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大銀河帝国-25 [シトワイヤン-34]

大銀河帝国大学は世界中で展開することを想定している。
関連企業の研究室が学生たちの研究の場となったり、ネット回線を利用しての意見交換や情報提供を行う。
ベースは、市民政党若葉のスタッフが日本で構築して来たもの、すでに海外の研究所、研究者も参加していて、その規模を更に拡大し帝国大学の学生を受け入れて行く。
その過程で姫さまから提案されたのは、共同研究を充実させることで研究効率を高められないかという事。

「姫さま、姫さまの指示で進めて来ました、研究室の交流は幾つか形になって来ました。
主に日米欧の研究室ですが、同じ内容の研究で競い合っていた所が、共同研究や互いの成果を検証し合う方向で進み始め、今までなら自分達の実績として発表したかったであろうことも、帝国の一員として舞姫さまの下に力を合わせて行くと、研究成果は姫さまに捧げる形になりそうです。」
「良い事ですが、仲良しになると競い合う気持ちが薄れたりしないでしょうか?」
「そこは、姫さまに褒めて頂きたい一心の様です。
皆さん、ノーベル賞より姫さまからの勲章の方が価値が高いと思っているそうで、一番の名誉だとか。
今まで賞を贈った研究は誰もが納得する成果を上げたものですので。
実際、交流を進める事によって自身の研究課程がすでに相手チームで解決済だったとか、ヒントを貰った事で一気に研究が進んだり、分担して取り組むことで研究の効率が上がっているとか。
姫さまの祝福を受けた人達は、利己的な感情が弱まっていますが、大銀河帝国の為、姫さまの為に成果を上げたいという気持ちは強くなっているのです。」
「帝国大学の学生受け入れも順調ですか?」
「はい、まだ人数は少ないですがこちらで研究費の負担もしていますので受け入れ先にも喜んで貰えています。
既存の大学とは違ったプロセスを経て帝国大学の学生になった人は、一般の学生と視点が異なり、新たな発見に繋がっていると評価されています。
企業の研究室からは、そのまま社員になって欲しいという話も来ていますが、今の帝国大学生は、研究職に憧れ、力は有っても、それが諸事情で叶わなかった人が中心ですので不思議では有りません。
今後、枠を広げて行っても質が落ちない様に気を付けたいです。」
「帝国大学に不合格になった人はどういう人達です?」
「主に大銀河帝国大学の趣旨を充分理解しないで入学希望をして来た人達で、卒業したら就職に有利だと思いまして、と平気で話す様な受験生は一時面接で不合格です。
逆に趣旨を理解している人達は論文もしっかりしていまして、目的意識が高くその差は歴然だったそうです。」
「そうでしたか、私は今、研究という行為について考察を深めてみようと思っているのです。」
「研究についての研究ですか?」
「はい、色々なアプローチが出来ると考えていまして、研究のプロセスを整理出来れば、効率が上がる様な気がしていまして、まずは大きな成果を上げられた研究者の方々のお話をもっと聞いてみたいです。」
「勲章を贈られた方々との懇親会が切っ掛けなのですね。
今後も勲章授与を予定していますが、姫さまの判断で選んで下さって構わないと思います。
候補者たちとの会を設ける様に指示してよろしいでしょうか?」
「はい、旅行中でも先方の都合に合わせて…、出来れば理工系の研究施設も極秘でない所で構いませんの見て行きたいです。」
「分かりました、警備上問題のない範囲で、最先端技術を研究している施設と交渉し旅行スケジュールに組み込む方向で調整させます。」
「決まったら早めに教えて下さいね、その分野の学習に取り組みますので。」
「では、資料も揃えて貰っておきます。
旅の道中を更に充実させるおつもりなのですね。」
「一つぐらいは社会の役に立てる研究をしたいのです。」

姫さまの知的好奇心は衰えることを知らない。
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大銀河帝国-24 [シトワイヤン-34]

