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それから-03 [シトワイヤン-35]

地球防衛軍の規模は大きくなった。
各地で様々な活動をしているが、砂漠化を食い止め緑地を広げる事業は特に大規模。
様々な緑化実験が行われ、失敗することも有るが成果を出し始めている。
緑化事業で一番の問題は真水の確保、海水淡水化装置は莫大なコストが掛かるだけでなく多くのエネルギーを消費し環境に優しいとは言えない。
中東の自治領で進めて来た海水を流す水路、太陽熱を使った蒸留方式は、大規模な施設の割に生産される水は少ないが、使われていなかった土地を活用しランニングコストが低いので規模を拡大している。
今回は久しぶりの訪問。

「水路の本数が増えたし、荒れてた土地を緑に覆われ随分変わったな。
裕くん、ここはね。」
「うん、姫さまが平和にしてから、うんと変わったのでしょ。
海の水はしょっぱくて飲んじゃいけないんだけど、あそこで、蒸留してるんだね。」
「あら、裕くんは難しいこと知っているのね、私に教えてくれるかしら。」
「えっとね、空気中では水が目に見えない気体となって…、何てことは姫さまはご存じだよね。」
「そうね、不思議でしょ、裕くんは空気の中に目に見えない水が有って、暑いと沢山…。」
「うん、飽和水蒸気量は気温によって変わるんだよね。
目に見えない事なんだけど、教えて貰うと、へ~、って感じ、同じ温度の水を入れたコップでも、気温や湿度によって周りに水滴が付いたり付かなかったり。」
「ふふ、ちゃんと教えて貰ってるのね。
でも水蒸気の話は難しく無かった?」
「そうだね、お父さんは目に見えない水の入るコップが空気中に有って、そのコップの大きさは気温によって変わるって教えてくれたよ。
コップ一杯になったのが飽和水蒸気量、冷やすとコップが小さくなるから水蒸気がこぼれて水滴になるんだって、温度計や湿度計、氷水を使ったりして色々試したんだ。」
「へ~、裕くんは研究したのね。」
「ここはお水がとても貴重なんだって、苗川みたいに綺麗な水が流れている所とは大違い。
下の水路でやってるのは原始的だけど、燃料をあまり使わないから悪くないんだって。
明日は見学させて貰えるんだ。」
「そっか、しっかり見学して、改良を考えてみてね。」
「うん、お父さんと一緒にね。
明日はうんとしょっぱい池でも遊ぶんだ。」
「浮力の実験なのかしら?」
「そうだよ、ファルコン号が空に浮かんでいるのと、原理は同じなんだって。
まだ泳ぐの上手じゃないから楽しみだな。
姫さまは降りないの?」
「私が降りると色々大変なの。」
「そうだったね、みんな姫さまのことが大好きだから…、あっ、大勢の人がファルコン号を見てる。
手を振ったら気付いてくれるかな?」
「そうね、隼の登場を期待して見えるかもしれない、裕くんは手を振ってあげてね、私は隼斗を連れて来て飛ばすから。」
「うん、船長にお願いして、もう少し低くして貰おうか。」
「ええ、お願いしておいて。
ジェニファー、裕くんをお願いね。」
「はい、姫さま。」
「ジェニファー、早く早く…。」
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