ人口を増やし続けている地域も。
過疎化の問題は土地所有者が原因になっている場合も有る、土地を持っていても放置している人、農業に興味が有っても土地を持っていない人がいる訳で。
そこを被災を切っ掛けに土地の有効利用を働き掛け、仲介、斡旋し援助、耕作放棄地を蘇らせている。
これらは大銀河帝国の資金を集中投資する事で可能に。
漠然と投資するより、被災地への集中投資は効果的、不幸を乗り越え新しい町が幾つも出来つつ有る。
今は姫さまの祝福を感じた事のある人ばかりなので、区画整理が進め易くなった。
その過程では危険な崖を災害で崩れる前に崩してしまうことも。
利用出来る土地が狭くなっても安全を優先と考えての事。
そんな東北地方のエリアをファルコン号から視察。

「まだまだ工事中なのですね。」
「はい、河川の改修など、大規模工事はどうしても工期が長くなります。
外国人労働者の研修も並行して行っていますので、その分工期に余裕を持たせていることも有りますが。」
「かつて、外国人労働者の労働環境が問題になりましたが、改善されているのでしょうか?」
「外国人と言っても大銀河帝国の国民ですからね。
子ども達の教育を含め、日本を好きになって貰える様な環境を整えています。
自分達が復興に関わっている土地に愛着を感じ、環境を気に入った定住希望の人にはその支援もしています。
強制はしていませんが、希望者には日本語教育も。
過疎化が進んでいたエリアですので、被災前より活気が出ているそうです。
国際都市ならぬ、国際農村を目指すとか。
以前は生活習慣の違いが問題になりましたが、国別の居住地ではその国の習慣で生活して貰っています。
長期滞在や定住希望者には、その子ども達が日本で無理なく暮らして行ける様に、日本人の考え方や生活習慣を教え、多国籍居住地へ移動したり日本人と同じエリアで暮らす取り組みもしています。」
「経済面は如何です?」
「経験と実力によって日本人と同等の賃金を支払ってます。
買い物は復興に合わせて帝国主導でオープンさせた商店を使ってくれていますので、そこで有る程度回収しています。
本国に送金している人も多いですが、それも世界的経済格差是正に向けた取り組みに貢献している訳で、まあ、大銀河帝国内でお金が回っているという事です。
日本人と違って貯蓄に熱心ではないので、お金が勢い良く回っていますよ。」
「宵越しの金は持たないみたいな?」
「そこまででは有りませんが、内需拡大に貢献してくれてると思います。
以前の様な、単なる低賃金労働者としての扱いでは有りませんので。」
「あの頃はニュースに触れると、日本人としてとても恥ずかしい気持ちになりました。
外国から来て頂いて研修という名目で安くこき使う日本人。
ろくな技術も身に付かないないまま働かされていた技能実習生の方には、申し訳ない気持ちに。」
「でしたね、でも今は同じ地球市民として尊重されています。
研修をしっかり行い、二年で帰国する予定の人が帰国後、母国でその技術を生かせる様にバックアップをしています。
ひどい事をしていた頃でも、日本にはそれぐらいの事を出来る力は有った筈なのですが。
今は市民政党若葉が政権を維持していますので、政府も協力的です。
姫さまのお蔭で、日本人として恥ずかしくない日本、胸を張れる日本になりました。」
「でも、国籍は大銀河帝国にしたのですね。」
「はは、まあ思い通りの結婚をしたかったですし、心は日本人の大銀河帝国人ですよ。」
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それから-04 [シトワイヤン-35]