大銀河帝国領になった地域には大学のない所も有り教育水準は低いが、それ故思い切った実験的教育が出来る。
日本の様に大学入試を目指す知力に偏った教育を行う必要は無い。
学校改革の一つとして、母国語を英語としてきたエリアは勿論、アラビア語を使っている地域でも英語学習など語学に力を入れたのは観光業を意識しての事だが強制はしない、英語を話せなくても出来る仕事は色々有るからだ。
ただ、姫さまが制作に関わった語学教材は、姫さまの歌が有り、トイプードル愚連隊を始め色々な動物が出て来て楽しく、子ども達が授業後にも見たがる程の人気。
旅行中に撮影されたものでは飛行船の仕組みを説明するものや、飛行船からの景色を紹介しながら、緑の大切さを説明するものも。
多少難しい話でも、姫さまの映像を見ているだけで楽しく、子ども達の好奇心を掻き立てる。
ホテルの利用方法やマナー、ホテルで働く人達がどんな仕事をしているのかといった内容も有る。
毎日見ている内に語彙が増えて行き、知識が身に就く。
誰しもが姫さまの話されている内容をきちんと把握したいと思い学習が進む。
そんなDVDは舞のDVDとは違い、姫さまが気軽に制作させているので、タイトル数は多くなり世界中で売れている。
一本当たりの売り上げは舞のDVDに遠く及ばなくとも、その総数はかなりの売り上げとなり、自治領の学校にプレゼントするぐらいは全く負担にならない。

新しくなった学校のカリキュラムは読み書きや計算の基礎に始まり、安全に日常生活を送る為の知識、自然科学、社会科学から最低限必要だと思われる内容が必須。
後は、個人の力量を見ながらとなる。
姫さまは学習を嫌いにならない工夫を提案され、ゲーム形式やクイズ形式を取り入れているが、十歳ぐらいからは、それぞれの学習が何を目的としているのかの説明を重視する事で学習意識を高めている。
教育は高校入試や大学入試の為のものではない、人としての成長し、それを仕事に活かし、また生活を豊かにする為のものだ。
基本的な計算すら覚束ない子に因数分解を教えようとする事には全く意味が無い。
一応十五歳ぐらいまでを義務教育と位置付けたが、職業教育を受けている子も多い。
漁師になると考えている子は、その為の知識を学び、実際に漁を体験する事も。
調理実習では、上級生が指導を受けながら給食を作る事も有るが、学校によってはそれが日常的になり、包丁さばきの上手な子が仕切る事も有る。
料理人を目指し始めた子に、三平方の定理を理解させる必要は無いが、盛り付けのセンスを磨くことがプラスになると考える大人が指導にあたる。
医師を目指す子の学習内容は濃く、年齢に関係なく大学入試を目指した取り組みを。
そんな子が高い能力を証明すれば海外留学の機会を与えられ、そのまま留学先の医大へ進学という道も有る。
親の経済状態によっては、費用全額を帝国が負担するが進路の変更は自由。

高校に相当する学校は一年から五年程度の在学期間を、それぞれの希望に応じた単位制で学習する。
就職の為に高卒資格を得ることを目的とした学校では無い。
それぞれの興味関心や、将来を見据えて教科を選択出来る。
途中から専門分野に踏み込んでの研究活動も想定されていて、簡単に言えば入試を経験することなく日本の大学レベルの学習が可能。
そして、大学を目指す者は研究論文に取り組む予定。
それは、大銀河帝国大学が研究機関としてスタートしているが、論文を提出し入学後の研究テーマを明確に示す事で入学が許可されるからだ。
大学入学後、そのまま研究者の道を進むにはその研究実績が必要となるが、高校相当の学校への入学後から大学の期間を含め、何時就職しても構わない。
また、就職後も籍を残し研究を続ける為の情報網に参加出来るシステムをイメージしている。
大学は研究機関なのだ。
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大銀河帝国-23 [シトワイヤン-34]

姫さまとの中南米の旅を終えてから大銀河帝国の自治領となった国々は、それぞれに問題を抱えていたが、小国ばかりだった事も有り、大銀河帝国の国力で解決の方向に。
各自治領では、新たに誕生させた国営企業と帝国の認証を受けた国内外の民間企業が相談し計画的に経済活動を進めている。
簡単に言えば公的事業では談合、その他でも日本では独占禁止法に引っかかる事を普通に行うことで、全体の効率が良くなっている。
因みに認証を受けなくても商売は可能だが、姫さまの加護の下大銀河帝国の認証を受けているかどうかは大きな事で、現地の法人は挙って認証許可申請をし、そのほとんどが認められた。
自治領では、入札を一切行わず話し合いで決定、安ければ良いでは無く適切な価格を官民一体となって検討している。
結果として儲け過ぎたと感じたら、その分は社会に還元が原則。
大銀河帝国に関連して来た企業は、すでにそれが当たり前の事で、バランスの取れた社会を目指す、企業人の価値観は大きく変わったのだ。
また、人件費を削って事業経費を抑える事は、労働者の購買力を落とし内需を弱らせる事に繋がると、地元民間企業の経営者は指導を受け素直に従っている。
企業に対して指導を行っているのは経営のプロを中心としたチーム、現地で細々と経営して来た会社に対し経営コンサルタント業務を行う。
弱小企業は似た様な企業と経営の統合を進め効率化し利益率を上げた。
社長から部長に格下げとなっても収入が増え、資金繰りに頭を悩ませる事もなくなったのだから、社長をしていた少しばかりのプライドが傷ついても気にならない様だ。
これは、コンサルタントチームの力が大きい。
それまでとは視野や人脈が桁違いなバックアップのおかげで、売れる所へ高値での輸出が可能となり一気に業績を伸ばす企業も。
だが、それは姫さまのお蔭だと私利私欲に走らない人ばかりなのが、姫さまを女王様と崇める人達の自治領だ。
帝国関連企業も様々な形で投資し住民の生活を豊かにしている。
暑い国では日本で人気の氷菓が現地生産され、メガヒット商品になっているが、その利益はそのままそのエリアに投資される。
雇用状況を見ながら、あえて手間の掛かる伝統工芸を現代風にアレンジし輸出している企業もある。
この伝統工芸品は、姫さまの領地で生産されている新たな姫さま関連グッズとして注目を集めているが、手作りなので量産出来ない事も有り高値での販売が可能に。
雇用の場が確保されただけでなく、職人の収入は大幅に増えた。
舞姫さまに守られ、大銀河帝国を支えて来た経営のプロの手に掛かれば、小国を豊かな状態に改革して行く事は造作のないことだ。
数十万人規模のエリアに集中投資、市民教育、職業訓練、それらを計画的に進めているのだから。
自由経済と計画経済の良いとこ取りを目指し、無理な計画は立てず、国営企業で有っても能力や実績によって収入に差が出るシステム。
姫さまの祝福により心穏やかになっている所へ、衣食住が充実したのだから住民たちは大満足。
この状態が続けば、ユートピア計画成功となりそうだ。
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大銀河帝国-22 [シトワイヤン-34]

内戦状態から大銀河帝国の自治領になった中東の国は、ゆっくりとだが着実に復興している。
その復興事業の特徴は実験的な施設が多いと言う事。
規模の大きなものも有り、その中の一つに海水を流す水路が有る。
満潮時には海水で満たされるが、干潮時は干上がり水質を悪化させない設計。
この水路には、かまぼこ型の覆いが掛けられて…、巨大な農業用のビニールハウスが水路を覆っている状態と言えば分かり易いだろうか。
太陽によって暖められた海水から蒸発した水分は透明な覆い部分で結露し集められ蒸留水として利用されている。
覆い部分に海水を上から撒く構造、その気化熱で冷やしているので大量の真水とまでは行かないが効率は悪くない。
覆い部分を冷やした海水は集められ、塩田へ流している。
メイン水路の両脇では、マングローブを形成する植物を中心に様々な植物が植えられ緑化実験。
環境に合わずすぐ枯れてしまった種は少なくないが、じわじわと繁殖している種も有り、研究者達は、その種を中心とした緑地帯の形成を目論んでいる。
水路の奥には塩水池を複数作り、死海の様な観光スポットに出来ないかとの実験も。
海水の流し込み方で塩分濃度に差をつけつつ、温泉さながらに付加価値としての効能を加えられないかと研究が進む。
一帯を海水の淡水化事業と塩の織り成すテーマパークとして拡充して行く計画が着実に進んでいて、観光客向けの施設も増えつつある。
水路からの高温高湿の空気を取り込むサウナ、深層水をくみ上げての屋内海水プール、海水風呂、海水淡水化装置によって作り出した淡水を農業に使う前に溜めた屋内プールなど、それぞれに特徴が有り人気。
地元の人はサウナに入る人の気が知れないと話すそうだが、サウナとプールを組み合わせて楽しむ観光客は多い。
舞姫さまの社が併設されていることも有り、施設の拡充と共に観光客が右肩上がりで増えている。
投資額は少なくないが、経済の活性化が進み内需拡大にも繋がっている。