「和馬さん、今日は裕くんと飽和水蒸気量の話とかしましたが、英才教育をしているのですか?」
「いえ、そういうつもりは無かったのですが、難しい話をしても理解している様なので、つい踏み込んで教えてしまうのです。
船のクルーやサポートスタッフ達も裕の知的好奇心を満たしてくれていますし、日本語と英語をきちんと使い分けていますでしょう。
英語で教えられた事は英語で考え、日本語で教えられた事は日本語で考えてるみたいなのです。
最近になって、お腹の中にいた頃の話をしてくれたのですが、ずっと姫さまを感じていたそうで、言語ではなく抽象的なイメージとして色々受け止めていて、驚くべき事に清香のお腹の中にいる頃から彼の学習が始まっていたみたいです。」
「えっ、それって普通の事ではないのですか?」
「えっ、姫さまもそうだったのですか?」
「ええ、姉は私が母のお腹の中にいた頃から、沢山話しかけてくれたのですよ。
母は、そんな姉を優しく見守っていました。
だから安心して生まれて来られたのです。」
「胎内記憶は本当の記憶かどうか微妙だと考える学者もいるのですが、裕がもう少し大きくなると忘れて行くものだと理解していました。」
「私は結構覚えていて、姉や母がその頃の話をしてくれると視覚情報の無い中で感じた事を思い出します。」
「裕の事を天才児だという人がいますが、姫さまから見て如何です?」
「中学生でも理解に苦しむ事を把握していますから、そうかも知れません、先天的遺伝的な要素は間違いないですものね。」
「清香は、私達がずっと姫さまと共に過ごして来たからだと話しています。」
「どうでしょうか、それより今後の教育方針とかは?」
「しばらくは成り行きに任せようかと、子ども達に接する大人は皆、子どもにとって何が必要なのか考えてくれています。
そこに問題を感じていません、ただ、いずれ良き友人を得られる環境を考えたいとは思っています。
能力がずば抜けて高い子に対する教育、日本は遅れていましたが特別プログラムを組める環境が整って来ています。
本当に力が有ったら、制度上は日本でも九歳で大学卒業が可能になると聞いています。
まあ、急ぐ必要は無いのですが、幼くても興味を持った分野を追求するというのは有りだと考えています。」
「そうですね、素直で素敵な子のまま大きくなって欲しいです。
私をお嫁さんにしてくれるそうですし。」
「えっ、そんな事、言ってましたか。」
「ふふ、今までで裕くんだけです、正式にプロポーズしてくれたら真面目に考えますよ。」
「はぁ…、まだ三歳なのですが…。」
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それから-03 [シトワイヤン-35]

地球防衛軍の規模は大きくなった。
各地で様々な活動をしているが、砂漠化を食い止め緑地を広げる事業は特に大規模。
様々な緑化実験が行われ、失敗することも有るが成果を出し始めている。
緑化事業で一番の問題は真水の確保、海水淡水化装置は莫大なコストが掛かるだけでなく多くのエネルギーを消費し環境に優しいとは言えない。
中東の自治領で進めて来た海水を流す水路、太陽熱を使った蒸留方式は、大規模な施設の割に生産される水は少ないが、使われていなかった土地を活用しランニングコストが低いので規模を拡大している。
今回は久しぶりの訪問。

「水路の本数が増えたし、荒れてた土地を緑に覆われ随分変わったな。
裕くん、ここはね。」
「うん、姫さまが平和にしてから、うんと変わったのでしょ。
海の水はしょっぱくて飲んじゃいけないんだけど、あそこで、蒸留してるんだね。」
「あら、裕くんは難しいこと知っているのね、私に教えてくれるかしら。」
「えっとね、空気中では水が目に見えない気体となって…、何てことは姫さまはご存じだよね。」
「そうね、不思議でしょ、裕くんは空気の中に目に見えない水が有って、暑いと沢山…。」
「うん、飽和水蒸気量は気温によって変わるんだよね。
目に見えない事なんだけど、教えて貰うと、へ~、って感じ、同じ温度の水を入れたコップでも、気温や湿度によって周りに水滴が付いたり付かなかったり。」
「ふふ、ちゃんと教えて貰ってるのね。
でも水蒸気の話は難しく無かった?」
「そうだね、お父さんは目に見えない水の入るコップが空気中に有って、そのコップの大きさは気温によって変わるって教えてくれたよ。
コップ一杯になったのが飽和水蒸気量、冷やすとコップが小さくなるから水蒸気がこぼれて水滴になるんだって、温度計や湿度計、氷水を使ったりして色々試したんだ。」
「へ~、裕くんは研究したのね。」
「ここはお水がとても貴重なんだって、苗川みたいに綺麗な水が流れている所とは大違い。
下の水路でやってるのは原始的だけど、燃料をあまり使わないから悪くないんだって。
明日は見学させて貰えるんだ。」
「そっか、しっかり見学して、改良を考えてみてね。」
「うん、お父さんと一緒にね。
明日はうんとしょっぱい池でも遊ぶんだ。」
「浮力の実験なのかしら?」
「そうだよ、ファルコン号が空に浮かんでいるのと、原理は同じなんだって。
まだ泳ぐの上手じゃないから楽しみだな。
姫さまは降りないの?」
「私が降りると色々大変なの。」
「そうだったね、みんな姫さまのことが大好きだから…、あっ、大勢の人がファルコン号を見てる。
手を振ったら気付いてくれるかな?」
「そうね、隼の登場を期待して見えるかもしれない、裕くんは手を振ってあげてね、私は隼斗を連れて来て飛ばすから。」
「うん、船長にお願いして、もう少し低くして貰おうか。」
「ええ、お願いしておいて。
ジェニファー、裕くんをお願いね。」
「はい、姫さま。」
「ジェニファー、早く早く…。」
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それから-02 [シトワイヤン-35]