「和馬さん、死海の様な塩分濃度の高い池って、映像で見ると小さいですよね。
もう少し広い方が楽しめそうだと思うのですが。」
「確かに今はまだ小さいが塩湖を目指して大きいのも造ってるよ。」
「あまり情報が入って来ていませんが。」
「まだ、プロジェクトが始まったばかりだからね。」
「大きなプロジェクトなるのですか?」
「ああ、二つのプロジェクトを並行して進めて行くんだ。
一つは、掘りに掘って大きな窪地を造り、完成したら海水を流し込んで周辺の環境にどんな影響を与えるのか研究して行くプロジェクト、熱しにくく冷めにくい水が砂漠の寒暖差を緩和するにはどの程度の規模が必要なのか、それとも全く効果がないのか、小さな池だけでは充分なデータが取れないだろ。
ある程度の規模になれば暑い時の地上よりは確実に低く安定した水温を保てる、半分を水中に沈めた倉庫と上に断熱目的で土を被せた倉庫を比較したりとかも考えているんだ。
そう、もう一つのプロジェクトは地上に建設した様々な施設を土で埋めて丘にする、その為の土は塩湖を作る為に発生した土砂を使うという訳さ。
丘の中腹には半分埋まった家の一部が見えていたりしてね。
気候の良い時は屋外の空気をしっかり味わい、酷暑の時は窓辺の部屋を断熱目的で閉鎖したりとか色々試して行くんだ。」
「地下を掘り進むより経済的なのですか?」
「勿論さ、更に今後の気候変動が微妙で、砂漠地帯でも大雨に見舞われる可能性が否定出来なくなっているそうだ、そういった事にも対処して行ける様に海水を流し込まない、ただの大きな窪地を造る話も出て来ている、海水を使った実験を進めている地域とは大きく離れた所で、浸透した地下水に塩分が混じらないことを意識してね。
まあ、利用価値の無かった土地だから、様々な可能性を探りながらいじくり回せるんだ。」
「和馬さんはやけに詳しいですね。」
「はは、砂漠を人の住める環境に出来ない様では、月の開発など宇宙への進出は無理だろ、大銀河帝国としては、まず地球の環境と向き合っていかないとね。」
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大銀河帝国-21 [シトワイヤン-34]

中南米の旅を終えMAIHIME TOWNへ、ファルコン号はここでメンテナンスに入る。
ヘリウムガスの圧力や温度を調整し浮力調整したり、プロペラを回して高度や移動速度の調整を行っているファルコン号は、燃料電池を使用しているのでとても静か。
ちなみに、昔の飛行船は空中に静止する事が出来なかったが、船外の各種センサーと姿勢制御系が連動しているので、風が強くなければ静止状態も可能。
複数のプロペラが衛星からの位置情報に基づき細かく動いて位置を自動調整、無風に近く温度変化が少なければ燃料の消費は僅かで済み、騒音を撒き散らすヘリコプターとの差は大きい。
移動時でも飛行機と比べ消費する燃料は少なく、排出するのは主に水で地球に優しい飛行船、燃料の水素を得る段階に問題が残ってはいるが化石燃料を燃やして飛ぶ機体よりは随分ましだ。
かつて飛行船の大事故が有ったが、この機体はヘリウムの代わりに水素を利用しても問題がないだけの安全性が確保されている。
あらゆる事故を想定し、多くの安全装置が施されていて、今回のメンテナンスではそれらが問題なく作動するかのテストも行われる。
旅行中様々なデータを取って来たが、部品の消耗具合なども調べ、アフリカ旅行に備える。
ただ、間もなく姉妹機、ファルコンⅡ世号が完成するので状況によっては、そちらを使うかも知れない。
ファルコン号と基本仕様を同じくする小型飛行船は、すでに数十機が製造され運行中、ファルコン号タイプと簡単にドッキング出来る形状に統一されている。
今は主に観光と宣伝に使われているが、地球防衛軍では山火事発生時の出動も検討している。
飛行船で水のタンクを運ぶのではなく、水のホースをホールドして噴射することを目指していて、複数の機体を並べ水のホースを支える事が出来れば、連続放水が出来、効率を上げられると。
ただ、ホースのみとは言え水を流すとそれなりの重量となり課題は多い。
それでも熱心に取り組んでいるのは、MAIHIME TOWNの属する州でも大規模な森林火災が起きているからだ。
予防的に乾燥が進んだら大規模に水を撒くという案が浮上するぐらい深刻な状況。
少々乱暴だが、真水の確保が難しければ延焼を食い止める為、海水を防火帯に流す案も出ている。
塩分が、その後の環境に与える影響は大きいだろうが背に腹は代えられないとのことだ。

飛行船は強風に弱いと言う弱点は有るものの、地上基地の整備を進め、海の豪華客船に対し空の豪華飛行船という位置づけを目指している。
今回のファルコン号による中南米の飛行は、そのデモンストレーションとしての役目を充分に果たし、飛行船は隼と共に大銀河帝国の象徴となった。

「姫さま、ファルコン号での旅は如何でしたか?」
「出発前に、飛行船の歴史を調べたりもしたのですが、最新技術のおかげで思ってた以上に快適でした。
速度も充分だと思います、もっと速度が出る機種も有るそうですが、観光向けの客船ですので。
同乗していた技術者の方とは飛行船の技術面について話し合え楽しかったです。
大銀河帝国が国や企業の壁を越えて集めた技術者集団の力量も教えて頂きまして、帝国の存在が科学技術の発展に貢献出来ている、それをファルコン号で実感出来たのは素直に嬉しいですね。」
「今後は各自治領にも地上基地を建設し、小型飛行船を就航させて行き、観光やファルコン号への補給に使える様に、環境に優しい空の交通手段として発展させて行きたいです。」
「そうそう、プロペラのない飛行船タイプのドローン、屋外では使いにくいかも知れませんが使ってみたいですね。」
「あっ、そんなのも有りました、早速、手配します。」
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大銀河帝国-20 [シトワイヤン-33]

調印式の後は、全世界に向けて配信する解説番組の収録を続けた。
今後大銀河帝国の自治領となってどうなって行くのか、新しい自治領の話題だけでなく、大銀河帝国の国籍に関する新しいルールや税制に関して、姫さまの側近で有る私達が話した。
大銀河帝国の国籍を有するのは、自治領の領民、それと条件をクリアし国籍取得を希望した帝国スタッフや関連企業の関係者。
帝国に登録しただけの国民は、まだ国籍を得る事は出来ないが、条件をクリアすれば国籍を得られる様にして行き、その条件は国家としてのシステムが整うにつれて緩和して行くとアナウンスした。
独特な税制システムは、国籍を有する者達が真面目に働くことを前提に制定することもだ。
独自の決済通貨、根(コン)をスタートさせる日程も合わせて発表、記念硬貨は一ドル一根で売り出され、ドル以外の通貨ではドルとのレートにより価格が変動する。
根は世界経済の動向を見据えながら、為替市場への参入を意識している。
記念硬貨は自治領で普通に使えるが紙幣の発行は考えていない。
キャッシュレス決済の体制を整えて行くが、停電時などは身分証の提示で商品を購入出来るシステムを考えている。
また、すでに自治領として再建を進めているエリアへは、大銀河帝国に国民登録していれば、簡単に入国できるが、長期滞在や就労に関しては制限が有ることも。
帝国に関して、国民登録した人達に知って置いて貰いたいことを一通り説明した。
番組としては、その後、各自治領の観光を宣伝するがそれは別で収録済みだ。

「お疲れ様でした、番組を見て貰えれば、今後自治領に加わる国の人達も安心出来そうですね。」
「はい、姫さまの美しさを堪能出来たでしょう。
調印式では舞うが如く歩かれていましたので、映像を通しても祝福を感じられると思います。」
「はい、舞を舞う時と同じ気持ちで臨みました、簡単な儀式では有っても地球上に平和と幸の有らんことを思いながらです。」
「有難う御座います、下に見えてる都市は治安が悪いそうです。
ゆっくり飛行していることも有りますので、良い影響をもたらしていると確信しています。」
「これから自治領になって行く国の治安はどうでしょうか?」
「元々治安がひどく悪かった訳では有りませんが、姫さまの訪問以来、どこも犯罪件数が減っています。
意識改革を進めていますので、帝国が思い描くユートピア像に近づくことの出来そうな国ばかり、今日の調印式を映像で見たら、自分達の国も早く、と思うでしょう。」
「日程調整は進んでいますか?」
「正式な日程はこれから調整になりますが、南米からMAIHIME TOWNへ移動して二か国、ハワイへ飛んで一か国、苗川で二か国と調印の予定です。
しばらく苗川で過ごして頂いた後、苗川からアフリカへ向かう途中、各自治領を訪問、また姫さまを名誉プリンセスにという国や王室との交流も進めて行きたいです。
ゆったりとしたスケジュールを考えていますので、アフリカを周り終えるのは随分先になりそうです。」
「そうですね、アフリカは民族の数や言語の多さから大都市以外は問題が多そうです、焦らずじっくりが良いでしょう、たまに苗川に戻る地球を何周もする様なスケジュールで、世界中の国々を周りたいです。」
「地球上、多くのエリアに帝国の国民がいますので、ある意味、陸地の三分の一ぐらいは帝国領みたいなものです。
中南米から国民登録する人も増えていますからね。」
「交流の無い大国には少しずつ接近して行きましょう、地球市民が統治する一つの地球を目指して。」
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大銀河帝国-19 [シトワイヤン-33]