軍備は世界的に縮小され、今は技術力の保持と…、例えば、巨大隕石が地球に近づいて来た時、それに対応出来るミサイルの研究や、災害時などに危険を伴う任務に就いて貰う人の養成といった形になった。
かつての戦闘機はその性能や操縦技術を競う競技の為に残されてはいるが、もう戦争の道具ではない、仮想敵国すら存在しないのだから。
今は軍備に代わって国際宇宙ステーションが大きくなり数も増え、そこへ行き来する宇宙船の数を増やしている。
もし地球環境がこの先悪化しても、人類を絶滅させない為、いや、人類だけでなく地球上の生物を絶滅させない為に箱舟計画も進められている。
砂漠には巨大なドームが建設され、そこでは人が住むのに適した環境を、水などの全てを外部から補給なしで、循環させながら維持する実験が始まっているが、それは近い将来、宇宙空間に居住コロニーを建設する事を目指している。

「ねえ、長距離の宇宙旅行が実現したら、それは旅行好きの人にとってどう感じられると思う?」
「愛華さん、それって…、あっ、そうか、確かに長距離の旅行だけど、その間ずっと宇宙船から出られないとしたら、旅行好きより引き籠り系の方が向いているのかもね。」
「智里には無理だな。」
「よね、私は飛行船の旅が一番だわ、私達の家はファルコン号、旅と言っても地球は私達の庭ですから。」
「庭が広すぎて、眺めて回るのに一苦労だがな。」
「こうして、みんなで夜空を眺めるのって、万里が中学生の時以来よね。」
「うん、あの時はペルセウス座流星群の条件が良くて、鹿丘の森の展望エリアが人で一杯だったな。
今夜の獅子座流星群も、あの時ぐらいになるのかしら。」
「姫さま、予測では、かなり期待出来そうなのです。
今日は天気が良くて、しかも、ここは明かりが殆ど無いですからね、船体を獅子座の見易い向きに固定してくれていますので、これから流れ星の数が増えて行くと思います。」
「ふと、思ったのですが、人工衛星からは流れ星、見えないのですよね。」
「ですね、大気圏に突入しての輝きですから。」
「宇宙旅行ってSFに出て来るワープとか実現しないと、本当に退屈しそうだな。」
「万里もそう思うでしょ、豪華客船の旅みたいに娯楽施設を充実させ、地上で暮らしているぐらいのレベルにしないと…、あっ、今の大きかったね。」
「流れ星の数が増えて来た、これは沢山お願いが出来そうだな。」
「今更、何をお願いするのです?」
「はは、みんなの健康ぐらいか。」
「お星さまにお願いして、災害が無くなれば良いのだけれど。」
「姫さまのお願いなら聞き届けて貰えるのでは有りませんか。」
「清香さん、そんなこと言ってると、裕くんに笑われますよ。」
「大丈夫です、三歳らしからぬ言動はしていますが私達の子なのですよ。
姫さまが、世界中の子ども達は世界中の大人が守るべき、地球市民の子だと、生まれたばかりの裕を抱いてお話し下さって…。」

流れ星を見ながらの話は、何時もとは違った雰囲気に、その流れから姫さまが歌って下さる…。

「あかいめだまの さそり♪  ひろげた鷲の つばさ♪  あをいめだまの 小いぬ♪ …♪」

宮沢賢治、星めぐりの歌がファルコン号に広がった。
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それから-01 [シトワイヤン-35]