智里のエスコートでファルコン号に上がって来たのは小さな島国の元首、彼の国は人口二十万人ほどで軍隊を持たない、友好条約に基づき、有事の際は近くの国に支援して貰う。
姫さまが立ち寄ってから、大銀河帝国として経済支援をして来た事も有り、帝国の自治領として保護下に入る話が進んだ。
今回は、空中宮殿ファルコン号でその調印式。
実務者による協議が進んでいるので儀式的なことのみ、その映像を世界に配信する。
彼が小型飛行船に乗り込む所から帝国の撮影スタッフがカメラを回していて、智里はそこに彩りを添える為、地上に降りた。
調印式を前に。

「姫さまは、にっこり笑ってサインして頂ければ良いのです。」
「はい、式に問題は有りませんが、国連との関係は決着がついたのですか?」
「しばらく現状維持の状態です、自治領となって国連から脱退か、大銀河帝国を国連に加入させるとかの話は進展していません。
国連が結果を出せなかった、中東の様々な問題を姫さまが奔走し解決の方向に向かわせたのですが、我々が国連に加盟したら確実に多額の分担金を要求して来るでしょう。
しかし、国連に分担金を払うより、地球防衛軍にその費用を回した方が有効だと考えています。
国連で漠然と使われるより、確実な効果を上げられますので。」
「では、自治領となって国連脱退の方向という認識のまま、お話させて頂いて問題ないのですね。」
「はい、他の自治領も賛成しています。
姫さまのお力で、国の再生が進んでいるとの認識が広がっていますので。」
「台湾の様な国が政治的な理由で国連に加入していないのは問題ですし、その辺りの事情が今後の大きな課題だと思っています。
台湾との国交はどうなっていますか?」
「中国の指導者は、自分達の思惑が帝国によって妨害されていると考えています。
台湾との関係性によっては対立を強める可能性が有り、今は色々分析をしながら、今後の展開を検討している所です。」
「中国へ遊びに行くのはどうです?」
「下手に動くと、中国国内で舞姫フレンズとなっている人達が迫害を受けるのではないかと心配していまして。
周辺諸国を中国との国境を意識しながら飛行船で回って頂くという案が出ていますが、まだ安全が確保出来ないと、もう少し時間を掛けて行く必要が有ると思います。
指導者は姫さまの影響を恐れていますので、真面目な話、隣国で有っても近づいたらミサイルが飛んで来る可能性は否定出来ません。
人が姫さまの影響下に入ると軍事的に役立たずになる事は広く知られていますので。
帝国領になりたがってる国には、中国から多額の借金を巧妙に背負わされた国も有りまして、難しい問題が色々有ります。
今の所、一番効果的な手段としましては、国家指導者の外国訪問時、姫さまに三十キロぐらいまで近くに行って頂くぐらいしか思い浮かばないのですが、それすら警戒されてる節が有りまして。」
「国から出ないのですか?」
「はい、今は南米旅行が制限されていまして、姫さまがファルコン号での旅を終え、専用機での移動になった時、彼らがどう動くのか注目して行く必要が有ります。」
「こっそり、違う飛行機で移動して見ますか?」
「姫さまはこっそり出来ません、直ぐに祝福を感じたとの情報が飛び交いますので、姫さまが今どこにいるのかなんて世界中の人が知っているのですよ。」
「う~ん、SNSの普及も良し悪しですね。」
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大銀河帝国-18 [シトワイヤン-33]

「和馬さん、某国からの、万里を名誉プリンセスにという話は進んでいるのですか?」
「進んでるどころか、共和国を中心に広がりつつあるよ。
大銀河帝国との結び付きを強めたいと考えてる国が多くてね。
噂を聞きつけた幾つかの王国は、王族同士結びつきを深めて行きたいと言って来てる。
智里の商売も更に繁盛するだろうな。」
「万里を中心とした、今までとは違う国家の枠組みが出来て行くのでしょうか?」
「民主主義と言っても、選挙によって選ばれた元首が国民をがっかりさせた事例は少なくなかっただろ。
姫さまを元首に出来なくても、国家の象徴になって貰えればと多くの人達が考えているのさ、何と言っても平和の象徴、帝国に国民登録した人達は、姫さまを少しでも身近な存在にしたい、その結果がグッズの売り上げにしっかり現れていると思うね。」
「もう面倒な事はやめて、地球の女王とした方が早くないですか?」
「そこまでになるのにしても、色々なステップが必要だな、アフリカ大陸の制覇は時間が掛かりそうだし。」
「ですね、ファルコン号でアフリカを旅しながら、途中で専用機に乗り換えて世界旅行を並行して行く、ファルコン号の地上基地建設の関係も有るけど、世界中の人達が舞姫さまに来て欲しいと望んでいるものね、でも万里は一人なのよ。」
「無理のないゆったりとしたスケジュールを組みながらにして行こう、ファルコン号での旅は時差を気にしなくて良いだろ。
姫さま専用機のフライト時間も一回が長くならないようにしてね。
キャッシーはファルコン号の姉妹機を増やし観光船として就航させつつ、姫さまの空中宮殿としても使って行くつもりだ、姫さま専用機で移動して別の飛行船に乗り換える、苗川でも地上基地を建設中だから、日本国内も近い内に空中宮殿で回れそうで、高級別荘の利用者達も楽しみにしているそうだよ。
気象状況による予定変更を苦としない、金も時間も有る客が対象で、小型飛行船と組み合わせた旅のプランを色々組めるとお勧めして行くそうでね。」
「あの人達が客となるのなら、直ぐに黒字かな。
豪華客船の旅は、船の娯楽施設が充実しているから楽しめるのであって、毎日海ばかり見てたら飽きちゃいそう、でもファルコン号からの景色は日々変わり、万里が呼び寄せる鳥にも変化が有って楽しいですからね。」
「ああ、本当に色々な鳥がいることを教えて頂いてるよ。
智里は、明日ハンググライダーで鳥になって地上降りるのだったね。」
「飛び立ってからそのままファルコン号に戻るのは難しいのですよ。
今回は地上に降りてスタッフと合流、買い物してから、次のお客様をエスコート、天気は良さそうなので夕方には小型飛行船で戻って来ます。」
「ハンググライダーって怖くないの?」
「気持ち良いですよ、万里みたいにのんびり浮かんでる事は難しいですが、万里は速く移動出来ません、私の性格にハンググライダーは合っているのですよ。」
「なるほどね、そういえば姫さまのドローンは最近見てないね。」
「隼を腕に掴ませ、宙に浮くのは万里の力、横への移動を隼の羽ばたき、万里的にはドローンを使うより楽しいそうで、隼に楽しいという感情が有るのかは分かりませんが、彼も嫌ではないみたいです。」
「ああ、映像で見させて貰ったよ、姫さまの体重…、はは、姫さまの体重は測定不能だそうだね。」
「万里の気分で五キログラムだったり、三十キロだったり、身長はごまかせませんが。」
「まだ成長期なのかな?」
「私にはまだ追い付きませんが、普通の人より体の成長が遅いのかも知れません。
その分長生きして欲しいです。」
「そうだよな、神の如き存在が永遠に人類を見守っていて下さったらと思うよ。」
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大銀河帝国-17 [シトワイヤン-33]

空中宮殿での生活はのんびりしたものとなっている。
中東を中心に各国を飛び回っていた頃とは打って代わり、姫さまに会いたい人が小型飛行船でやって来るが、そこに色々制約が有るので来客は多くない。
それでも、多くの情報が入って来ていて、最終判断を姫さまに委ねる案件もそれなりに。
姫さまは悩まず決断を下し、指示を出した後、上手く行かなかったら修正して行きましょうと話される。
その後修正が必要となる事はなく、大銀河帝国は刻刻とその体制を強固なものにしつつある。
経済的に苦しくなった小国から、大銀河帝国領として再生して行きたいという依頼が増え、それに応える為、スタッフの人数は増え続けてるが、それと共に国籍を大銀河帝国にしたいという声が高まりつつ有る。