世界は随分平和になったが、私達は今も姫さまと共に旅の途中。
私達の一番上の子どもは、もう三歳になる。
彼はファルコン二世号で生まれた。
清香にとって空飛ぶ宮殿で姫さまに見守られながらの出産は喜びに満ち溢れるものだった、生まれて来る子どもにとっても姫さまの祝福の中なのだから。
医療チームに待機して貰ったが、安産で何の問題も無かったのは長年姫さまの祝福を感じながら過ごして来たことが関係していると思う。
清香と愛華、私は二人と結婚した。
大銀河帝国の法律はとても簡単で、一夫多妻を否定する条文が無い。
多くの法が必要無くなるぐらいに地球市民の意識が姫さまの祝福によって高くなっている。
飛行船での旅には、私の四人の子ども達と、智里の子も同行。
飛行機と違い比較的低空を飛ぶので乳幼児でも問題はない。
智里は帝国のスタッフと結婚したが、一番大切な妹のそばを離れる気は無く、夫と子育てしながら業務をこなしている。
子ども担当のスタッフもいるが、時に姫さまが子どもの相手をして下さることも。
姫さま御自身の結婚は大きな問題なのだが、まだその時では無いそうだ。

「ねえ、姫さま、どうして日本語や英語が有るの?」
「そうね、元々遠く離れた国だったから、別々で言語が形作られてね。
一つの言葉の方が便利なのだけど、それぞれに、その言葉を使ってきた人たちの思いが有って大切にして行きたいの。」
「ふ~ん、姫さまは色々な言葉を話せるのでしょ、覚えるの大変じゃなかった?」
「大変だとは思わなかったかな、色々な言葉を話せると言っても、普段あまり使わないwordは知らないの、それでも手助けして下さる方がいるから大丈夫なのよ。
裕くんも普段から日本語と英語を聞いて使ってるでしょ、それと同じなの。」
「そっか。」
「ねえ裕くん、夕日が綺麗ね。」
「うん、茜色だね、でも、朱鷺色とか、夕焼けを表す表現は色々有るんだよ。」
「へ~、そうなの、誰に教わったの?」
「お父さん。」
「今日の夕日を裕くんはどう表現するのかな?」
「う~ん…、おひさまは、真っ赤になりながら、大好きな姫さまに、また明日お会いしましょうと、そして静かに、少し寂しげに…、ねえ、朝日と夕日って同んなじようなのに随分違うよね。」
「そうね。」
「明日も姫さまと共に健やかでいられますように。」
「それは?」
「昨日、船長が夕日に向かってね、僕を肩車しながらつぶやいていたんだ。
夕日を見てる人達は、みんなそう思ってるんじゃないかって。」
「じゃあ、明日も裕くんと共に健やかでいられますように。」
「ふふ、姫さまは何十億人の姫さまなのに、いいの?」
「もちろんよ、裕くんのことだって世界中の人がご存じなのだからね。」
「そうかな?」
「そうよ、だって、裕くんが生まれた時、世界中の人に紹介したのは私なんだから。」
「う~ん、覚えてないな。」
「でしょうね。」
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大銀河帝国-30 [シトワイヤン-34]

全てが順調とは行かないが、地球上の多くの国が大銀河帝国と友好的な関係となった。
各国の失業率が大きく下がったのは、直接利益に結びつきにくい活動をしている地球防衛軍に対して、政府や企業が多額の資金を出し支えている事が大きい。
環境問題と雇用問題の二つが緩和されるのなら費用負担は重くない。
失業者が減れば、経済活動が活性化、企業の業績が向上し税収も増える。
格差が顕著だった頃の低所得者層が安定した職に就いたということの経済効果はとても大きい。
大銀河帝国は行き過ぎた競争社会を否定し、例えば価格カルテルを推奨しているが、そこには消費者が納得できる適正価格を目指すと言う目的が。
従業員に対し適正な給料が支払われ、大きな利益を得た場合は地球防衛軍に援助という流れが出来つつ有るが、そこに強制はなく、経済に対して価値観の変わった人達が自然な形で取り組んだ結果。
姫さまの祝福を感じ、地球市民としての有るべき姿を人々はまだ模索している段階だが、様々な問題に取り組む視点は確実に高くなり、視野が広がっている。
貿易は品目によって自由貿易から計画貿易へ移行、需給のバランスを取りつつ災害時には食料の備蓄分を国同士が融通し合う。
それに合わせて生産量が調整されている。

「和馬さん、世界的計画経済の中でアフリカの貧困国はどう位置付けているのです?」
「そこなんだよな、智里も現状は見て来ただろ。
支援によって生活が安定したら一気に人口が増えそう、そうなったら自然環境が破壊されて…。」
「将来を見越して植林した木が切られて薪になったと聞いたことが有ります。
薪にせざるを得ない状況だったのでしょうが。
総合的に支援をして、産児制限まで考えて行かないと…、でも万里の祝福を感じた人でも、地球市民党の理念を理解して貰うまでに時間が…、教育には時間が掛かりそうです。」
「我々と同じ様な生活を考えていないとしてもな、都市部の住人に問題はないのだが。
姫さまは時間を掛けて取り組んで行きましょうと話されていたが、地球市民の中には一刻も早くと考えてる人もいる。」
「難しいですね、単純に支援すれば良いという話では無く、自立して安定した社会を築いて貰わないと行けないですし。」
「ファルコン号で上空を通ったエリアでも、姫さまの事が充分認識されてなくて、昔ながらの宗教に組み込まれたという報告が有るぐらいだ、まあ、幸せに暮らしていてくれれば、我々が介入する必要は無いのだが。」
「伝染病とか、彼らの手に余る問題が有るのですよね。
大銀河帝国が大きくなり、国家間の争いは大きく減りましたが、環境問題と言い、まだまだ課題は残されていますね。」
「ただ、その課題を解決して行く事で世界の結束が強まっているとも考えている。
もし、課題が無くなったらどうなるのかな?」
「課題が無くなる程甘くは有りませんよ、地震台風竜巻に火山、山火事、災害は起こり続けます。
気候変動によって、この先どうなって行くのか解りません、もう遅いという人がいるぐらいで、地球防衛軍が頑張っても追いつかないかも知れません。
それでも、地球市民はこの地球の環境を守る為に力を合わせて立ち向かってくれると思います。
万里の願い、それを地球市民全員で共有しているのですから。」
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大銀河帝国-29 [シトワイヤン-34]

人口の多い大国の割に、クーデターによる混乱が小さかったのは、姫さまのDVDがうんと多くの人に見られていたからだと分析されている。
姫さまを侮辱する発言に怒りを覚えた人は勿論の事、民主化運動の活動家達も軍部の動きに賛同した。
クーデターの中心人物達は、密かに巡礼者となり姫さまの祝福を経験、大銀河帝国についてしっかり調査し準備を進めて来たという。
クーデター後、姫さまのポスターが国中に張られる事も想定していたそうだ。
本人自ら仮の代表者だと名乗る指導者と姫さまはテレビ電話で会談し、訪問を決定。
それから様々な事が決定し進められて行く。
帝国関連国が姫さま専用機の護衛任務に当たる事が許可され、多国籍の護衛部隊が編成される。
予行演習として、自国と大銀河帝国の識別標章を付けた二十数か国からなる戦闘機編隊が越境し空軍基地へ。
さながら航空ショウとなったが、領空へ入る時には歓迎するとのメッセージが入り、この国の戦闘機も編隊に加わった。
その模様は世界各国へ配信され、人々に新しい時代の幕開けを感じさせる。
飛行船の地上基地、舞姫さまの社の建設が始まる頃、姫さまは専用機で護衛の戦闘機編隊に守られ訪問。
姫さまの祝福を感じられるエリアへは多くの人々が押し寄せたが、その多さの為か範囲は今まででもっとも広くなり、舞を舞われた時は更に広がった。
姫さまがその力の根源を集まった人達から得てるのは間違いない。
一千万人ぐらいが祝福を感じられたと伝えられたが、それでも人口の百分の一にも満たない、飛行船での旅はアナウンスされているので、多くの国民はその時を待つ事に。