「和馬さん、日本では認められていませんが、二重国籍というのは一般的なのですね。」
「ああ、大銀河帝国の国籍条項も二重国籍を前提に検討して貰ってるよ。
まず、大銀河帝国や関連企業のスタッフの内、勤続期間が一年以上の人が希望すれば国籍を得られる様にして行く、帝国のパスポートを持てば友好国への出入りが楽になる様、交渉して行きたいね。
二重国籍を持てない日本人向けには特別な制度を検討中、国籍は持てないが同等の扱いをして貰えるようにね。
税金の金額は個人の自由だが、金額によって医療費の個人負担比率、将来受け取れる年金額が変わるシステムになりそうだよ。」
「税という名の社会保険なのですね。」
「大銀河帝国自体が商売をしているようなものだろ、軍を持たず自治領以外に国土を持たないから普通の国より支出が少ない、地球防衛軍は大きな支出となっているが帝国だけが費用負担している訳ではないからね。
自治領でも国営企業中心に計画的な生産販売や貿易で利益を得ている、その利益を税金の代わりにして行けば、充分国を動かして行けそうなんだ、今は社会保障のシステム、医療や年金の為の税金という意味を理解して貰ってる段階、税金を払わなくても構わないが、病気の時や年老いてからの事を考えなさいとね。」
「強制しない代わりにある意味厳しいのですね。」
まあ、病気になっても最低限の治療は受けられる様に指導をして貰っている。
まだ贅沢品は国営商店でしか手に入らないから、物を買えば国が儲かるシステムでもある。
今後はそこに自由競争の原理を導入してどうなって行くかだね。
国営企業で有っても、結果を出せば昇進や昇給が有るが、国民は姫さまの信者、かつての社会主義国の様にごまかそうとする人はいないみたいだよ。」
「法律も簡単ですよね、人として正しい事をし、正しくない行いは恥ずべき事だと思え。
細かい定めが何も無いのに問題が起きてないと聞きました。」
「姫さまと共に歩みたければ、姫さまを悲しませる事は出来ないと、完全な宗教による支配と言えなくもないが、ややこしい戒律は一つもないからな。」
「こうなってくると万里の国籍問題を考えないと行けませんね、日本国籍のままで良いのか。」
「ああ、国家を超越した存在、そろそろ日本で払ってる税金を減らして良いかもな。」
「企業の本社を自治領へ移して行きますか?」
「帝国領に入りたいという小国の立て直しや帝国直属の地球防衛軍をさらに拡充して行くには予算に余裕が必要、宇宙開発費も増額したいし。」
「国民に高額な納税を強いてる訳では無いので反対されにくいのですね。」
「宇宙開発だって多くの雇用を生み出す、収益に繋がりにくくても無駄な支出ではないからな。」
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大銀河帝国-16 [シトワイヤン-33]

「ねえ、万里、独自の通貨を流通させるって、今一つイメージが湧かないのだけど、好きなだけ通貨を発行出来て森林火災対策に予算を回せるってこと?」
「発行し過ぎると価値が下がるからバランスを考える必要が有るの。
今回立ち上げた作業チームとの話し合いでは、今ある三つの大銀河帝国領の国と、これから帝国領に入る国、それぞれの通貨はそのままにして、帝国が保有する外貨の額を基準に発行するのだけど、当面動くのはネットワーク上の数字だけで、紙幣は発行しないし、硬貨は記念硬貨だけにするのよ。」
「キャッシュレスってことなのね、記念硬貨は?」
「勿論、外貨獲得が目的だけど、国内では、そのまま流通しても良いのよ。
始めは主に領国内と領国間の決済に使うのだけど、これを機に、主食や生活必需品の価格を安定させる為、帝国政府が物価統制をして行く方向で話が進んでいてね、贅沢品は自由競争のままにして、当面は経済を安定した成長状態に誘導して行く実験みたいなことになるのだけど。
真面目に働いた領国民が年に一度ぐらいは海外旅行を出来る水準を目標に置いてみようという方向なの。
海外の大企業が破綻した場合の影響を最低限に留めるシステムを考えながら、私達が作り出した復興景気を持続させ、国民全員が中流意識を持てる社会を目指してね。
安定した国の安定した通貨となれば、子ども銀行券レベルから世界的に通用する通貨になって行く、それからが問題かな、気候変動で農作物の価格が大きく変動した時とか、一国の経済破綻とかに大銀河帝国がどう対応して行くか、すでに世界中の国で帝国の国民が経済活動をしている訳でしょ。」
「大銀河帝国の誕生により、経済学はその根底から見直す必要に迫られているのよね。
多くの人が地球市民として意識を変えて…、万里の一言で世界が大きく変わりそうだわ。」
「そうなのよ、気軽におしゃべり出来なくなってしまったな。」
「ふふ、万里の一言で普通のクッキーがバカ売れした事が有ったわね。
それで、新通貨はどんな名称になるの?」
「色々な案が出ているのだけど、今の所はコンが有力かな。」
「コン?」
「漢字では根っこの根、ファルコンのコンでも有るのだけど、ユーロみたいに分かり易くないのよね。
一コン、一ドルでスタート、コンドルに掛けてるとか冗談みたいでしょ。」
「はは、冗談なのね、でも、万里が宣言したら世界中の人が受け入れて…、世界経済に影響はないの?」
「すぐには大した影響力を持つ通貨にならない、でもいずれは、と言う事でスタッフ達は様々なシミュレーションを展開してるのよ。」
「めんどくさいから、世界統一通貨とかに出来ない?」
「キャッシュレス化が進めば可能性は有るのかな、でも、停電時のお買い物とか問題は幾つか残ってるでしょ。」
「そっか、人類は電気に依存し過ぎているということかしら。」
「そうよ、もしもの時は自転車型人力発電装置、お姉ちゃん頑張ってね。」
「う~ん、あれを飛行船に取り付けさせた人の感性にはついて行けないけど、万里の為なら頑張るわ。」
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