「姫さまに対する非礼を随分詫びられたが、実際に姫さまを恐れて無礼な発言をしていた人達はどうしてるのだろうね。」
「万里の祝福を感じさせ、洗脳しているそうですよ。
結果、失礼な発言をした自分達にも等しく祝福を下さったと涙していたとか。」
「はは、洗脳は成功したのか。」
「私は洗脳だなんて…。」
「姫さま、洗脳で良いでは有りませんが、姫さまによって脳が洗われ綺麗になるのですから。
そして地球市民として物の見方、考え方が変わって行く。
ここが話に聞いていた程、大気汚染を感じられないと思っていたら、臨時政府の指示下、姫さまの訪問に合わせ対策を進めて来たそうです、一部の工場は操業停止中ですが、その間に大気汚染対策の工事をしているとか。
環境に対する意識が変わりつつ有るそうで、砂漠化を食い止める事業を進める為、軍備を縮小し地球防衛軍に移行という話も出ていました。
他国の顰蹙を買っていた基地拡張は見直され、軍事力によってパワーバランスを維持して来た時代を終わらせたいとも。」
「軍縮会議は国連で出来そうですね、帝国自体は軍事力を保持していませんのでお任せしましょうか。
ただ、国際的に上手く行っていない国が、これからどう動くのか注視して行く必要は有ります。」
「そうですね、姫さまに仲介をお願いしたいという声も聞かれますが、残っている国は孤立を深めていますので、愚行に出るか白旗を上げるかの二択になっています。
経済制裁を受けている国では、姫さまのDVDを見られる様な状況では無さそうですので、姫さまは動くべきではないでしょう。
早く周辺諸国が安心出来る状態にしたくは有りますが。」
「どうしたいのか良く分からない国は対応が難しいですね。」
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大銀河帝国-28 [シトワイヤン-34]

大銀河帝国を中心とした新しい経済圏の拡大をおもしろく思っていない国も有る。
自国の影響力拡大を目論んでいた大国は特にだ。
その影響下において来た国が少しずつ離れて行くだけでなく、国内でも姫さまのDVDが通販の人気商品になり、国民は美しき姫さまに憧れを抱いている。
この国が輸出を計画的に減らされているのは、国の要人が姫さまを侮辱する発言をした事が切っ掛け。
姫さまの祝福を感じた事が無いとは言え、あまりに軽率だった。
それが無ければ、対立を望まない帝国関係の人達はその国の安定も計画の内に入れ、経済的バランスが崩れる方向には進まなかっただろう。
謝罪し修正する機会は有ったのだが、そもそもそんな気持ちが指導者達に無かった様で…。
結果、帝国主導の投資拡大で好景気の経済圏と、輸出が振るわなくなった大国という構図が出来上がった。

「和馬さん、某国との落し所は無いのですか?」
「こちら側の人達は大人だが、姫さまに関してだけは譲れないだろ、宗教対立に近い感覚になっているとも思える、我らが象徴である姫さまを侮辱されてはね。」
「万里は気にしてないと話していましたが。」
「それでもな、まあ、国民に罪は無いが、一つの地球を目指すには…。」
「多少のリスクを負う必要が有るのですね。」
「姫さまとも話していたのだが、相手は大きな国だろ、一部の人が姫さまの祝福を感じ変わろうとした時、そうでない人達と大きな対立になる可能性は否定出来ない。
これまで帝国を拡大する過程でも少し有った事だが、規模が違うと思うんだ。」
「そうですね、今までは万里の力が知られていない状況からでしたので、一気に広める事が出来ましたが…、魔女に因る洗脳を恐れさせるだけの宣伝を進め、万里目掛けてミサイルを発射する口実とされでもしたら、でも、戦争だけは絶対避けなければなりません。
折角、人々がユートピアへの道を歩もうとしているのですから。」
「輸出が振るわなくなり民主化運動がまた盛んになりつつあるとの情報が入って来ているが…。
? 愛華どうした?」
「和馬、かの国で軍事クーデターが起きてるとの一報が入ったわ。」

その後、次々と情報が入って来る。

「民衆がクーデターを支持しているみたいだな。」
「舞姿をDVDで見た人や、旅行中に姫さまの祝福を感じた人が少なからずいたり、世界から自国が取り残されると、大銀河帝国の情報はそれなりに入っていたのね。」
「あっ、軍部が姫さまに忠誠を誓うと…、思い切った声明を出したな。」
「へ~、色々調査して来た結果なのね、万里、どうする?」
「このまま一気に動いて無血クーデターが成功するのなら、こちらも積極的に動かざるを得ません。
スケジュールを変更して、国交樹立を目指しましょう。
私の訪問を前提に、軍事政権と連絡を取って下さい。」
「姫さまが訪問して大丈夫でしょうか。」
「この国を大銀河帝国と良好な状態に出来れば、世界を一つにして行く障害は残り少ないと、時間は掛かっても何とかなると思います。
今は忠誠を誓うとの言葉を信じ、こちからもメッセージを発信しましょう。」

我々は動いた。
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大銀河帝国-27 [シトワイヤン-34]

記念硬貨の価格設定変更には、反対意見も出されたが、根を円とユーロでも固定にする事で、ドル換算する必要が無くなり販売が楽になると、最期は姫さまが決定を下されスタート。
ドルを売って円を買い、その円で根を買うという動きが活発に、これだけで大金を手にした人がいる訳だが、すぐに相場は一ドル百円、一ユーロの辺りで落ち着いた。
大銀河帝国が変動相場制をほぼ固定相場に変えてしまったと言える。
それだけの力、安心感が大銀河帝国に有る訳だ。
他の通貨とは今まで通りでも、四つの通貨がほぼ固定化されてしまった事で、為替市場は冷え込み一部から不満の声が聞かれたが、為替の変動を気にする必要無く取引が出来、メリットを感じている企業も多い。
為替差益の旨味は無くなったが為替差損のリスクが無くなり、これを切っ掛けに根を含めた四つの通貨は固定相場制への移行が検討され始めている。
また、為替市場から株式市場へ資金が流れ、株価は上昇、世界的な好況感が広がっている。
根の発行額は増え続け、それで得られた外貨が各国で雇用対策に投資されている事も有り、帝国によって形成された経済圏では失業率が軒並み下がっている。
当初は、何もない所から魔法の如く生み出された通貨に反発する声も有ったが、帝国国民がそれを見事に活かしたことで、どれほどの人が救われたことか。
根は決済通貨として流通量を増やしつつ、記念硬貨は出来上がるとすぐに売れ、常に購入希望者が待っている状態。
帝国の保有する外貨は膨大な額になりつつある。

「今度の記念硬貨は何を記念するものなのです?」
「姫さま、今回は自治領が一つ増える記念です。
自治領内でもキャッシュレス決済が進んでいないエリアがまだまだ多い状態ですが、元の通貨から根への移行が進み始めていまして、利便性を考慮し新たな金種も発行します。」
「もう発行枚数は記念硬貨と呼べるレベルを遥かに超えていますが、あくまでも記念硬貨なのですか?」
「はい、片面は全て姫さまの肖像で統一されていますが、片面は何でも有り、敢えてデザインの種類を増やす事で、使用時に真贋の確認したくなる状況を作り出しています。」
「まさか、偽造されているのではないですよね?」
「大丈夫です、記念硬貨の広まりと共に、内臓チップの読み取り装置や、装置付きのレジも普及していますので。
紙幣より偽造コストが掛かりますし、内臓のチップは取り出そうとするだけでデータが消える構造、偽造するだけの技術が有ったら他の仕事をした方が儲かるでしょう。
流通している硬貨は、レジでの読み取り時にチェックされていますが今の所偽造コインの情報は入って来ていません。
お釣りは電子マネーとしてカードや携帯端末に返すのが原則になっていますので、キャッシュレス化も進み始めています。」
「最後にお店でお買い物をしてから随分になる…、レジの進化は話に聞いてるけど…、お姉ちゃんとの買い物だと自分でお金を出す事は無かったし。」
「今、姫さまが買いものに訪れたら、店員は困ってしまうでしょうね、思わずお代は要りませんとか。
もっとも、その前に、集まって来る人を整理するのが大変だと思います。」
「変装しなくては駄目ですか?」
「変装しても無駄ですよ、姫さまのオーラは隠せませんから。」
「う~ん、ちっちゃい頃、かくれんぼをしていても、すぐに見つけられてたのは偶然じゃなかったのかしら。」
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大銀河帝国-26 [シトワイヤン-34]

舞姫さまや大銀河帝国の存在は、帝国に関わる国々に大きな影響を与え、国家間の貿易でも自国の利益のみを基準にした交渉から脱却し、多国間での計画的な生産と取引、輸出入のバランスを目指し始めている。
国家レベルで共に経済成長出来る社会を意識しての事だ。
株式市場、為替市場では今まで当たり前に考えられていた理屈が変わりつつ有り、市場の動向を不安視する声も聞かれるが、世界経済を悪化させる事無く、より安定させる方策を模索中というのが現状。
今の所は大銀河帝国関連企業が積極的に投資を行っていることがプラス要因となっていて悪くは無いのだが、そんな中で…。

「和馬さん、帝国の記念硬貨が、舞姫さまグッズかの如く売れてますが、通貨として微妙になって来ましたね。」
「だな、記念切手同様、外貨を稼ぐ手段と考えていたが、一ドル一根を守りつつ中にチップを埋めて偽造をしにくくしたからか、記念硬貨対応の自販機とか出始め、普通に日本でも使える通貨になりつつ有る。
自販機を製造した企業は軽い気持ちだったそうだが、日本政府が勢いで法改正してくれたからな。
記念硬貨に限らず、決済通貨としての根を持っていれば、世界中どこでも使える体制、国が破綻しその国の通貨が紙屑同然になっても、普段から根を利用していれば安心というシステムを想定してのことだが、今後どうなって行くのか全く分からない。」
「キャッシュレス決済の進んでいない国では、記念硬貨をそのまま流通させる話も出ていますね、硬貨ばかりでは重いでしょうが。」
「なあ、帝国自治領内では、食品や生活必需品を中心に価格を企業と相談しながら政府が定めているだろ。
智里はその価格が他国でもそのまま維持される様になったらどうなると思う?」
「自由競争の原理が大きく変わりますね、同じ価格なら質で勝負でしょうか。
企業が自由に定められる価格を、敢えて帝国に合わせると…、それでも国家間の経済格差は無くならないでしょうが、最低賃金を、根で同一にして行くのはどうです?」
「そこに至る過程が難しそうだが、姫さまを名誉プリンセスにしている国では可能性が無いとは言えないか…。
だが、アフリカの貧しい国をそこまでにするのは至難の業だろうな。」
「今は教育制度に差が有り、人の能力そのものにも差が有りますからね。
その差を無視しての平等は有り得ません。
能力のある人が正当に評価される社会でないと、かつて崩壊した社会主義国と同じ道をたどると思います。
和馬さん、それより今は実質一ドル一根の固定相場な訳ですが、他の通貨に対しても、百円一根、一ユーロ一根と言うのは如何です?
為替差益で儲けてる人には迷惑な話でしょうが、我々の経済グループを一つの存在と考えたら、四つの通貨が事実上統合されて、通貨的にはユーロ圏が拡大した形になります。
過渡期は思いっ切り揉めるでしょうが。」
「国境の無い社会を目指している人達には有りな話だろうね。
だが今なら記念硬貨を一根百円、一根一ユーロにすると宣言するだけで、その方向に持って行けそうな気がしないか? 損得勘定でドル、円、ユーロが売り買いされるだろうが…。
記念硬貨の価格設定という話に過ぎないと軽く始めてみたいね。」
「帝国は記念硬貨でぼろ儲け、通貨を発行し過ぎるとその価値が下がる筈が、記念硬貨を売るという形なので実質固定相場、それに決済通貨としての機能が連動して安定、思いっ切りインチキをしている気分です。」
「まあ、それによって経済的に弱い国々を援助出来てるのだから悪くないだろ。
増えてる通貨が大銀河帝国によって貧しい国に投資されている、インフレが起きつつ有るが、物価を帝国自治領と同じレベルまで上げて行く事を目指して、人々の生活が困らない様、状況を見ながら計画的に進めているからな。」
「そこに根を共通通貨として導入して行けば…、しばらくは混乱しても、近い将来経済の安定度が高まるのでしょうか?」
「やってみないと分からないが、各種記念硬貨、一根を百円、一ユーロで売る事は検討して貰おうか。」
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